異世界転生者の図書館暮らし3 モフモフのレシピ 神鳥の羽と龍の鱗の悪魔仕立て

パナマ

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2 最新ファッション探訪

2-6. 最新ファッション探訪

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「では、マグノリアさん、実際にお見せしましょう。イセ兄と、ダリアさんも手伝ってください」
「おう」
「私に出来る事なら」
「マグノリアさん、ちょっと家具の位置を変えさせていただきますね」

ソゴゥは言い、銀色のテーブルをマグノリアの執務机の後の壁に立てかけ、ボルドー色のソファーを壁側と、マグノリアの執務机側に離して向かい合わせに置き、中央に人が二人重なって通れるほどのスペースを作った。
マグノリアとダリアはぽかんとして、家具がもともとそこにあったかと言うように瞬間移動したのを、呆然と眺めた。
「とりあえず、ヨル以外の皆さんは、そのソファーに二手に分かれて座って下さい。これからヨルが、その端から、皆さんの前まで歩いて来ますので、その歩き方をよく見て、イセ兄とダリアさんは、後で同じように歩いてください」
ソゴゥはヨルに、前世のファッションショーの映像を送り、ランウェイを歩くモデルを真似して、部屋の端から皆の前まで歩いて止まり、また壁まで戻るように指示した。
「ただ、歩いてくるだけだろ? 見なくてもできるが」
「ヨルの歩き方を見てから言って」とソゴゥは、イセトゥアンの隣に座った。
『じゃあ、はじめて』と、ソゴゥはヨルに意思を伝える。
ヨルが皆の前に歩いて来て止まり、その場で左側に視線を送り、右を一瞥したあと出した足を引いてそれを軸に方向転換をして壁側に戻って行く。
「できる?」
「お、おお、なんか、歩いているだけだが、人目を惹くな」
「スタイルの良さだけでなく、姿勢、歩幅、速度、そして表情。すべてで、ストーリーを作っているのね」
「話が早い。まさにその通りです、もう二三往復してもらうので、二人はイメージを頭に叩き込んで、細かな修正は、実際に歩いてもらいながらやるから」
「お前ってさあ、その発想どこからくるわけ?」
「俺の発案じゃないよ、イセ兄も知っているけど忘れているだけだ」
「いや、俺は見たことないけど、あったかな」
ヨルの見本を元に、イセトゥアンとダリアにソゴゥは指導を重ねる。
視線は誰かを見るんじゃなくて、遠くに。
顔は喜怒哀楽を乗せなくていい、見ている側が想像できるように、無表情で構わない。
反転するときに、体がブレたら台無しだ。
止まるときはピタッと止まれ。
顔を上げて、顎を引いて遠くを見て、背筋を伸ばせ。
おい、お前らやる気あるのか? そんなんでショーに出られると思うなよ?
最終的に、イセトゥアンには覚えがある鬼コーチのソゴゥの怒声が飛び「いいだろう」とソゴゥが頷いた時には、達成感の様なものまでこみ上げていた。
「マグノリアさん、何か衣装を二人に貸していただけますか?」
「ええ、あるわよ沢山! どれを着てもらおうかしら?」
「今日はもう時間も遅いので、一着でお願いします」
「ヨルと、お前は着替えて歩かないのか?」
「俺とヨルは舞台装置だから」
「え?」
「いいから、着替えてこい」
ソゴゥは衣装を着た二人を壁側に立たせ、マグノリアを観客としてソファーに座らせた。
ヨルは二人のいる壁の脇に、ソゴゥは二人とは逆側の壁に立った。
「では、いよいよファッションショーを始めますね、マグノリアさんこの部屋の照明を落としてもらえますか?」
ソゴゥは前もって、光魔法で明かりを配置しておいた上で、マグノリアに部屋の照明を落としてもらった。
「一度部屋を真っ暗にするから、その後、光が差したら、二人は練習の通りイセ兄から歩いてきて、二三往復してね。あと、何があっても驚かないように」
「え、ああ、わかった」
「分かりましたコーチ」と、ダリアはすっかりソゴゥの教え子だ。
ソゴゥが光り魔法を解除し、明かりが全て消えて真っ暗になる。
その後、スポットライトの様に壁に立つイセトゥアンに照明が当たり、イセトゥアンが歩くと同時に、聞いたこともない腹の底に響くような重低音と軽快な音楽が空間を包み、光は歩くイセトゥアンを捉えたまま、移動してくる。
イセトゥアンが、中央でポーズを決め、反転するとダリアがこちらに向かって歩き始める。
その足取りは、音楽が無かった時よりずっと生き生きとして、無表情が神秘的なのに蠱惑的だ。そして細く青白い光が何本も矢のように降り注いでは、音楽に合わせ、天上と床を貫いて広がったり閉じたりしている。
あっという間にショーが終わり、音楽が止んで辺りが明るくなる。
ソゴゥが、照明を付けたのだが、そうしないと、いつまでもマグノリアが放心していて、部屋が暗いままだった。
「どうでしたか、ファッションショーは?」
ソゴゥのドヤ顔の横で、我の主を褒め称えよと言わんばかりのヨルがいる。
「そうね、ちょっと、そうね、どうしましょう」
まとまらない言葉を呟きながら、まだ興奮状態から醒めやらないマグノリアに、ダリアはとにかく胸が熱くなったと、恋する少女のように目を輝かせている。
「こういう売り方も考えてみてください」
「え、でもこれは貴方の商品となるものだわ」
「いえ、僕は公務員ですので、服飾系の起業は考えていません、ああ、四番目の兄は狼の毛織物産業を始めようとしているようなので、その時は力を貸してあげてくれたら嬉しいです。それと、イセ兄とヨルはお約束の通り、ちゃんとモデルを務めますので、時間と場所が決まったら、僕にお知らせください。首根っこ引っ捕まえて連れていきます」
ソゴゥはイセトゥアンをちらりと見て言った。
「ああ、ソゴゥ様、貴方は本当にすごいわ、普通のエルフとは全く違うのね。イグドラシルの最高レベルの司書と聞いていてもピンとは来なかったけれど、こうして目の当たりすると、その実力が奇跡のようだとわかるわ」
「そうだ、もっと褒めるがよい」
ヨルが誰よりも嬉しそうで、ソゴゥとイセトゥアンは顔を見合わせて笑った。
ソゴゥは帰り際に、衣装のデザインチェックのお願いを念押しして、家具の位置を戻してから夜遅くにようやくマグノリアのデザイン事務所を後にした。
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