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第12章 二つ目の地域制覇へ
第14話 地図一枚目の場所へ
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久し振りに爽快な朝だ。
何日振りだろう。
下品な話で申し訳ないんだけど、女性と二人っきりで寝るのは久し振りだったから。そりゃ、もう、ねぇ。
ユーは俺の嫁になる予定なんだし、問題ないよね。
ちょっと勝ち組気分だよ。
ま、それは置いといて、今日の予定だ。
昨夜もそうだったけど、今朝の朝食はユーの希望でバーガーセットだ。ドリンクはコーラ。
衛星がいないと食べられないから非常に恋しかったって言われて、俺も下心満載だったからユーのご機嫌取りのために納得するまで出してあげたよ。コーラLが二杯と、ハンバーガーが八個にポテトLが二個。
ホント、どこにそんなに入るのか、呆然と見てたよ。
今朝も。
「エイジ、おかわり~!」
「もう五個目だよ? 大丈夫?」
朝からこれだけ食べれるのは凄い。朝は寝起きで食べ辛いだけで、好きなものなら食えるんだろうか……いや、俺には無理だな。
「だって、エイジのせいで体力使いすぎちゃったんだから、まだまだ補給しないと」
「まぁ、いいけど、あまりそういうのは言わない方がいいと思うよ?」
「人前では私だって言わないって。エイジと二人だけだからだよー」
「そう? まぁ…いいけど……でも、これからヴァイスに乗るんだから程ほどにね。魔物や野盗には会わないと思うけど、気分が悪くなっても知らないよ」
「私、エイジとノワールに乗るからいいの。寝ちゃうと思うけど、寝ちゃったら落ちないように支えててね」
「え? まぁいいか」
ヴァイスは空馬になるけど、一緒について来てもらえばいいし、俺もその方が嬉しい。久し振りにユーとの二人乗りだ。
「エイジー、食べたらすぐに出発するの?」
「そのつもりだけど、何かあるの?」
「三十分ぐらいいいかな。マイアさんに言われてる日課があるの」
昨夜、色々と話もできたが、その中で今までユーが来なかった理由も話してくれた。
どうやらユーはマイアに八割、クラマに二割の割合で修行をつけてもらってたそうだ。
マイアには主に聖属性をメインに各種魔法を習い、クラマには魔物の生態や弱点を習うと共に対薙刀での稽古もつけてもらってたとか。
クラマの使う薙刀術は、刀術に似ている部分が多くあるそうで、非常に参考になったらしく、刀術や剣術に磨かきをかけられたと言ってくれたのだが、表情は嬉しそうに笑っているにも関わらず、目は遠くを見ていて感情が抜け落ちていた。
何がったのか、どんな修行だったのかは、聞いてはいけない気がした。
仕上げに、クラマ式にマイア式のレベリングを熟す毎日を送り、ようやくマイアから免許皆伝のお達しを受け、こちらに来る事ができたと笑って話してくれた。これは本心から言ってくれたんだろう、修行の話と違って目が輝いていたから。
「それでも、毎日朝と晩には、型を十分、素振りを十分、架空の相手との乱取りを十分義務付けられたの。エイジが起きる前にやろうと思ってたんだけどねー」
「起きれなかったのは俺のせいじゃないと思うよ? だって俺の知ってるユーは毎朝寝坊してたじゃないか」
「むぐ……これでもちょっとは起きれるようになったんだからいいじゃない。だから、明日からは起こしてね」
「……わかった。その鍛錬は俺が見ててもいいの?」
「構わないわよ。なんなら私と模擬戦する?」
「お断りします」
そんなの無理に決まってんじゃん! 俺のレベルは152だよ? しかも熟練度が最低平均の。
今、【鑑定】で見たけど、ユーのレベル四桁になってんじゃん! そんな勇者様の練習相手になるわけないだろ! 俺を殺す気か!
でも、見せてもらうのは有り難いかも。今までは戦う必要もなかったから我流でしかやってないんだ。
もしかして、それが熟練度アップの障害になってたとか? 有り得そうだなぁ。
よし! ユーの鍛錬をしっかり見て真似しよう!
と、意気込んでた時期が俺にもありました。
あんなのどうやって真似すんだよ! だって見えねーんだもん、真似できるはずがないじゃん!
