衛星魔法は最強なのに俺のレベルが上がらないのは何故だろう

うしさん

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第03章 20枚の地図~護衛依頼編

第11話 アイリスと。

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 なんでこんなに睨まれないといけないんだよ。
 元はお前達がお礼すら言わずに消えたのが原因だろ? 俺はそれに対してちょっと嫌味を言っただけじゃないか。
 よし! 逆ギレして文句を……無理無理、俺がそんな強い訳無いだろ。……逃げたい……

「俺もちょっと散策に……」
「エイージ! 待つのニャ!」
 誤魔化して、とりあえずこの場から離れようとした所をターニャに止められた。

「な、なんでしょうか」
「お嬢様に謝るのニャ」
 謝るって? 俺が?
 ターニャを見て、ケニーを見て、アイリスを見た。

「…えーと…ごめんなさい」
「うん、なのニャ」
 なんで俺だけ謝らされた? そんなの理不尽だよ。じゃあ、俺にも謝るなりお礼を言うなりしてくれよ。あ、さっき言ってくれて嫌味を言ったら泣かれて……なんか俺、悪者になってる?

「お嬢様は、ずっと心を痛めておられた。町の門で別れた時にお礼もお別れの挨拶もできなかったからな。それは私達が急いで城に戻ったためなのだ。お嬢様に非は無い」
「そうなのニャ。もう門まで来たら帰る事しか頭に無かったのニャ。エイージの事なんてすっかり頭に無かったのニャ」
 納得いかない顔をしてる俺に、ケニーがあの時の事を説明してくれた。それをターニャがフォローする。
 それならお前達が俺に謝れよ! お前達二人には謝ってもらってないぞ! 言えないけど。

 でも、あの時って門にいた兵士も見て無いって言ってたけど……
 領主様の関係者の事は、他所者には言わないか。それとも本当に見て無かったか。門の所に兵士は何人もいたからな。
 だいたい俺が領主様の関係者には見えなかっただろうしね。

「それから捜索依頼をかけたのに全然見つからなかったのニャ」
「そうだ、商業ギルドの前でエイージを見つけた時には心躍ったぞ。それなのに、またしても不覚を取ってしまうとは。あれは魔法なのか」
 ランレイさんの情報通り、捜索依頼はやっぱりこの人達が出してたんだな。それでもあの時のケニーと突進を思い出すと……ブルブル。うー、無い無い。あんな形相で尋ね人を追いかけないって。あれは犯罪者か親の仇を捕まえる顔だよ。

「あの時もそうだけど、今日のこの料理もなのニャ」
 ケニーは迎撃の事を、ターニャは料理の事を魔法なのかと聞いてきた。
 魔法? 衛星って魔法なの? 返事をする魔法……そんなの無いね。

「うーん……魔法?」
「なんであたしに聞くのニャ! ちゃんと答えるのニャ!」
「そうだ! エイージ、これは魔法なのか!」
 
「う、うん。魔法かな?」
 ギロッ! ギラッ!
「いえいえいえいえ、魔法です。本当に魔法です!」

 二人に睨まれると怖ぇーよ。つい、魔法だって言っちまったよ。
 なんとか話題を変えたい。

「あっと、そう言えば、あのー、なんだったかな。あれあれ、もう喉まで出かかってるんだけどなぁ」
「あの後の事なのかニャ? あの後はもう大変だったのニャ」
「そうだな、本当に大変だった」
 おっ! そうそう。あの偽物事件の事だ。領主様も聞いてみろって言ってたし、話題転換にもちょうどいいじゃないか。

「そうそう、それでどうなったの? あいつら捕まったの?」
「捕まえたのはエイージにゃ、その後なのニャ!」
「そう、その後だ!」
「「なんであんなに解けない結び方をした!」のにゃ!」
 二人に声を揃えて文句を言われた。

 なんで文句ばっかり言われるんだよ。会ったら俺が文句を言ってやるはずだったのに。
 それに、衛星には拘束を解いてって言ったよ。衛星の事だからキチンとやってくれたはずなんだけど。

「君達の拘束は解かれなかったの? そんなはずは無いんだけど」
「あたし達のは解けたのニャ」
「あの魔族と間者の拘束が解けなかったのだ」
「それなら別にいいじゃん。拘束が解けない方が良かったんじゃないの?」

「もちろん魔族に関してはそうなのだが、間者の二人は解きたかったのだ」
 あー、いたねぇ、黒の奴と赤の奴が。忍者みたいな恰好をしてたけど、あいつらどっから出て来たんだろ。

「結び方は解きにくくしてあるし、切ろうにも中々切れない縄だった。あれは何で出来た縄なのだ。斬ったナイフの方が折れてしまったのだぞ」
 知らないよ、衛星に聞いてくれ。答えてはくれないと思うけど。結び方もベンさんの結び方を見て学んだんだろ。解けにくい結び方だって言ってたから。

