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6 巨悪
6-6. 巨悪
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ソゴゥは二人の司書と、ジキタリスを振り返り、治癒魔法が使えるかを確認し、この場に居る者で体調が悪い者がいたら、長旅となる今後の事を考え、体力を付ける補助を行ってほしいと告げる。
あとは、青年と数十人に、一万人の班分けと取りまとめをお願いし、ソゴゥの指示があるまでここで待機すること、そしていつでも逃げられるように大切な物は身に着け、大切な人の手を放さないように言うと、ヨルを伴って地上へと出た。
外は夜で、星さえ霞むスモックの大気が暗闇の膜を下ろしていた。
かなり上空へと飛びあがり、周辺の真っ暗な海を見渡す。
ソゴゥがイグドラム国を出て、十七日ほど、ゼフィランサス王との打ち合わせで、イグドラム国の海軍が二千人を輸送できる民間の客船を携えてここへ到達するには、あと十三日が必要となる。
乗り切れない人たちは、戦艦の甲板で飛行竜に乗せて、輸送を繰り返し、四か国の手の及ばない土地へとひとまず避難させるという手はずになっていた。
だが、近隣の人間の国の戦艦が、この島へ到達するのに半日は掛からない。
近い所なら二三時間でやって来るだろう。
十三日間、ここをヨルと二人で守らなければならない。
「四か国全艦が、揃った状態で包囲網を形成してこられたら、大分排除の難易度が上がるな。立体映像で、リヴァイアサンでも出現したように見せて追い払うかな」
「全艦、燃やし尽くしてやればよいのだ」
「それは、最後の手段にしよう。愚かなのは、怨霊の言いなりになっているトップの人間たちだけだ」
少し冷える上空で、ヨルと背中合わせにぼんやりと水平線を眺めながら、何かいい方法がないかを考える。
ソゴゥはガイドを開き、人間の国が所有する戦艦の規模や搭載している兵器について、最新情報を検索する。
イグドラシルには、世界各国の思想、経済、軍事力や情勢などの最新情報などの取り扱いがあり、それらは日に二回更新され、週に一回担当司書と各省庁の情報取り扱い担当部署とで精査される。
外事と軍部より齎された情報のもと作成された、四か国の戦艦について、最新鋭の追尾型砲弾、魔力拡張砲、魚雷などが記載され、その砲弾格納数、弾道の飛距離、威力などが解析され数値化されている。
ソゴゥはそれらを確認してため息を吐く。
カ〇ブの海賊のように、中世の帆船が大砲を打ち合っていた程度ならいいと思っていたが、どうやら、近代兵器に近い威力を持った、駆動力のある戦艦を相手取らないとならないらしい。
「ヨル、相手の攻撃が砲弾であった場合、弾をマーキングして大気圏外へ瞬間移動させて捌くから、ヨルはマーキングもれで島に着弾しそうな弾と、砲弾以外の攻撃をどうにかして欲しいんだが、できるか?」
「任せるがよい」
「よし、これで行くか。あとは千の艦隊が来るのを待つか、こちらから迎え撃ってでるか」
ソゴゥは島周辺の三段階の空壁の位置を確認する。
黎明の靄に、薄っすら空気の層が出来ているのが確認できる。
いずれにしても、人間の国が設置したこの空壁は、戦艦が島を攻撃する際に全撤去されるだろう。
せめて、人間の国ではない第三国が設置した物なら、少しは艦隊の足止めになっただろうが、この空壁は、海底鉱石採掘の汚染水が、大陸に漂着しないためといった理由で設置されているものだ。
やがて、夜が明け、周囲が明るくなってきた。
「マスター」
「何だ?」
「悪い知らせがある」
「どうした?」
ヨルが、確認を担当していた西側の海を見るように言う。
「あの船影が見えるか?」
ソゴゥは、西側の島にほど近い場所に船団を確認し、凝視する。
「嘘だろ、何で」
「我の目には、五隻見える」
「あれはイグドラム国籍の船だ」
暗い海では確認できなかった、イグドラム海軍の軍艦三艦が、民間の巨大客船二隻を護衛しながら、島へと真っ直ぐ向かってくる。
「直ぐに、引き返すように伝えないと、四か国の艦隊と鉢合わせてしまう!」
ソゴゥが軍艦へ瞬間移動しようと、視界を切り替えるとそこに、千を超す艦隊がすでにイグドラム船団の周囲を取り囲んでいることが分かった。