型? 素振り? 乱取り? ぜーんぶ、残像すら見えなかったよ。
残像って、アニメなんかでよく分身の術で使われたりするよね? その残像すら残らないから、ユーの姿はずっと消えてるんだよ。
音もブン、ブン、から始まったかと思うと、すぐにブブブブブブブって変わって、ビ――――になって、最後は音が消えるんだ。
音って消えるんだーって初めて知った瞬間だったよ。さすが勇者だ、今なら魔王も鼻息だけで倒せるんじゃないと思うよ。
途中で遠くの方で樹が吹っ飛んだんだけど、それもユーの鍛錬のせいなんだって。
近距離だけじゃなく、遠距離にも対応するように、剣圧を飛ばしたんだって。風圧じゃないよって言われたけど、それのどこが違うのかなんて分かんないから。
ちゃんと、何もいないところを目掛けてるらしいけど、町中じゃやらないよね? それぐらいの常識は持ってたよね?
三十分後、朝の鍛錬を終えた直後のユーは薄っすらと汗をかいてたので、風呂の簡易小屋を出してあげた。
あれだけの鍛錬をして、息は少し上がってたものの、たったあれだけしか汗をかかないユーを見て、ユーには絶対に逆らってはダメだと固く誓うのであった。
「ホントに頑張ったんだよ? エイジのために強くならなきゃって思って。だって、魔王に対して私って何もできなかったじゃない。勇者なのにエイジに守られてばっかりで、私、凄っごく悔しかったんだー。だからね、いっぱい稽古もしたし魔物も倒してレベルアップもしたんだー。どう? 私って結構強くなったと思わない?」
出発したあと、ノワールの上でそんな事を尋ねて来るユー。
はい、もちろん思います。と、コクコクと肯く俺。
というか、強くなりすぎです。今のあなたに誰が敵うと言うのでしょうか。いたら連れて来てください。という言葉を何とか堪えたので肯くだけになってしまった。
そんな俺にはお構いなしで続けるユー。
「それでねー、これ見てくれる?」
と、ユーは刀身の中ほどから折れた剣を出した。
「前にエイジに貰った剣なんだけど、ちょっと本気を出したら折れちゃってさ。エルダードワーフの剣でも魔物を百体も倒せば折れちゃうし、もっと強い剣って無いかな?」
本当だ。鑑定結果では【折れた勇者の剣】ってなってるよ。
今、簡単にエルダードワーフの剣でももたないって言い切っちゃったけど、俺の知ってる限りエルダードワーフの作った武器より強力なものなんて無いんだけど。
そもそも強くなりすぎなんだよ。普通、あれだけ強い剣が折れたりしないからね!
でも、武器が無いと折角俺のために強くなってくれたユーも気の毒だし、何か無いもんかね。
『衛星、ユーが振るっても折れない強力な武器って作れる?』
『Sir, yes, sir』
ポトリとノワールの背に二人乗りしている二人の間に何かが出た。
俺が前なので見えなかったのだが、ユーがすぐに拾って俺に聞いて来る。
「ねぇ、これってエイジが出したの?」
そう言って見せてくれたのは刀の柄だった。
「うん、そうなんだけど、それってユーに分かるかな?」
俺に分からないものは、誰かに答えさせる。最近編み出した技だ。
”必殺、他人任せ”だ!
これって結構使えるんだよ。”必殺、知ったかぶり”よりも気に入ってる技だ。
知らないものでも知ってる振りして尋ねると、何がしか答えてくれるんだ。特に専門のものならば、それなりの答えをしてくれるから、あとは「正解」って言ってあげればいいだけ。
今回は、ユーだし、剣の事なら俺より詳しいはずだしね。
あんな柄だけ見せられても、俺にはライトセイバー? って答えるぐらいしかできないからね。
「う~ん、こうやって使うのかな?」
ユーは柄を握ったまま首を傾げて、その手を横に向けて伸ばした。
すると、シャッと刀身が現れた。ビームじゃなくて、普通に刀身が現れたのだ。
柄の中に引っ込んでたのなら長さが合わない。無からいきなり刀身が現れたようにしか見えなかった。
「凄~い! これって私の魔力で剣にでも刀にでもなるよ! 長さも自由にできるし、しかも強そう! それにもし折れちゃっても、また私の魔力で再現できちゃうって。なにこれ、貰っちゃっていいの!?」
「う、うん、いいよ」
一応、鑑定してみた。
【ユーの剣】
ユーの魔力により刀身が作り出される。強さや長さはユーが込める魔力量により変動。形は使用者(ユー)のイメージを再現する。(ユー専用)
補足。刀身を消したい時は、製作者(ユー)が消えろと強く念じるだけでいい。鞘は無い。
なんちゅーチートというか、ご都合主義の武器なんやねん! 今まで衛星に頼りっきりだった俺が言うのも変かもしれないけど、ユーにとって都合が良すぎるだろ! 変な大阪弁が出ちゃうぐらい変な武器だよ!
