異世界転生者の図書館暮らし3 モフモフのレシピ 神鳥の羽と龍の鱗の悪魔仕立て

パナマ

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4 昼と黄昏の兄弟

4-4. 昼と黄昏の兄弟

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何でわざわざ、そんな厳重な箱の中に保管しているのだろう。
ソゴゥの疑問を汲み取ったようにマグノリアが、少し困った様子で答える。
「そのまま置いておけない物だったのよ」
「イセトゥアンは、一体何を持って来たんですか?」
「開けるわね」
箱の中には、綺麗な真珠色の大きな貝殻のような物が入っていた。
「これを、ボタンなんかの装飾に使えないかと渡されたのよ」
「確かに綺麗ですね、これ一体何だろう?」
「あと、狼の毛を大量に渡されたわ。そっちはニットに出来そうだったから、工場に連絡して加工方法を検討しているところよ」
「ありがとうございます。家長のヨドゥバシーが喜びます」
ソゴゥが、正体の分からない箱の中の物を矯めつ眇めつしているところへ、遅れてイセトゥアンがやって来たので、正体を尋ねる。
「龍の鱗だ」
「引っこ抜いてきたの?」
「まさか。ヨドが、土地神様の様子をたまに見に行っているらしいんだが、最近滝付近にやたら落ちているらしくて、拾い集めておいたんだそうだ」
「土地神様は病気なのか? 何で鱗が抜け落ちているんだよ」
「ヨドが母さんに聞いたところ、あの龍は、龍に成りたてだから、何度か脱皮の様に変態していく過程にあって、抜け鱗は問題ないって言いていたそうだ」
「それならよかった」
「ちょっと、ってことは、これは龍の鱗なのね?」
「そうです」とイセトゥアンが答える。
「あのね、龍の鱗なんて素手で触れないのよ?」
「そんなはずはないですよ、物質としてちゃんと存在しているじゃないですか」
イセトゥアンが箱から龍の鱗を摘まみ上げて、ソゴゥに渡す。
「なあ」
「ボタンには丁度いい厚さに思えますね」
ソゴゥが、鱗を光に透かして見たりしている。
マグノリアが、長い溜息を吐く。
「ダリア、ちょっとその鱗を触ってみてくれるかしら」
ソゴゥは鱗を箱に戻し、ダリアがそれを摘まみ上げようとして触れた瞬間、小さな悲鳴を上げて飛びあがった。
「痛い!」
「そうなのよ、痛いのよ」
「ボス、先に言っておいてください。静電気みたいなのが、指先から肘に抜けていきましたよ!」
「ボタンを掛けるたびに、この痛みに耐えるのは流石に、相当なマニアでないと需要がないと思うのよ」
「静電気の痛さは確かにきついですね、あとそんなマニアはおそらく領民にはいませんね。って言うか、何で触る人によって痛かったりするんですかね?」
「不思議だな」
首を傾げる兄弟。
これだから、ノディマー家はと思いつつも、マグノリアは箱をソゴゥ達の方へ寄せる。
「というわけで、こちらはお返しするわ」
「ああ、はい、じゃあ僕が預かります」
ソゴゥは言い、無造作に鱗を掴むとカバンに入れた。
「そうだわ、イセトゥアン、それにヨルさん、あなた達には、明日のロブスタス王子が開催するガルトマーン国の王族来訪の歓迎パーティーに、うちの商品を着て出てもらいますから、そのつもりでね」
「イセ兄は、ガルトマーンの王子の案内役は大丈夫なの?」
「ああ、パーティーの間は別の者が護衛に付くから、隊服でなくても問題ないだろう。俺は、ヨドの代わりに十三貴族として参加することにした。基本、十三貴族は関係者が出席しなくてはならないと通達されていたらしい。まあ、本当なら、来年には爵位も上がるし、こんな時にこそヨドも、顔を売っておいた方がいいと思うが、あいつ今はそれどころじゃないからな」
「そだね、顔だけなら、イセ兄もヨドも同じ顔だけどね、背も一緒だし。フェロモン量ぐらいじゃないの? 差異は。 一度聞きたかったんだけれど、モテるってどんな感じ? 俺たち兄弟の差ってなんだろう」
「あら、ソゴゥ様、そんなことを気にされていたの?」
マグノリアが興味津々に身を乗り出す。
「私は分かるわ、ソゴゥ様とイセトゥアンの差はね、人を不安にさせるかどうかなのよ」
「え?」
「俺どっち?」
「イセトゥアンは、人を不安にさせるのよ。時間帯で言えば、黄昏時ね。イセトゥアンを見ると、ちょうど黄昏時のように、暗くなる空に不安で心が揺さぶられるように感じるのよ。それでいて、夜の気配に、何か得体の知れない妖しい期待を抱いたりもするの。存在が持つ性分だから、本人が相手にどう見られようと工夫をしても、その雰囲気は漂い出てきてしまうのね」
「要約すると、エロいってことだな」
腕を組んで、ソゴゥが独り言ちる。
イセトゥアンは、両手を上げて左右に首を振っている。
「対する、ソゴゥ様は、真昼間ね。圧倒的な光で、見る者の心の底まで透かしてしまって、邪な感情さえも浄化してしまうから、恋愛感情を持たれにくいのね。だから、人柄を知って惹かれた相手でないと、ソゴゥ様の相手になり得ないわ。でも、だからこそ、ソゴゥ様の結婚は成功するわ。ソゴゥ様の事を良く知り、人柄で惹かれあった者同士で結ばれるのだから」
「マグノリア姐さん! 何か、希望が見えてきました!」
「え、俺は? 俺の結婚は?」
「ごめんなさいイセトゥアン、私には見えないわ、その将来が」
「ちょっ、え? マジで?」
「モテるばかりが、いい事とは限らないってことだね、うんうん。ところで、ヨルは?」
「圧倒的ね、見る者を暴力的なまでに魅了してしまっているわ」
「暴力は良くないね、ヨル。気を付けなさい」
「ソゴゥ、この体は世界樹で出来ておるため、エルフの好感を集めるのは仕方がないのだ」
「そういう問題?」とソゴゥが首を傾げる。
マグノリアはおかしそうに笑った。
その後、イセトゥアンとヨルの衣装合わせを行い、ソゴゥとヨルは、イグドラシルへと帰宅した。

