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第2章 「正星騎士団」
第14話
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静かすぎる。これが普段のこの環境なのだろうか。それとも......僕は警戒を強め最前線を慎重に歩く。足元にスイッチが、壁にセンサーが、それとも空中に銃砲が......僕の妄想は全て外れ、僕は体の力を抜いた。
何を考えているんだ僕は。流れに乗ることが大切なんだ。無理に力を入れても何も始まらない。いつも通りを続けることに意味がある。
「危ないからすぐに逃げてよ? じゃないと私たちもどうしていいかわかんなくなっちゃうし」
「当然そうさせてもらうわよ。もっともアンタたちが残ったあいつらを倒せればの話だけどね」
僕たちはエレベーターに乗り込み下っていった。トラップだろうか? その疑問が尽きない。けれど当然のように僕の勘は空振りに終わり、地下のガラスに囲まれた空間へと訪れた。
1枚先は海。なんだか嫌な気分だ、悪趣味め。魚たちの姿は見えない。やっぱり動物たちはここがどのような場所なのか理解しているみたいだ。ミカロは冗談交じりに間違えてもこのガラスを破壊しないよう注意したけれど、アスタロトさんはむしろ彼女がそれをしてしまうだろうと告げる。相変わらず彼女は相性の悪い人が多いみたいだ。まぁクエスト中でケンカをしないでくれる分まだまともか。
――女性の悲鳴。それがこの空間を包み僕たちは目で合図をして一番近い扉に耳を澄ます。……泣きすするような声、それを押さえつけようとする声、かすかに聞こえる。アスタロトさんたちは回収物を探すべく僕とナクルスとは分かれ、僕たちは強襲の構えで部屋内に進入、目の前の白衣の男の首筋に鉾を構えた。中には機械に押さえつけられ熱そうに見える赤い何かを今にも押されようとしている若い後ろ肩丸出しで汚れた茶色い布地をきた女性を確認した。
「その人を離してもらえますか?」
「ぐしゅしゅ、別に構いはせん。といいたいところだが、あいにく忙しいところなんでな、ちゃっちゃと片付けさせてはくれんか」
後ろに殺気。それを感じた時にはもう遅い。僕の心臓を貫く意思をもったガラスの槍が僕とナクルスの背後に現れる。
仲間を守るためにはなんとやら、だっけ。けれど僕は踏みとどまらざるを得なかった。残念ながら僕の速度よりも機械の動きのほうが何倍も正確さが伴う。僕たちは彼から距離を取り後ろに下がった。
彼はそれを見てほくそ笑み彼女に先端の赤い鉄を押し付けた。女性の悲鳴がその空間を包みこむ。それと同時に僕はガラスごと彼に最接近を試みる。
2対のガラスは砕け散り、男は彼女に向かって吹き飛ばされた。女性は僕たちを見て手を差し出す。救わなければ。ふとその考えが浮かぶ。僕もクエスターなのだと今更実感している。
ヒーローなのかは疑問だけれど、涙を流す彼女を救おうとするそれは間違いなくそうだ。笑顔を灯す者。それがヒーローなのだと思う。
ガラスを突き破り彼女に手を差し伸べる。彼女も手を出そうとした瞬間、勢いよく彼女の手が飛んできた。
――彼女は弾け飛んだ。笑顔のまま全身を真っ赤な血に染めて。僕の元にかかったそれが雫となって零れ落ちる。僕はそれを優しく手でふき取り、彼女の左手をガラスの内側に戻した。それと同時に僕は老人を吹き飛ばした。
何十本ものガラスが僕らに降り注ぐ。けれどナクルスにかかればあれはただの砂だった。彼の熱によって変形し、丸みを帯びた形へと変化していった。
体が熱い。力が入ったまま抜くことができない。僕はただ敵を睨むことしかできない。彼女の思いを継ぐためにも、それ以上の言葉は必要なかった。
飛び込み老人をもう一度吹き飛ばそうとした瞬間、僕は襟をつかまれ壁にたたきつけられた。赤い紋章をいくつも腕に巻き付けている敵を睨む。彼は顔色を変えることなく老人に寄り添った。
「ビニウム、遊びが過ぎるぞ。目の前で女の無残な最期の姿を見せるとは」
