異世界転生者の図書館暮らし3 モフモフのレシピ 神鳥の羽と龍の鱗の悪魔仕立て

パナマ

文字の大きさ
34 / 42
6 旧サジタリアス城の戦い

6-8. 旧サジタリアス城の戦い

しおりを挟む
イフェイオンが悲鳴に近い声を上げて、檻の上に脱いだ服を被せて、朝日を遮ろうとするも、既に、ルキの体は薄く発光し始めていた。
「最期に、お願いがあるのです、貴方の記憶で見たキスというものをしてみたいのです。私はその名の通りあらゆるものを拒絶してきました。それは私が拒絶されることを恐れていたから。私は、人と触れ合ってみたかった・・・・・・」
「アホ! せめて女の体に戻ってから言えや! それに、お前の願いを叶えたら、俺がイフェイオンに殺されてしまうわ!」
ルキは静かに笑い、目を閉じている。
「クソッ・・・・・・」
ニトゥリーはルキの頬をそっと両手で包み、唇を寄せようとして、止まった。
「ルキよ、お前は日の光を浴びたらどうなるんや?」
「日の光の下では、私の、陰の性質の強い魔力に体が耐えられず崩壊して、私はまた砂に戻るでしょう」と目を閉じたまま答える。
「そうか、で、いつ砂に戻るんや?」
「日の光を浴びたらです」
「どれくらい浴びたらや?」
「少しでも光が触れたらですが、それが?」
「さっきから、えらい浴びているようだが?」
「あれ?」
ルキは周囲を見回し、自分の薄く光る両手を見た。
「私の陰の性質が、陽に傾いていますね。どういう事でしょう?」
ニトゥリーは再びルキを抱えて、檻の外へと脱出を試みた。
ルキの体は先ほどと違い、すんなりと格子の隙間を通った。
ニトゥリーはルキを抱えて、地上に降り、イフェイオンが続いた。
地上では、ウィステリアとチャイブが白服の一団を拘束して、地面に転がしていた。
「いくら警察だからと言って、依頼された私たちの邪魔をするなど、越権行為だ!」
「君たち、この家主に許可を得たのかね?」
ウィステリアは、白服の一団を憎々しげに見て、調理器具を持って立ち向かおうとするエルフの一家を振り返って尋ねる。
エルフの夫婦が「その人たちは、私達を無理矢理拘束して入って来たのです!」と叫ぶ。
「なるほど、なるほど、であれば、君たちは住居不法侵入罪に、逮捕・監禁罪が適用されるが、どうなんだね?」
「許可は得た!」
「誰にだね?」
「領主だ」
「ふむ、この家の持ち主でないと、許可をとったことにはならんのだよ、全く」
やれやれと、ウィステリアは首を振る。
二人に引っ付いていた樹精獣達が、ルキに向かって行って飛びつく。
「樹精獣とセットだと、ますますソゴゥや」
危うく弟と同じ顔とキスとするところだったと、後ろのイフェイオンの威圧も加わり、ニトゥリーは汗をぬぐう。
樹精獣達は、口々にルキに何かを訴えている。
ルキは、姿を女性体に変え、真っ赤に燃える目で空を見上げた。
「ニトリンの弟が危ないニョロ! 直ぐに助けに行くノス!」
樹精獣達を抱えて、上空に飛び上がるルキを、ニトゥリーとイフェイオンが飛行魔法で追う。
チャイブとウィステリアは、三人と四頭を見送った。
「とりあえず、各所に報告が必要なようだね」
チャイブは頷き、この家のエルフ達に被害がないか確認を始めた。

