15 / 26
2
15
しおりを挟むまったくもって不本意な幕引きだ。
『おい、もういいだろッ! そろそろ降ろせや! このままじゃマジで干物になっちまうぞ!?』
とか。
『クソッ、わーったよもう! 謝りゃいいんだろうが、謝りゃ! 俺が悪かったっつの! だからとっとと降ろしやがれ!』
とか。
なにぶんこの男とは出会ったばかりなもので、実際のところどんなセリフや言い回しになるのかはちょっと想像付かないにしろ。
とにかくそういうみっともない陳情や、泣きついたり狼狽える様を期待していた。ついでに。
『えー、なになに~? よく聞こえないなー』
とか。
『うーん? そんなんじゃ全然心に響かないんですけど~』
とか。
有りがちなおちょくりも、これ見よがしにたくさんしてやるつもりでいたのに。まったく自覚のなさそうにしている相手のリミット的な問題で、まさかの根負け。不承不承、こっちが折れる羽目となり。
(ホントにもう……。これじゃあ、なんのために待ってたんだか……)
トホホ、アルメリアは内心でカックリと肩を落とす。
ともかく、シュルシュルと小一時間ぶりにレドックスを地上に下ろしてやった。
――と言っても。
「何フツーに下ろしてんだ、オメェ? こっちがヘバるまで吊っとくんじゃなかったのかよ」
「あなたね……」
当の本人がこの態度では、どうにも報われようもなかったが。
本当に釈然としない。
果たし合いとして、勝ちを収めたのはちゃんと自分だったはずなのに。
(どうしてこうなっちゃったんだろ……)
ため息が出る。
まぁ本当のことを言っても認めないだろうし、恩着せがましいのも個人的に好きくない。
(これ以上は長引かせるだけな気がするし……)
|諸々加味して、黙っておくのが吉と出る。
「ええそうね、そのつもりだったけど……。仕方ないでしょ。なんかもう、どうでもよくなっちゃったんだから」
「はァ、どうでもいいだァ? なに言ってやがる。こっちはちっともよくねぇぞ。勝手にケリつけてんじゃ……」
「だってこれじゃ、まるで私が弱い者イジメしてるみたいじゃない。生憎、私にそんな趣味はありませんので。そういうのは心の貧しい人がすることですから」
「よわっ……ちょっと待てゴラァ! そいつぁ聞き捨てなんねぇなぁ!? つーかなに勝手に締めようとしてやがる!? まだなにも終わっちゃいねぇぞ!?」
「終わりましたー。お終いでーす。はい、かいさーん」
だからせめてものしっぺ返しだ。
プイとやってからツーン。
殺気立つレドックスをよそに、アルメリアは飄々。
そっぽを向くなり一方的に打ち切った。
わざと背中を晒してみせたのは、余裕の演出であると同時に。
(ふふん、不意打ちでも何でもやれるものならやってみなさい)
そんな挑発的なメッセージも込めてのことだったが。
しかし、意外なことに――。
レドックスは、それ以上突っかかっては来なかった。
「……ちィ」
悪態をつきながら、吊るされた拍子に落としてしまった草履やら木刀やらを、ぶつぶつ文句を言いながら回収し始める。
どうやら本当に撤収する気らしい。
「あら意外。ちゃんと潔く帰るのね?」
「あァ? なんか文句あんのかよ。オメェが帰れつったんだろーが」
「そりゃあ言いましたけど。てっきり、もっと駄々をこねるかと思ってたから」
「んなことしてるうちに日ィが暮れんだろうがよ」
「日……?」
なんだそれと思う。
素直に帰ってくれるのは勿論ありがたいが。
(なんか門限を言いつけられてる小っちゃい子みたいな理由ね……)
これまで垣間見た荒っぽさからすれば、あまりにもピュアというか。
意外過ぎる一面であるようにも感じて、反応に窮する。
ちなみに驚いたのは、それだけではない。
「それに、情けなんざかけられちまったらよ。今さらぶん殴ったって、スカッとしねぇだろうが」
「……え?」
「だったら仕切り直しだ。今日はもう帰る」