「ぐしゅしゅ、それが色を変える思考の実験。現に冷静さを欠きダメージの反応にも鈍い。これほどの好機がディモン、貴様にあるのだ。負けようがあるまい」
その瞬間僕は再度壁にたたきつけられた。背中が熱い。彼女と同じようなことを僕もされたのか。変現していなかったらどうなっていたことか、今考えると恐ろしい。僕は体から破片を振り払い態勢を整える。
ナクルスは僕のことを心配してくれたが今はそれどころじゃない。彼女のためにもこれ以上の被害を出さないためにもここで彼らを食い止める必要がある。そのためには全力を惜しまない。熱を取り払い今を見つめる。……よし。
僕が敵の前方に飛び込んだ瞬間、ガラスの槍たちが四角形状に並び押し寄せる。ガラスの一端を掴み飛び上がる。そのポイントに赤紋章の敵が飛び上がってきた。鉾をたたきつけるが爆発で勢いが殺される。 後ろに下がろうにもナクルスでも同じこと。むしろガラスの攻撃を無効化できるだけ貢献している。
あの爆発を先読みして攻撃に転じるほかない。とはいえそんなに簡単にできることでもない。ひょっとしたら2回、いや3回続けて爆発を起こす可能性だってある。それらを正確に読み取らなければこちらがやられる。フェイントだけでは敵に距離を取られてしまう。ここは難易度が高いのを承知で向かうか。
大切なのは相手に気づかれないようにすることだ。一撃で決める。その意志とともに僕は再度鉾を握りしめた。
ナクルスと目くばせをし飛び出す。ディモンが前に対峙しガラス男は僕らの背後から攻撃を開始した。ナクルスは火を纏いそれらを粉砕する。1度目のフェイント。爆発をかわしディモンの動きに集中する。右パンチには左ステップ。2度目のフェイント、今......
僕が攻撃をしようとした瞬間、僕は宙に浮いたのを感じた。いや違う、正確に言えば地面が姿を消したというべきか。あたりはガラスの破片まみれで視界が悪い。僕はキラキラ光るガラスとともに、彼らの目の前から姿を消した。
「どうだ、悪くない策だっただろ?」
「ぐしゅしゅ、そうだな。といいたいところだがヘタをすれば敵の攻撃がここの崩壊をもたらしていた可能性がある。それくらい考えてから不意打ちしろ。あやうく死期を悟ったぞ」
「そんときはそんときだ。ま、ここに爆弾男がいる時点で安全なんてものはないがな」
上から2人の声が聞こえる。立ち上がるべきときじゃない。今起き上がれば確実にガラスの槍と爆弾男がとびかかって来る。ガラスは防げてもこの安定しないがれきの山の中じゃロクに予測して動けもしない。ここはのびているフリをしよう。彼らが背中を向けたときがチャンス到来だ。
ナクルスと目を合わせ口に人差し指を立てる。彼もその状況を理解しうなづいた。よし。扉の開いた音がした。とりあえずここから元の場所まで戻らないとだな。
「キュルー」
……なんだ? ファイスがふざけるときに使う甘え声みたいなのが聞こえたような。まさかそのグッズをナクルスが持っていて敵を動揺させるために......いや違うか。そんなもので敵を動揺させられるぐらいだったらとっくに世界から敵はいなくなっているはずだ。
今もいるっていうことはそういうことだ。何を呑気に考えているのだろう。早いところ脱出口を見つけ出さないと。
「キュルー、キュルー」
うるさいな。僕の頭の中からしてるのかな? よくファイスにいたずらされるからそれを思い出して......ナクルスも何も言わないみたいだし、きっとそうだそうに違いない。
「さっきから妙な声が聞こえないか?」
「やっぱりそうですよねー!? よかったぁー僕だけじゃなくって! さっきから耳に入ってきてて気になってしょうがなかったんですよ」
ふぅ、思わず取り乱してしまった。ナクルスは動揺したのか首をかしげているけれどそこはスルーしよう。僕たちはがれきをどかし声のするほうへと向かう。まぁ当然人じゃないだろう。いや、その可能性もなくないか。さっきのガラスの人も変なクセのついた言葉を放っていたし。
