ランプの魔人ニケちゃん

くじぇ

文字の大きさ
21 / 36
神決め大会 予選二日目

鴨川糸電話大作戦Ⅰ

しおりを挟む
「拓真くん! 拓真くん!! 起きて!!」

 俺はニケに体を揺さぶられて目を覚ました。デジタル時計に目をやると、「5:00」となっている。

「なんだよ、ニケ。まだこんな時間じゃないか、もう少し寝かせて」

 そう言いながら再び眠りにつこうとする俺をニケが頬をぺシぺシと叩いて起こす。

「発表されるから起こしてるの!」

「発表?? 何の?」

 仕方なく体を起こし、目をこすりながらニケに尋ねる。

「何のって……。参加者の現在の順位!!! なんでも、『2日目の朝』と『15日目の朝』に発表されるみたい」

「ほんとか!?」

 そんなの案内には書いていなかった。ニケによると『神選』から通知がきていたらしい。そういうことは早く言ってくれ。

 そう思う俺をよそに、ニケは魔人のランプを擦って言った。

「いでよ、モニター! 順位発表を映したまえ!」

 どこぞの願いを叶えるドラゴンを呼ぶときのかけ声っぽいなと思いながらも、真剣なにけに対してそれをつっこむことは出来なかった。

 煙と共にモニターが宙に現れる。俺はモニターを見つめた。

 順位発表……。

『あー、あー、へふへふ』

 現れたのは白髪のおじいちゃんだ。髪の毛がぼさぼさでその上、ローブのような白い服は胸元が開いてセクシーになっている。もちろん、セクシーだなんて1ミリも俺は思っていない。

『はくひつから、よへんがおこな……』

 なんだか言っている言葉が聞き取りづらい。隣のニケを見ても俺と同じ表情をしている。

 画面の端に若いお兄さんが現れ、おじいちゃんに何かを言っている。

『おお、ほうじゃ、ほうじゃ』

 おじいちゃんはそう言うと、ポケットから『入れ歯』を取り出した。

『さて、気を取り直して……』

「原因、入れ歯かい!」

 俺がつっこむ。ニケは笑っていた。なんだこのコントのような始まりは……。

『昨日から予選が始まったわけじゃが、なかなかに良い良い』

 おじいちゃんは白い紙を見ながらそんな感想を言った。俺は思い出していた。ビクトリアを制止させたあのフードの奴のことを。アイツは何位なのだろうか。

『本来であれば、順位発表を行うのじゃが、上位の接戦具合がどうにも面白くて。よって、発表はしませーん』

「はあああああああああ」

 気まぐれすぎる。

『といいながらも、せっかく早朝から見てくれとる人もおるようじゃから、予選突破の目安となる『AP』の数値だけでも発表しようかの』

「!?」

 まさに待っていたものだ。

『さて、基準じゃが、『100万AP』でどうじゃろうか』

「ひゃ、『100万AP』!?」

 驚く俺はニケを見る。ニケも驚いている。

『天界の者はいいとして、人間界の者たちはなかなか厳しいじゃろうな。ま、それだけ神になるのは難しいことということじゃな』

「き、厳しすぎるだろ」

『それでは、次は16日目の朝かいの。おさらばー』

 モニターの画面が消える。それと同時に、モニターが煙に包まれ、ランプの中に戻っていった。

「……、やばいな」

「そ、そうだね。今、拓真くんは『1AP』だから……普通にAPを集めて探すだけじゃ到底集まらないよ」

「と、とにかく、今日、鶴太郎さんのいる『お助け部』にいってみよう」



 大学は今日から試験期間だ。俺はにけをお助け部の部室に送り届けて、試験が実施される教室へと向かった。

 この講義は確か、田中のやつも取っていたはずだ。教室を見渡してみる。日常の講義では見ることのなかった学生が大勢いるせいで、教室はいっぱいいっぱいでなかなか田中を見つけることが出来ない。

『田中、お前、もう教室いる??』

 LINEを田中に送る。昨日送ったどうでもいいメッセージに既読はついていない。寝ているのかもしれないな。

 テストのみなのでどこでもいいか。そう思いながら、唯一空いていた席を見つけ、座った。隣に誰かいるのは分かっていたが特に気にしない。なんだか見覚えのある服装の女性だが……。