まさか彼がそれに気づいていたとは思いもよらず。
(しかも、自分から認めるなんて……)
いろいろと驚きの連続で目をパチクリ、呆気に取られるアルメリアだった。
「つーか、あぁ? 無ぇぞ。どこいった」
さておき、草を蹴散らすようにしながらレドックスは何かを探していて。
たぶんアルメリアがまだ取り上げたままでいる真剣を探しているのだろうが。
そこでピコンとちょっとした閃き。
「ひょっとして、お探しのものはこれかしら?」
「あ? あぁソイツだ」
ニュルっと蔦に絡ませ持ち出したところ、手を伸ばして取ろうとするレドックス。
でもまさかそんな物騒なものをただで返してやるわけもない。
ひょいとそれを引いてイジワル、モノ質にしつつ。
アルメリアはある約束を交換条件として提示するのだった。
「返してあげてもいいけど~」
21
あなたにおすすめの小説
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
今日からはじめる錬金生活〜家から追い出されたので王都の片隅で錬金術店はじめました〜
束原ミヤコ
ファンタジー
マユラは優秀な魔導師を輩出するレイクフィア家に生まれたが、魔導の才能に恵まれなかった。
そのため幼い頃から小間使いのように扱われ、十六になるとアルティナ公爵家に爵位と金を引き換えに嫁ぐことになった。
だが夫であるオルソンは、初夜の晩に現れない。
マユラはオルソンが義理の妹リンカと愛し合っているところを目撃する。
全てを諦めたマユラは、領地の立て直しにひたすら尽力し続けていた。
それから四年。リンカとの間に子ができたという理由で、マユラは離縁を言い渡される。
マユラは喜び勇んで家を出た。今日からはもう誰かのために働かなくていい。
自由だ。
魔法は苦手だが、物作りは好きだ。商才も少しはある。
マユラは王都の片隅で、錬金術店を営むことにした。
これは、マユラが偉大な錬金術師になるまでの、初めの一歩の話──。
倒した魔物が消えるのは、僕だけのスキルらしいです
桐山じゃろ
ファンタジー
日常のなんでもないタイミングで右眼の色だけ変わってしまうという特異体質のディールは、魔物に止めを刺すだけで魔物の死骸を消してしまえる能力を持っていた。世間では魔物を消せるのは聖女の魔滅魔法のみ。聖女に疎まれてパーティを追い出され、今度は魔滅魔法の使えない聖女とパーティを組むことに。瞳の力は魔物を消すだけではないことを知る頃には、ディールは世界の命運に巻き込まれていた。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
勇者パーティのサポートをする代わりに姉の様なアラサーの粗雑な女闘士を貰いました。
石のやっさん
ファンタジー
年上の女性が好きな俺には勇者パーティの中に好みのタイプの女性は居ません
俺の名前はリヒト、ジムナ村に生まれ、15歳になった時にスキルを貰う儀式で上級剣士のジョブを貰った。
本来なら素晴らしいジョブなのだが、今年はジョブが豊作だったらしく、幼馴染はもっと凄いジョブばかりだった。
幼馴染のカイトは勇者、マリアは聖女、リタは剣聖、そしてリアは賢者だった。
そんな訳で充分に上位職の上級剣士だが、四職が出た事で影が薄れた。
彼等は色々と問題があるので、俺にサポーターとしてついて行って欲しいと頼まれたのだが…ハーレムパーティに俺は要らないし面倒くさいから断ったのだが…しつこく頼むので、条件を飲んでくれればと条件をつけた。
それは『27歳の女闘志レイラを借金の権利ごと無償で貰う事』
今度もまた年上ヒロインです。
セルフレイティングは、話しの中でそう言った描写を書いたら追加します。
カクヨムにも投稿中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる