ランプの魔人ニケちゃん

くじぇ

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神決め大会 予選一日目

鶴太郎と神 拓真とニケⅠ

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 何気なく、大学生活を送っていた俺は、ニケと名乗る魔人と出会った。現在の神様である神島というガチムチ爺さんに殺されかけ、生死をさまよい……そして、ニケに救われた。

 俺の命を救うためにニケは、生涯に一度しか使えない『大魔人の交渉』を使用した。しかし、俺が殺されるのは『運命』で決まっていることだと言う大魔神。そして、そんな大魔神が要求した条件は、『ニケの能力と、寿命』だった。

 そして、ニケは、その条件をのみ、俺は生き返った。

 それにしても、全然、寝た気がしない。実質、睡眠時間は2時間くらいだ。昨日は一晩中、ニケが持っていた『天界人の基礎』を読んで、俺の能力を覚醒させようと頑張っていた。

 しかし、その努力もむなしく、俺の能力が覚醒することはなかった。



『ピピピピ! ピピピピ! ピピピピ!』

 目覚ましが鳴っている。いつもと同じ朝だ。見慣れた天井を見つめながら、俺は昨日の出来事を思い出していた。

 体がだるい。でも、起きないと……今日は講義が一限にある。

「起きるか……」

 体にしがみつく女の子の手をどけようとする。ニケだ。寝る前に、頑なに俺は、「地べたで寝る」と言ったのに、ニケは「一緒に寝る」と言って聞かなかった。なんでも、「私と寝たら回復する」らしい。能力がもう『無い』ことをニケは忘れているのだろう。

 俺だって、男だぞ。色々こみ上げてくるものはある。

 それにしても、さっきから抱きしめているニケの腕を離そうとしているのに、全く離れない。

「ニケ! おい! ニケ! 起きろ!」

 仕方なく、ペチペチとニケの頬を叩く。起こし方としては一番やって欲しくないことだ。

「……むにゃむにゃ。 も、もう朝ですか? ってええええええええええええええええええええええ、誰ですか!!!!!」

「ぶはっ」

 俺は、これから何度この子に殴られるんだろか。そう思いながら、ベッドの外に落ちた。



 テーブルの上には、簡単な朝食、そして、昨日、鶴太郎さんに貰った『桃』が並んでいる。テーブルを挟んで、ニケと向かい合っている。

「ごめんなさい! 拓真くんのお部屋に来ていることを忘れていて! 痴漢野郎と勘違いしました! じゅる」

 ニケが手を合わせて謝ってくる。が、その視線は、テーブルの上の『それ』に釘付けだ。

「痴漢野郎って、ひどすぎるし! まぁいいや」

 そう言いながら、どうぞと食べるように促す。ニケの表情が途端に明るくなる。

「それより、ニケ、お前は今日どうするんだ?」

 神を決める大会が始まるにしろ、俺は大学生であり、講義に出なければいけない。ずっとニケと一緒にいるわけにもいかない。

「わ、私も、大学とやらに行きますよ!」

 何を決まりきったことをというような顔で言ってくる。

「へ!?」

「『AP』を貯めましょう! 横にいて、拓真くんを守ります!」

 キラキラした目で俺に言ってくる。かわいい。いや、そうじゃなくて……!

