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第11章 プロジェクト
第08話 真犯人
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予想通り、トンネル内は大変な事になっていた。
入り口からは螺旋状のスロープになっていて『便利だなぁ』『いい仕事するなぁ』と思わせるところまではよかった。ノワールに乗ったまま下りれたからね。
そしてトンネル本体の地下に下り立つと、予想通り『なんだこれ』だった。
それは大きな大きなワンフロアの空間になっていた。ここまで来るとワンフロアという言葉も当てはならないと思う。
もう都市と言ってもいいだろう。
まだ初日じゃなかったの?
俺が来たのが分かったのか、モックンが飛んできた。文字通り飛んで来たのだ。
『エイジ様! 視察でございますか!』
まぁ、視察ではあるね。主にお前達の行動の。
『如何でございますかな。本来ならエイジ様の秘密兵器工場にしようと早くから始めておりましたが、ここに下水道を作ると聞いた時、ベストタイミングだと心躍りました。いやぁ、これは我に下った天命だと直感致しましたな。ワッハッハッハー』
……俺はバッドタイミングだと直感したよ。そんな天命なんてねーし! ただの下水道工事だし!
あと秘密兵器工場? そんな恐ろしいもんなんて作らねーよ!
「それで下水道工事の件なんだけど、こっからどうやって下水道にする気だよ」
『お任せくだされ! 実は既に完成しておるのです!』
え? これで完成? ただの空間にしか見えないけど……
『天井をご覧ください』
「ん?」
天井を見上げた俺に、モックンが説明してくれる。
『あの天井部分がキズナ様に指定された地下三〇メートルです。そこに我の糸を筒状にして何万本と張り巡らせております。地上から流れて来たものは全て糸を通って外へと流されていくのです。ですので、ここはそのまま秘密兵器工場として使えるわけですな』
うん、また出て来たね、秘密兵器工場。作らないからね。
でも、そうか。あの天井の糸が配管となってるんだ。いい仕事はしてくれるんだけどね。何かオチがついてるんだよ。普通にできないもんかね?
「あれ? それなら次に待ってるザガンの仕事は……」
『はい、糸は防水・防音・防塵・防汚・防斬・防魔法になってますから必要ありませんな。しかも、外側には粘着力があり侵入者が来ても張り付いて身動きできなくなりますし、自動発光しますので、ここはいつでも明るいのです』
す、すごい……モックンの糸ってそんな糸だったんだ。
これはザガンの魔法の負けだな。必要ないわ。
「じゃあ、もう上の工事を始めていいね。コーポラルさんに……ちょっと待って? これって改修工事になった場合誰がやるの? 管理はどうする? 誰にでも出来ないよね」
『当然、今は我しか出来ません』
それってマズくない? モックンがいつもここにいるわけじゃないし、何か突発的な事が起こったらどうするんだ?
これは初めての事業だし、不足の事態が起こっても不思議じゃない。
当面はモックンにいてもらうとしても、後の管理は誰がするの? いや、できるの?
「これって壊れたりしない?」
『もちろん壊れません!』
「寿命はどれぐらい?」
『千年は壊れないでしょうな』
「増やしたりできる?」
『もちろん出来ません!』
「え? できないの?」
『壊れないのですから継ぎ足しはできません!』
そこはダメじゃん! なに自慢気に言ってんの! ここの人口が増えるとか、領地拡大なんかしたら増設できないと困るでしょ。
『もし、増やしたい時は新しいラインを作ればいいのです。最終地点のあそこに繋ぐだけですから』
モックンがそう言って顔をそちらに向ける。俺も同じ方向を向くと、そこには壁? があった。
「あの壁?」
『あれは壁ではありません、溜池です。二層になっているため、あれだけの高さが必要なのです。上から来たものは全てあそこの上層に溜められ、上層にいるスライムがある程度処理した後に下層に流れ、トイレで使用していた魔法陣を使用し、浄化して川に流します』
すごいな、ファンタジーならではの処理システムだな。
だけど、スライムって危険だって聞いたぞ。
「スライムは大丈夫か? 大繁殖するって聞いたけど」
『はっ! 問題ありません。スライムは我々の餌ですからな、繁殖してくれた方がいいのです』
おお、スライムの養殖みたいな感じか。これは魔物ならではの発想だな。
「我々?」
『我の子供の餌にします。ここで育てて、行く行くはここの管理を任せます』
おお! そこまで考えてくれてたのか。でも待てよ。前回もプーちゃんに指導を受けたって言ってたよな。
これだけの事を人間の知識の薄いモックンが考え付くはずがない! これは断言してもいい!
