闇を纏う王子と滅びの星の墜ちる庭

森野結森

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 あ、あ、と意図しない声が洩れる。

 どうしようもない身体の熱にのたうちながら、ルーンハルトは自分を貫くアイゼンを見上げた。

「ルー」

 名前を呼ばれ、宥めるように顔中にキスを落とされて、いまはそれがつらいのだ、と喚いてしまいそうになる。

 初めての身体を明け渡してから、どれほどの刻が経っただろう。

 始めに嵩のある先端を、それからじっくりと砲身を。少しも急がず、決してルーンハルトの身体に負担を掛けないよう慎重にすべて飲み込ませた後、アイゼンはその腰をぴたりと止めた。「しっかり馴染ませねば、おまえを傷付ける」ともっともらしい説明は受けたが、それが正しいのかどうかは、ルーンハルトにはわからない。

 ただ、ずんと熱いものに圧迫されている感覚しかなかったそこは、徐々にアイゼンの形を想像出来るようになった。自分のものとは違う脈動がわかる。硬く張った血管。先端の丸いかたち。こちらの襞をうんと伸ばしきるほどの、太さ。

 ふと、なにかの拍子に内壁がよじれ、限界まで焦れて敏感になった襞が、アイゼンの感触を拾い上げる。とたん、びりびりとしたひどい性感が全身に走り抜けた。

「あっや、あ、あ、」

 一気に呼吸が走って、晒された腹部がひくひくと震える。

「あー、あ……っ」

 もう、どうにかしてほしい。
 こんなのはつらい。

「アイ、ゼ……ん、んん」
「汗がひどいな。水でも摂るか?」
「ぁっも、もう、し、て、……っ動いて、やだ、やだ、これ、アイゼ、アイゼン――アイゼン……っ」

 してほしい、と訴えるために腕を伸ばすと、自分の腰がかくりと抜けた。たっぷり慣らされて熟れ切った自分の内襞とアイゼンのものとが擦れる感触に、ルーンハルトは息を飲む。そうして快感を拾う術を覚えてしまった腰は、もう止まらなくなった。「やだ、やだ」と泣きながら、アイゼンの逞しい腕に縋り付くほかない。

「ルー、もういいのか?」
「や、ああ、ん、ん、して、して……っ」
「痛くはないんだな。……なるべく、ゆっくり行くぞ」
「ん、ん、あーっあーっ、あああっ」

 内襞を宥めるように撫でられて、その待ちかねた刺激に、ルーンハルトはあられもない声を上げた。稲妻のように体内を走る快感に、為すすべもなく身悶える。アイゼンは優しくしてくれているのに、もっともっととねだるように淫らに絡みついてゆく自分の内側が、あまりにもはしたない。恥ずかしい。気持ち良い。同じくらい、アイゼンにも気持ち良くなってほしい。

「は、は、……ん、」
「……ッ、ルー……」
「あ、あんんんっ、あ、あ、ー……っ」

 皮膚が厚くて大きな、アイゼンの手。わざわざ黒い雷を纏わせた意地悪なそれが、ルーンハルトの屹立を導く。そうやって達したばかりなのに、二度目のアイゼンの奔流を受け止めるのと同時、ルーンハルトは彼から滴り落ちる法悦にぐんと押し上げられた。また、達する。

 びくびくと跳ねる腰の内側で、どうしようもなく内襞がうねった。芯を失ったアイゼンの熱塊を、きゅんきゅんと締め付けてしまう。彼がそれで呼吸を乱すのが、堪らなく嬉しい。

 アイゼンはそれでもいったん腰を引き、ルーンハルトの脚を下ろした。

 寝台の傍らにあるナイトテーブルから水差しを取り、澄んだ水を煽りながら、アイゼンはふとしたようすで手を伸ばす。シーツの上に散ったルーンハルトの長い髪を、柔らかく掬い取った。

「色が変わっていくのに、気付いたか?」
「……気付きません」

 なにせ、あなたに手ひどく揺らされていたので。
 さすがに皆まで言わないものの、ルーンハルトは多分の照れくささも含めてアイゼンを睨み付ける。自分から誘って煽った自覚はあった。だがたとえお互いさまでも、恨み言の一つくらいは許されたい。

 こちらの視線には気付いているくせに、アイゼンはまるで意に介さず、手の中の髪をじっと見つめるままだ。……何がそんなに面白いんだろう、とルーンハルトが呆れる段になって、その漆黒の瞳がこちらを向く。

「おまえが俺の腕の中で生まれ直すようで、ひどく興奮した」

 アイゼンの指の間から、自分の髪が滑り落ちる。アイゼンはもう一口分の水を含むと、伸ばした手で水差しを元の位置に戻しながら、ルーンハルトに伸し掛かった。

 彼の口から水分を分けてもらったら、三度目の夜の始まりだ。

 身体の下へ巻き込むことがないようにと、アイゼンの腕にうなじを大きく掬われ、ルーンハルトの髪はすべて頭上に広げられる。

 蝋燭の光に照らされるそれは、静かにきらめく銀の色をしていた。

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