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3 十三領の獣害
3-7. 十三領の獣害
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東の森の洞窟から一時間程歩いて、ひっそりと佇む不気味な黒い屋敷にたどり着く。
我が家である屋敷へ入り、それぞれ宛がわれた部屋へ戻っていく。
まだ、ジャグジーやプールやバーカウンターなどの増設に取り掛かっていないため、風呂は客室にあるシャワーで済ませる。
イグドラシル内のソゴゥの住居としている第七区画の一室には、キッチンとリビング、寝室が二つ同じ空間に高低差を付けて存在する。一段階目のロフト部分のような場所にソゴゥの寝室スペース、二段階目の階段がないと上がれないような高所に洞穴のようにあいた秘密基地のような空間に、ヨルの居住スペースがある。さらにキッチンの横から通路が伸びていて、下の階に続いており、そこに風呂やトイレ、洗濯物が干せるテラスがある。
いつもは、そうした同じ空間にいるヨルも、今日は尋ねてきた兄弟とヨル一人一人に用意された客室で、ヨルはソゴゥの隣の客室を使っている。
そろそろ寝ようかと思っていると、部屋のドアがノックされた。
開けると、ヨドゥバシーが肌掛けを持って寝間着で立っていた。
ソゴゥは無言でドアを閉める。
「なんで閉めるんだよ~」
「嫌な予感しかしない」
「久しぶりだから、一緒に寝ようって思っただけだよ」
「嫌な予感的中したよ。お前いくつだよ、二十一だよな? いい大人が何しているんだよ」
「何を言っているんだよソゴゥ、二十一はまだ幼年期じゃないか」
「お前の図体を見て言え、そんな図体をしたエルフを子供とは呼ばん」
ヨドゥバシーは二十一、ソゴゥは二十と前世なら完全に成人している年齢だ。
それにヨドゥバシーの身長は185㎝、エルフでも高い方だ。
ちなみに、ニトゥリーとミトゥコッシーが190㎝で、イセトゥアンがヨドゥバシーとほぼ同じ。ソゴゥは一人エルフの平均身長に満たない178㎝だが、ソゴゥ自身はまだこれから伸びると思っている。
枕と、肌掛けを部屋から持ってきたヨドゥバシーが、ずかずかと部屋に入り、ソゴゥより先に、客室のベッドに寝そべり、そして瞬時に寝た。
「噓だろ・・・・・・秒で寝やがった、こいつ」
すでに寝息を立て始めた兄に、呆然とするソゴゥ。
灯を消して寝入るまでのあいだ、近況とか、離れていたこれまでの事とかを訥々と話す流れじゃなかったのか。
ただ邪魔な185㎝が転がっているだけのベッドを見下ろし、ソゴゥは長い溜息を吐いた。
眠る前に水を飲もうとして、水差しの分を飲み切っていたことに気付き、廊下へと出る。
すると、隣の部屋のドアがゆっくりと開いた。
ヨルがふらりと出てきて、こちらを見る。
また角や尻尾や翼が出ていて、ヨルの事を知らないエルフが見たら、腰を抜かすほど禍々しい悪魔そのものの気配を濃くしていた。
「おい、どうした、体から炎が上がっているぞ」
ヨルは宙に浮いた状態で、まるで立体映像を見ているように、時折その像を崩した。
「マスター、我は消える・・・・・・思い出したのだ、ここにはいられない・・・・・・」
「ヨル?」
「我は悪魔ゆえ、その理から逃れることが出来ない・・・・・・」
「どういう事だ、第七指定の魔導書の召喚を超える効力を持った理とはなんだ! イグドラシルを離れたせいで、魔導書の力が薄れたのか?」
ヨルは首を振る。
ヨルを包む黒い光は増すのに、ヨル自体は希薄になりその像が薄れていく。
「あの人を救ってほしい、どうか・・・・・・ソゴゥ」
「ヨル!」
「我の存在を代償に・・・・・・あの人の名は・・・・・・」
「おい!」
ヨルは一人の名を告げると共に、完全に消えた。
「俺は悪魔じゃないから、人助けに代償なんて必要ないぞ、ヨル」
あまりの唐突な出来事に、本当に今目の前にいたのがヨルだったの分からなくなる。
ヨルに割り当てられた部屋を確認する。
部屋は誰もおらず、冷え切っていた。
ソゴゥはヨルの召喚に使用された、第七指定書の魔導書をガイドで検索する。召喚の魔道書の存在が、イグドラシル書庫から消えていた。
どういうことだ?
イグドラシルに戻って、魔導書を確認しなくては。
ソゴゥはすぐに、イグドラシルに棲む樹精獣のジェームス宛てに「今から戻る」と手紙を書いて、それを客室の窓辺から放った。
手紙は白いフカフカした丸い鳥になり、イグドラシルへ向けて飛び立っていく。それを瞬間移動でソゴゥは追いかける。
鳥のすぐ側に移動すると、飛行魔法でその場に待機し、鳥がまた遠くまで飛んでいくと、そのすぐ側に瞬間移動をする。これを繰り返して、イグドラシルがある首都セイヴへ向かう。
途中、首都の境にある空壁で通行許可申請を行い、これを抜けてセイヴへ入ると、そこからは土地勘があるため、一気に鳥を追い越して瞬間移動を繰り返してイグドラシルへ向かった。
ソゴゥの瞬間移動は、視認できる場所にマーキングを行い、その場所へ移動するといったものであるため、基本は見えている場所にしか移動できないが、マーキングを先んじて行っておけば、見えていない場所にも移動できる。このマーキングには数や有効期限があるが、ソゴゥの研鑽により上限は増え続けている。
ソゴゥは寝間着のままで戻って来ていたため、レベル5に会わないように第七区画に一気に瞬間移動して、魔導書の置いてある自室に向かう。
ドアを開けると、樹精獣たちが集まっており、魔導書が置いてあったソゴゥの机の周りを囲んでいた。
樹精獣はソゴゥに気付くと、「キュッ、ギュエ!」と訴えかけてくる。
「ジェームス! 魔導書は燃えたのか?」
「キッチュ!」
「皆に怪我や、火傷は?」
「キュッ、ニュエ」
「そうか、良かった、ヨルが消えたんだ。それで、魔導書がどうなったか確かめに戻ったんだが」
「ニュッ、ニャ」
ヨルに当たりが強かった、小さな樹精獣のハリーが特に落ち込んでいる。
オレグに、スミス、ナタリーとジェームスの大人組は理由を探るように思案顔だ。
小さい樹精獣のハリー、ソルト、イーサンは戸惑ったり落ち込んだりしている。
ヨルが来て数か月だが、彼らにとって一体ヨルはどんな存在だったのだろう。
毎朝、毎晩一緒にご飯を食べる。
昼はそれぞれ、お気に入りの場所で思い思いにランチを楽しんでいる様だったが、それは家族のようだったのではないだろうか。
「クソッ、なんだよ、何で急に・・・・・・」
樹精獣たちが集まってきて、ソゴゥによじ登る。
フカフカの毛並みを顔に押し当てて、これで元気を出せと言っているようだ。
流石に七匹は重たいが。
我が家である屋敷へ入り、それぞれ宛がわれた部屋へ戻っていく。
まだ、ジャグジーやプールやバーカウンターなどの増設に取り掛かっていないため、風呂は客室にあるシャワーで済ませる。
イグドラシル内のソゴゥの住居としている第七区画の一室には、キッチンとリビング、寝室が二つ同じ空間に高低差を付けて存在する。一段階目のロフト部分のような場所にソゴゥの寝室スペース、二段階目の階段がないと上がれないような高所に洞穴のようにあいた秘密基地のような空間に、ヨルの居住スペースがある。さらにキッチンの横から通路が伸びていて、下の階に続いており、そこに風呂やトイレ、洗濯物が干せるテラスがある。
いつもは、そうした同じ空間にいるヨルも、今日は尋ねてきた兄弟とヨル一人一人に用意された客室で、ヨルはソゴゥの隣の客室を使っている。
そろそろ寝ようかと思っていると、部屋のドアがノックされた。
開けると、ヨドゥバシーが肌掛けを持って寝間着で立っていた。
ソゴゥは無言でドアを閉める。
「なんで閉めるんだよ~」
「嫌な予感しかしない」
「久しぶりだから、一緒に寝ようって思っただけだよ」
「嫌な予感的中したよ。お前いくつだよ、二十一だよな? いい大人が何しているんだよ」
「何を言っているんだよソゴゥ、二十一はまだ幼年期じゃないか」
「お前の図体を見て言え、そんな図体をしたエルフを子供とは呼ばん」
ヨドゥバシーは二十一、ソゴゥは二十と前世なら完全に成人している年齢だ。
それにヨドゥバシーの身長は185㎝、エルフでも高い方だ。
ちなみに、ニトゥリーとミトゥコッシーが190㎝で、イセトゥアンがヨドゥバシーとほぼ同じ。ソゴゥは一人エルフの平均身長に満たない178㎝だが、ソゴゥ自身はまだこれから伸びると思っている。