「それで、結局は解けたんだろ? あの二人ってどこから出て来たの?」
「最後は剣で斬れたがな。あいつらは隣の領主の間者だった。領主様の様子が変わったので忍び込んで様子を見ていたと言っていたが、あれはもっと前から忍んでおったと見ている。他にも尋問したい事があるので、今は地下牢に閉じ込めている」

「魔族は?」
「あいつらは王都に移送した。我々では手に余るからな。少しの油断で逃げられたら、また狙われるかもしれんからな」
 ふーん、魔族って領主になって何をしようとしてたんだろうね。聞いちゃったら巻き込まれるかもしれないから聞かないけどね。

「あの魔族共は戦争の舞台をこちらにも広げたいと思っていたようだ。その事を伝えるために次期領主候補であるアンソニー様の元へと知らせに行くのが今回の目的だ」
 言っちゃったよー。目的地が聞けたのは嬉しいけど、目的まで言わなくてもいいんだよ。

「知らせに行くだけ?」
「そうだ」
「だったら別にその子じゃ無くてもいいんじゃない? 戦争地帯で危険だって聞いてるよ」
「これはアンソニー様たっての希望なのだ。知らせがある時はアイリスお嬢様が伝者として来るようにと。だからエイージに護衛をお願いしたのだ。それに……今は領内にいない方がいいかもしれぬ」

 なにそのシスコン的発想は。妹が大事なら戦地に来させちゃダメでしょ。
 でも、意味深な事を言ったな。領内にいない方がいいってどういう事だろ。
 いやいや聞くまい。聞いたら絶対巻き込まれるから。

「隣の領主がお嬢様を狙っているのだ」
 だから言うなって!
「もしも、アンソニー様に何かがあったら、次期領主はお嬢様の伴侶がなる。隣の領主は野心家で、我がフィッツバーグ領を狙っているのだ。何度も求婚を迫って来ていたが、こちらが一向に応じないから痺れを切らしたのだろう。最近ではお嬢様を攫おうとして何度か襲われた事がある。いずれも私が返り討ちにしてやったがな。あの間者共がお嬢様の予定を流していたと見ているのだ」

 あーあ、結構詳しく聞いちゃったよ。でも、何か依頼されても断ればいいんだよな。

「エイージ、頼んだぞ!」
 なにが?
「頼りにしてるのニャ」
 だから、なにが?

「お嬢様はエイージと別れてから、お主の名前を呼ばなかった日は無いのだ」
「そうなのニャ。毎日、見つかったかどうか聞かれて参ってたのニャ。今後は専属の護衛として頑張るのニャ」
 専属の護衛? 初めて聞きましたけど。話の流れがまったく掴めませんが。

「専属の護衛って何?」
「領主様から聞いて無いのかニャ?」
「うん、なにも」
 馬車の護衛としか聞いて無いし、詳細は行けば分かるとした言われてないね。
 まさか、詳細の中に専属の護衛も入ってる? いやいや、辞めてくれ。だってすぐ泣くんだよ? そんな子守りみたいな事はしたくないよ。【星の家】の子達は泣かないからね。もっと見習ってもらいたいもんだよ。

「では、今言おう、専属護衛の依頼だ。受けてもらえるな」
「お断りします」
 ノータイムで断ってやった。だって嫌だもん。

 そしたら、ケニーの後で聞いてたアイリスが両手で顔を覆って泣きだした。
 なんで泣くの? 泣くような事は言ってないと思うけど。

「エイージ、謝るのニャ」
「そうだ! 謝れ!」
 え? 俺⁉ うっそー

「……ごめんなさい」
 むー、納得行かねー

 その後はターニャが出した天幕というより、ログハウスの様な建物に三人は入って行った。
 去り際にケニーが見張りは頼むぞって言ってたから、全部こっち任せなんだろうね。
 詳細を何も決めて無いから、ベテランならこういう時って何をすればいいのか分かるんだろうけど、俺は第一回目だからね。
 でも、今後は護衛依頼をメインとしてやって行くと決めたんだから、覚えて行かないとね。

 あの建物は収納バッグから出したんだろうね、こういう時はホント便利だよ。俺もあーいうのを確保しておきたいな。

《衛星、あーいう建物をこっちにも作ってよ。今日は三人だから三部屋で風呂・トイレ付き。ベッドは大きめね》

『Sir, yes, sir』

 もう家を何軒も建ててもらってるからね。これぐらいの大きさの家なら衛星だったら楽勝だね。

 家はすぐに建った。ターニャが出したものと同じ様に基礎の部分が無い建物。基礎の無い小屋だね。
 固定するために四方は杭を打つか、ロープで支線を取って動かないようにするためのフックが付いている。
 ま、固定まで衛星がやってくれるんだけどね。

 あとは見張りだね。衛星に頼むけど、見張ってるフリはしておかないとな。

《衛星、この辺り一帯の安全確保をお願いね。魔物だけじゃなく、人間も襲ってくるかもしれないから、守ってよ。今日は六人と七頭の安全確保をお願いします。それと馬と天馬にも餌をあげといて。天馬は何を食べるのか知らないから任せるよ》