明かりを落として、暗闇に紛れ進行して来た千艦が一斉に点灯した。
島の周りの海を、千の光が散りばめられた。
イグドラムの船団は今、一番外側の空壁に到達しようという位置にある。
「クソッ、空壁が解除された瞬間、攻撃が開始されるぞ」
ソゴゥの言葉に答えたのは、ヨルではない悪魔だった。
「先ほどの作戦、私も混ぜてはいただけませんでしょうか?」
大きな蝙蝠の様な翼を羽ばたかせて、金目の悪魔がソゴゥに言う。
「私なら、貴方の能力と相性がいいですよ。私は時間操作が出来ますから。とはいえ、前準備なしには精々、ソゴゥ様の一人の時間を細切れに操作できるくらいですが、どうされますか?」
「力を貸せ、対価は後で聞く。今すぐイグドラムの戦艦に移動して、砲撃をすべて打ち落とす。ヨルはこの島を守れ!」
「承知した」
ソゴゥはガイドの装丁からカギを外してそれを元の大きさへと戻して手に取る。
もともと化け物じみた魔力を保有するソゴゥだが、保険のためにイグドラシルからの魔力供給の回路を開いておいたのだ。
手にした魔法具から光が広がり、魔力が行き場を探すようにソゴゥの周囲を取り巻いて輝いている。
「いくぞ、ついてこい」と、ソゴゥは金目の悪魔に言った。
ヴァーグ・パイシースは軍艦の船首に立ち、目前の島の東側より回り込んできた船団の数に、人間の国が全勢力を投入してきたことを察知した。
絶望的な戦力差だ。
イグドラムの全戦艦をこの場に差し向けていたとしても、戦力的には何の足しにもならないであろう。
「全艦戦略的防衛措置を開始する! 副長通達!」
音魔法を得意とする第三貴族ジェミナイ家の副長スオーノは、通信機関を使用せず直接他の軍艦にも魔法にて通達した。
全艦に緊張が奔る。
程なくして、目の前の空壁が三つとも消失し、イグドラム船団を取り囲む四か国の戦艦から開戦の印となる旗が掲げられた。
「来ます!」
ヴァーグの後方で、船員が叫ぶ。
一斉砲撃が開始され、まるで雲霞のごとく空を黒く砲弾が埋め尽くす。
初撃着弾秒読みに入り、全船員に低頭防御姿勢を取るよう指示した瞬間、ヴァーグ・パイシースの目の前から全ての砲弾が搔き消えた。
先頭の海上幕僚長が指揮する第一戦艦の右舷後方の第二戦艦船首にいたミトゥコッシーは、イグドラムの船団の真上に夥しい魔力の流れを感じ、そこに弟の姿を見つけた。
あとは、青年と数十人に、一万人の班分けと取りまとめをお願いし、ソゴゥの指示があるまでここで待機すること、そしていつでも逃げられるように大切な物は身に着け、大切な人の手を放さないように言うと、ヨルを伴って地上へと出た。
外は夜で、星さえ霞むスモックの大気が暗闇の膜を下ろしていた。
かなり上空へと飛びあがり、周辺の真っ暗な海を見渡す。
ソゴゥがイグドラム国を出て、十七日ほど、ゼフィランサス王との打ち合わせで、イグドラム国の海軍が二千人を輸送できる民間の客船を携えてここへ到達するには、あと十三日が必要となる。
乗り切れない人たちは、戦艦の甲板で飛行竜に乗せて、輸送を繰り返し、四か国の手の及ばない土地へとひとまず避難させるという手はずになっていた。
だが、近隣の人間の国の戦艦が、この島へ到達するのに半日は掛からない。
近い所なら二三時間でやって来るだろう。
十三日間、ここをヨルと二人で守らなければならない。
「四か国全艦が、揃った状態で包囲網を形成してこられたら、大分排除の難易度が上がるな。立体映像で、リヴァイアサンでも出現したように見せて追い払うかな」
「全艦、燃やし尽くしてやればよいのだ」
「それは、最後の手段にしよう。愚かなのは、怨霊の言いなりになっているトップの人間たちだけだ」
少し冷える上空で、ヨルと背中合わせにぼんやりと水平線を眺めながら、何かいい方法がないかを考える。
ソゴゥはガイドを開き、人間の国が所有する戦艦の規模や搭載している兵器について、最新情報を検索する。
イグドラシルには、世界各国の思想、経済、軍事力や情勢などの最新情報などの取り扱いがあり、それらは日に二回更新され、週に一回担当司書と各省庁の情報取り扱い担当部署とで精査される。
