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6 旧サジタリアス城の戦い
6-6. 旧サジタリアス城の戦い
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イセトゥアンは、使用人に勝手に動かれないよう、催眠魔法で眠らせて、入口付近へと遠のけると、カルラ王子の元まで戻ってきた。
『その緑の翼、ガルーダ族の王家に稀に現れる、変容する翼を持つ個体が釣れるとは。イグドラシルの司書と同じく、エルフや有翼人を狩るのに邪魔な存在の、ガルーダ族の王族を減らせる好機のようだわ』
「他次元より干渉するためのその体を介して、向こう側からこちらに引きずり出して、我が民の死の分、焼き殺してやろう」
カルラ王子が、イセトゥアンに下がるように言い、イセトゥアンが、後方に控えるブロンとヴィントの元まで下がると、カルラ王子の翼から炎が吹き上がり、緑色の翼が赤色へと変化し、周囲の気温を一気に上昇させた。
髪の長さや容姿が変化し、今までとは全く別物の膨大な魔力量と、好戦的に笑うその姿に、ブロンとヴィントが驚愕し声を上げる。
「ガルダ王!」
「ガルダ王!?」
圧倒的な生命力、ただ存在するだけで他者を平伏させる暴力的な威圧感があり、翼は炎とはまた別に光を放っている。
「ガルダ王なのか?」
息を吸う事も苦しい状況で、イセトゥアンが二人に問う。
「間違いありません、あの方はガルダ王その人です」
今更になって、カルラ王子に合わせた時のソゴゥとヨルの様子がおかしかった事に合点がいった。あの二人は、王子の正体に気付いていたのだ。
ガルダ王の周囲の床が赤く溶解し、更に温度を上げ続けているのを見て、三人は謁見の間の入口付近まで後退し、眠る使用人と自分たちの周囲を幾重にも防御魔法で囲んだ。
最初っから手加減のない、ガルダ王の光のような一撃で、鏡面体の胴体部分に丸い穴が穿たれた。鏡面体の躰の至る所に裂け目が出来、人間の歯のようなものが剝き出しとなって、それぞれが奇声を発する。
生物を即死させる呪いの叫びだ。
ガルダ王は何の痛痒も覚えない様子で、鏡面体の体に腕を突っ込んで何かを探っている。
『ガルダ・・・・・・』
イセトゥアン達は、ヴィントがガルダ王の鶏鳴に備えて音を遮断していたために、呪いの難を逃れていた。
鶏鳴は有翼人が使う、声によって敵に衝撃を与える技だ。
鏡面体の女の顔が歪み、何か呪文を呟いたが、その舌構造をガルダ王が引き抜いて阻止した。だが、王座の前の床が、溶けて濁流のように黒い渦を巻き、その渦は、生き物のように玉座の方へと移動してくる。
ガルダ王が飛びあがり、穴を見下ろす。
舌を復活させた女が、呪詛を喚きたてる。
ブロンは弓を引き絞り、雷の矢を放った。
ヴィントの魔法で威力が増して、床面の渦中央へ空気を切り裂くような音を立てたのちに、落雷の轟音が響き渡る。
渦は、電気を消化するようにゆっくりと回転し、その中の無数の牙が、回転しながらガルダ王を追うように上空へとせり上がって来る。
「魔界の嵐か」
数万の尖った牙は回転して万物を切り裂き、魔力を吸収する天災。
床面の一体だけでなく、ガルダ王のいる両壁面にも、渦が発生し、同様の邪気が集中してきている。
「他所の国の遺跡を壊したくはなかったのだがな、許せ」
ガルダ王は、片側の金の腕輪を外して無造作に放ると、更に魔力量が増して、腕に付いた水滴を飛ばすような軽い仕草で振っただけで、せり上がって来た牙の生えた黒い渦の化け物を燃やし尽くしてしまった。
同じように、両側の壁にも手を払う仕草を見せただけで壁が爆破し、渦は地獄の底から響くような断末魔を上げて消えていった。
「圧倒的過ぎる!」
ブロンとヴィントは、畏れながらも目をキラキラさせて、ガルダ王の圧倒的な強さに歓声を上げる。
周囲に充満した邪気から発生した、小さな虫のような魔物を、イセトゥアンがニライカナイの王族から賜った、人魚の剣でひと薙ぎする。
邪気が剣戟に触れただけで、泡となって消えていく業物だが、膨大な魔力量と相性が必要となる。
三男のミトゥコッシーが海賊を捉えた時に助けた人魚のお礼として、ミトゥコッシーが槍を、そして同席したイセトゥアンが人魚に見初められ、剣を賜ったのだ。