しかも、既にユーは使いこなしてるし!
「ありがとう、エイジ!」
「う、うん……」
後ろからギュッと抱き付かれると、何もかも忘れちゃうね。うん、良かったんじゃない?
それから暫く、ユーは後ろで色々試していた。
それを俺も見ていたけど、本当に色んな形状に出来るようで、短剣や長剣、刀に短刀、バスターソードにシミター、レイピアにエストックなどなど、色んな形状に変化させていた。
それも、いちいち刀身を消さずに形状変更させているのだ。渡した身ではあるけれど、すっかり使いこなしているユーに嫉妬を覚えるのであった。
でも、すぐに思い直した。俺が持ってても使う時って来ないんだろうなって思ったら、喜ぶユーを見て俺も素直に嬉しい気持ちになった。
と、共に、小さい男だと反省もした。
「ねぇエイジ。これって何処に向かってるの?」
【ユーの剣】の操作にも慣れ、ヒマを持て余したユーが尋ねて来た。
「ユーは地図巡りを覚えてる?」
「うん、覚えてるよ。あれって、やっぱり離れ離れになってのと関係あるの?」
そうか、それも言ってなかったっけ。でも、トレーズ様の事って言ってもいいのかな。誰かに話してもいいとか聞いてないし、一応保留かな。本人はエルフの前にも出て来てたけど、エルフ達には光にしか見えなかったようだし、ここは念の為、黙っておこう。
「関係あるようなないような……」
「なにそれ、言いたくないのね!」
「いや、言いたくないってわけじゃ……」
「じゃあ、言えないって事?」
「まぁ、そんなような感じ」
「……うーん、まぁいいわ。言えるようになったら絶対教えてよ!」
「うん、わかった」
「それで、その地図巡りと行き先は関係……まさか、また……」
「うん、そうなんだ。そのまさかだよ」
そう答えた途端、ユーが後ろからギュッと抱き着いてきた。
「やだよ…またどっかに行っちゃうなんて絶対やだよ。そんな地図なんて燃やしちゃいなよ……グスン」
泣いてしまったユー。
急にいなくなっちゃったもんな。でも、俺だってどうする事もできなかったんだ。
そりゃ、一度行った時に、ちゃんと探して説明すればよかったのかもしれないけど、あの時はプーちゃんしかいなかったわけだし、俺もトレーズ様からの使命ですぐに戻らないといけなかったわけだし……
……言い訳だな。
これだけ心配させたユーに対してあまりに不実すぎるな。
「ごめん、ユー」
「謝ってほしいんじゃない!」
「……うん、ごめん」
「もう地図巡りは辞めようよ」
「ごめん、それはできないんだ」
「だって、エイジがどっかに行っちゃうよ!」
「もう行かないから」
「……ホント?」
「うん……たぶん」
「そんなんじゃイヤ! 絶対って言って!」
そんなの俺にも分かんないんだよー。
「分かんないけど行かない」
「なにそれ、答えになってない!」
「でも、もし何処かに行っちゃっても、絶対に帰って来るから」
これだけは本当だ。今回もなるべく早く片をつけて自宅一号に帰るつもりだったんだ。
「ダメ! もし行くなら私も一緒に連れてって!」
「……うん、そだね」
「本当!?」
「たぶん…それぐらいならできそうかもって……」
衛星に言っとけば何とかなるんじゃない? って勝手に思ってしまった。うん、できるんじゃない?
