世界の見せる真実が、俺の想像を超えていく 〜ROOTS(ルーツ)〜

いぬは

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Case 05:Good and Evil

26:うらめしやは時代遅れ?

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「う~ら~め~し~やぁ~!」

「お前は昭和の人間か? 今どき“うらめしや”はないだろ……」

「何言ってるんですか、昔も今も幽霊って言ったら“うらめしや”ですよ!」

「はぁ……」その主張に、呆れてため息をつく。

「う~ら~め~し~やぁ~!」

「いや、だから分かったって……」

 そう言って藤宮を見ると、なぜか顔面蒼白で固まっていた。
 そして、絶叫しながら俺の腕に全力でしがみついてくる。

 その反応に、俺は油の切れた機械のようなぎこちない動きで振り向くと――そこには、青白い顔をした黒髪ロングの“ザ・幽霊”が立っていた。(いや、足が無い!)

 とっさに身構えると、気の抜けた声が聞こえた。

「ちょ、ちょっと待ってよ~」

 その気の抜けた声に動きを止める。

「私もぉ、“うらめしやぁ”なんて古いって言ったんだけど、先輩が“これが幽霊のアイデンティティーだ”ってうるさいんですよぉ~」

(いや、そこ?!)

「髪だってぇ、なんで黒髪ロングしか駄目なのぉ? もっと他の髪型や色も試したいじゃないですかぁ~」

(……お、おう)

 これには俺と藤宮も、ただ唖然とするしかなかった。
 リュックの中のブッチは、夢中でSNS用に撮影していたけどな。
 ……まあ、後で没収な。

 とまあ、なぜ俺たちがこんな状況になっているのかと言うと――
 数日前、鬼頭さんから掛かってきた一本の電話が発端だった。


 ◇◆◇


「お前たち、明日で“出勤停止”解除だから、いちど中央支部に顔を出せ」

「仕事ですか?」

「詳しい話は向こうで話す。ああ、それと藤宮とブッチにも連絡しといてくれや」

 そう言って、一方的に電話は切れた。

 ――翌日、俺たちはROOTS中央支部に集まった。

「どうだ、休暇は満喫したか?」

「ちょっと! 休暇じゃないですよ、“出勤停止”です!」

 休暇だって言って喜んでたのは、あんただろ!

「旅行してたんだろ? 夏目から聞いたぞ」

「ブッチの相談で“カッパの里”に行ってただけです!」

「冗談だ冗談。――まあ、今回呼んだのも、その件に少し関係がある」

 まったく。人聞きが悪い言い方やめてくれよ!

「さて本題に入るが――最近の“ニューメディア”の台頭によって、今までのように政府機関だけを相手にしていては、時代の流れに遅れを取るとROOTS本部が判断した」

「なるほど、確かに今は個人でも情報を発信できる時代ですもんね」

「そういうことだ。そこでこの度、“ニューメディア時代”に対応したROOTSの関連企業を立ち上げる」

「関連企業ですか?」

「まあ、フロント企業ってやつだな」

 フロント企業。
 つまり、秘密組織ROOTSと民間をつなぐ“カモフラージュ”企業というわけだ。

『社名はSweep(スイープ)――この名前には情報を集めて、綺麗にする解決するという意味が込められている』

 つまり、政府案件を担当するのが“WSR(世界安全保障リサーチ)”なのに対して、Sweepは政府案件の外、つまりネットや個人依頼の調査・解決を担う部門ってことだ。

「じゃあ俺たち、Sweepにも所属することになるんですか?」

「いや、所属はROOTSのままだ。あくまでSweepスイープROOTSルーツの表の顔という立ち位置だからな」

 なんだか、ややこしいけど結局は今までとやることは変わらないって事だろ?

「――ああ、それと正式発足は一週間後だ。それまでに必要書類に目を通しておけ」

「わかりました」


 ◇◆◇


 Sweepの説明を受けてから一週間後。
 俺たちは、オフィス街の中心――最近建ったばかりの超高層ビルの最上階にあるオフィスに来ていた。
 なんと、所有はSweepだという。

「駅から直通だし、エレベーターも専用……どこから資金出てんだよ」

 そんな庶民の感想を漏らしながら、通された応接室のソファに腰を下ろす。
 すると、すぐに奥の扉が開き、二人の女性が姿を現した。

 一人は青のスーツに、胸元が大胆に開いた白いブラウス。
 髪をきっちりまとめ、いかにも“できる女”という雰囲気。
 もう一人はグレーのスーツにタブレットを手にした、まさに“秘書”という感じの女性だ。

「お待たせしました。私がSweepの社長を務めます、星乃です」

「神楽です」
「藤宮です」
「ブッチクワッ」

「三人ともよろしくね。ふふ、カッパさんを見るのは初めてだわ」

 星乃社長はブッチを見て、にこりと笑う。

「あの、星乃社長は……能力者なんですか?」
 ブッチが見えるということは、そういうことだろう。

「ええ。あなたたちほどじゃないけどね」

 なるほど――当然だけど俺たちの能力も、すでに把握済みってわけか。

「あなたたちには、調査班兼アドバイザーとして活動してもらいます。よろしくね」

「それから……すでに必要事項には目を通してもらっていると思うけど、基本的にSweepに来た“”な依頼は全てROOTSへ委託するつもりです」

 “特別な依頼”か……。

「あと、Sweepからの依頼遂行中は、表向きはSweepの社員として行動していただきますので、そのつもりで」

「了解です。 それであの、依頼を遂行するにあたって俺の念動とか、藤宮の“ミョルニル”の使用制限ってありますか?」

「仕事の性質上、“力”を制限するつもりはありません。ただし、Sweepの依頼は一般人と行動を共にする機会も多くなります。――その点は十分に配慮して、目立つ行動はできるだけ控えてください」

「わかりました」

「一緒にいられてよかったねぇ、ミーちゃん!」

「……何だよミーちゃんって?」

「ミーちゃんはミーちゃんですよ。ミョルニルだと呼びにくいじゃないですか」

 その瞬間、ミョルニルが勢いよく明滅しだした。

「ほ、ほら! ミ、ミーちゃんも喜んでますし!」

 なんでどもるんだよ。明らかに抗議だろ、それ……。

 小声で、「今度、性能の良い充電器買ってあげるから」となだめているのが聞こえる。
 ちなみに、藤宮によると――普段ミョルニルは“ワイヤレス充電器の上で寝ている”らしい。

 うん、想像するとシュールだな……。

 そんなやり取りを眺めていると、藤宮がこっちを振り向き「えへへ」と笑う。
 ……まあ、仲良くやってるなら別にいいけどさ。

「それじゃあ、私はこれから記者会見があるので失礼するわ。改めて、これからよろしくね」

「よろしくお願いします!」

 こうして、俺たちは――
 “Sweep”から正式に依頼を受けることになった。


 ◇◆◇


 そして今、Sweepから初めての依頼で、「不気味な声が聞こえて困っている」という“お化け屋敷”へ調査に来ているというわけだ。
 
 ……って、そんなこと回想してる場合じゃねぇ!

「初仕事でいきなり“当たり”引くとか、勘弁してくれよ……」

「さ、さすが先輩の“巻き込まれ体質”ですね!」

「まったくだ、こいつと一緒にいると退屈しないクワッ」

「巻き込まれ体質とか、“チョベリバ”なんですけどぉ」

 ……幽霊だけに、“死語”ってか!
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