イグドラシルの部屋に戻って、カバンを机の横に掛けると、樹精獣達が集まってきた。
昼間の様に、何やら猛烈な機嫌の良さで踊りながらの登場に、ソゴゥの表情筋は緩みっぱなしだ。
動画サイトで拡散したら、再生回数が憶は行く。間違いない。
ジェームスがソゴゥの足をポンポンと叩き、カバンを指さす。
ソゴゥがカバンをジェームスに渡すと、樹精獣たちがカバンの中に前脚を突っ込んで、ゴソゴソと何かを探している。
スミスが、無造作に入れていた龍の鱗を取り出し、皆がその周りに集まって、大興奮している。
「それが欲しかったようであるな」
「龍の鱗だよそれ、欲しいの?」
樹精獣たちは頷き、下さいと言っている。
「いいけれど、何に使うの? コレクション?」
ジェームスは机の上に置かれっぱなしになっていた、ヨルの召喚魔導書を指さす。
「これに関係があるの?」
ジェームスは頷き、召喚魔導書を持って部屋を出て行ってしまった。
樹精獣たちの部屋はイグドラシルの何処かにあるようだが、ソゴゥにもその場所はわかっていない。樹精獣たちにイグドラシルの壁は意味がなく、どんなところからも現れたり、隠れたりできるが、人がいる場所にはちゃんとドアを使って出入りしてくる。そして夜になると、彼らの部屋に帰っていくのだった。
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