異世界転生者の図書館暮らし3 モフモフのレシピ 神鳥の羽と龍の鱗の悪魔仕立て

パナマ

文字の大きさ
37 / 42
7 終章 秋冬コレクション

7-1. 終章 秋冬コレクション

しおりを挟む
セイヴの街中の至る所に花と、コンテストに向けた王家と十三貴族の旗が掲げられ、お祭りムードが高まっていた。
上空には、水平展開された空壁を媒体にした映像表示により、コンテストの開催日と会場の案内が街の何処からでも確認できる。この広告が、日に数回、数分間セイヴの情報広告機関の施設である、街中にある塔の上から投影されている。
エルフの国、このイグドラム国は一年中多くの花が咲いているが、初夏のこの時期はひと際花が多く咲き乱れ、また、ポプラや柳の木のように、綿毛で種子を飛ばす樹木からは、三センチほどの丸い白いフワフワが舞い上がり、浮遊する様子がよく見られる。
多いと雪の様に降り注ぐが、街の各所にある巻き上げ装置が作動して、人への害が出ないように、綿毛は上空へ飛ばされてしまう。

ソゴゥは、遥か上空を白いフワフワがゆったり流れていくのを見るのが好きだった。夜にはこれらのフワフワが薄く発光して、幻想的な光景に変わる。
休みの日に、テラスにデッキチェアとサイドテーブルを出して寝転び、フルーツジュース片手に南国のビーチリゾートで寛ぐかの如く、フワフワを何時間も見て過ごすこともある。
イグドラム国立図書館、通称イグドラシルは、枯れて折れた世界樹を利用して作られた建物である。この世界樹は既に枯れてはいるが、樹精獣たちが触れた部分は生命力を持っていて、変形したり、成長したりする。
いつもの様にテラスで寝転んでいると、ソゴゥが居る場所より上方の壁に、樹木の幹に着生する、半月状のサルノコシカケのような巨大な出っ張りが出来ており、肉球の肢が、ソゴゥを呼ぶように、おいでおいでしているのを見つけた。
飛行魔法でその上に飛んで見に行くと、ソゴゥが居るテラスと同じくらいの広さのその新たな場所で、樹精獣たちがハンモックに寝そべり、ソゴゥを呼んだスミスがドヤ顔をして、空間を案内する。
洗濯物を干すためのテラスより、こちらは上方に木の枝が張り出して絶妙にいい感じの木陰を作っており、ハンモックが吊るせる。ソゴゥは早速テラスから自分のデッキチェアをこちらへ移動させて、樹精獣たちの寛ぎ空間にお邪魔することにした。
しばらくすると、大きな枝とハンモックが増えていて、ヨルが翼を虫干ししていた。
広がった網目から翼を下へ通して横になれるように工夫されている。

「ハンモックずりぃ」
「自作である」
ずるいと言いつつ、ソゴゥは安定しないのが好きではないので、一人デッキチェアに寝そべり、ふと、ヨルの翼の羽のカラーリングが変化していることに気付いた。
羽の根元が赤く、先が黒い。
「翼の色変わった?」
「翼だけではないぞ、尻尾も変わったのである」
ヨルが尻尾も出す。
「本当だ、龍の尻尾みたいになってる」
「樹精獣たちが、ソゴゥの血によりイグドラシルからの魔力が魔導書に流れる際に、我の体をイグドラシルの聖骸だけでなく、ガルダ王の羽と、龍の鱗を用いて、その特徴を組み込んで構成されるように、魔導書に体組織図を付け加えたのだ」
「え? 樹精獣達が?」 
「イグドラシルの知識を、樹精獣たちは使いこなすようである。そのおかげで、今回は色々と助けられたのだ」
「ヨルが直ぐに復活できたのも、ヨルが俺を止めてくれたのも樹精獣達のおかげなんだね。ルキがいてくれたことは本当に幸運だったけれど、それも精霊の森の樹精獣たちのおかげだ。本当に樹精獣、ヨル、ルキ、それとガルダ王には感謝している」
「あと、この体はもっとカスタマイズできるらしいのだ。角や、爪の素材を、伝説の生き物のパーツで揃えるのも悪くない」
「マジか、楽しそうだな」
樹精獣たちも話を聞いていて「いい素材が入ったら持って来て!」とソゴゥにキュキュッと鳴いて伝えてくる。
「また、何処かに冒険に出かけられたらね」
ソゴゥは答え、冒険でなくても、南の島とかに旅行に出かけてみたいと思った。

