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第7章 「新世界」
第66話
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余は目を覚まし身体を黄金色に輝かせた。まさかいきなり本気の一撃を浴びせてくるとはの。それだけ余の実力を理解していた、ということなのじゃが。
留まっている暇はない。余は飛んできた金髪の女性を受け止め状況を確認する。
「おぬしは誰じゃ?」
「ミカロのお友達、って言えば伝わるかな?」
「なるほど。召喚の類かの」
「そうそう!」
まさか最後までいなかった人物に限って一番良い能力じゃったとはの。とはいえこの状況。姿を消したチェスカという赤衣の女。シオンに悪い影響を与えていなければよいのじゃが。
ひとまずはミカロたちに加勢するかの。拳の一撃を構えた敵に近づき斬撃をおみまいする。彼女は足を翻し後ろに下がりそれのみにダメージを抑えた。
参ったのう。こちらの技術では余の攻撃はすでに見破られているようじゃ。唯一気になったのはミカロの驚きの顔じゃった。
「ヒラユギ!? なんで金ぴか?」
「神化(ゴッドモード)、と余は呼んでいる。力は有り余るのじゃが、調整が効きにくいのが難点での。今も苦しんでおるのじゃ」
「へ、へー」
などとのんきな話をしている場合ではないの。余はミカロにエイビスに視線を向け指示する。彼女は動かなかった。
「エイビスの敵お願いできない? 私はこっちでも問題ないから!」
「実のところエイビスの敵は余の苦手とする相手での。ミカロ、頼めるか?」
槍の形をした風が僕を貫こうと接近する。鉾で弾き攻撃の態勢に映る。リラーシアさんが動くよりも速く、彼女は僕を吹き飛ばした。
左手の感覚が消えている。動く様子がない。彼女は笑いを見せ、リラーシアさんは睨みを強調させた。僕は進んだ。彼女が攻撃をする瞬間、リラーシアさんはそれを弾き飛ばした。接近を試みようとした瞬間、僕の右足は態勢を崩した。
彼女の残酷な笑みが映る。彼女自身が悪びれている様子は、ない。
「リラーシアさん!」
「回復して立ち上がりなさい。それができないのであれば星を解除することを勧めます」
「さっきから思うはったさかい、あんた、どぅして本気をだしはらんの?」
「……あなたに言う義理はありません。例えそうであったとしても、あなたに必要なのは私を倒すことに他ならないはずでは?」
「よく言いはりますなぁ。ウチの予想はよく当たるさかい納得がいきはります。あんたをつぶすことは造作もないどす」
彼女は汚さのない笑顔を見せた。けれど僕にはとても汚く映っていた。リラーシアさんが彼女に負けるはずがない。おそらく僕を人質にとって彼女に好き放題暴れるのが目的か。僕は苦い思いをしつつ立ち上がった。
そしてその瞬間、僕の身体は火が弾けるように光を灯った。僕は地に横になるほかなかった。
体が動かない。あれ、おかしいぞ? 苦い思いをして回復薬を飲んだんだ。まさか......誤作動か? シェトランテさん、こんなところでいらない冗談は勘弁してくださいよ。
苦笑いをしたくともできない。口を開こうとも動かない。鉾を握ろうとしても手は僕の考えを拒否する。いらつきに歯をくいしばることも叶わない。
ふざけるな。何のために僕は彼女の弟子になったんだ! 何も成長していないじゃないかっ!
“お前は強くなりたいのか? それとも仲間を守りたいのか? どっちだ?”
男の人の言葉が頭の中に響く。いったい誰だ? どこで僕を見ている? デバイスのない僕にどうやって......
体は動かない。けれど頭で会話ができるとしたら......
“僕は......仲間を守りたい。例え僕がこの先どうなろうと、シオン・ユズキであろうとなかろうと、みんなを先に進ませたいっ!”
“……よかろう”
白い毛玉が僕を持ち上げた。いや違う。僕の目の前には僕たちを喰らおうと考えているのではないか、そう疑っても仕方のない狼の姿があった。
:久しい、と言いたいところだが、その感覚だと我のことを忘れているようだな。失礼なことだ。約束通りあの大地で待っていたというのに。
約束? もしかして僕は金髪の女性でなく彼と......いやいやそんなはずないだろう。さすがにどう間違っても狼さんと女の子は混同しようがない。僕の過去には約束で溢れているみたいだ。今もそうだけれど。
赤衣の彼女はリラーシアさんを吹き飛ばした。彼女の動く様子はない。きっとダメージを蓄積し過ぎたんだ。彼となら戦える。そう思ったものの僕に策は浮かばなかった。
「あの......どう戦います?」
:口を開くな。策がバレる。目を閉じて感覚を研ぎ澄ませて俺と合わせろ。
:合わせろと言われても......アレ? できました?
:来るぞ!
彼は動きだし攻撃を避ける。真っすぐ乗っているだけで精一杯だ。体は思うようには動かず、かといって動かし過ぎても彼に迷惑をかけるだけだ。彼女は動きまわる僕らを睨んでいた。
「まだそんな手段があったんや。そいなら先に言うて欲しかったさかい。けどもう遊びはしまいや。嵐烈......」
その瞬間狼さんは口から光線を放出し、彼女のタイミングを変化させた。僕でも簡単によけられるように、彼は飛び上がり僕の正面に風の槍を見せた。
彼女との距離がなくなった瞬間、僕は彼女を壁に突き飛ばした。
:平気か?
:なんとか助かりました。
:助かってなどいない。動くぞ。
僕の直感が彼女の反撃を叫んでいた。その直感は困ったことに的中してしまい僕たちの後ろを灼熱が通り過ぎた。
「勘定を読み間違えたいうやつやな、あぶないあぶない」
彼女は片手に火、片手に氷を纏わせる。狼さんは動きを止めない。不思議と僕の身体は高揚とともに動きを理解していた。
彼が攻撃を避けると同時に武装発光(ウェポンライト)で彼女の視界を奪い、彼は気弾を溜め放つ。
上空に打ちあがったと同時に彼女を地面にたたきつけ再度打ち上げる。僕の基本パターンの攻撃が決まってゆく。僕は戦える。能力の理解しがたい敵ではあるけれど、僕の攻撃が通ることに興奮を抑えられずにいた。
「狼牙襲明!」
優勢を覆したこの攻撃にぴったりの名前だ。できることならリラーシアさんに見てもらいたいものだった。いや、さっきまで諦めばかりを口にしていた僕が言えることではないな。
彼女は立ち上がる様子を見せなかった。これで終わった。僕の身体は地に倒れた。まだだ。まだミカロたちは戦って、いるん......
力が入らない。おかしい。さっきまでは問題なく力が入っていた。左手も動いていた。どうしてなんだ。誰か、教えてくれ......
留まっている暇はない。余は飛んできた金髪の女性を受け止め状況を確認する。
「おぬしは誰じゃ?」
「ミカロのお友達、って言えば伝わるかな?」
「なるほど。召喚の類かの」
「そうそう!」
まさか最後までいなかった人物に限って一番良い能力じゃったとはの。とはいえこの状況。姿を消したチェスカという赤衣の女。シオンに悪い影響を与えていなければよいのじゃが。
ひとまずはミカロたちに加勢するかの。拳の一撃を構えた敵に近づき斬撃をおみまいする。彼女は足を翻し後ろに下がりそれのみにダメージを抑えた。
参ったのう。こちらの技術では余の攻撃はすでに見破られているようじゃ。唯一気になったのはミカロの驚きの顔じゃった。
「ヒラユギ!? なんで金ぴか?」
「神化(ゴッドモード)、と余は呼んでいる。力は有り余るのじゃが、調整が効きにくいのが難点での。今も苦しんでおるのじゃ」
「へ、へー」
などとのんきな話をしている場合ではないの。余はミカロにエイビスに視線を向け指示する。彼女は動かなかった。
「エイビスの敵お願いできない? 私はこっちでも問題ないから!」
「実のところエイビスの敵は余の苦手とする相手での。ミカロ、頼めるか?」
槍の形をした風が僕を貫こうと接近する。鉾で弾き攻撃の態勢に映る。リラーシアさんが動くよりも速く、彼女は僕を吹き飛ばした。
左手の感覚が消えている。動く様子がない。彼女は笑いを見せ、リラーシアさんは睨みを強調させた。僕は進んだ。彼女が攻撃をする瞬間、リラーシアさんはそれを弾き飛ばした。接近を試みようとした瞬間、僕の右足は態勢を崩した。
彼女の残酷な笑みが映る。彼女自身が悪びれている様子は、ない。
「リラーシアさん!」
「回復して立ち上がりなさい。それができないのであれば星を解除することを勧めます」
「さっきから思うはったさかい、あんた、どぅして本気をだしはらんの?」
「……あなたに言う義理はありません。例えそうであったとしても、あなたに必要なのは私を倒すことに他ならないはずでは?」
「よく言いはりますなぁ。ウチの予想はよく当たるさかい納得がいきはります。あんたをつぶすことは造作もないどす」
彼女は汚さのない笑顔を見せた。けれど僕にはとても汚く映っていた。リラーシアさんが彼女に負けるはずがない。おそらく僕を人質にとって彼女に好き放題暴れるのが目的か。僕は苦い思いをしつつ立ち上がった。
そしてその瞬間、僕の身体は火が弾けるように光を灯った。僕は地に横になるほかなかった。
体が動かない。あれ、おかしいぞ? 苦い思いをして回復薬を飲んだんだ。まさか......誤作動か? シェトランテさん、こんなところでいらない冗談は勘弁してくださいよ。
苦笑いをしたくともできない。口を開こうとも動かない。鉾を握ろうとしても手は僕の考えを拒否する。いらつきに歯をくいしばることも叶わない。
ふざけるな。何のために僕は彼女の弟子になったんだ! 何も成長していないじゃないかっ!
