ランプの魔人ニケちゃん

くじぇ

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神決め大会 予選一日目

鶴太郎と神 拓真とニケⅡ

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「な、なんだこれ」

 講義が行われる教室に着いた俺は唖然とした。派手な格好の女性が全学生の隣に座っている。どう見ても、その女性たちが『同じ学生』には見えない。

「これは、『アレ』だね」

 ニケの方を向くと、ニケは笑顔だった。

「ニケ、これってさ」

「うん。ここに居る女の子、学生以外は『魔人』だよ! 大会参加者がたくさんいたんだね! てことは、私が居たところで怪しまれることなんてないじゃん! よかった! よかった!」

 ニケは喜びながら、俺の背中を叩く。俺以外に、魔人が現れた人間がこんなに居たなんて思わなかった。それにしても、午前の講義ではこんなことなかったが……。

 改めて教室内を見渡してみる。やはり明らかに学生とは思えない服装、髪色の女性が学生の隣に座っていた。……そして、その大半がベタベタとイチャついている。

 そんな様子を気にすることなく、ニケは後ろの空席に座る。

「こっち、こっち!」

 この異様な光景から目を離せられないでいたが、ニケの呼びかけにハッとし、席に向かった。



「お、お前ら! 講義中にそ、そんなハレンチな」

 『熱血先生』が注意をする。もう講義なんて成立していない。むちゃくちゃだ。やっぱりこの状況は普通ではない。

「何が悪いのよぉ! あ、先生もご一緒にどう?」

 教室の真ん中から色気のある高い声が聞こえた。

「お、お前たち! 一体どうしたんだ! 講義ち……あ……」

 突然、先生の背後に、魔人と思われる女性が現れ、先生を殴った。

「せ、先生!!!」

 思わず、立ち上がり叫ぶが、その声は周囲にかき消されてしまう。

 大半の学生たちは、魔人とのペッティングに夢中である。女子学生もいるが、一緒になって魔人、男子学生とまぐわっている。

「これってさ、やっぱりなんかさ……。いくらなんでも、ちょっとおかしくないか?」

 そういうことをしている奴らの顔を見ると、なんだか目が虚ろになっている。もう訳が分からない。俺は茫然としながら、隣に居たニケに尋ねる。

「……す、すごい。そんな風にするんだ」

 何をしているんだ、この娘は。しかも、『APカウンター』をかけている。

「あ、そこはダメでしょ! あー、やっちゃったかー! ん? どうかした?」

 ようやく俺の冷たい視線に気づいたらしい。

「『どうかした?』じゃねーよ! これは一体何なんだって聞いてんだよ。」

「これ? まぁ、たぶん『惑わされている』」

「『惑わされている』?」

「そう。これをかけてみて」

 そう言いながら、『APカウンター』であるメガネを渡してきた。これ、俺でも使えるのか。半信半疑でメガネをかけてみる。

「な、これは」

「そう。つまり、ここに居る参加者全員、すでに魔人の能力にかかっているってこと。そして、おそらく、何らかの能力で呼び寄せられてる」

 人の頭の上に『AP』が数値で浮かんでいる。が、その数値は徐々に減っている。

「ニケは大丈夫なのか、それに、俺も」

「私は、そもそももう魔人じゃないからね。拓真くんは……分かんない。多分、私たちは能力がかけられた後に、教室に入ったんじゃないかな」

「なるほどな。てか、それだったら何とかしないと! アイツらヤバいぞ」

「……ちょっと状況を見てて。どうしたらいいかなって。」

 ニケはニケなりに考えていたらしい。しかし、どうしたらいいのだろうか。

「……そもそも『AP』の略奪なんてアリなのか!」

「大会の概要には『取得の手段については問わない』ってあったから。でも、だからって、私はこんなやり方で神様になろうなんてする人を認めない。」

 ニケはギリギリと怒りをかみ殺している。

「……心当たりはないのか?」

「心当たりって?」

 俺の問いにとぼけるニケ。

「こんな能力を使う魔人! 『天界』にいた頃に居なかったのか!」

 立って話す俺を見て、ようやくニケも立ち上がった。

「……正直、分からない。心当たりがないことはないけど。」

「と、とにかく、なんとかコイツらを止めないと、ニケ、手伝っ……」

 立ち上がり、そう言いかけた時、俺の背中に何かを突き立てられた。背後に誰かがいる。

「あらー? 誰かと思ったら、『落ちこぼれちゃん』じゃなーい!」

 動こうとするが、全く体が動かない。これもこの魔人の能力なのか。

「……」

 ニケの表情が強ばる。

「んー? アレアレ? 無視ですかー? え? あれ? アンタ、『魔力』はどうした?」

 その魔人の語気が強くなる。

「……捨てた」

 返事をするニケはいつものニケではない。目は、俺の背後をにらみつけている。

