七つの星の英雄~僕は罪人~

ミシェロ

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第2章 「正星騎士団」

第13話

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「かっ......」

「油断させりゃ、どんな敵でもイチコロだ。それがうちのチームの頭脳の考え方なんでな。ちょっとセコいけど、勘弁してくれよ」

「くそがっ!」


 敵は電撃をはじき俺の元へととびかかってきた。けれどそれも織り込み済み。まったくどうしてうちの頭脳担当の案じる作戦はこうも人を思い通りに動かしてしまうのか不思議でしょうがねぇ。

 ま、そんなのんきなことはともかくとして、俺はフォメアがレーザーを放つのと同時に敵にとびかかった。敵の目のど真ん中に入るように力のこもった拳を突き付けて。


巨人の鉄拳ギガントアイアンブロー!」


 敵が吹き飛び扉を突き破ったそのとき、俺たちの目の前に鉾を持った男と炎をまとった拳の見える男が現れた。


☆☆☆


「ごっごめんなさい! そのいきなり襲ってきたからつい、いつものクセで戦っちゃったというかなんというかその......」


 言葉が見つからない。いくら反省文を書かされたくないからとはいえ、少し横暴すぎるよね。彼女からしたら迷惑な話。勝手に攻撃されて仲間割れを起こさせられた挙句、戦闘続行不能にさせちゃったんだから誰だって怒るにきまってるじゃん。バカだな私。ここは彼女を安全な場所まで避難させて、代わりに私たちでなんとかしないと......アレ? でもわざわざそんなことしなくてもいいじゃん! 彼女を見つけたこと、シオンたちに報告しないと!

 ってアレ? ダメだデバイスの通信環境が悪い。もーどうしてこういうときに限って動かないかなー。ホンット使えないなー。フォメアにもっと電波の調整方法教えてもらわないと。


「いつまで1人であたふたしてんのよ。それより今回来たのはあんた1人なの?」

「違います! 私はチーム“天真の星屑スターダスター”に加入してて、でもチームメイトとうまく連絡がつかなくて......」


 うーなんで敬語使ってるんだろ私。ちょっとキモチワルイ。いやいやそれよりも今は彼女を安全な場所に......

 そう思った矢先、彼女は私の手からデバイスを奪い取り設定を変更していた。私は止めようにも彼女の行っていた動作を黙って見ていた。ハァ、ホントはできるはずなのにどうして慌てるといつもミスばっかりしちゃうんだろ。気を付けないとシオンたちに迷惑かけちゃいそう。さすがにファイスよりは注意されないようにしないと!


「チーム用IPナンバーは?」

「確かトリプルセブンだったと思うけど」

「そう。……そういえばさっきの出来事をあんたが謝る必要なんてないわよ」

「え?」


 彼女は戦う初めから私が仲間だと気づいていたみたい。もう、それだったら最初から言ってくれればいいのに! 

 けど、それならなおさらどうして戦おうとしたのか気になる。まぁ反省文を書かされないから私にはそこまで聞く必要はない。彼女が話したくないのならうやむやにしようと思っていた。でも彼女は私にその理由を教えてくれた。うれしい。

 まぁといっても理由は気晴らし。戦うこともなく囚人たちの管理ばっかりやらされていたからすることがなくって、自分だけだとダラけちゃうから今回を機に自分の実力を再確認したかったんだって。まぁわからなくもない話だけど、なんかムカつく。要はその彼女の思いつきに付き合わされたってことでしょ? 戦力は減らされちゃうし、そのせいで少しとはいえ時間を失っちゃったし。ハァ。

 とりあえずそれは置いとこ。文句言ってたらキリないし。私は彼女に向けて再度手を差し伸べた。今度は和平でなく友達として。


「私、ミカロ。アンタは?」

「アスタロトよ。次にいつ会えるかはわからないけど、とりあえず握手ぐらいはしてあげるわ。そっちの文化だから仕方なくね」


 そっちの文化......アスタロトのところだと少し違ったりするのかな。もしかしてハグとかするのかな。まぁ私は別にすることに問題はないけど、男の人はちょっと勘弁かな。変な誤解とか生みそうだし。

 アスタロトが私たちチームの回線につないでくれたけど、やっぱり誰も反応がない。妨害されてるか4人とも戦ってるってことだよね。合流できればいいけど、ここはどうしようかな......

