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日本防衛編
第一回戦 神木vs黒曜
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会場は、種子型の能力者の戦い。さらに初戦の新人たちがいい試合をしたお陰であちらはとても盛り上がってる。
「でもよぉ~もっと体術戦にも観客来ないもんかねぇ…」
人数が多い体術戦は予選があり、観客が増えるのは毎年本戦かららしい。
「でもまあ、他のとこに比べたらここが一番多いんと違います?流石は僕らの副隊長さんですワ。ソッコー優勝で隊長にソッコー昇格ですワ~。」
「金城ぉ。お前…」
黒曜の大きく、分厚い手が金髪の男の頭を片手で掴んだ。
「──よくわかってるじゃねーか。」
「でしょ?見る目あるんすワ。で、副隊長。見る目あるついでなんですけど、何でそんなに力んでるんすカ?ただのルーキーでしょ?」
「金城。初戦は一瞬でも第二小隊に居た男だ。舐めてかかっちゃいけねぇ…」
金城は自身の副隊長の敗北の深さに改めて気付かされた。
「そうですね。石橋を叩き過ぎて壊すのが黒曜さんに似合ってますワ。」
第二小隊は武術を嗜む隊員にとって、尊敬と恐怖の象徴だ。単なる肉体改造では届きえない至高の領域の人々。
昨年、上り調子だったジシンを打ちのめされた黒曜は深く恐怖を埋めつけられたのだ。
「(だから今年、俺は無手で優勝し隊長の癒瘡木と闘う権利を得る。このトラウマを失くすために…)」
──
「蓮、次が第二だからってこの試合出し惜しむなよ。全力のお前がやっと勝てるかどうかの相手なんだ。黒曜副隊長は…」
「分かった。後悔するような試合はしない。」
グッ、と手首を伸ばす。そして手首を固めるテーピングを巻いた。ドンッと強く背中を叩かれる。
「じゃあ、勝ってくる。」
暗い廊下を歩き、入場口に着いた。このゲートの先は眩しい。これが栄光だといいのだが。
「年長者を待たせるものではないんじゃかないかな?」
「黒曜副隊長…!」
やはり巨大!遠目だから分かる。腕の長さ。あの腕で放たれるパンチは脅威だな。ヒットアンドアウェイも通用しないだろう。
「ジロジロ見て…そんなに警戒しなくてもいいんだぞ。第二小隊の奴らは体格差なんて物ともしないんじゃないか?」
「…俺はあんな化け物達とは違いますよ」
毒づく俺に黒曜副隊長は大胆に笑った。
「ハッハッハッ!!そうか!君も私と同じか?!」
黒曜は大きな拳をコチラに向けてくる。
「挨拶だ。互いに全力を出し切ろう。」
「ええ!勿論!」
差し出された拳に、拳を重ねる。
瞬間巨大なイメージが俺の脳内を駆ける。
『山?!』
不意打ちだった。黒曜の腕は伸び、頬に拳が当たったのちに俺の視界は後転する。
「グハァ!」
「ゴングは鳴ってるぞ、蓮!!油断するな!」
この男…なんて卑怯な。
「野郎、ぜってぇぶちこんでやる」
「やっと敬いが消えたな。恐れず来い!」
互いに構えを取る。黒曜の型は利き手の右手を後ろに置き、左肩でガードを作ってる。膝に余裕を持たせて隙は見えない。
「(でも、隙がないなら無いなりにやり方はある。)」
奇襲だ。予想外の一撃ならどんな構えも無意味になる。
能力に目覚め、肉体の限界を越えてから食らう飯は全て筋肉になった。それはコンクリートを粉砕できる程に強固なモノだ。
──ギッギッギッ。
前傾姿勢をとる。弓のように張った筋肉が軋む音がする。
「聞いているぞ蓮!お前の突進は神の子に一杯食わせたんだったよなぁ!」
「(こんなんじゃ通用しねぇよ…)」
──バシュッ!
風切音と共に跳んだ。直線的な攻撃、視界の先の黒曜は既に俺の予想着弾点に拳を合わせていた。カウンターだ。
「(このままだと食らう…?!)」
「一撃KOだ!」
動物は、攻撃の際が最も無防備である。ボクサーが渾身の一撃を放つときに顎の力が抜けるのが最たる例だ。
一歩、二歩と黒曜に近づく俺。三歩目で20メートルの距離を詰めるときに踏み込みを更に強くした。
速度を上げるためではない。突き刺すのだ、コンクリートに足を。
─バゴッ!