という事は、誰かの入れ知恵か。
「モックン、誰かに相談した?」
『はっ! コーポラルという御仁に色々とご教授頂きました。エイジ様のご友人と伺っておりますぞ。いやぁ、中々物知りなご友人をお持ちですなぁ。我も色々と参考になりました』
「えっ! お前コーポラルさんに会ったの!?」
『はっ!』
「本当に?」
『はっ! 人間にしては中々肝の据わった御仁でしたな』
ダメじゃ~ん! 悪魔関係は内緒なのに~。いや、待て待て。モックンだけなら魔物で済む。
「アッシュの正体とか言ってない?」
『アシュタロト様の事など我が口にするのも憚れます。一言も申しておりません』
「ザガンやダンタリアンの事も?」
『もちろんです』
はぁ~、それだけはよかったよ。ちょっと安心した。でも、モックンの事は誰がコーポラルさんに言ったんだろ。
たしかに、よく考えてみると入り口に歩哨が立ってる時点でコーポラルさんに気付かれてると疑うべきだったな。どこまで気付いてるか心配だなぁ。
「誰に聞いて来たか聞いてない?」
『それは聞いておりません』
「そっかぁ…誰なんだろうなぁ」
コーポラルさんに聞けば早いんだろうけど、聞き難いな。何か密告者を白状させるみたいで気分がよくない。
でも、候補は限られてるんだよな。アッシュ、ザガン、ダンタリアン、ぐらいだよな? あとは岩宿ザガンの面々。他はエルフぐらいだけど、エルフは入れなくてもいいか。
その内で、ここで下水道工事をしてるのを知ってるのは三人の悪魔だけ。でも、あの三人がコーポラルさんに教えるとは思えないんだけどな。
だとしたら、俺の知らない誰かが知らせた? 何のために? 俺が魔物と繋がってると公表して失脚を狙ってる奴がいるのかもしれないな。
出る杭は打たれる……こういうのがあるから目立ちたくないんだよな。
ま、コーポラルさんに話もあるし、それとなく聞いてみようか。
「あー! やはりこちらでしたか。王城に訪ねて来たと聞きましたので、こちらだと予想して来てみて正解でした」
「あっ、コーポラルさん。今から行こうと思ってたんです」
ちょうど、行こうと思った所にコーポラルさんが現れた。
「視察してみて如何でしたか? 魔物だと人とは違って色んな可能性があるのですね。勉強になりました」
「いえ、お役に立ててなによりです。でも、魔物って知ってたんですね」
「手紙で教えて頂きましたからね。初めは何のいたずらかと思いましたが、来てみて更に驚きました。伝承でしか聞く事の無い魔王蜘蛛がいたのですから」
手紙? 誰かが手紙で知らせたのか。手紙が書ける者になると絞られてくるな。魔物は手紙を書かないからな。
不穏な魔物名が出て来たけど、今は犯人探しが先だ。
「大量の報告書には書いてありましたが、まさか本当にイージ卿の配下として地下施設を作ってるとは夢にも思わず、こちらで見た時には流石の私も腰を抜かしてしまいました」
人生が終わったと感じた瞬間とは正にこの事を言うのですね。と乾いた笑いで遠くを見つめるコーポラルさん。
走馬灯を見たんだろうね。俺にも経験があるよ。クラマと初めに出会った時に狐火の中で見たよ。
あれ? ちょっと待って? 今、どこかで聞いたようなフレーズがあったような……
「コーポラルさん? 今の話、もう一度してくれる?」
「え? は…はい。走馬灯を見ましたが」
「いや、それじゃない。それはそれで共感できるけど、それ以外で」
「イージ卿も走馬灯を……たしかに、このモックン殿の印象は悪魔級ですからね」
悪魔というフレーズで一瞬ドキッとしたけど、悪魔がバレたわけでは無さそうだね。
「そ、そうだね…他にも何か言ってたでしょ」
「他ですか? 他には地下施設ですか?」
「……違うな。他は?」
「うーん……報告書ですか?」
「それだ!」
「報告書でしたか。確かにあれだけの全体計画・施工図面・行動計画書・それによる経済効果などを綺麗に纏めた素晴らしい報告書は始めて見ました。イージ卿は素晴らしいお仲間をお持ちなのですね。一度ご紹介頂けませんか」
読むのにも一苦労しました。と、また苦笑いのコーポラルさんだ。
「その報告書って紙でしたか?」
「そうなのです、よくご存知ですね。あれだけ上質の紙も珍しいですが、あれだけの量を用意できるのにも感心しました」
タマちゃん! 真犯人はお前か!