 私がこの後を考え込んでいる最中、アスタロトはのんびり空を見上げていた。さすがに私は注意したけど、彼女に作戦が立てられたのか聞かれると口を閉じずにはいられなかった。


「ハァ、しょうがないわね。それじゃあ面倒だからここの組織を壊滅させるほかないわね」

「ええっ!? 私もそれ考えたけど、大丈夫なの?」


「ここに1つだけ厄介なものが保管されてるのよ。本当はリラーシアに報告してから指示を受けるべきところだけど、逃げられたら洒落にならないわ。これ以上の説明いる?」


 上から目線な口調だけど、彼女の言いたいことは理解できた。要は爆弾があってそれを取り外さなきゃいけないってことよね。そういえば私も前にあったなぁ。上からの指示を受けてから行動するヤツ。楽しくもないし判断に時間はかかるしもうこりごり! リラには悪いけど、私もアスタロトの意見に賛成して先に進むことにした。

 連絡がつかないけど大丈夫かな、シオン。まぁナクルスもついていることだしきっと平気だよね。

 そう思い中央に位置する扉が開き円形の部屋が見えたとき、4人は私たちを見てほほ笑んだ。私の大好きな場所はすぐに姿を現した。


「シオン大丈夫だった!? ケガとかしてない?」

「は、はい! 問題ないです! むしろミカロのほうがケガしてないですか?」

「いいの私は! いろいろ治療とか慣れてるしケガなんて1日で......」


 私の言葉は茶色の粘着感によって邪魔された。けどうれしい感覚が私を包む。どうしてだろう。なんてね。うれしいんだ、この感覚が。人とつながっていることが。


「ダメですよ、ミカロは女の子なんですから!」

「あ、今差別したでしょ! それは優しさって言わないんだからね!」

「ええっ!? そんなことよりもまだ傷のある場所に絆創膏張りますからちょっと待っててください」

「だからもう大丈夫だって! ケアは後でするから!」


 私がケガをしているときのシオンは一歩も引かない。だから仕方なく折れてあげる。シオンも傷だらけなのに、真っ先に私のことを心配してくれるのはちょっとだけうれしい。少し不満を言えば普段もこうだったらいいのになー。なんてウソウソ。こんなシオンだから私は楽しいんだよ、きっと。


「敵の拠点のど真ん中で呑気にイチャついてんのよ。状況理解してるの?」

「まぁ気にすんなよ。これがあいつらにとっては日常なんだよ。なぁカップル?」

「勝手にねつ造してんじゃないわよ!」
「勝手に関係をねつ造しないでくださいファイス!」


 あれ、どうしてだろう。なんかこの感覚、前にもあったような......いや気のせいだよね。シオンとはまだあって2か月も経ってないもん。きっと誰かと勘違いしてるんだ。うんうん。


「ほらな、言葉まで息ぴったりだ。俺も最初は勘弁だったんだが、どうにも2人は抑えられねぇみたいでな」

「……あんた初対面よね? なんでそんなに違和感なく話せるの?」

「まぁ慣れだろ。職業柄いろんな奴と話せねぇといけねぇからな。緊張なんてもんは二の次なんだよ」

「のんきに自己紹介なんてしてる場合じゃないわよ! ちゃちゃっとアスタロトの言ってた危険物を回収するわよ!」


 危ない危ない。あやうくこのまま帰っちゃいそうな雰囲気になるとこだった。とはいえ問題はそれがどこにあるかだよね。アスタロトは上から目線だからさすがに把握してるのかな。

「お前らに言われたくねぇよ! いつも......」

「やめろ、ここでケンカされたら終わりが見えない。クエストに集中しろ」

 フォメアさんの一言で2人は開きたくて仕方のない口を無理やり閉じ、ミカロの隣にいる女性の指示のもと、僕たちは先に進んだ。帰りの件もありファイスとフォメアは船の護衛に戻り、僕たち4人で危険物の回収へと向かうことにした。
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