「絶対だよ! 絶対の絶対だよ!」
「うん、わかった。わかったから、もうちょっと……」
「絶対の絶対だからね!」
「うん、だから、もうちょっと緩めて……」
「今度いなくなったら承知しないから!」
「うん、もう…意識が……」
「分かってるの!」
「うん、わかって…る……」
「本当に分かってるの!? 私がどれだけ心配したのか、本当に分かってるの!?」
「うん……」
「どれだけ寂しかったかわかってるの!」
「う…ん……」
「ねぇ! エイジ! ちゃんと聞いてるの!」
「……」
「エイジ? エイジ! どうしちゃったのよ!」
こうしてノワールが一枚目の地図の場所に到着するまでイチャつく二人であった。
エイジはもちろん、衛星に回復されるので気を失うだけで済んでいる。覚醒するたびにユーのハグという名のベアバッグが待っていたのだが……
何日振りだろう。
下品な話で申し訳ないんだけど、女性と二人っきりで寝るのは久し振りだったから。そりゃ、もう、ねぇ。
ユーは俺の嫁になる予定なんだし、問題ないよね。
ちょっと勝ち組気分だよ。
ま、それは置いといて、今日の予定だ。
昨夜もそうだったけど、今朝の朝食はユーの希望でバーガーセットだ。ドリンクはコーラ。
衛星がいないと食べられないから非常に恋しかったって言われて、俺も下心満載だったからユーのご機嫌取りのために納得するまで出してあげたよ。コーラLが二杯と、ハンバーガーが八個にポテトLが二個。
ホント、どこにそんなに入るのか、呆然と見てたよ。
今朝も。
「エイジ、おかわり~!」
「もう五個目だよ? 大丈夫?」
朝からこれだけ食べれるのは凄い。朝は寝起きで食べ辛いだけで、好きなものなら食えるんだろうか……いや、俺には無理だな。
「だって、エイジのせいで体力使いすぎちゃったんだから、まだまだ補給しないと」
「まぁ、いいけど、あまりそういうのは言わない方がいいと思うよ?」
「人前では私だって言わないって。エイジと二人だけだからだよー」
「そう? まぁ…いいけど……でも、これからヴァイスに乗るんだから程ほどにね。魔物や野盗には会わないと思うけど、気分が悪くなっても知らないよ」
「私、エイジとノワールに乗るからいいの。寝ちゃうと思うけど、寝ちゃったら落ちないように支えててね」
「え? まぁいいか」
ヴァイスは空馬になるけど、一緒について来てもらえばいいし、俺もその方が嬉しい。久し振りにユーとの二人乗りだ。
「エイジー、食べたらすぐに出発するの?」
「そのつもりだけど、何かあるの?」
「三十分ぐらいいいかな。マイアさんに言われてる日課があるの」
昨夜、色々と話もできたが、その中で今までユーが来なかった理由も話してくれた。
どうやらユーはマイアに八割、クラマに二割の割合で修行をつけてもらってたそうだ。
マイアには主に聖属性をメインに各種魔法を習い、クラマには魔物の生態や弱点を習うと共に対薙刀での稽古もつけてもらってたとか。
クラマの使う薙刀術は、刀術に似ている部分が多くあるそうで、非常に参考になったらしく、刀術や剣術に磨かきをかけられたと言ってくれたのだが、表情は嬉しそうに笑っているにも関わらず、目は遠くを見ていて感情が抜け落ちていた。
何がったのか、どんな修行だったのかは、聞いてはいけない気がした。
仕上げに、クラマ式にマイア式のレベリングを熟す毎日を送り、ようやくマイアから免許皆伝のお達しを受け、こちらに来る事ができたと笑って話してくれた。これは本心から言ってくれたんだろう、修行の話と違って目が輝いていたから。
「それでも、毎日朝と晩には、型を十分、素振りを十分、架空の相手との乱取りを十分義務付けられたの。エイジが起きる前にやろうと思ってたんだけどねー」
「起きれなかったのは俺のせいじゃないと思うよ? だって俺の知ってるユーは毎朝寝坊してたじゃないか」
「むぐ……これでもちょっとは起きれるようになったんだからいいじゃない。だから、明日からは起こしてね」
「……わかった。その鍛錬は俺が見ててもいいの?」
「構わないわよ。なんなら私と模擬戦する?」
「お断りします」
そんなの無理に決まってんじゃん! 俺のレベルは152だよ? しかも熟練度が最低平均の。
今、【鑑定】で見たけど、ユーのレベル四桁になってんじゃん! そんな勇者様の練習相手になるわけないだろ! 俺を殺す気か!
でも、見せてもらうのは有り難いかも。今までは戦う必要もなかったから我流でしかやってないんだ。
もしかして、それが熟練度アップの障害になってたとか? 有り得そうだなぁ。
よし! ユーの鍛錬をしっかり見て真似しよう!
と、意気込んでた時期が俺にもありました。
あんなのどうやって真似すんだよ! だって見えねーんだもん、真似できるはずがないじゃん!