外事と軍部より齎された情報のもと作成された、四か国の戦艦について、最新鋭の追尾型砲弾、魔力拡張砲、魚雷などが記載され、その砲弾格納数、弾道の飛距離、威力などが解析され数値化されている。
ソゴゥはそれらを確認してため息を吐く。
カ〇ブの海賊のように、中世の帆船が大砲を打ち合っていた程度ならいいと思っていたが、どうやら、近代兵器に近い威力を持った、駆動力のある戦艦を相手取らないとならないらしい。
「ヨル、相手の攻撃が砲弾であった場合、弾をマーキングして大気圏外へ瞬間移動させて捌くから、ヨルはマーキングもれで島に着弾しそうな弾と、砲弾以外の攻撃をどうにかして欲しいんだが、できるか?」
「任せるがよい」
「よし、これで行くか。あとは千の艦隊が来るのを待つか、こちらから迎え撃ってでるか」
ソゴゥは島周辺の三段階の空壁の位置を確認する。
黎明の靄に、薄っすら空気の層が出来ているのが確認できる。
いずれにしても、人間の国が設置したこの空壁は、戦艦が島を攻撃する際に全撤去されるだろう。
せめて、人間の国ではない第三国が設置した物なら、少しは艦隊の足止めになっただろうが、この空壁は、海底鉱石採掘の汚染水が、大陸に漂着しないためといった理由で設置されているものだ。
やがて、夜が明け、周囲が明るくなってきた。
「マスター」
「何だ?」
「悪い知らせがある」
「どうした?」
ヨルが、確認を担当していた西側の海を見るように言う。
「あの船影が見えるか?」
ソゴゥは、西側の島にほど近い場所に船団を確認し、凝視する。
「嘘だろ、何で」
「我の目には、五隻見える」
「あれはイグドラム国籍の船だ」
暗い海では確認できなかった、イグドラム海軍の軍艦三艦が、民間の巨大客船二隻を護衛しながら、島へと真っ直ぐ向かってくる。
「直ぐに、引き返すように伝えないと、四か国の艦隊と鉢合わせてしまう!」
ソゴゥが軍艦へ瞬間移動しようと、視界を切り替えるとそこに、千を超す艦隊がすでにイグドラム船団の周囲を取り囲んでいることが分かった。
明かりを落として、暗闇に紛れ進行して来た千艦が一斉に点灯した。
島の周りの海を、千の光が散りばめられた。
イグドラムの船団は今、一番外側の空壁に到達しようという位置にある。
「クソッ、空壁が解除された瞬間、攻撃が開始されるぞ」
ソゴゥの言葉に答えたのは、ヨルではない悪魔だった。
「先ほどの作戦、私も混ぜてはいただけませんでしょうか?」
大きな蝙蝠の様な翼を羽ばたかせて、金目の悪魔がソゴゥに言う。
「私なら、貴方の能力と相性がいいですよ。私は時間操作が出来ますから。とはいえ、前準備なしには精々、ソゴゥ様の一人の時間を細切れに操作できるくらいですが、どうされますか?」
「力を貸せ、対価は後で聞く。今すぐイグドラムの戦艦に移動して、砲撃をすべて打ち落とす。ヨルはこの島を守れ!」
「承知した」
ソゴゥはガイドの装丁からカギを外してそれを元の大きさへと戻して手に取る。
もともと化け物じみた魔力を保有するソゴゥだが、保険のためにイグドラシルからの魔力供給の回路を開いておいたのだ。
手にした魔法具から光が広がり、魔力が行き場を探すようにソゴゥの周囲を取り巻いて輝いている。
「いくぞ、ついてこい」と、ソゴゥは金目の悪魔に言った。
ヴァーグ・パイシースは軍艦の船首に立ち、目前の島の東側より回り込んできた船団の数に、人間の国が全勢力を投入してきたことを察知した。
絶望的な戦力差だ。
イグドラムの全戦艦をこの場に差し向けていたとしても、戦力的には何の足しにもならないであろう。
「全艦戦略的防衛措置を開始する! 副長通達!」
音魔法を得意とする第三貴族ジェミナイ家の副長スオーノは、通信機関を使用せず直接他の軍艦にも魔法にて通達した。
全艦に緊張が奔る。
程なくして、目の前の空壁が三つとも消失し、イグドラム船団を取り囲む四か国の戦艦から開戦の印となる旗が掲げられた。
「来ます!」
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一斉砲撃が開始され、まるで雲霞のごとく空を黒く砲弾が埋め尽くす。
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