俺の知らないところで、何を色々とやってんだよ!
「ちょーっとタンマ。モックン、少しの間コーポラルさんの相手してくれる?」
『承知!』
いや、そんなに気合を入れる場面ではないよ? ほら、コーポラルさんも引いてるじゃないか。
まぁ、会うのは二回目だろうから放っておいても大丈夫か。
コーポラルさんの事はモックンに任せて、少し離れた場所に移動した。
「ここなら少しぐらい声を出しても聞こえないか」
さて、何から聞けばいいだろうか。もちろん、今回の件からでいいよね。
『タマちゃん! なに勝手な事をやってんだよ! 人間に悪魔ってバレたら面倒な事になるだろ!』
『バレてません』
しれーっと他人事のように答えるタマちゃん。
『いや、バレるとかバレないとかの問題じゃなく…いや、それも問題だけど、なんで勝手に手紙を出したりしてるのかって聞いてんだよ!』
『エイジのためです』
『俺のため?』
『そうです、引いてはトレーズ様のためでもあります』
『? どういう意味?』
『エイジはこちらの地域で拠点を探してました』
『うん、そうだね』
『先日、エルフの全解析を済ませた時に拠点地点として良い場所がありましたのでエルフの長に繋ぎをつけました』
うん、花子さんの件だね。あの脅しという名のお願いだったやつ。
『うん、それで?』
『エイジは下水道事業を模索していました』
『うん、そだね』
『モックンだけでは完結しないのでコーポラルを引き込みました』
『そこだよ! だから、なんでそうなるんだよ。面倒な事になるだろ。下手したら俺は人類の敵認定されるんだぞ!』
『トレインを行使したのに今さらですか。大丈夫です、コーポラルは絶対に裏切りません』
ぶっ! それはもう忘れたいのに……
『トレインって……あれは知らずにやったんだから仕方ないだろ。まぁ、仕方ないで済まされないのは分かるけど。だから、後始末も手伝ったし、こうやって人間の豊かな暮らしのために貢献してるじゃないか。それと、コーポラルさんが裏切らないのと、どう関係があるんだよ』
『コーポラルは王家の密偵ですので脅しは効きません。だから、欲望で縛りました』
さらーっと重大ネタが暴露されたけど、欲望って何だ?
『欲望?』
『はい、岩宿ザガンの大浴場無料パス無期限バージョンです』
『へっ?』
『それと、エルフのテリトリーにある温泉招待パス無期限バージョンです』
『はい?』
『家族と知り合い五名まで同行できます』
『うん、だから? それで何をどうしたらコーポラルさんが裏切らないんだよ』
『食事は付きません』
『いや、だからそうじゃなくて』
『食事は付けましょう。でも宿泊は付けません』
『そうじゃないって! それのどこが欲望で、コーポラルさんが裏切らない確証になるかって聞いてんだよ!』
『間違いなく裏切りません。裏切らない確立100%です』
『質問の回答になってないって……はぁ…もし裏切ったら?』
『裏切りません』
その自信はどっから来るんだよ、まったく。
『もし、コーポラルさんが裏切ったらタマちゃんが何とかしてよね』
『裏切りません』
『……』
タマちゃんの話はどうも煮え切らなかったが、もうコーポラルさんが知っているという事実は取り消せないので、このまま押し通す事に決めた。
コーポラルさんが裏切らないようにと願う一方で、これ以上、特に悪魔の事がバレないように願うエイジだった。
入り口からは螺旋状のスロープになっていて『便利だなぁ』『いい仕事するなぁ』と思わせるところまではよかった。ノワールに乗ったまま下りれたからね。
そしてトンネル本体の地下に下り立つと、予想通り『なんだこれ』だった。
それは大きな大きなワンフロアの空間になっていた。ここまで来るとワンフロアという言葉も当てはならないと思う。
もう都市と言ってもいいだろう。
まだ初日じゃなかったの?