『Sir, yes, sir』

 これで、適当な時間になったら寝よう。

「今のは魔法ですか?」
 ドキッ!
 急に声を掛けられたからビックリした。

 振り向くとアイリスが立っていた。
 日本語で言ってよかったー。痛い奴だと思われる所だったよ。

「アイリス…さま?」
「アイリスと呼んでくださいませ、エイジさん」
「じゃあ、俺もエイジでいいよ。え? エイジさん?」
 凄ぇ、エイジって言えてるよ、この子。

「はい、初めは言えませんでしたが、練習して言えるようになりました」
 俺の名前を練習してくれたんだ。ちょっと感動。

「ありがとう、嬉しいよ。そ、その…アイリス?」
「はい」
 アイリスは嬉しそうに返事をしてくれた。

「ではエイジ。なぜ専属の護衛を引き受けてくださらないのですか?」
「その話か。でも、その前に大丈夫なの? ケニーやターニャはどうしたの?」
「あの二人はもう寝ました。いつも寝たら朝まで起きません」
 それでいいのか? お前ら護衛だろ?

「あ、でも、朝は早くから起きてくれますから、夜は早く寝てもらってるのです」
 こちらの意向であると二人を庇うアイリス。
 いい子だねぇ。

「エイジは…その……け、結婚をしてるようには見えないのですが……」
 大きなお世話だよ! モテないって事は自分でも十分わかってますよ!

「そうだね、見えないだろうね。してないもん」
 ちょっと拗ねた感じで言ってみた。ま、可愛くは無いだろうけど、失礼だぞってアピールにはなるんじゃない?

「…よかった。…か、か、彼女は、い、いるのですか?」
 どこまでえぐるんだよ! いるわけねーだろ!

「言わないといけない?」
「ぜ、是非教えてください! もしかして一緒にいる女の方がそうなのですか?」
「ああ、彼女達ね。あの二人は、ああ見えて俺の従者なんだ。向こうの方が偉そうだから、そうは見えないだろうね、仲間ってとこかな。彼女はいないけど、受付のアイファとは二回ほど食事には行ったかな」
 悔しいのでちょっと見栄を張ってみました。
 こんな子供に見栄を張っても仕方が無いんだけどね。

「二人きりでですか? そのアイファさんとは恋人なのですか?」
 グイグイ来るねぇ。あー、恋バナがしたいのね。それは俺には無理じゃないかな。片想いは何度かあるけどね、彼女なんかいた事ねーし。

「アイファは恋人じゃないよ。色々とお世話になったからね、お礼の為に食事をおごっただけ。俺なんかの恋人って言われたらアイファが迷惑だろ」
「そんな事はありません! だったら私が恋人になります!」
「え?」
 勢いで言ってしまったのか、アイリスは口を押えて激しく俯いてしまった。まだ明かりも点いているから顔が真っ赤になっているのが分かる。

 こういう子の相手はあまり得意じゃ無いんだけど、うまく躱してやらないと傷ついたりするんだろうなぁ。
「うん、アイリス。そう言ってくれて凄く嬉しいよ。でも、アイリスってまだ子供だろ? そういうのはもうちょっと大人になってから……」
「いいえ! 私はもう大人です! もう十三歳になりました、あと二年で成人です。そうすれば結婚もできます。他の貴族の方は十歳で結婚してる方もいます。子供扱いしないでください」

 アイリスって十三歳だったんだ、俺と三つしか変わらないんだな。でも、なんでそんなに怒ってるの? 言い方が悪かったか?
 さっきから急に泣いたり、難しそうな子だな。

「分かった。子供扱いはしないね」
「はい」

「エイジ、まだ話しておったのか。わらわはもう寝るぞ」
 暗闇から突然クラマが現れた。
 クラマは帰って来たらもう寝ると言って衛星が建てた小屋に入って行った。
 すると同じようにマイアも帰って来た。
「あらエ・イジ、もう寝ますよ」
 マイアも小屋に入って行く。
 二人共どこへ行ってたんだか。帰って来た途端、寝るってホント自由な二人だよ。

「アイリスも明日は早いんだからもう寝ようか」
「……はい」
 クラマとマイアの登場にタイミングを逸らされたからか、渋々返事をしてアイリスも自分達の小屋に戻って行った。

 恋する少女ね。アイリスがもうちょっと年上だったらな。
 十三歳か、俺には無理だな。これがあと十年後だったら二十六歳と二十三歳、いや五年でも二十一歳と十八歳。それならアリなんだけどなぁ。

 今から唾を付けとく? でも領主の娘だよ? 無理無理、貴族とか無理。
 可愛いんだけど、恋愛対象外だな。こういう事を言ってるから彼女ができないのかもな。
 いやいや、十三歳は無いって。

 結局、俺は何も回答しなかったな。また聞かれるんだろうなぁ。
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