ぬいぐるみ界の日常記録

奈留美

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しろくにゃ、強くなりたい

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僕の名前はしろくにゃ。

いつも妹のホワイトに負けている。

そろそろホワイトに勝って兄の威厳というものを見せなくちゃ!



その日僕は冷蔵庫に入っていたプリンをおやつに食べながら、ホワイトを倒す方法を考えていた。

あの、怪獣みたいな妹をギャフンと言わせたい……。

その時、ホワイトがキッチンから僕のいる部屋を覗いてきた。

「お兄ちゃん、私のプリン知らな……い?」

「え……、プリン……?」

動揺した僕の手からスプーンが滑り落ちる。

カシャーン……

訪れる静寂。

それと比例するように震えだす僕の身体。

ガタガタガタガタ

「……お兄ちゃん、私のプリン食べたのね?」

ホワイトの背後から怒りのオーラが見える!

やばい、これはやばいぞ。

やらなきゃ殺られる!

そう思った時には、僕の身体は動いていた。


玄関の方へ。


今日こそは逃げ切るんだ。

さっきまで妹を倒すとかほざいてたのに逃げるのかと、笑いたいやつは笑えばいい。

命は惜しいからね。

あとちょっとで外だ!

手を伸ばしドアノブを握ろうとした。

「おい」

とても野太い声とともに、頭をむんずと掴まれた。

「ギャーーーーーー!!!ごめんなさい許してーーー!!!あたま、頭割れる!」

「うおーーー!割れろー!」

「ギャーーー!このクマほんとに頭割ろうとしてるよー!誰か、誰か助けて!!」

その時、救世主が現れた。

「お~い、しろくにゃ~。ホワイトに内緒で美少女のブロマイド買いに行こうぜ~」

最悪のタイミングで最悪な事を言いながら現れたんだ。

くまみちが……。

するとホワイトの怒りの矛先は僕からくまみちへ。

「おい、くまみち。私に内緒ってどういうことだ。仕事は、見つけたのか?」

「…………」

ホワイトの殺気に当てられたくまみちはその場でズルズルと座り込んで動けなくなっていた。

「くまみち!ホワイトが怖いからってチビるなよ?このザコ!」

これだけ言えばプライドの高いくまみちのこと、怒って動けるようになるだろ。

さあ、そして逃げてくれ……。

「チビる?しろくにゃ……、俺を侮るなよ……」

くまみちは立ち上がって、

「もう、漏れてるぜ。全てな」

なんかカッコいい風を装ってるけど漏れてる!

それを見たホワイト。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

なんか地鳴りみたいなのが聞こえる……。

やばい!

「くまみち!逃げろーーー!!」

「無理だ、もう全部漏れてる」

ガクッ

「くまみちが絶命したーーー!!」

逃げろと言った僕の返事には若干おかしな返答を返しながらくまみちは気を失った。

「くまみち……。良くも家を汚してくれたわね……」

「ホワイト、くまみちも悪気があったわけじゃ無いんだ、許してあげて!」

ホワイトは怒りで全身が真っ赤になっていた。

「あかっ!こわっ!きみしろくまだよね!?真っ赤になってるよ!」

その時。

カッ!!

僕の目の前が真っ白になった。

ああ、そうか。

僕は悟った。

ホワイトが怒りで爆発したんだ……。

僕も、強くなりたいなぁ。

そこで僕の意識は途切れた。
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