俺が来たのが分かったのか、モックンが飛んできた。文字通り飛んで来たのだ。
『エイジ様! 視察でございますか!』
まぁ、視察ではあるね。主にお前達の行動の。
『如何でございますかな。本来ならエイジ様の秘密兵器工場にしようと早くから始めておりましたが、ここに下水道を作ると聞いた時、ベストタイミングだと心躍りました。いやぁ、これは我に下った天命だと直感致しましたな。ワッハッハッハー』
……俺はバッドタイミングだと直感したよ。そんな天命なんてねーし! ただの下水道工事だし!
あと秘密兵器工場? そんな恐ろしいもんなんて作らねーよ!
「それで下水道工事の件なんだけど、こっからどうやって下水道にする気だよ」
『お任せくだされ! 実は既に完成しておるのです!』
え? これで完成? ただの空間にしか見えないけど……
『天井をご覧ください』
「ん?」
天井を見上げた俺に、モックンが説明してくれる。
『あの天井部分がキズナ様に指定された地下三〇メートルです。そこに我の糸を筒状にして何万本と張り巡らせております。地上から流れて来たものは全て糸を通って外へと流されていくのです。ですので、ここはそのまま秘密兵器工場として使えるわけですな』
うん、また出て来たね、秘密兵器工場。作らないからね。
でも、そうか。あの天井の糸が配管となってるんだ。いい仕事はしてくれるんだけどね。何かオチがついてるんだよ。普通にできないもんかね?
「あれ? それなら次に待ってるザガンの仕事は……」
『はい、糸は防水・防音・防塵・防汚・防斬・防魔法になってますから必要ありませんな。しかも、外側には粘着力があり侵入者が来ても張り付いて身動きできなくなりますし、自動発光しますので、ここはいつでも明るいのです』
す、すごい……モックンの糸ってそんな糸だったんだ。
これはザガンの魔法の負けだな。必要ないわ。
「じゃあ、もう上の工事を始めていいね。コーポラルさんに……ちょっと待って? これって改修工事になった場合誰がやるの? 管理はどうする? 誰にでも出来ないよね」
『当然、今は我しか出来ません』
それってマズくない? モックンがいつもここにいるわけじゃないし、何か突発的な事が起こったらどうするんだ?
これは初めての事業だし、不足の事態が起こっても不思議じゃない。
当面はモックンにいてもらうとしても、後の管理は誰がするの? いや、できるの?
「これって壊れたりしない?」
『もちろん壊れません!』
「寿命はどれぐらい?」
『千年は壊れないでしょうな』
「増やしたりできる?」
『もちろん出来ません!』
「え? できないの?」
『壊れないのですから継ぎ足しはできません!』
そこはダメじゃん! なに自慢気に言ってんの! ここの人口が増えるとか、領地拡大なんかしたら増設できないと困るでしょ。
『もし、増やしたい時は新しいラインを作ればいいのです。最終地点のあそこに繋ぐだけですから』
モックンがそう言って顔をそちらに向ける。俺も同じ方向を向くと、そこには壁? があった。
「あの壁?」
『あれは壁ではありません、溜池です。二層になっているため、あれだけの高さが必要なのです。上から来たものは全てあそこの上層に溜められ、上層にいるスライムがある程度処理した後に下層に流れ、トイレで使用していた魔法陣を使用し、浄化して川に流します』
すごいな、ファンタジーならではの処理システムだな。
だけど、スライムって危険だって聞いたぞ。
「スライムは大丈夫か? 大繁殖するって聞いたけど」
『はっ! 問題ありません。スライムは我々の餌ですからな、繁殖してくれた方がいいのです』
おお、スライムの養殖みたいな感じか。これは魔物ならではの発想だな。
「我々?」
『我の子供の餌にします。ここで育てて、行く行くはここの管理を任せます』
おお! そこまで考えてくれてたのか。でも待てよ。前回もプーちゃんに指導を受けたって言ってたよな。
これだけの事を人間の知識の薄いモックンが考え付くはずがない! これは断言してもいい!
