北の魔法使い

ぴこみん

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日本の女の子

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ずっと私は違和感でいっぱいだった。 




なんで私はこの国にいるのか、 

遠い場所に自分の居場所があるような気がしていた。








私は冬と雪が好き。 

冬が来ると、雪を見ると、

切なくなる。 






日本の霞文化にも馴染めない。

思ったことを言えない、善悪を多数決で決める、

立場が上なら何をしても許されるという風潮、

言い出したらもっとあるけど、

表面だけ良くしているこの国が嫌になってきた。





そして、小さい頃から北国に行きたいと、薄々思っていた。






中学の時、英語の時間に

外国人の先生に聞いた。 


「ロシアより北の国を知りませんか?」と。




先生は

「うーん、ラップランドかなぁ。ロシアの隣はフィンランドって国があるよ。

日が沈まない白夜があるんだってさ。」



と、教えてくれた。





あ、これは地理で習った白夜の国か。 

地理の時間にいい加減に聞き流していたところか。







家に帰ってお母さんに

「フィンランド行きたい!」

と言った。 




この頃はまだ純粋だったから

お母さんに絶対服従していた。

今では何も相談しない仲。




お母さんは

「高校どーすんの!!勉強しなさい!!」

といつものように勉強を強要した。






フィンランド語を勉強したかったが

そんなことする暇あるなら

さっさと受験勉強しなさいと怒られる。







高校受験の日。 

ここは県内でもトップクラスの名門校。

落ちたら怒られるプレッシャーで頭が回らない。 

その時、私の中で感情が爆発した。 





「すみませんが、辞退します!」

そう言い残し受験会場を出て行った。

白い目で見られた。 





あれだけ勉強を強要するお母さんのスパルタ教育。

これは私のやりたいことじゃないんだよ!

もう私を型にはめないで!







家に帰って家具を破壊し

今までのストレスをぶつけてやった。 





「ミキちゃん、あなたのため思ってお母さんは厳しくしてたのよ?!

何てことしてくれたの!!」




「うるさぁあーーーーーい!!

ぎゃぁぁああああーーーー!!」






この日のことが中学側へ知られてしまい

中学の先生方は失望していた。 





私は中学の先生に聞いた。

「自由になれる高校ないですか?もう疲れましたから。」




すると、「定時制があるよ。」と

担任が教えてくれた。

そこを受けることにした。 







ヤンキーやギャルがたくさんいた。 

えっ?こんなんで試験受けるって…すごい。






ここも何か馴染めないような気がした。 






結果的に定時制の午前だけのコースに合格。 

早く帰れるから家でフィンランド語をひたすら勉強した。





最初はわけがわからなかった。 

それでも粘り強く食らいついた。 

途中で投げ出したこともあった。 

でもまた再開した。 




4年間勉強して

ある程度喋れるようにもなった。 




家で勉強していると

お母さんに参考書を捨てられたことがあった。 




私はもう一回買って

家に帰らず公園で勉強して

帰ったらすぐ寝るようにしていた。






フィンランド語の勉強だけに集中していたため

私は進路のことを何も考えてなかった。 






適当にチェーン店の飲食店で接客して過ごすことに決めた。


人手不足で運良く雇われた。






高校でも友達はできなかったが

卒業式の日、同じクラスのギャルが

「アンタ喋んなかったけど気になっててさぁ?

なんか寂しいよね~。みんないなくなるし。 

まぁ頑張んなよ?じゃね!」




って言ってくれた。




びっくりした。 

でも嬉しかった。 







飲食店は厳しすぎて

なんだかお母さんと重なって

結局一年半くらいで辞めた。 




現在20歳。





毎日毎日ののしられて怒られて

「死ね!ごくつぶし!役立たず。働け!」と

お母さんは私を叩いた。





もうこれは出て行くしかないと思った。 

私は探検しに行くことにした。

前から行きたかったフィンランドへ。







フィンランドのことを色々調べ始めた。 


計画がスタートした。 






え?!英語が通じる国なんだ…。

じゃあもっと早く行けたじゃん。

フィンランド語を勉強しなくても行けたじゃん。


でもお金がなかったか。そうだね。




まず、英語が通じるということをこの時点で知った。









そして次に

私は奇妙な記事を見つけた。




「おっ?」








“近づいてはいけない北の森”

読み進めていった。





“そこに行った者は誰も帰ってきていない。

生贄の森。

10年前に行方不明になったユハという少年がいる。 

彼は明るい金髪で薄い水色の瞳をしていて

下の写真が彼である。 

西の森へ行くと言い残し出て行ったが

彼の足跡は北の森へ続いていた。 

捜索も打ち切られている。

あなたも足を踏み入れないように。」



と、フィンランド語で書かれていた。 





写真のユハという少年はとても可愛く神秘的な顔をしていた。




これは見てみたい。 

10年前に10歳なら今は私と同じ20歳。 

きっと今は綺麗なんじゃないかしら。 

私は日本人の男の人に恋したこともないし。






そう思っていると

「助けてあげたい」という気持ちが

私の心を支配して

私は動き出しました。 







北の森は首都ヘルシンキからかなり北上した場所にある。 


交通網を調べ、ホテルを予約し、

航空券を買って、

約一年半のバイトで貯めていた円をユーロに替えて

数週間後に出発。






来てみると来たこともないのに懐かしく感じた。 





すいすいと空港を出てバスに乗り

ヘルシンキ市内へ着いた。 

方向音痴なくせに余裕だった。

まるで住んだことがあったかのように。






ヨーロッパ特有の華やかな建物、

澄んだ空気、街中の木々の緑、




ここに住みたい。

開放的な景色、帰りたくない、
と思った。






ここから列車やバスを乗り継ぎ

北の森がある地域まで来た。 

あとはナビを頼りに歩いて行く。


















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