枕と、肌掛けを部屋から持ってきたヨドゥバシーが、ずかずかと部屋に入り、ソゴゥより先に、客室のベッドに寝そべり、そして瞬時に寝た。
「噓だろ・・・・・・秒で寝やがった、こいつ」
すでに寝息を立て始めた兄に、呆然とするソゴゥ。
灯を消して寝入るまでのあいだ、近況とか、離れていたこれまでの事とかを訥々と話す流れじゃなかったのか。
ただ邪魔な185㎝が転がっているだけのベッドを見下ろし、ソゴゥは長い溜息を吐いた。
眠る前に水を飲もうとして、水差しの分を飲み切っていたことに気付き、廊下へと出る。
すると、隣の部屋のドアがゆっくりと開いた。
ヨルがふらりと出てきて、こちらを見る。
また角や尻尾や翼が出ていて、ヨルの事を知らないエルフが見たら、腰を抜かすほど禍々しい悪魔そのものの気配を濃くしていた。
「おい、どうした、体から炎が上がっているぞ」
ヨルは宙に浮いた状態で、まるで立体映像を見ているように、時折その像を崩した。
「マスター、我は消える・・・・・・思い出したのだ、ここにはいられない・・・・・・」
「ヨル?」
「我は悪魔ゆえ、その理から逃れることが出来ない・・・・・・」
「どういう事だ、第七指定の魔導書の召喚を超える効力を持った理とはなんだ! イグドラシルを離れたせいで、魔導書の力が薄れたのか?」
ヨルは首を振る。
ヨルを包む黒い光は増すのに、ヨル自体は希薄になりその像が薄れていく。
「あの人を救ってほしい、どうか・・・・・・ソゴゥ」
「ヨル!」
「我の存在を代償に・・・・・・あの人の名は・・・・・・」
「おい!」
ヨルは一人の名を告げると共に、完全に消えた。
「俺は悪魔じゃないから、人助けに代償なんて必要ないぞ、ヨル」
あまりの唐突な出来事に、本当に今目の前にいたのがヨルだったの分からなくなる。
ヨルに割り当てられた部屋を確認する。
部屋は誰もおらず、冷え切っていた。
ソゴゥはヨルの召喚に使用された、第七指定書の魔導書をガイドで検索する。召喚の魔道書の存在が、イグドラシル書庫から消えていた。
どういうことだ?
イグドラシルに戻って、魔導書を確認しなくては。
ソゴゥはすぐに、イグドラシルに棲む樹精獣のジェームス宛てに「今から戻る」と手紙を書いて、それを客室の窓辺から放った。
手紙は白いフカフカした丸い鳥になり、イグドラシルへ向けて飛び立っていく。それを瞬間移動でソゴゥは追いかける。
鳥のすぐ側に移動すると、飛行魔法でその場に待機し、鳥がまた遠くまで飛んでいくと、そのすぐ側に瞬間移動をする。これを繰り返して、イグドラシルがある首都セイヴへ向かう。
途中、首都の境にある空壁で通行許可申請を行い、これを抜けてセイヴへ入ると、そこからは土地勘があるため、一気に鳥を追い越して瞬間移動を繰り返してイグドラシルへ向かった。
ソゴゥの瞬間移動は、視認できる場所にマーキングを行い、その場所へ移動するといったものであるため、基本は見えている場所にしか移動できないが、マーキングを先んじて行っておけば、見えていない場所にも移動できる。このマーキングには数や有効期限があるが、ソゴゥの研鑽により上限は増え続けている。
ソゴゥは寝間着のままで戻って来ていたため、レベル5に会わないように第七区画に一気に瞬間移動して、魔導書の置いてある自室に向かう。
ドアを開けると、樹精獣たちが集まっており、魔導書が置いてあったソゴゥの机の周りを囲んでいた。
樹精獣はソゴゥに気付くと、「キュッ、ギュエ!」と訴えかけてくる。
「ジェームス! 魔導書は燃えたのか?」
「キッチュ!」
「皆に怪我や、火傷は?」
「キュッ、ニュエ」
「そうか、良かった、ヨルが消えたんだ。それで、魔導書がどうなったか確かめに戻ったんだが」
「ニュッ、ニャ」
ヨルに当たりが強かった、小さな樹精獣のハリーが特に落ち込んでいる。
オレグに、スミス、ナタリーとジェームスの大人組は理由を探るように思案顔だ。
小さい樹精獣のハリー、ソルト、イーサンは戸惑ったり落ち込んだりしている。
ヨルが来て数か月だが、彼らにとって一体ヨルはどんな存在だったのだろう。
毎朝、毎晩一緒にご飯を食べる。
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