「とにかく、ここにいてくれ! 大学に来たらそれはそれでマズいからな」

 こんなかわいい子と四六時中一緒にいたら、大学の奴らに何て言われるか……。特に、アイツには。

「私、行きたいです! だって、もう『予選』は始まっているんですよ!」

 確かにそうだ。でも、今日はとりあえず……。そう思いながら、早々に支度を済ませ、大学に向かう準備をする。

「部屋で待っていような! これ全部食べていいし! じゃ、いってくるから」

「あ、待って! 私……」

何かを言いかけていたニケをよそに、準備を終えた俺は部屋を出た。



大学の講義は9時から始まる。

「ふぁぁぁ」

横にいるコイツはいつも眠そうだ。

「田中、お前、昨日どうだったんだよ」

 眠そうな田中に小声で聞く。いつ見ても田中はイケメンだ。今はやりの『塩顔系男子』というものらしい。この前、知り合いの女子が言っていた。

「……バッチグーよ」

 言葉のチョイスは古いが、なんだか絵になる。俺の隣の女子たちが少しざわつく。

「へぇ、そら、ええことで」

 聞いといて、露骨に嫌そうな顔をしておく。

「やろー? 羨ましいか? だったら、今度の合コンさ……」

「行かねーって! それより、彼女の写真、見せろよ」

「……まぁ、まだ、彼女じゃねーんだけどな。昨日の朝、偶然、知り合ったっていうか。」

「なんだよ、それ。朝、知り合って、その日のうちにデートかよ! ひゅー、モテる男は違うねぇ」

 ホントにモテる男は違う。

「やめろって! 俺もなんだかわからねーんだけどさ、出会った瞬間に、忘れられなくなって……」

「一目ぼれってやつか? お前が?」

 珍しい。

「そうかも」

「なおさら、どんな子か、見てみたくなったわ」

「まぁ、俺の彼女になった時にな! お楽しみよ! お楽しみ!」

「へいへい」

 午前の講義の終わりを告げるチャイムが鳴った。



「田中ー! 飯、行こや?」

 恒例行事のような誘い。

「わりー!先約があって」

「先約? 珍しいな」

「さっき言ってた彼女だよ」

 田中がこんなにもグイグイと女の子にいくのも珍しい。

「なんだよ、この大学の子なのか?」

「いや、そうじゃないんだけど、ちょっと約束しててな。わりー」

 そう言いながら、校門へ向かって歩き出す田中。

「お、おい! 午後の講義、どうすんだよ!」

「いなかったら、『代返』頼むわー、じゃ!」

 そう言うと田中は去っていった。

「ちぇ、なんだよ」



 この大学の学食は美味い。そして、安い。コスパがいいのは、貧乏学生にとって、強い味方である。大学入学一年目なんかは、三食学食で食費を浮かしていたくらいだ。

「さて、何食おうかなー?」

 券売機の前で迷う。時間帯をズラしたので、食堂内はガラガラだ。知り合いがいないか見渡してみるが、それらしい人はいなかった。

「だーれだ!」

 突如、目の前が真っ暗になる。

「誰!? ……って、痛い痛い痛い痛い! 力強すぎ! メガネしている人にこれするときは、配慮して!」

 力が強い。もしや、ニケ? そう思いながら、腕を掴み、振り向く。だが、そこに居たのは、茶髪の女性だった。

「アレ? 誰? 誰ですの、アナタ!」

 いや、こっちの台詞だ。まじまじと見つめる。今まで学内で見たことがない。というか、見たことがあったら、絶対に忘れないだろう、この服装は。シスターのような、いや、シスターと言われたら頷ける、そんな服装である。そして、独特の話し方。お嬢様言葉っていうのか。