けどまだカワイイ方だな。きっと女の子に違いない。幼いうちに矯正しておけばおそらく何とかなるだろう。と思ったが、僕たちの目の前に現れたのはガラスケースの中を右往左往する赤い粘膜体だった。僕たちのことを見るなり体をしなやかに右に左に傾け動かす。甘えるポーズなのかな。
僕たちは目を合わせ警戒しつつも、ボタンを押して彼を解放した。
何を考えているんだ僕は。流れに乗ることが大切なんだ。無理に力を入れても何も始まらない。いつも通りを続けることに意味がある。
「危ないからすぐに逃げてよ? じゃないと私たちもどうしていいかわかんなくなっちゃうし」
「当然そうさせてもらうわよ。もっともアンタたちが残ったあいつらを倒せればの話だけどね」
僕たちはエレベーターに乗り込み下っていった。トラップだろうか? その疑問が尽きない。けれど当然のように僕の勘は空振りに終わり、地下のガラスに囲まれた空間へと訪れた。
1枚先は海。なんだか嫌な気分だ、悪趣味め。魚たちの姿は見えない。やっぱり動物たちはここがどのような場所なのか理解しているみたいだ。ミカロは冗談交じりに間違えてもこのガラスを破壊しないよう注意したけれど、アスタロトさんはむしろ彼女がそれをしてしまうだろうと告げる。相変わらず彼女は相性の悪い人が多いみたいだ。まぁクエスト中でケンカをしないでくれる分まだまともか。
――女性の悲鳴。それがこの空間を包み僕たちは目で合図をして一番近い扉に耳を澄ます。……泣きすするような声、それを押さえつけようとする声、かすかに聞こえる。アスタロトさんたちは回収物を探すべく僕とナクルスとは分かれ、僕たちは強襲の構えで部屋内に進入、目の前の白衣の男の首筋に鉾を構えた。中には機械に押さえつけられ熱そうに見える赤い何かを今にも押されようとしている若い後ろ肩丸出しで汚れた茶色い布地をきた女性を確認した。
「その人を離してもらえますか?」
「ぐしゅしゅ、別に構いはせん。といいたいところだが、あいにく忙しいところなんでな、ちゃっちゃと片付けさせてはくれんか」
後ろに殺気。それを感じた時にはもう遅い。僕の心臓を貫く意思をもったガラスの槍が僕とナクルスの背後に現れる。
仲間を守るためにはなんとやら、だっけ。けれど僕は踏みとどまらざるを得なかった。残念ながら僕の速度よりも機械の動きのほうが何倍も正確さが伴う。僕たちは彼から距離を取り後ろに下がった。
彼はそれを見てほくそ笑み彼女に先端の赤い鉄を押し付けた。女性の悲鳴がその空間を包みこむ。それと同時に僕はガラスごと彼に最接近を試みる。
2対のガラスは砕け散り、男は彼女に向かって吹き飛ばされた。女性は僕たちを見て手を差し出す。救わなければ。ふとその考えが浮かぶ。僕もクエスターなのだと今更実感している。
ヒーローなのかは疑問だけれど、涙を流す彼女を救おうとするそれは間違いなくそうだ。笑顔を灯す者。それがヒーローなのだと思う。
ガラスを突き破り彼女に手を差し伸べる。彼女も手を出そうとした瞬間、勢いよく彼女の手が飛んできた。
――彼女は弾け飛んだ。笑顔のまま全身を真っ赤な血に染めて。僕の元にかかったそれが雫となって零れ落ちる。僕はそれを優しく手でふき取り、彼女の左手をガラスの内側に戻した。それと同時に僕は老人を吹き飛ばした。
何十本ものガラスが僕らに降り注ぐ。けれどナクルスにかかればあれはただの砂だった。彼の熱によって変形し、丸みを帯びた形へと変化していった。
体が熱い。力が入ったまま抜くことができない。僕はただ敵を睨むことしかできない。彼女の思いを継ぐためにも、それ以上の言葉は必要なかった。
飛び込み老人をもう一度吹き飛ばそうとした瞬間、僕は襟をつかまれ壁にたたきつけられた。赤い紋章をいくつも腕に巻き付けている敵を睨む。彼は顔色を変えることなく老人に寄り添った。
「ビニウム、遊びが過ぎるぞ。目の前で女の無残な最期の姿を見せるとは」
「ぐしゅしゅ、それが色を変える思考の実験。現に冷静さを欠きダメージの反応にも鈍い。これほどの好機がディモン、貴様にあるのだ。負けようがあるまい」
その瞬間僕は再度壁にたたきつけられた。背中が熱い。彼女と同じようなことを僕もされたのか。変現していなかったらどうなっていたことか、今考えると恐ろしい。僕は体から破片を振り払い態勢を整える。
