異世界転生者の図書館暮らし3 モフモフのレシピ 神鳥の羽と龍の鱗の悪魔仕立て

パナマ

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2 最新ファッション探訪

2-5. 最新ファッション探訪

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はあ、これがおしゃれな服を作る事務所かぁ。
夕飯に出たり、退社している者もいるようだが、それでもまだかなりの社員が残って仕事をしているようだ。

「私は、ここの所長をしているマグノリアよ、よろしくね」
「私は、ソゴゥ・ノディマーです」
「我は、ソゴゥの護衛のヨルである」
マグノリアはソゴゥがイグドラシルの第一司書だと知っているため、ヨルという悪魔の存在を普通に受け入れている。
「所長室はこっちよ、先ずはそこで話しましょう」
マグノリアに続いて、兄弟とヨルの三人が歩く後ろをダリアも付いてくる。
所長室は一階の入口から真正面の奥にあり、ドアノブの意匠にさえも最先端な雰囲気がある。
部屋の中は、応接室を兼ねていてとても広く、建物の外観同様に白い大理石のような床と、白い机と白い革張りの椅子の他に、応接セットがある。ソゴゥ達が勧められたソファーは、ボルドー色の革張りで、目の前のテーブルはくもりのない鏡のような銀色のテーブルだ。
「さて、相談というのは、移民の方に選んでもらう衣装の事についてで間違いないかしら?」
「はい、今日は我々十三領で検討したデザイン画の複写を持って参りましたので、ご意見を賜りたいと存じます」
ソゴゥはテキパキと、デザイン画をマグノリアの前のテーブルに並べる
「直ぐにご意見をいただくのが難しいようでしたら、こちらの資料はお預けいたしますので、後日にでも何かアドバイスいただけたら幸いです」
「このプロジェクトはイグドラム国民の全てが協力しなくてはならないものよ、私も力を惜しむつもりはないわ」
「そう言っていただけると助かります」
「こちらは、事務員の協力も仰いで、一週間で結果をお伝えするわ。それでどうかしら?」
「ありがとうございます。それで問題ありません。よろしくお願いいたします」
ソゴゥがこれで用事が終わったとばかりに、資料を収めていたカバンを閉じて肩に掛けようとしていると、マグノリアが気配を消しているイセトゥアンに「ところで」と声を掛けた。
イセトゥアンは傍目にも分かるほど、ビクッとして、それから渋々顔を上げた。
「モデルの件は引き受けてくれるのかしら?」
「え、ああ、その」
「当然、今回のこととは別よ。交換条件と言うわけではないわ、イセトゥアン、貴方には個人的な貸しがあったでしょう?」
「詳しく」と、ソゴゥは肩に掛けていたカバンを下す。
「あら、弟さんは知らなかったのね? イセトゥアンはねえ、私の事をナンパして来たのよ」
「え、マジで?」
「ええ、隊服のデザインの件で訪れていた王宮でね、ちょっとした慰労会の様なものがあって、そこに参加していた王宮騎士たちが、皆順番に私に片膝をついてお付き合いして欲しいと告白して来たのよ、そこにイセトゥアンも加わっていて、私はイセトゥアンにオーケーしたのよ」
「マジか」
「ノリでやりました」
「クソか」
「それで、二人で王宮の庭でいい雰囲気になって」
「マジかぁ」
「男だと分かった途端」
「途端・・・・・・」
「リバース」
「クソだな、家族裁判にかけて処すので、どうか気持ちをお納めくださいマグノリア様」
「家族裁判って、どんな感じなのかしら?」
「裁判で罪状が決定されますが、おそらく今回は四男あたりが『真っ裸で逆さ吊り』を提案してくると予想されます」
「あら、それもいいわね」
「ちなみに、次男と三男は、さらに油を塗ってパン粉を塗して『カラッと揚げようや』と言い、父が『そのまま狼の群れの中に投げ入れや』って言うと思います」
「俺の想像と全く一緒だ。ソゴゥ頼む、このことは他の兄弟には内緒にしてくれ」
「ふふ、もう気は収まっているけれど、貴方あの時、何でも言う事を一つ聞くって言ったわよね? だから、ずっとモデルをお願いしているのに」
「イセ兄、モデルやろ? ヨルも一緒にやるから」
「え?」とヨルが、こちらを向くが目を合わせないでおく。
「マグノリアさん、ヨルも使ってやってください」
「まあ! 実はね、最初に会った時からもう胸が高鳴って仕方なかったの! なんなら、ヨルさんだけでもいいくらいよ」
やーい、フラれてやんの! 
本気でショックを受けているイセトゥアンに、揶揄うのは心の中に留めておいた。

「ところでマグノリアさん、モデルってショーにでも出るんですか?」
この世界に写真の技術はまだなく、ファッション誌や広告などがないので、モデルという言葉が何を指すのかソゴゥには分からなかった。
「ショーって、サロンのパーティーのことかしら?」
「パーティーって、どういう事をするんですか?」
「モデルにはうちの事務所で作った服を着て参加してもらって、貴族や富裕層からオーダーを取り付けてもらったり、服の宣伝をしてもらうのよ」
「それって、効率的ですか?」
「え? 今までずっと宣伝はこの方法よ。各事務所が主体でパーティーを開いて、貴族を招くこともあるけれど、だいたいは貴族主催のパーティーに便乗させてもらうのが普通ね。パーティーに集う貴族から一般のエルフに情報が普及していき、それが街を巻き込んだ流行になっていくのよ」
「なるほど、ちなみにファッションショーは行わないのですか?」
「ファッションショー?」
「モデルが衣装を身に着けて、ランウェイを歩いて服を見せるショーです。服のコンセプトに合わせて音楽や照明を変えたり、モデルも歩き方や表情を変え、服を観客に見てもらうための総合的に演出されたショーです」
「さあ、私はこの業界が長いけれど、見たことがないわね」
ソゴゥは顎に手を当て、暫く虚空を見ていたが、立ち上がって部屋の端に立ってヨルを手招きした。
実際に見てもらった方が早いと、やって見せることにした。
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