「いや、アナタこそ、誰ですか?」

 疑問をそのままぶつける。すると、彼女は表情を変えて……

「キャー! 変態ですわー!」

「いや、なんでですかー!!!」

 逃げ出す女性。あらぬ疑いを晴らすために、俺は彼女を追いかけた。



「ごめんなさい」

「いや、僕も人違いしてたので」

 学内のベンチのところに座り、事情を離した。

「まさか、違う人だとは思わなくて。ごめんなさい!」

 誰にだって間違うことはある。それを責めるつもりはない。

「もう大丈夫ですよ、そんなこともありますから」

「分かりましたわ! なにかしらお詫びをさせてくださる?」

「お詫びだなんて、ほんとに大丈夫なので」

 何か面倒なことになりそうな気が俺にはしていた。

「そうですわ! 自己紹介をしましょう! 私は、哲学科3年の梅森うめもり 薫かおりですわ!薫さんでいいですわよ!」

 お嬢様ってこういう人のことを言うのだろうか。全く、こちらの事情を聞いてくれない。

「あ、僕は、神じん 拓真たくまです。それはそうと、薫さんは、僕のことを誰と間違えたんです?」

 話をそらして帰ってもらおうかとも思ったが、単純にこれは気になっていたことだった。

「同じ部活の部長ですわよ!」

 ふふんと鼻で笑う。

「薫さん、部活入っているんですか?」

「あ、そうだ! もしよかったら、午後の講義終わりに部室に招待しますわ! 拓真さんは、何か部活とか」

「いや、特に今は何も」

 困ったことになった。

「だったら、よろしいですわ! 講義終わりに、部室棟の前で会いましょ! では、私はこれで」

そう言うと、薫さんはそそくさと講義棟の方に走っていった。

「ちょ、ちょっと! まだ行くとは言ってな……」

 勝手な人である。

「おっぱい見てたでしょ?」

 耳元で急に囁かれた。見てな……いや、少しだけって……

「へ?」

「見てたでしょ!!!」

「うわあああああああああああ!」

 すぐ後ろにニケがいた。ワンピース姿だ。

「そんなに驚かなくても」

「んだよ、ニケ! いつからそこに!」

ニケはニヤニヤしている。

「ずっと見守ってたの!」

「いや、こえーよ」

「それより、ご飯、まだでしょ?」

「作ってきたの!」

「え、マジで?」

 ニケの家庭的な一面に感動した。

「これでも、だてに『アッチ』で家事してたわけじゃないからね!」

 弁当箱を開けると、チャーハンに、ミートボール、ほうれん草のお浸しなど、俺が好きなものばかり入っていた。

「すげー」

「でしょ?」

 得意げなニケ。かわいい。

「それより、その頭に乗せているメガネはなんだ?」

 朝にはなかったメガネをニケは頭に乗せていた。

「あ、コレ? 『APカウンター』っていうものだよ! こういうものも市販されてるの」

「てことは、『天界』に帰ったのか?」

「ううん。私はもう魔人の能力は使えないし、帰ることは出来ないの」

「だったら、どうやって」

「魔人の能力の中に『どこでもショッピング』っていう能力があってね」

「それは、またポップな名前の能力だな」

「かわいいでしょ」

 ふふふっと笑っている。

「それはいいんだけど、で、どうしたんだ?」

「なんだか分からないけど、一度だけ使えるようになってたの」

「急にか?」

「そう! だから、それで買ったってわけだよー」

「なるほど。とにかく、なぜ使うことが出来たのかは謎だけど、『AP』が分かるようになったのは大きいな」

「うん! ちなみに……」

 そう言いながら、ニケがメガネをかける。メガネのニケもかわいい。

「今の拓真くんの『AP』は、0だね」

「0かい!」

 確かに、今日はこれと言って人から『ありがとう』と言われていない。

「ま、まだ始まったばかりだから、きっと大丈夫だよ!」

 そう言うニケの顔を見て、俺は少しだけ安心した。



「ごちそうさまでした! ありがとう、ニケ!」

 味が抜群に美味くて、結局、ぺろりと平らげてしまった。

「いいよー!」

「んじゃ、俺、講義があるし!」

 離れようとする俺の腕をニケがギュッと掴む。

「うん! 一緒にいこ!」

 上目遣い。その中に、絶対逃がさないという狩人の意思のようなものも感じる。

「いや、ダメだって」

「なんでー」

「なんでって……恥ずかしいし」

「大丈夫! 大丈夫だよ!」

 そう言いながら、俺の腕をつかみ、ブンブンと振り回している。

「いや、根拠ないでしょ」

「とにかく、いこ!」

「ちょ、ちょ、待てって」

 ニケに引っ張られて、俺は講義が行われる教室に向かった。



 2人が去ったベンチに何者かが座った。

「……はい。ヤツは生きています。はい。分かりました。引き続き……はい。」

 深めに帽子を被るその人物は、そうつぶやいた。
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