「捨てたー? 冗談は存在だけにしなさいよー。……待って。アナタ、まさか」

 バカにするような口調から、またしても、何かを悟ったような口調になる。

「そのまさかよ」

「ばっかじゃないの! ホントのバカね! 『アレ』を予選の前に使ってしまうなんて」

 『アレ』というのは、『大魔神の交渉』のことだろう。

「そんなの私の勝手でしょ! それより、その人から離れて!」

「いつも『気弱で泣き虫な落ちこぼれちゃん』がここまで私に言ってくるなんて、そんなにこの子が大切なのかしら……ね!!!」

「うっ……くっそ」

「拓真くん!!!」

 この野郎、後ろから刺しやがった。ちくしょう。何も出来ねぇのか、俺は。幸い、まだ、傷は深くない。が、まだ刺さったままだ。

「だ、大丈夫だ。ニケ、それより、なんとかこの状況を抜け出せる方法を! ぐ……うああああ」

 ナイフのようなものを刺したまま、グリグリと動かしてくる。あ、痛みで意識が飛びそうになる。

「やめて! アナタの目的は何! ビクトリア!」

 このクソ魔人、『ビクトリア』と言うらしい。

「うーん、そうね。暇つぶし?」

「……アナタって人は!!!」

 激情するニケがこっちに向かってくる。

「ちょっと邪魔ね!」

「ぐぁ」

 背中のナイフを抜かれて、後ろから押された。その強さ、そして、痛みで床に倒れこむ。

「拓真くん!」

「自分から向かってきてるくせに、よそ見してる場合かし……ら!!!」

 ビクトリアの拳がニケの顔面に思いっきり入った。その威力で、ニケは教室の中央に吹き飛ぶ。周囲の机が吹き飛び、まぐわう魔人や学生に当たる。しかし、まだ、まぐわうのを止めない。

「弱いわねぇ、弱い、弱い、弱い、弱い」

 両手を広げて、天井を見ながらそう叫んでいる。ビクトリアの拳が光っている。何かの能力か。

「に、ニケ!」

 呼びかけるがニケから返事はない。机の山の下になっているせいか姿もみえない。くそ。

「さてと、んじゃ、殺しまーすかー!」

 目の前からビクトリアが消え、次の瞬間、俺の背中はビクトリアに踏まれていた。なぜか全身に圧がかかっている。

「く、う、動かない」

「もっと手ごたえあるかと思ったけど、弱すぎて笑っちゃう。死んじゃえ」

 こ、コイツは本気で俺を殺そうとしている。なんとか、なんとか状況を打破する方法を考えないと。

「じゃあな」

「ま、待て」

 と、とにかく、時間を稼ぐんだ。何か、何かないか。

「お、お前の目的はなんだ」

「時間稼ぎをしようとしても無駄よ! アンタの考えていることは『視える』」

……わ、忘れていた。コイツらは、心を読むことが出来るんだ。もうおしまいだ。

「……神島さんから聞いてはいたけど、こんな人が『トオルさん』の脅威になる存在だなんてね」

「神島……だと」

 まさか、ここで、あのジジイの名前を聞くなんて。俺がまだ生きていることに気づいたのか。それとも……。どのみち、ここを乗り越えても、またあのジジイが殺しにくるかもしれないのか。

「神島『さん』だ……ろ!!!」

「うぐぅ」

 刺された傷が広がって血が噴き出している。痛みで意識が飛びそうだ。

「もういいわ。ここで消しておけば、私は更に『力をもらえる』」

 背中の圧が強くなる。

「くそ!ここまでか」

「死ね!!!」

「待てい! 待て待てい!!」

 どこからともなく声が聞こえる。

「誰だ!」

「誰だと言われて出てくると思うなよ!」

「……」

 この声には聞き覚えがある。

「少年! 私が来たからにはもう大丈夫だ!」

 俺のことを『少年』と呼ぶのは『あの人』しかいない。

「出てこい!」

 ビクトリアが周りを見渡している。だが、コイツの力は尋常ではない。『あの人』が出てきたところで状況が変わるとも思えない。

「おい、こっちだ」

 消え入りそうな小さな声が聞こえた。ビクトリアに気づかれないように、声の方を向く。『鶴太郎さん』だ。机の下から笑顔で覗いている。手には……『桃』!? なぜ、こんな時に『桃』なんだ。

「……(逃げてください)」

 口を動かし、鶴太郎さんに伝える。幸い、ビクトリアは、まだ気づいていない。助けてくれるのは嬉しいが、おそらく、何も出来ないに違いない。それなら、逃げて、生きてもらう方がいい。

「……(とにかく、これを食え!)」

 手に持った『桃』をこちらに転がしてきた。しかし、コントロールが……。ヤバい。『桃』はビクトリアの足元に転がった。

「ん? なんだこれは。……もういい。貴様を殺した後に、声の奴も殺すとしよう。じゃあな」

「ち、ちくしょー!」

 し、死ぬのか。ここまでか。ナイフの切っ先が再び、刺さる感触がする。

「少年!! 口を開けろー!!!!」

 再び、大きな声が聞こえた。その声に口を開ける。すると、何かが口に飛び込んできた。

 瞬間、俺のカラダが輝き、力が沸き上がった。
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