ただの付き添いで、何の功績もない長男が剣を貰った事にブチギレたミトゥコッシーに「人魚と何か事を構えないといけないような有事の時は、お前を人魚族に引き渡して交渉するから、そのつもりでおれや」と、前髪を掴まれて言われた時は、正直漏らすかと思った。
『あははははは、愚かなガルーダ族! 戦闘欲から抜け出せない有翼人の性などは、私の見通し通り! 端から、貴方を相手取る気などないのよ、ガルダ。レベル7とは言え、イグドラシルの司書はまだ若いわ、子供と言ってもいいくらい。本当は、私が食べたかったのよ、無尽蔵ともいわれる魔力量を誇る個体ですもの。でも、甘いその命を、刈り取る役目を、貴方に譲って差し上げましょう』
ガルダは、もう意識の外にある鏡面体の女を一瞬で灰にして、イセトゥアン達が呼びかけ間もなく、城の最上部へと上昇し、天上を突き破って出て行った。
城の王族の居住スペースだったと思われる場所に、いくつかの部屋に別れて、エルフの子供たちは何の恐怖もない様子で健やかに眠っていた。
自分たちの置かれている状況を理解していないのかもしれない。
「このままそっと、外に抱えて連れ出した方がいいかもしれませんね」
「とりあえず、全員をこの部屋に集めてもらえるかな?」
ソゴゥはヨルを含め、二人の警察官に言って、八人を部屋に集めた。
幼い子で十歳くらいから、上は十五六歳の子供たちだ。
「これで、全員ですか?」
「はい、我々が調査していた行方不明の子供たちと人数が一致します」
「じゃあ、ここからお暇しよう」
ソゴゥが言うなり、全員が城の外に瞬間移動で脱していた。
二人の警察官が、状況が分からずに、周囲を見渡して驚いている。
「あれ、ここは、城の入り口ですね」
一番幼い子供が、目を擦りながら、抱えていた縫いぐるみをギュっと抱きなおして、周囲を見回した。
「ありゃ、一人起きちゃいましたね」
子供が何かを探すように周囲を見回し、ソゴゥと目があった後、縫いぐるみを遠くへ放り投げた。
その途端、縫いぐるみが炸裂し、あたりは白い閃光に包まれた。
光りが引くと、ヨルが翼を広げてソゴゥ達を何かから守るように立っていた。
その体や翼には、銀色の長細いトゲのようなものが、いくつも突き刺さっていた。
ヨルはソゴゥを振り返ると叫んだ。
「逃げろ! ソゴゥ!」
ヨルの体が、灰になって消えてゆく。
「世界樹伐りの斧だ!」
「ヨル!!」
ヨルに触れようと、ソゴゥがヨルの方へ踏み出した途端、脇腹がヒヤリとした。
見ると、銀色のトゲが刺さっていた。
『その緑の翼、ガルーダ族の王家に稀に現れる、変容する翼を持つ個体が釣れるとは。イグドラシルの司書と同じく、エルフや有翼人を狩るのに邪魔な存在の、ガルーダ族の王族を減らせる好機のようだわ』
「他次元より干渉するためのその体を介して、向こう側からこちらに引きずり出して、我が民の死の分、焼き殺してやろう」
カルラ王子が、イセトゥアンに下がるように言い、イセトゥアンが、後方に控えるブロンとヴィントの元まで下がると、カルラ王子の翼から炎が吹き上がり、緑色の翼が赤色へと変化し、周囲の気温を一気に上昇させた。
髪の長さや容姿が変化し、今までとは全く別物の膨大な魔力量と、好戦的に笑うその姿に、ブロンとヴィントが驚愕し声を上げる。
「ガルダ王!」
「ガルダ王!?」
圧倒的な生命力、ただ存在するだけで他者を平伏させる暴力的な威圧感があり、翼は炎とはまた別に光を放っている。
「ガルダ王なのか?」
息を吸う事も苦しい状況で、イセトゥアンが二人に問う。
「間違いありません、あの方はガルダ王その人です」
今更になって、カルラ王子に合わせた時のソゴゥとヨルの様子がおかしかった事に合点がいった。あの二人は、王子の正体に気付いていたのだ。
ガルダ王の周囲の床が赤く溶解し、更に温度を上げ続けているのを見て、三人は謁見の間の入口付近まで後退し、眠る使用人と自分たちの周囲を幾重にも防御魔法で囲んだ。
最初っから手加減のない、ガルダ王の光のような一撃で、鏡面体の胴体部分に丸い穴が穿たれた。鏡面体の躰の至る所に裂け目が出来、人間の歯のようなものが剝き出しとなって、それぞれが奇声を発する。
生物を即死させる呪いの叫びだ。
ガルダ王は何の痛痒も覚えない様子で、鏡面体の体に腕を突っ込んで何かを探っている。
『ガルダ・・・・・・』
イセトゥアン達は、ヴィントがガルダ王の鶏鳴に備えて音を遮断していたために、呪いの難を逃れていた。