“お前は強くなりたいのか? それとも仲間を守りたいのか? どっちだ?”
男の人の言葉が頭の中に響く。いったい誰だ? どこで僕を見ている? デバイスのない僕にどうやって......
体は動かない。けれど頭で会話ができるとしたら......
“僕は......仲間を守りたい。例え僕がこの先どうなろうと、シオン・ユズキであろうとなかろうと、みんなを先に進ませたいっ!”
“……よかろう”
白い毛玉が僕を持ち上げた。いや違う。僕の目の前には僕たちを喰らおうと考えているのではないか、そう疑っても仕方のない狼の姿があった。
:久しい、と言いたいところだが、その感覚だと我のことを忘れているようだな。失礼なことだ。約束通りあの大地で待っていたというのに。
約束? もしかして僕は金髪の女性でなく彼と......いやいやそんなはずないだろう。さすがにどう間違っても狼さんと女の子は混同しようがない。僕の過去には約束で溢れているみたいだ。今もそうだけれど。
赤衣の彼女はリラーシアさんを吹き飛ばした。彼女の動く様子はない。きっとダメージを蓄積し過ぎたんだ。彼となら戦える。そう思ったものの僕に策は浮かばなかった。
「あの......どう戦います?」
:口を開くな。策がバレる。目を閉じて感覚を研ぎ澄ませて俺と合わせろ。
:合わせろと言われても......アレ? できました?
:来るぞ!
彼は動きだし攻撃を避ける。真っすぐ乗っているだけで精一杯だ。体は思うようには動かず、かといって動かし過ぎても彼に迷惑をかけるだけだ。彼女は動きまわる僕らを睨んでいた。
「まだそんな手段があったんや。そいなら先に言うて欲しかったさかい。けどもう遊びはしまいや。嵐烈......」
その瞬間狼さんは口から光線を放出し、彼女のタイミングを変化させた。僕でも簡単によけられるように、彼は飛び上がり僕の正面に風の槍を見せた。
彼女との距離がなくなった瞬間、僕は彼女を壁に突き飛ばした。
:平気か?
:なんとか助かりました。
:助かってなどいない。動くぞ。
僕の直感が彼女の反撃を叫んでいた。その直感は困ったことに的中してしまい僕たちの後ろを灼熱が通り過ぎた。
「勘定を読み間違えたいうやつやな、あぶないあぶない」
彼女は片手に火、片手に氷を纏わせる。狼さんは動きを止めない。不思議と僕の身体は高揚とともに動きを理解していた。
彼が攻撃を避けると同時に武装発光(ウェポンライト)で彼女の視界を奪い、彼は気弾を溜め放つ。
上空に打ちあがったと同時に彼女を地面にたたきつけ再度打ち上げる。僕の基本パターンの攻撃が決まってゆく。僕は戦える。能力の理解しがたい敵ではあるけれど、僕の攻撃が通ることに興奮を抑えられずにいた。
「狼牙襲明!」
優勢を覆したこの攻撃にぴったりの名前だ。できることならリラーシアさんに見てもらいたいものだった。いや、さっきまで諦めばかりを口にしていた僕が言えることではないな。
彼女は立ち上がる様子を見せなかった。これで終わった。僕の身体は地に倒れた。まだだ。まだミカロたちは戦って、いるん......
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