王宮騎士の三人は、城外へ飛翔していったガルダ王を追って、城前広場で対峙する、ソゴゥとガルダ王を見つけた。
イセトゥアンは、その場にいた警察官から、子供が放った世界樹伐りの斧という武器により、彼らを庇ったヨルが消失し、その武器によって負った怪我によりソゴゥが異常をきたしている今の状況を知った。
ヴィントは担いできた使用人の女性を警察官に託し、馬車でこの場から離れるように言い、既に、ガルダ王とソゴゥの元に駆け出しているイセトゥアンとブロンを追った。
ガルダ王は片方の肩から、ジェットエンジンのアフターバーナーのような翼を生やし、左右の翼の出力差を慣らすように、上空を旋回しながらも、炎の雨を降らしている。
ソゴゥは炎を鬱陶し気にしながらも、まるで獣のように大地へ四つ這いになり、上空を睨み上げている。
よく見ると、ソゴゥの四肢には草の弦が絡みついていて、大地へ縫い留めている。
ソゴゥの特徴的な黄緑色の魔力を帯びた弦だ。
「自分で、自分の身体を押さえているのか」
「隊長、私が城の設備を使って雷魔法を放ちます。おそらく、ソゴゥ様の魔力の壁を少しは抜けて、本体を一時、行動不能にすることが出来るかもしれません。その間に拘束して、眠らせ、魔力を封印して、対策を講じましょう」
「分かった、俺たちは上空へ避難する」
「上空にも放電されますので、耐電魔法と防御魔法を!」
「わかった!」
ブロンは対魔族用の雷魔法を増幅して放出する城前広場の凹凸の起点となる場所に辿り着くと、装置の上に立って、同時に展開できる最大量、最大出力の雷魔法を発動した。
雷は装置へ吸収される。大地の溝に青白い光が奔り、雷魔法ではまず耳にすることのない種類のエネルギーの爆発する音が、炸裂した。
地面から上空へと向かう放電が稲妻の矢を放ち、あたりは朝日をもくらませる程の発光現象により、一体が青白い光の膜に閉じ込められた。
音に耐性のある有翼人のガルダは、稲妻を弾いて目を細め、地上を見下ろしていた。
イセトゥアンとヴィントは予想していた衝撃の対策をも超えて、眩む目と、爆音に耳を聾し、平衡感覚を失わずに飛び続けるのがやっとだった。
衝撃の真っただ中にいるソゴゥは、先ほどと変わらない様子で、空を見上げており、ブロンはその場に膝をついた。
魔力が枯渇して、立っていることが叶わなくなったのだ。
「あれだけの攻撃で、気を失う事もないのか」
イセトゥアンは、漸く戻ってきた視力と聴力で辺りの様子を確認する。
ガルダ王がこちらへと飛んで来た。
ガルダ王が指さす先で、ソゴゥの体は化け物の様に変容していく。
耳はエルフのそれに戻り、髪は白く長く、背中からはどす黒い魔力が幾重にも重なる翼の様に噴き出している。
四肢を押さえていた弦が引きちぎられ、黒い斧のような武器を手にしている。

「イグドラシルの司書が、世界樹伐りに憑依されたようだ。このまま、あれをイグドラシルの元へ行かすわけにもいくまい。ここで俺が殺しても文句を言うなよ?」
「言いますよ、殺しては駄目です。10日でも100日でも、あれを食い止めて、対策を講じるのです。我々はソゴゥを諦めない」
「アレを10日食い止めろと? 笑わせる。一時間でも難しい、お前らはあれがどれだけの脅威か分かっていないのか?」
「ガルダ王ともあろうお方が泣きごとですか?」とイセトゥアンが食い下がる。
ソゴゥが斧を、地面を削りながら上空へと振り上げる。
先程のブロンの雷撃で、帯電していた上空の放電現象が晴れて、陽の光が正常に降り注ぐ。
「一時間後に同じことが言えたら、考えてやろう、エルフの小僧!」
ガルダ王が滑空し、ソゴゥへと炎の剣を振り下ろす。ソゴゥが斧で受け、周囲の空間を切り裂くような攻防が重なる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

【第一部完結】転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!

DAI
ファンタジー
【第一部完結!】 99回のさよならを越えた、究極の『ただいま』 99回転生した最強エルフは、のんびり暮らしたいだけなのに――なぜか家族が増えていく。 99回も転生したエルフの魔法使いフィーネは、 もう世界を救うことにも、英雄になることにも飽きていた。 今世の望みはただひとつ。 ――森の奥の丸太小屋で、静かにのんびり暮らすこと。 しかしその願いは、 **前世が日本人の少女・リリィ(12歳)**を拾ったことで、あっさり崩れ去る。 女神の力を秘めた転生少女、 水竜の神・ハク、 精霊神アイリス、 訳ありの戦士たち、 さらには―― 猫だと思って連れ帰ったら王女だった少女まで加わり、 丸太小屋はいつの間にか“大所帯”に!? 一方その裏で、 魔神教は「女神の魂」と「特別な血」を狙い、 世界を揺るがす陰謀を進めていた。 のんびり暮らしたいだけなのに、 なぜか神々と魔王と魔神教に囲まれていくエルフ。 「……面倒くさい」 そう呟きながらも、 大切な家族を守るためなら―― 99回分の経験と最強の魔法で、容赦はしない。 これは、 最強だけど戦いたくないエルフと、 転生1回目の少女、 そして増え続ける“家族”が紡ぐ、 癒しと激闘の異世界スローライフファンタジー。 ◽️第二部はこちらから https://www.alphapolis.co.jp/novel/664600893/865028992

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...