足は急ブレーキとなり、突進の衝撃波がコンクリートに伝わる。脆いコンクリートは礫となり、まるで散弾銃のように黒曜の身体に襲いかかる。
「グッ!!」
ヤツは瞼を閉じた。その隙を逃がさない。追撃に刺した足を軸に回し蹴りを胸骨に当てた。間違いなく片方の全骨は粉砕したはず。
激しく飛ばされた巨体は受け身を取れぬまま場外へ──行かないッ?!
その動きは鳥だった。広げればモノサシに匹敵する両の手で、空を仰ぐ黒曜。
「…やはり、君も第二小隊と同じバケモノだ。」
アンタもだ、と言おうとしたとき、その言葉は遮られヤツは凄んだ。
「これから先は、モンスターハントだ!キサマをヒトとは思わん!」
神の子と相対したときに匹敵する衝撃。肌がピリピリする気迫。これが左胸骨をヤられた人間なのか…
神に誓う。この時オレは油断なんてしていなかった。瞬きをした刹那、目の前には巨大な拳があった。
ピ───!!!!
「試合終了!御影黒曜、能力使用により敗北!」
「チッ!天竹か!」
黒曜が手を退かすと、彼の腕を止める緑髪の女性が見えた。最強の隊長と呼ばれる天竹紫苑さんだ。
「ダメだよ黒曜ちゃん。それより先は。」
黒曜は何も言えぬようで、キッと俺と紫苑さんを睨むと足早に退場した。
「彼の気持ちも分かるけどね~。昇格が掛かった一戦だし、勝ちたかったんもんねぇ。」
「あ、あの!紫苑さん。今何が──」
「──にしても!!何あの速度!能力無しであの速度は異常だよ。しかも威力を無駄にしない回転蹴り!やっぱり、六郎太に教えてもらってるからかな!あの黒曜を御しちゃうなんて!」
スゴイ、ホントニスゴイ!とばかり褒められる。紫苑さんと言えど、美女の抱擁。ナニモイエナイ…
「んんっ!とりあえず初戦突破おめでとう。優れた成績には、報酬を。だから期待しておいてね!」
「マジっすか?!」
──
「蓮!お前、お前!お前ぇ!!!!」
試合終了後真っ先に八重筒が飛び込んできた。
「八重筒ぅ!」
コイツのお陰で勝てたと言っても過言じゃない。勝利を分かち合い、喜んでくれる友を大事にしようとこの日改めて思った。
「でもよぉ~もっと体術戦にも観客来ないもんかねぇ…」
人数が多い体術戦は予選があり、観客が増えるのは毎年本戦かららしい。
「でもまあ、他のとこに比べたらここが一番多いんと違います?流石は僕らの副隊長さんですワ。ソッコー優勝で隊長にソッコー昇格ですワ~。」
「金城ぉ。お前…」
黒曜の大きく、分厚い手が金髪の男の頭を片手で掴んだ。
「──よくわかってるじゃねーか。」
「でしょ?見る目あるんすワ。で、副隊長。見る目あるついでなんですけど、何でそんなに力んでるんすカ?ただのルーキーでしょ?」
「金城。初戦は一瞬でも第二小隊に居た男だ。舐めてかかっちゃいけねぇ…」
金城は自身の副隊長の敗北の深さに改めて気付かされた。
「そうですね。石橋を叩き過ぎて壊すのが黒曜さんに似合ってますワ。」
第二小隊は武術を嗜む隊員にとって、尊敬と恐怖の象徴だ。単なる肉体改造では届きえない至高の領域の人々。
昨年、上り調子だったジシンを打ちのめされた黒曜は深く恐怖を埋めつけられたのだ。
「(だから今年、俺は無手で優勝し隊長の癒瘡木と闘う権利を得る。このトラウマを失くすために…)」
──
「蓮、次が第二だからってこの試合出し惜しむなよ。全力のお前がやっと勝てるかどうかの相手なんだ。黒曜副隊長は…」
「分かった。後悔するような試合はしない。」
グッ、と手首を伸ばす。そして手首を固めるテーピングを巻いた。ドンッと強く背中を叩かれる。
「じゃあ、勝ってくる。」
暗い廊下を歩き、入場口に着いた。このゲートの先は眩しい。これが栄光だといいのだが。
「年長者を待たせるものではないんじゃかないかな?」
「黒曜副隊長…!」
やはり巨大!遠目だから分かる。腕の長さ。あの腕で放たれるパンチは脅威だな。ヒットアンドアウェイも通用しないだろう。