型? 素振り? 乱取り? ぜーんぶ、残像すら見えなかったよ。
残像って、アニメなんかでよく分身の術で使われたりするよね? その残像すら残らないから、ユーの姿はずっと消えてるんだよ。
音もブン、ブン、から始まったかと思うと、すぐにブブブブブブブって変わって、ビ――――になって、最後は音が消えるんだ。
音って消えるんだーって初めて知った瞬間だったよ。さすが勇者だ、今なら魔王も鼻息だけで倒せるんじゃないと思うよ。
途中で遠くの方で樹が吹っ飛んだんだけど、それもユーの鍛錬のせいなんだって。
近距離だけじゃなく、遠距離にも対応するように、剣圧を飛ばしたんだって。風圧じゃないよって言われたけど、それのどこが違うのかなんて分かんないから。
ちゃんと、何もいないところを目掛けてるらしいけど、町中じゃやらないよね? それぐらいの常識は持ってたよね?
三十分後、朝の鍛錬を終えた直後のユーは薄っすらと汗をかいてたので、風呂の簡易小屋を出してあげた。
あれだけの鍛錬をして、息は少し上がってたものの、たったあれだけしか汗をかかないユーを見て、ユーには絶対に逆らってはダメだと固く誓うのであった。
「ホントに頑張ったんだよ? エイジのために強くならなきゃって思って。だって、魔王に対して私って何もできなかったじゃない。勇者なのにエイジに守られてばっかりで、私、凄っごく悔しかったんだー。だからね、いっぱい稽古もしたし魔物も倒してレベルアップもしたんだー。どう? 私って結構強くなったと思わない?」
出発したあと、ノワールの上でそんな事を尋ねて来るユー。
はい、もちろん思います。と、コクコクと肯く俺。
というか、強くなりすぎです。今のあなたに誰が敵うと言うのでしょうか。いたら連れて来てください。という言葉を何とか堪えたので肯くだけになってしまった。
そんな俺にはお構いなしで続けるユー。
「それでねー、これ見てくれる?」
と、ユーは刀身の中ほどから折れた剣を出した。
「前にエイジに貰った剣なんだけど、ちょっと本気を出したら折れちゃってさ。エルダードワーフの剣でも魔物を百体も倒せば折れちゃうし、もっと強い剣って無いかな?」
本当だ。鑑定結果では【折れた勇者の剣】ってなってるよ。
今、簡単にエルダードワーフの剣でももたないって言い切っちゃったけど、俺の知ってる限りエルダードワーフの作った武器より強力なものなんて無いんだけど。
そもそも強くなりすぎなんだよ。普通、あれだけ強い剣が折れたりしないからね!
でも、武器が無いと折角俺のために強くなってくれたユーも気の毒だし、何か無いもんかね。
『衛星、ユーが振るっても折れない強力な武器って作れる?』
『Sir, yes, sir』
ポトリとノワールの背に二人乗りしている二人の間に何かが出た。
俺が前なので見えなかったのだが、ユーがすぐに拾って俺に聞いて来る。
「ねぇ、これってエイジが出したの?」
そう言って見せてくれたのは刀の柄だった。
「うん、そうなんだけど、それってユーに分かるかな?」
俺に分からないものは、誰かに答えさせる。最近編み出した技だ。
”必殺、他人任せ”だ!
これって結構使えるんだよ。”必殺、知ったかぶり”よりも気に入ってる技だ。
知らないものでも知ってる振りして尋ねると、何がしか答えてくれるんだ。特に専門のものならば、それなりの答えをしてくれるから、あとは「正解」って言ってあげればいいだけ。
今回は、ユーだし、剣の事なら俺より詳しいはずだしね。
あんな柄だけ見せられても、俺にはライトセイバー? って答えるぐらいしかできないからね。
「う~ん、こうやって使うのかな?」
ユーは柄を握ったまま首を傾げて、その手を横に向けて伸ばした。
すると、シャッと刀身が現れた。ビームじゃなくて、普通に刀身が現れたのだ。
柄の中に引っ込んでたのなら長さが合わない。無からいきなり刀身が現れたようにしか見えなかった。
「凄~い! これって私の魔力で剣にでも刀にでもなるよ! 長さも自由にできるし、しかも強そう! それにもし折れちゃっても、また私の魔力で再現できちゃうって。なにこれ、貰っちゃっていいの!?」
「う、うん、いいよ」
一応、鑑定してみた。
【ユーの剣】
ユーの魔力により刀身が作り出される。強さや長さはユーが込める魔力量により変動。形は使用者(ユー)のイメージを再現する。(ユー専用)
補足。刀身を消したい時は、製作者(ユー)が消えろと強く念じるだけでいい。鞘は無い。
なんちゅーチートというか、ご都合主義の武器なんやねん! 今まで衛星に頼りっきりだった俺が言うのも変かもしれないけど、ユーにとって都合が良すぎるだろ! 変な大阪弁が出ちゃうぐらい変な武器だよ!