 鞄を開けて、学生証と筆記用具を出そうとしていると、隣の女性が話しかけてきた。

「あら? 貴方も受けるのかしら?」

 その特徴的な声にそれが誰なのかすぐに理解出来た。

「おはようございます。梅森うめもりかおりさん」

「名前、覚えていてくれたのね」

「そりゃあ、昨日の今日ですからね」

 そうでなくても、覚えているだろう。俺はなんだかこの人が苦手だ。派手な服装だ。いかにもお嬢様というようなピンクのワンピースを着ている。いや、それはいい。個人の自由だ。それよりも、問題なのは……。

「ところで、鶴太郎さんとはどういう関係ですの?」

「いや、あの、えっと」

「あんまり面倒ごとを持ち込まないでくださるかしら?」

「はい?」

「昨日もそうだけど、アナタたちが来てから部長が私にかまってくれないのよ」

 部長というのは、鶴太郎さんのことだろう。ニケをお助け部の部室に送り届けた時にも、鶴太郎さんは忙しそうにしていた。なんでも、『天界力』の修行の準備で忙しいらしい。

 俺たちが面倒ごとを持ち込んでいることは確かに間違いない。

「すいません。なるべく、鶴太郎さんにはご迷惑をおかけしないようにします」

 頭を下げて謝るが、薫さんはジッと前を向いている。気まずい。

「私ね、最近、誰かに狙われている気がしますの」

「!?」

 急に何を言い出すのか。だが、昨日のビクトリアの件もある。無視は出来ない。

「……心当たりはあるんですか?」

「話を聞いてくださるの?」

 目をウルウルさせながら、こっちを向いた。そして、話し始めた。



 梅森うめもりかおりさんは現在一人暮らし。大学から徒歩10分の女性専用マンションに住んでいるようだ。狙われているというのは、そのマンションまで帰る道で背後に何者かの視線を感じるからだそうだ。もちろん、心当たりはない。

「ストーカーですかね?」

「なんでそんな怖いこと言うのよ!!!」

 そう言いながら、薫さんは俺の頬を叩いた。軽率な言動はしない方がよさそうだ……。いてぇ。

「と、とにかく、夜道は気を付けた方がいいですよ」

 ありきたりなことだが、

「アナタ、今日の晩、送ってくださる??」

「は?」

「そうよ、それがいいわ! 決まりね!」

「ちょっ、勝手に、」

 そう言いかけた時に、試験監督の教授が入ってきた。試験が始まる。ざわついていた教室が静かになった。

 隣の薫さんを見ると、なんだか喜んでいるように見える。

「はぁ」

 面倒なことになったな。



 試験の終わりを告げるチャイムが鳴り、俺は今日の分の試験は終わった。薫さんはあと2つ試験があるらしく、俺は教室で彼女と別れた。

「……。というか、田中のやつ結局来なかったな」

 試験開始時に、科目登録者の点呼が行われたのだが、田中はその点呼に答えることはなかった。LINEも既読はついていない。田中のことも気になるが、今はとにかく『AP』を稼がなければいけない。そのためには……。

「強くなって、依頼もこなさなければ」

 そんなひとり言を言いながら俺はお助け部の部室に向かった。



 お助け部の部室は、部室棟にはない。地下にあるのだ。入り口は、一階の男子トイレの奥の個室だ。

「ここで、座って、『お助け部入部希望です』と叫ぶ」

 こんな『合言葉』で今まで誤って入ってきた人はいないのだろうか。そんな心配をよそに、後ろの壁が上がる。トイレがそのまま後ろに下がり、後ろ向きのまま、俺はものすごいスピードでお助け部の部室に向かっていった。

「やぁ、青年! 元気そうだな!」

「……うぇ」

 冷静に状況を解説していたのは、少しでも恐怖心を抑える為だったが、逆効果だった。俺は遊園地にあるような絶叫系マシンが嫌いであり、それと同じようなこの入り方も嫌いだ。

「なんとかなりませんか? これ」

「はっはっは! 大丈夫さ! そのうち慣れる!」

 親指を突き立て、グッドポーズをする鶴太郎さんに俺はそれ以上何かを言うのは止めた。

「ところで、青年! 依頼だ!」

「さっそくですね。どんな依頼ですか」

 初めての依頼、学生が助けてほしいこととは一体……。

「愛の告白さ」

「愛の告白??」

 思いもしなかった説明に俺は分かりやすく困惑した。

「今回の依頼、名付けて『鴨川糸電話大作戦』とする!」

「え!?」

 早い、展開が早すぎる。

「とにかく、依頼人はすでに奥の部屋で青年を待っているぞ! さあ、早く!」

 こうして、俺の初めての依頼、『鴨川糸電話大作戦』が始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...