異世界転生者の図書館暮らし3 モフモフのレシピ 神鳥の羽と龍の鱗の悪魔仕立て

パナマ

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6 旧サジタリアス城の戦い

6-5. 旧サジタリアス城の戦い

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ソゴゥは、夜中ドナー男爵の屋敷の屋根に移動してイヲンの街を見下ろしていた。
「もしかしたら、今日も吸血鬼が出るかもしれない。ちょっと見張ってみようと思う」
「我も行く」
ヨルには、屋敷の方を見張って欲しかったが、屋敷には騎士が三人もいるから大丈夫かと思い、ヨルを伴って、街へ行くことにした。
一番高い建物の上から、家々を確認する。
夜も晩く、家の灯は消え、街灯の街路樹も光に力を失っている。
やがて、街路樹の光もほとんど消え、もう朝まで二時間ほどのこの時間で出没しないのなら、今日は出ないだろうと見切りを付けて丘の上の屋敷へと戻った。
飛んで現れたという証言から、空ばかりを見ていたが、蝙蝠コウモリ一匹飛んでいなかった。
やがて、屋敷の付近まで飛行して戻って来ると、屋敷から馬が裏の方へと走って行くのが見えた。その馬を低空飛行で追うのは、カルラ王子だ。そして暫くすると、そのカルラ王子を追うようにして更に馬車が二台屋敷から出てくる。

「どうなっているんだ?」
「何か動きがあったようだ」
ソゴゥ達が馬車の後を追う。
先頭の馬に乗っているのは、ドナー男爵の屋敷の使用人の様だ。
金色の長い髪が、闇の中でも輝いている。
やがて、巨大な城というより要塞や宇宙基地のような建物が見えてきた。
かつてエルフと魔族が土地を争っていた時代の、前線の城だった。
城正面の広場は凹凸が放射状に伸び、雷属性の魔法を得意とするサジタリアス家が、効率よく敵を討つために作った装置の跡がある。
馬は、この正面から城の中へと進んでいく。
カルラ王子がその後を追い、二台の馬車は、正面入口の辺りで止まって、片側にイセトゥアン、もう片方からはブロンとヴィントが出てきた。
ソゴゥは後方の森にある気配を感じた。
馬車が正面入口に停められるやいなや、こちらへと向かってくるのは、警察官の紺色の服を着た二人のエルフだった。
三人の王宮騎士と二人の警察官が合流し、何かを話し合っているところで、ソゴゥは五人の元に飛来し状況を確認する。

「こちらは、ニトゥリーの部下のストークスさんとセージさんだ。旧サジタリアス城の奥に、誘拐された子供たちを確認して、救出作戦のため本部に人員の派遣を要請していた矢先だったところ、俺たちが邪魔してしまったようだ」
「いいえ、王宮騎士でも名高いお三方がおられれば、このまま踏み込んでも良いかと思われます」
「なら、直ぐにカルラ王子を追いましょう」
ヴィントが言い、イセトゥアンが二人に指示を出す。
「我々も行きます」
走っていく、五人を追い、ソゴゥは警察官の一人に尋ねる。
「所轄は応援に来ないのですか?」
「彼らは、このイヲンに居過ぎて戦闘に加えるのはかえって危険な状態です」
「そこまででしたか」
「あの、もしかして、第一司書殿ではないですか?」
「ええ、今は先頭を飛んで行ってしまったガルトマーン王国の王子の案内役なのですが」
「ガルトマーン王国!? それは、心配ですが、心強くもありますね」
「いや、王子に怪我をさせたら、国際問題なのでは?」ともう一人の警察官が言う。
怪我は心配ないと、ソゴゥは口に出さずに思う。
それよりも、彼を怒らせた者がどんな目に合うか、それが気掛かりだ。
ソゴゥは前方を走るブロンに並んで、屋敷の事を問う。
「俺とヨルがいない間、何があったの?」
「妹夫婦とは別に、屋敷の使用人の一人が、魔力肥大の状態にあるとカルラ王子が伝えてこられて、彼女の部屋を調べました。原因と思われる魔法薬の瓶を見つけたので、彼女を見張っていたところ、屋敷を抜け出したので後を付けてきたのです」
「カルラ王子が懸念されていた、違法な美容薬として使用されているだろう薬が、使用人の部屋から出てきたのか」
「薬には暗示作用があるようで、飲ませた者に、嘘の記憶を与えることが出来るようです。使用人が、ブロンテの入眠用のお茶に混ぜて出し『子供たちは就学のため、王都にいかれます』と囁いている会話を、ヴィントが風魔法で収拾しました」
「その使用人も、暗示作用のある薬を飲まされて、誰かに暗示を掛けられているのかもね」
「この先に行けば、それが分かるかもしれません。妹夫婦に手を出し、子供を誘拐した奴を許してはおけません」
ソゴゥは頷き、暗く入り組んだ城内をひた走った。
警察官の一人が「子供たちがいる場所とは別の所へ、向かっているようです」と言った。
「イセ兄達は、カルラ王子を追って! 俺とヨルは警官の二人と誘拐された子供たちを助けに行ってくる。俺なら、一度に全員外に救出できる」
「ああ、分かった、そっちは任せる」
ソゴゥは城の外に瞬間移動で戻れるよう、マーキングしていた。
「子供は八人おります、一人が二人を担ぐことになりますが、第一司書殿はその」と言いよどむ警察官に、食い気味で「問題ない」とヨルが答える。

イセトゥアン達は、魔力を温存している場合ではないと、飛行魔法によりカルラ王子を追い、何かに追い縋るように一心不乱に駆けていくドナー男爵家の使用人の直ぐ側まで迫っていた。彼女は、城の中心にある謁見の間へと駆け込んだ。
天上はこの建物の最上部まで吹き抜けており、両側の壁は黒い岩がそのまま積み重ねられて、渓谷の中に紛れ込んだような印象を受ける場所だ。
この空間の奥に、まるで魔王が鎮座するためのような、物々しく巨大な玉座がある。
使用人が駆け込んだ先、その玉座に座る者がある。
巨人族と思しき大きさの女性であったが、巨人族と違い生物の質感はなく、鏡面のような銀色の体の表面を波立たせ、長い髪は滝のように上から下へ落ち続けている。
生物なのかも分からないそれが、足を組み換え、微笑みを湛える。
ブロンは雷の弓を構え、ヴィントが空気をその物体と自分たちの間で、いくつもの層を作る。
こちらからの攻撃は威力を増し、向こうからの攻撃は威力を削ぐ効果がある。
イセトゥアンは身体強化を済ませて、剣を抜いて周囲の様子に気を配っていた。

「魔族か」
カルラ王子が、その巨大な鏡面体の女に言う。
『ガルーダ族、エルフ族、共に私の餌がやってきたわ、お手柄ね、褒美をとらせましょう』
鏡面体の女が、その手で空を掬って、まるで掬った水を零すように傾けると、その手から水が本当に零れ落ちた。
ドナー男爵家の使用人がそれを「ああ、これでまた、私は美しくなれるのですね」とその水を両手で受けようと近寄るのを、イセトゥアンが後ろから彼女の体に手を回して抱きかかえると、後方に飛んだ。
水が落ちた床が、煙を上げながら融けていく。

「もう、用済みという事ですか」
「それは、向こうに言わせてやれよ」
「いや、こんなベタな台詞を聞かされたくなくて、思わず先に言ってしまいました」
ヴィントとブロンが、緊張により額から流れる汗もそのままに、巨大な何かから目を離さずに言う。
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