「ジロジロ見て…そんなに警戒しなくてもいいんだぞ。第二小隊の奴らは体格差なんて物ともしないんじゃないか?」
「…俺はあんな化け物達とは違いますよ」
毒づく俺に黒曜副隊長は大胆に笑った。
「ハッハッハッ!!そうか!君も私と同じか?!」
黒曜は大きな拳をコチラに向けてくる。
「挨拶だ。互いに全力を出し切ろう。」
「ええ!勿論!」
差し出された拳に、拳を重ねる。
瞬間巨大なイメージが俺の脳内を駆ける。
『山?!』
不意打ちだった。黒曜の腕は伸び、頬に拳が当たったのちに俺の視界は後転する。
「グハァ!」
「ゴングは鳴ってるぞ、蓮!!油断するな!」
この男…なんて卑怯な。
「野郎、ぜってぇぶちこんでやる」
「やっと敬いが消えたな。恐れず来い!」
互いに構えを取る。黒曜の型は利き手の右手を後ろに置き、左肩でガードを作ってる。膝に余裕を持たせて隙は見えない。
「(でも、隙がないなら無いなりにやり方はある。)」
奇襲だ。予想外の一撃ならどんな構えも無意味になる。
能力に目覚め、肉体の限界を越えてから食らう飯は全て筋肉になった。それはコンクリートを粉砕できる程に強固なモノだ。
──ギッギッギッ。
前傾姿勢をとる。弓のように張った筋肉が軋む音がする。
「聞いているぞ蓮!お前の突進は神の子に一杯食わせたんだったよなぁ!」
「(こんなんじゃ通用しねぇよ…)」
──バシュッ!
風切音と共に跳んだ。直線的な攻撃、視界の先の黒曜は既に俺の予想着弾点に拳を合わせていた。カウンターだ。
「(このままだと食らう…?!)」
「一撃KOだ!」
動物は、攻撃の際が最も無防備である。ボクサーが渾身の一撃を放つときに顎の力が抜けるのが最たる例だ。
一歩、二歩と黒曜に近づく俺。三歩目で20メートルの距離を詰めるときに踏み込みを更に強くした。
速度を上げるためではない。突き刺すのだ、コンクリートに足を。
─バゴッ!
足は急ブレーキとなり、突進の衝撃波がコンクリートに伝わる。脆いコンクリートは礫となり、まるで散弾銃のように黒曜の身体に襲いかかる。
「グッ!!」
ヤツは瞼を閉じた。その隙を逃がさない。追撃に刺した足を軸に回し蹴りを胸骨に当てた。間違いなく片方の全骨は粉砕したはず。
激しく飛ばされた巨体は受け身を取れぬまま場外へ──行かないッ?!
その動きは鳥だった。広げればモノサシに匹敵する両の手で、空を仰ぐ黒曜。
「…やはり、君も第二小隊と同じバケモノだ。」
アンタもだ、と言おうとしたとき、その言葉は遮られヤツは凄んだ。
「これから先は、モンスターハントだ!キサマをヒトとは思わん!」
神の子と相対したときに匹敵する衝撃。肌がピリピリする気迫。これが左胸骨をヤられた人間なのか…
神に誓う。この時オレは油断なんてしていなかった。瞬きをした刹那、目の前には巨大な拳があった。
ピ───!!!!
「試合終了!御影黒曜、能力使用により敗北!」
「チッ!天竹か!」
黒曜が手を退かすと、彼の腕を止める緑髪の女性が見えた。最強の隊長と呼ばれる天竹紫苑さんだ。
「ダメだよ黒曜ちゃん。それより先は。」
黒曜は何も言えぬようで、キッと俺と紫苑さんを睨むと足早に退場した。
「彼の気持ちも分かるけどね~。昇格が掛かった一戦だし、勝ちたかったんもんねぇ。」
「あ、あの!紫苑さん。今何が──」
「──にしても!!何あの速度!能力無しであの速度は異常だよ。しかも威力を無駄にしない回転蹴り!やっぱり、六郎太に教えてもらってるからかな!あの黒曜を御しちゃうなんて!」
スゴイ、ホントニスゴイ!とばかり褒められる。紫苑さんと言えど、美女の抱擁。ナニモイエナイ…
「んんっ!とりあえず初戦突破おめでとう。優れた成績には、報酬を。だから期待しておいてね!」
「マジっすか?!」
──
「蓮!お前、お前!お前ぇ!!!!」
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