しかも、既にユーは使いこなしてるし!
「ありがとう、エイジ!」
「う、うん……」
後ろからギュッと抱き付かれると、何もかも忘れちゃうね。うん、良かったんじゃない?
それから暫く、ユーは後ろで色々試していた。
それを俺も見ていたけど、本当に色んな形状に出来るようで、短剣や長剣、刀に短刀、バスターソードにシミター、レイピアにエストックなどなど、色んな形状に変化させていた。
それも、いちいち刀身を消さずに形状変更させているのだ。渡した身ではあるけれど、すっかり使いこなしているユーに嫉妬を覚えるのであった。
でも、すぐに思い直した。俺が持ってても使う時って来ないんだろうなって思ったら、喜ぶユーを見て俺も素直に嬉しい気持ちになった。
と、共に、小さい男だと反省もした。
「ねぇエイジ。これって何処に向かってるの?」
【ユーの剣】の操作にも慣れ、ヒマを持て余したユーが尋ねて来た。
「ユーは地図巡りを覚えてる?」
「うん、覚えてるよ。あれって、やっぱり離れ離れになってのと関係あるの?」
そうか、それも言ってなかったっけ。でも、トレーズ様の事って言ってもいいのかな。誰かに話してもいいとか聞いてないし、一応保留かな。本人はエルフの前にも出て来てたけど、エルフ達には光にしか見えなかったようだし、ここは念の為、黙っておこう。
「関係あるようなないような……」
「なにそれ、言いたくないのね!」
「いや、言いたくないってわけじゃ……」
「じゃあ、言えないって事?」
「まぁ、そんなような感じ」
「……うーん、まぁいいわ。言えるようになったら絶対教えてよ!」
「うん、わかった」
「それで、その地図巡りと行き先は関係……まさか、また……」
「うん、そうなんだ。そのまさかだよ」
そう答えた途端、ユーが後ろからギュッと抱き着いてきた。
「やだよ…またどっかに行っちゃうなんて絶対やだよ。そんな地図なんて燃やしちゃいなよ……グスン」
泣いてしまったユー。
急にいなくなっちゃったもんな。でも、俺だってどうする事もできなかったんだ。
そりゃ、一度行った時に、ちゃんと探して説明すればよかったのかもしれないけど、あの時はプーちゃんしかいなかったわけだし、俺もトレーズ様からの使命ですぐに戻らないといけなかったわけだし……
……言い訳だな。
これだけ心配させたユーに対してあまりに不実すぎるな。
「ごめん、ユー」
「謝ってほしいんじゃない!」
「……うん、ごめん」
「もう地図巡りは辞めようよ」
「ごめん、それはできないんだ」
「だって、エイジがどっかに行っちゃうよ!」
「もう行かないから」
「……ホント?」
「うん……たぶん」
「そんなんじゃイヤ! 絶対って言って!」
そんなの俺にも分かんないんだよー。
「分かんないけど行かない」
「なにそれ、答えになってない!」
「でも、もし何処かに行っちゃっても、絶対に帰って来るから」
これだけは本当だ。今回もなるべく早く片をつけて自宅一号に帰るつもりだったんだ。
「ダメ! もし行くなら私も一緒に連れてって!」
「……うん、そだね」
「本当!?」
「たぶん…それぐらいならできそうかもって……」
衛星に言っとけば何とかなるんじゃない? って勝手に思ってしまった。うん、できるんじゃない?
「絶対だよ! 絶対の絶対だよ!」
「うん、わかった。わかったから、もうちょっと……」
「絶対の絶対だからね!」
「うん、だから、もうちょっと緩めて……」
「今度いなくなったら承知しないから!」
「うん、もう…意識が……」
「分かってるの!」
「うん、わかって…る……」
「本当に分かってるの!? 私がどれだけ心配したのか、本当に分かってるの!?」
「うん……」
「どれだけ寂しかったかわかってるの!」
「う…ん……」
「ねぇ! エイジ! ちゃんと聞いてるの!」
「……」
「エイジ? エイジ! どうしちゃったのよ!」
こうしてノワールが一枚目の地図の場所に到着するまでイチャつく二人であった。
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朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
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