レベル5の司書であるアベリアは休日、食料の買い出しに街へ出かけていた。
陽の高いうちに、イグドラシルの外に出られることは滅多にない。
街は花の良い匂いに満ち、浮足立つ人々の表情はみんな明るい。目抜き通りを歩くだけで、とても幸福な気持ちになれる。
これで、館長と並んで歩けたなら。
アベリアはソゴゥを尊敬していた。一つしか歳が違わないのに、全司書の代表である第一司書であり、ゆくは大司書となる。重責を受け止め、その在り方を正しく体現するばかりか、まだ館長となって二年しかたたないのに、ゼフィランサス王からの信頼も厚く、幾度となく大きな功績を残して来た。すでに、エリート揃いの十三貴族や、歴代の大司書と比べても、その存在は抜きん出ている。
セイヴの街は地方都市に比べ、エルフ以外の人種が多く暮らしており、また、観光で訪れる外国人もよく見かけ、ソゴゥの様に、黒系統の髪色をした人も多く行き交う。
丁度、こちらへ歩いて来る少女は黒く長い髪、人間の様に耳は丸く、エルフの国では珍しい、鮮やかな赤い色の豪華なワンピースを着ており、複雑に編まれた髪は左右二つにリボンでまとめられている。
ハッとするほど美しいその容姿を見て、アベリアは固まった。
すれ違う直前、その緋色の瞳と目が合う。
「か、か、か、館長!?」
アベリアの声に、少女が立ち止まって振り返る。
長い睫毛は、音がしそうなほどぱちぱちと瞬き、再び目が合う。
アベリアの前には、その思考のほとんどを占めるソゴゥと思われる女性がいた。瞳の色や髪の長さを変え、女性ものの服を着用している。
女装して街を散策されるご趣味がおありだったとは・・・・・・全く問題ありません、何故なら、国宝級に美しいので。
そんなことを、コンマの間に考えて、アベリアは「館長、今日はどちらへお出かけですか? もしよかったら私もお供してもよろしいでしょうか?」と驚くべき早口で告げる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

【第一部完結】転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!

DAI
ファンタジー
【第一部完結!】 99回のさよならを越えた、究極の『ただいま』 99回転生した最強エルフは、のんびり暮らしたいだけなのに――なぜか家族が増えていく。 99回も転生したエルフの魔法使いフィーネは、 もう世界を救うことにも、英雄になることにも飽きていた。 今世の望みはただひとつ。 ――森の奥の丸太小屋で、静かにのんびり暮らすこと。 しかしその願いは、 **前世が日本人の少女・リリィ(12歳)**を拾ったことで、あっさり崩れ去る。 女神の力を秘めた転生少女、 水竜の神・ハク、 精霊神アイリス、 訳ありの戦士たち、 さらには―― 猫だと思って連れ帰ったら王女だった少女まで加わり、 丸太小屋はいつの間にか“大所帯”に!? 一方その裏で、 魔神教は「女神の魂」と「特別な血」を狙い、 世界を揺るがす陰謀を進めていた。 のんびり暮らしたいだけなのに、 なぜか神々と魔王と魔神教に囲まれていくエルフ。 「……面倒くさい」 そう呟きながらも、 大切な家族を守るためなら―― 99回分の経験と最強の魔法で、容赦はしない。 これは、 最強だけど戦いたくないエルフと、 転生1回目の少女、 そして増え続ける“家族”が紡ぐ、 癒しと激闘の異世界スローライフファンタジー。 ◽️第二部はこちらから https://www.alphapolis.co.jp/novel/664600893/865028992

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。 先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。 龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。 魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。 バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……

処理中です...