鶏鳴は有翼人が使う、声によって敵に衝撃を与える技だ。
鏡面体の女の顔が歪み、何か呪文を呟いたが、その舌構造をガルダ王が引き抜いて阻止した。だが、王座の前の床が、溶けて濁流のように黒い渦を巻き、その渦は、生き物のように玉座の方へと移動してくる。
ガルダ王が飛びあがり、穴を見下ろす。
舌を復活させた女が、呪詛を喚きたてる。
ブロンは弓を引き絞り、雷の矢を放った。
ヴィントの魔法で威力が増して、床面の渦中央へ空気を切り裂くような音を立てたのちに、落雷の轟音が響き渡る。
渦は、電気を消化するようにゆっくりと回転し、その中の無数の牙が、回転しながらガルダ王を追うように上空へとせり上がって来る。
「魔界の嵐か」
数万の尖った牙は回転して万物を切り裂き、魔力を吸収する天災。
床面の一体だけでなく、ガルダ王のいる両壁面にも、渦が発生し、同様の邪気が集中してきている。
「他所の国の遺跡を壊したくはなかったのだがな、許せ」
ガルダ王は、片側の金の腕輪を外して無造作に放ると、更に魔力量が増して、腕に付いた水滴を飛ばすような軽い仕草で振っただけで、せり上がって来た牙の生えた黒い渦の化け物を燃やし尽くしてしまった。
同じように、両側の壁にも手を払う仕草を見せただけで壁が爆破し、渦は地獄の底から響くような断末魔を上げて消えていった。
「圧倒的過ぎる!」
ブロンとヴィントは、畏れながらも目をキラキラさせて、ガルダ王の圧倒的な強さに歓声を上げる。
周囲に充満した邪気から発生した、小さな虫のような魔物を、イセトゥアンがニライカナイの王族から賜った、人魚の剣でひと薙ぎする。
邪気が剣戟に触れただけで、泡となって消えていく業物だが、膨大な魔力量と相性が必要となる。
三男のミトゥコッシーが海賊を捉えた時に助けた人魚のお礼として、ミトゥコッシーが槍を、そして同席したイセトゥアンが人魚に見初められ、剣を賜ったのだ。
ただの付き添いで、何の功績もない長男が剣を貰った事にブチギレたミトゥコッシーに「人魚と何か事を構えないといけないような有事の時は、お前を人魚族に引き渡して交渉するから、そのつもりでおれや」と、前髪を掴まれて言われた時は、正直漏らすかと思った。
『あははははは、愚かなガルーダ族! 戦闘欲から抜け出せない有翼人の性などは、私の見通し通り! 端から、貴方を相手取る気などないのよ、ガルダ。レベル7とは言え、イグドラシルの司書はまだ若いわ、子供と言ってもいいくらい。本当は、私が食べたかったのよ、無尽蔵ともいわれる魔力量を誇る個体ですもの。でも、甘いその命を、刈り取る役目を、貴方に譲って差し上げましょう』
ガルダは、もう意識の外にある鏡面体の女を一瞬で灰にして、イセトゥアン達が呼びかけ間もなく、城の最上部へと上昇し、天上を突き破って出て行った。
城の王族の居住スペースだったと思われる場所に、いくつかの部屋に別れて、エルフの子供たちは何の恐怖もない様子で健やかに眠っていた。
自分たちの置かれている状況を理解していないのかもしれない。
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幼い子で十歳くらいから、上は十五六歳の子供たちだ。
「これで、全員ですか?」
「はい、我々が調査していた行方不明の子供たちと人数が一致します」
「じゃあ、ここからお暇しよう」
ソゴゥが言うなり、全員が城の外に瞬間移動で脱していた。
二人の警察官が、状況が分からずに、周囲を見渡して驚いている。
「あれ、ここは、城の入り口ですね」
一番幼い子供が、目を擦りながら、抱えていた縫いぐるみをギュっと抱きなおして、周囲を見回した。
「ありゃ、一人起きちゃいましたね」
子供が何かを探すように周囲を見回し、ソゴゥと目があった後、縫いぐるみを遠くへ放り投げた。
その途端、縫いぐるみが炸裂し、あたりは白い閃光に包まれた。
光りが引くと、ヨルが翼を広げてソゴゥ達を何かから守るように立っていた。
その体や翼には、銀色の長細いトゲのようなものが、いくつも突き刺さっていた。
ヨルはソゴゥを振り返ると叫んだ。
「逃げろ! ソゴゥ!」
ヨルの体が、灰になって消えてゆく。
「世界樹伐りの斧だ!」
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