七つの星の英雄~僕は罪人~

ミシェロ

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第4章 「星女狩り」

第28話

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「ん~。君がシオンか。ミランから聞いている。私はワインズハット。君には生贄になってもらうよ」

 攻撃を仕掛けてくる雰囲気はない。僕は鉾を背負い両手を自由にした。

「生贄? ならどうしてあなたはこんなことを?」

「それは君が知る必要はないさ。さてと、さっそくだが始めようか」

 僕の目の前にワインズハットが移動する。鉾を構えたが僕は壁にたたきつけられる。エイビスは剣を構え警戒を見せた。

「君にはこれがお似合いだ」

 目が紫色に光った。なんだこれ、だんだん視界がぼやけ......


☆☆☆


「ねぇ、シオン......私とじゃ、ダメ?」

 見慣れないピンク色の宿舎。いや、正星議院とは関係なさそうだ。僕は彼女を両手で距離を保たせ彼女の目を見る。

「ダメですよ、いろいろ段階がありますし」

「シオンにだったらいいよ。それだけじゃダメ?」

 いつになく彼女のことが魅力的に見える。触れたときにしかわからないずっしり重みのある胸の感触、艶々しい唇、そして純粋な目。僕を動揺させるには十分すぎるものだった。

 どうして? その言葉を繰り返すたびに疑問が湧く。僕は......敵はどこだ!

「シオンさまー!」

 その言葉と共に僕は目の前にいた黒帽子黒|外套(マント)の敵に気が付く。足は考えるまでもなく走り始めた。

 彼女の剣を交わし距離を取ろうと後退する。エイビスさんの星は未知数だ。怪我人に無理を強いるわけにもいかない。回転と同時に鉾を引き抜き距離を作る。

 |武装発光(ウェポンライト)で視界を奪い距離を詰め自分の空間に持って行......僕は壁に激突した。

 彼のステッキがしなり僕に攻撃を仕掛ける。距離を一定に取り僕の攻撃の瞬間を止めようと動く。動きが読まれている。

 エイビスが進もうと動く。それを手で拒否する。僕の手は衝撃を受け痺れが身体じゅうを走った。

「呼んでおいてそれは礼儀がなってないんじゃないの?」

 僕の頭は真っ白になった。目の前にいるのは誰だ? 僕が憶えていたのはミカロと違い乱暴でなくて麗らかで礼儀正しい彼女だ。視界には乱雑に敵に斬りかかる彼女が見えた。

 女性は恐ろしい。僕は立ち上がることを忘れていた。

「何してんの? 手伝いなさいよ」

「は、はい!」

 エイビスさん、そう呼ぶことにしよう。そうでもないと彼女と区別がつけにくい。見口調はわかりやすいけど。

「くっ......」

 剣は姿を消し、彼女は地に膝を着いた。彼女を連れ戻し際、僕は彼の剣をもろに受けた。足から赤い川が流れていく。

 エイビスさんは気を失っている。急いで戦闘を終える必要が出てきた。姿が視界を外れた瞬間、上空に飛び位置を確認。

 お気に入りに右手で押さえる帽子を狙......

「単純な策に引っかかると......」

「思ってましたよ!」

 敵の地に蜘蛛の糸が張られる。この|好機(チャンス)を僕は逃さない。敵をきり刻み壁に吹き飛ばす。

 鉾を振り下ろした瞬間、彼は完全に動きを停止させた。

……よし。あとはエイビスさんを......いない。

悲鳴が耳に入る。ワインズは彼女の首元に剣を向けていた。

敵はフォメアを見た瞬間、標的を変えた。だが俺の身体は動きを見せなかった。フォメアでも無理か。

「永変水(ウォームアイス)!」

 フォメアの声で氷柱は姿を消した。手のうちから氷が形成される。厄介だな。フォメアは固まった状態の俺とナクルスに首を傾げる。

 全身に力を入れ、踏み出す。これでわかんだろ? 首を元に戻した。よし。

 敵は俺を標的に突き進む。拳をこちらに突き付けると同時に武器は姿を消した。

 動く。拳を弾き腹に一撃を叩きこむ。入った感触がねぇ。距離を取られ俺は動きを止める。ナクルスが近づき敵は氷柱を用意する。ナクルスが止まったかと思いきや氷は水に変わりナクルスはヤツを壁の中に吹っ飛ばす。

 体までは氷じゃねぇみたいだな。おかげで何とかなりそうだ。

 敵はこっちに笑顔を見せ氷柱を両手に構える。フォメアは首を振った。

 ナクルスが俺の方向に飛び上がり俺たちに重みがかかる。

「不死鳥の焦乱(フェニックス・セアチャス)!」

 無数の火の粉が俺の足元ぎりぎりに飛びかかる。敵は氷の壁でそれらを防ぐ。着地まで間に合わないか。体は言うことを聞かなかった。

「ボルムは調子者だな。冷静に案ずれば誰でも勝利が手に入ることを知らないとは」

 ナクルスが地に付いた瞬間、体が軽くなった瞬間とともに、俺は体を屈めた。目に穴が開くかと思った。あと少しで目線がドーナツになるところだった。

 敵は氷柱を投げ俺を囲もうと動く。ナクルスが動こうとするが、そのときにはフォメアが俺の隣にいた。

「人数の差があろうとも、攻撃力に違いがあろうとも、一人においては力量はそこまで変わらん。この実力であれば|アイツ(・・・)も......」

 違ぇ。一番辛ぇのは誰かを捨てなきゃいけないことだ。どうしてこんなときばっかりあいつらのことを思い出しちまう。俺がそれを望んでんのか? それが俺の、俺たちの運命なのか?


☆★★


「……何かを捨てられないやつが変革を起こせない。ただのホラ吹きになり下がる。お前はそれだけは勘弁しろよ」

「そんな言葉......お前が成し遂げてからにしろよ!」


★★☆


 お前が|あれ(・・)を残した意味が分かった。変革を起こしてやるよ。



上空に飛び上がり態勢を整える。俺が不思議な空間に進入すればどうなるかは気になるがそんなこと言ってられねぇ。敵の頭を狙い、拳を振り上げ飛びかかる。

 スピードが跳ね上がり俺は敵のつららに突っ込んだ。ナクルスは倒れている。そういうことかよ。敵は吹き飛び俺は肩からつららを引き抜く。

「……氷結陣の範囲に気が付いたか。だがそれでもお前たちの勝利は完全に途絶えている。例え氷を一瞬無力化されようともな」

 自信満々のそいつの願いを叶えてやりてぇ。けど俺は足を止めなかった。右手を巨大化させたたきつける。

「|巨人の(ギガント)......」

「|氷壁(アイスウォール)!」

 氷は姿を消した。サンキュー、おかげでこいつの顔がはっきりと見える。お返し分、きっちりと返してもらうぜ!

「|鉄撃(アイアンパンチ)!」

 鉄は氷も砕く、ってな。とっさに自分を変化させたみてぇだけど、防御してないのと変わらねぇな。

 俺はグッドサインを送った。

「ケケケ......フリアス、お前も同じじゃねぇ、かっ」
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