ナクルスは僕のことを心配してくれたが今はそれどころじゃない。彼女のためにもこれ以上の被害を出さないためにもここで彼らを食い止める必要がある。そのためには全力を惜しまない。熱を取り払い今を見つめる。……よし。
僕が敵の前方に飛び込んだ瞬間、ガラスの槍たちが四角形状に並び押し寄せる。ガラスの一端を掴み飛び上がる。そのポイントに赤紋章の敵が飛び上がってきた。鉾をたたきつけるが爆発で勢いが殺される。 後ろに下がろうにもナクルスでも同じこと。むしろガラスの攻撃を無効化できるだけ貢献している。
あの爆発を先読みして攻撃に転じるほかない。とはいえそんなに簡単にできることでもない。ひょっとしたら2回、いや3回続けて爆発を起こす可能性だってある。それらを正確に読み取らなければこちらがやられる。フェイントだけでは敵に距離を取られてしまう。ここは難易度が高いのを承知で向かうか。
大切なのは相手に気づかれないようにすることだ。一撃で決める。その意志とともに僕は再度鉾を握りしめた。
ナクルスと目くばせをし飛び出す。ディモンが前に対峙しガラス男は僕らの背後から攻撃を開始した。ナクルスは火を纏いそれらを粉砕する。1度目のフェイント。爆発をかわしディモンの動きに集中する。右パンチには左ステップ。2度目のフェイント、今......
僕が攻撃をしようとした瞬間、僕は宙に浮いたのを感じた。いや違う、正確に言えば地面が姿を消したというべきか。あたりはガラスの破片まみれで視界が悪い。僕はキラキラ光るガラスとともに、彼らの目の前から姿を消した。
「どうだ、悪くない策だっただろ?」
「ぐしゅしゅ、そうだな。といいたいところだがヘタをすれば敵の攻撃がここの崩壊をもたらしていた可能性がある。それくらい考えてから不意打ちしろ。あやうく死期を悟ったぞ」
「そんときはそんときだ。ま、ここに爆弾男がいる時点で安全なんてものはないがな」
上から2人の声が聞こえる。立ち上がるべきときじゃない。今起き上がれば確実にガラスの槍と爆弾男がとびかかって来る。ガラスは防げてもこの安定しないがれきの山の中じゃロクに予測して動けもしない。ここはのびているフリをしよう。彼らが背中を向けたときがチャンス到来だ。
ナクルスと目を合わせ口に人差し指を立てる。彼もその状況を理解しうなづいた。よし。扉の開いた音がした。とりあえずここから元の場所まで戻らないとだな。
「キュルー」
……なんだ? ファイスがふざけるときに使う甘え声みたいなのが聞こえたような。まさかそのグッズをナクルスが持っていて敵を動揺させるために......いや違うか。そんなもので敵を動揺させられるぐらいだったらとっくに世界から敵はいなくなっているはずだ。
今もいるっていうことはそういうことだ。何を呑気に考えているのだろう。早いところ脱出口を見つけ出さないと。
「キュルー、キュルー」
うるさいな。僕の頭の中からしてるのかな? よくファイスにいたずらされるからそれを思い出して......ナクルスも何も言わないみたいだし、きっとそうだそうに違いない。
「さっきから妙な声が聞こえないか?」
「やっぱりそうですよねー!? よかったぁー僕だけじゃなくって! さっきから耳に入ってきてて気になってしょうがなかったんですよ」
ふぅ、思わず取り乱してしまった。ナクルスは動揺したのか首をかしげているけれどそこはスルーしよう。僕たちはがれきをどかし声のするほうへと向かう。まぁ当然人じゃないだろう。いや、その可能性もなくないか。さっきのガラスの人も変なクセのついた言葉を放っていたし。
けどまだカワイイ方だな。きっと女の子に違いない。幼いうちに矯正しておけばおそらく何とかなるだろう。と思ったが、僕たちの目の前に現れたのはガラスケースの中を右往左往する赤い粘膜体だった。僕たちのことを見るなり体をしなやかに右に左に傾け動かす。甘えるポーズなのかな。
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