という事は、誰かの入れ知恵か。
「モックン、誰かに相談した?」
『はっ! コーポラルという御仁に色々とご教授頂きました。エイジ様のご友人と伺っておりますぞ。いやぁ、中々物知りなご友人をお持ちですなぁ。我も色々と参考になりました』
「えっ! お前コーポラルさんに会ったの!?」
『はっ!』
「本当に?」
『はっ! 人間にしては中々肝の据わった御仁でしたな』
ダメじゃ~ん! 悪魔関係は内緒なのに~。いや、待て待て。モックンだけなら魔物で済む。
「アッシュの正体とか言ってない?」
『アシュタロト様の事など我が口にするのも憚れます。一言も申しておりません』
「ザガンやダンタリアンの事も?」
『もちろんです』
はぁ~、それだけはよかったよ。ちょっと安心した。でも、モックンの事は誰がコーポラルさんに言ったんだろ。
たしかに、よく考えてみると入り口に歩哨が立ってる時点でコーポラルさんに気付かれてると疑うべきだったな。どこまで気付いてるか心配だなぁ。
「誰に聞いて来たか聞いてない?」
『それは聞いておりません』
「そっかぁ…誰なんだろうなぁ」
コーポラルさんに聞けば早いんだろうけど、聞き難いな。何か密告者を白状させるみたいで気分がよくない。
でも、候補は限られてるんだよな。アッシュ、ザガン、ダンタリアン、ぐらいだよな? あとは岩宿ザガンの面々。他はエルフぐらいだけど、エルフは入れなくてもいいか。
その内で、ここで下水道工事をしてるのを知ってるのは三人の悪魔だけ。でも、あの三人がコーポラルさんに教えるとは思えないんだけどな。
だとしたら、俺の知らない誰かが知らせた? 何のために? 俺が魔物と繋がってると公表して失脚を狙ってる奴がいるのかもしれないな。
出る杭は打たれる……こういうのがあるから目立ちたくないんだよな。
ま、コーポラルさんに話もあるし、それとなく聞いてみようか。
「あー! やはりこちらでしたか。王城に訪ねて来たと聞きましたので、こちらだと予想して来てみて正解でした」
「あっ、コーポラルさん。今から行こうと思ってたんです」
ちょうど、行こうと思った所にコーポラルさんが現れた。
「視察してみて如何でしたか? 魔物だと人とは違って色んな可能性があるのですね。勉強になりました」
「いえ、お役に立ててなによりです。でも、魔物って知ってたんですね」
「手紙で教えて頂きましたからね。初めは何のいたずらかと思いましたが、来てみて更に驚きました。伝承でしか聞く事の無い魔王蜘蛛がいたのですから」
手紙? 誰かが手紙で知らせたのか。手紙が書ける者になると絞られてくるな。魔物は手紙を書かないからな。
不穏な魔物名が出て来たけど、今は犯人探しが先だ。
「大量の報告書には書いてありましたが、まさか本当にイージ卿の配下として地下施設を作ってるとは夢にも思わず、こちらで見た時には流石の私も腰を抜かしてしまいました」
人生が終わったと感じた瞬間とは正にこの事を言うのですね。と乾いた笑いで遠くを見つめるコーポラルさん。
走馬灯を見たんだろうね。俺にも経験があるよ。クラマと初めに出会った時に狐火の中で見たよ。
あれ? ちょっと待って? 今、どこかで聞いたようなフレーズがあったような……
「コーポラルさん? 今の話、もう一度してくれる?」
「え? は…はい。走馬灯を見ましたが」
「いや、それじゃない。それはそれで共感できるけど、それ以外で」
「イージ卿も走馬灯を……たしかに、このモックン殿の印象は悪魔級ですからね」
悪魔というフレーズで一瞬ドキッとしたけど、悪魔がバレたわけでは無さそうだね。
「そ、そうだね…他にも何か言ってたでしょ」
「他ですか? 他には地下施設ですか?」
「……違うな。他は?」
「うーん……報告書ですか?」
「それだ!」
「報告書でしたか。確かにあれだけの全体計画・施工図面・行動計画書・それによる経済効果などを綺麗に纏めた素晴らしい報告書は始めて見ました。イージ卿は素晴らしいお仲間をお持ちなのですね。一度ご紹介頂けませんか」
読むのにも一苦労しました。と、また苦笑いのコーポラルさんだ。
「その報告書って紙でしたか?」
「そうなのです、よくご存知ですね。あれだけ上質の紙も珍しいですが、あれだけの量を用意できるのにも感心しました」
タマちゃん! 真犯人はお前か!
俺の知らないところで、何を色々とやってんだよ!
「ちょーっとタンマ。モックン、少しの間コーポラルさんの相手してくれる?」
『承知!』
いや、そんなに気合を入れる場面ではないよ? ほら、コーポラルさんも引いてるじゃないか。
まぁ、会うのは二回目だろうから放っておいても大丈夫か。
コーポラルさんの事はモックンに任せて、少し離れた場所に移動した。
「ここなら少しぐらい声を出しても聞こえないか」
さて、何から聞けばいいだろうか。もちろん、今回の件からでいいよね。
『タマちゃん! なに勝手な事をやってんだよ! 人間に悪魔ってバレたら面倒な事になるだろ!』
『バレてません』
しれーっと他人事のように答えるタマちゃん。
『いや、バレるとかバレないとかの問題じゃなく…いや、それも問題だけど、なんで勝手に手紙を出したりしてるのかって聞いてんだよ!』
『エイジのためです』
『俺のため?』
『そうです、引いてはトレーズ様のためでもあります』
『? どういう意味?』
『エイジはこちらの地域で拠点を探してました』
『うん、そうだね』
『先日、エルフの全解析を済ませた時に拠点地点として良い場所がありましたのでエルフの長に繋ぎをつけました』
うん、花子さんの件だね。あの脅しという名のお願いだったやつ。
『うん、それで?』
『エイジは下水道事業を模索していました』
『うん、そだね』
『モックンだけでは完結しないのでコーポラルを引き込みました』
『そこだよ! だから、なんでそうなるんだよ。面倒な事になるだろ。下手したら俺は人類の敵認定されるんだぞ!』
『トレインを行使したのに今さらですか。大丈夫です、コーポラルは絶対に裏切りません』
ぶっ! それはもう忘れたいのに……
『トレインって……あれは知らずにやったんだから仕方ないだろ。まぁ、仕方ないで済まされないのは分かるけど。だから、後始末も手伝ったし、こうやって人間の豊かな暮らしのために貢献してるじゃないか。それと、コーポラルさんが裏切らないのと、どう関係があるんだよ』
『コーポラルは王家の密偵ですので脅しは効きません。だから、欲望で縛りました』
さらーっと重大ネタが暴露されたけど、欲望って何だ?
『欲望?』
『はい、岩宿ザガンの大浴場無料パス無期限バージョンです』
『へっ?』
『それと、エルフのテリトリーにある温泉招待パス無期限バージョンです』
『はい?』
『家族と知り合い五名まで同行できます』
『うん、だから? それで何をどうしたらコーポラルさんが裏切らないんだよ』
『食事は付きません』
『いや、だからそうじゃなくて』
『食事は付けましょう。でも宿泊は付けません』
『そうじゃないって! それのどこが欲望で、コーポラルさんが裏切らない確証になるかって聞いてんだよ!』
『間違いなく裏切りません。裏切らない確立100%です』
『質問の回答になってないって……はぁ…もし裏切ったら?』
『裏切りません』
その自信はどっから来るんだよ、まったく。
『もし、コーポラルさんが裏切ったらタマちゃんが何とかしてよね』
『裏切りません』
『……』
タマちゃんの話はどうも煮え切らなかったが、もうコーポラルさんが知っているという事実は取り消せないので、このまま押し通す事に決めた。
コーポラルさんが裏切らないようにと願う一方で、これ以上、特に悪魔の事がバレないように願うエイジだった。
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