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いちまつの不安
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あれからどれだけ経ったでしょう。
ここでは時間を意識しないのでわかりませんが、地上の感覚で一年くらいは経ったかもしれません。
あなたは、変わらずの幸せな日々を送っています。太陽は常に輝き、大地は美しい花々を咲かせています。誰もに笑顔があり、苦しみは存在しません。
あなたにとっては天国のような場所で、そのすべてに満足していました。
あなたは今日もリンカと一緒にいます。愛しあう二人が分かれることはありません。
リンカ、愛しあおうか、そう言います。
「はい、あなたとならば喜んで」
彼女もこくりとうなづきます。
愛を発し、与えあう日々は最高です。その快楽に限界はなく、ひたすら燃え上がるようです。
いつまでもこうしていたい。
ずっと愛しあっていたい。
二人は愛に夢中でした。
ただ、一つだけ不満があります。
それは…
二人は愛しあいます。
お互いの大切な部分に、心に、ハートに触れます。愛をたっぷりそそぎます。
「ああ、大好きぃ。ご主人様、大好き」
「感じてください。わたしの愛をここから感じてください」
リンカは、本当に愛しそうにあなたに触れます。
あなたに愛が届きますように。
あなたが気持ちよくなりますように。
そうした願いが痛いほど伝わってきて、あなたの心に愛が溶けていきます。
その愛は、かなり大胆です。
最初はおそるおそる触れていたものが、強く。
最初はおそるおそる触れていたものが、激しく。
度重なる愛の触れあいに恥ずかしさが薄れたのか、愛は日に日に強くなっていきました。どうすればあなたが喜んでくれるのか、彼女も努力しています。その努力の成果をいかんなく披露します。
しっかりと愛をこすりつけるように。
あなたのハートに自分を刻みつけるように。
言葉が光になって、流星になって降りそそぎ。
触れる感触は、朝露のように繊細で香り高く。
そして、愛の炎は海となって、あなたを包んで。
その刺激に、あなたも恍惚とします。
彼女の全身を通して、愛が伝わってきます。
心が温かく火照り、熱におかされていきます。
ああ、リンカ、なんて可愛い子なんだ。
自分がリンカを育てているのだ。
自分の愛が、リンカを進化させている。
あなたが愛をそそぐたびに、彼女は成長しているようでした。愛の光も強くなり、感受性も人間以上に高まっていきます。最初は不安定な面も多くありましたが、今ではあなたとまったく同じ存在です。
あなたの愛が、彼女に分けられたから。
あなたが愛したから、彼女は人間に近づいています。
心が満たされます。
愛したことに。
愛されたことに。
こんなに一生懸命に愛をそそいでくれる。
何度も愛しあっているのに、衰えることはない。
それどころか、愛するたびに愛が増えていく。
いつかは慣れていくのだと思っていました。この快楽も当たり前になるのかもしれないと。しかし、愛が増えるので、そこに限界はありませんでした。
愛するたびに新鮮。
彼女のすべてが自分を包み込む。
愛はなんと素敵なのだろう。
ならば、自分ももっと愛そう。
あなたもリンカを抱きしめます。自分のすべてを与えようと、女性的なものに男性的な力を与えます。
びくん。
リンカがはねる音。
「ああ! 熱い…! 強くて…大きい!」
リンカが感じているのは、男性的な力。
自分にはない、強くて大きい力です。
神の父たる特性である力は、宇宙を創造した力。あらゆるものを生みだし、あるいは壊し、無限に活力を与えていく大いなる力。
男性的な力は、地上では誤って使われることが多いものです。創造と破壊の力は、場合によっては暴力となり、支配的に作用してきました。
しかし、本当の男性的な力とは、雄大で大きく、空を駆け抜けるほどに力強いのです。頼りがいがあり、たくましく、一途な力です。
リンカも最初は恥ずかしがっていましたが、今は男性的な力が大好きになっていました。
あなたに包まれて。
絶対的な安心感を与えられて。
すべての不安が打ち消されるほど、強く。
すべての存在が認められるほど、優しく。
正しいものを貫くものは、正義として。
過ったものを救うものは、寛容として。
父のように、夫のように、その愛は勇ましくリンカを包みます。もう犬であったことなんて気にならないほど、二人は人間として完成されつつありました。
愛情が増していきます。
お互いにしか知りえない部分を共有する快感。
二人の関係が特別だと知る瞬間。
宇宙で二人だけしかいない瞬間。
言葉も必要なく、お互いを欲し、愛しあいます。
愛に夢中になります。
「もっともっと気持ちよくなってください。もっと…もっと!」
「ご主人様が気持ちいいだけで、わたしも気持ちいいです!」
「もっと、もっと…、愛を…!」
愛されている快感に震えながら、一生懸命に愛を与えようとします。
愛する喜び。
愛される喜び。
どれもが愛しい時間です。
そして、お互いの気持ちが盛り上がってきて、ついにそのときが来ます。
「あっ、ダメ!」
最後の瞬間。
二人の魂が融合する瞬間。
彼女はためらいと拒絶を見せました。
心の世界に境界線はありません。地上と違って肉体で分かれているわけではないので、魂と魂は融合する性質をもっています。
まるで同じ原子同士がくっつくように。
神が生み出した親和力の法則は、極限にまで高まると融合を果たします。どちらがどちらか、わからないほどに。両者は一体となって。
あなたがわたしに、わたしがあなたになって。
心の世界に、その境目は存在しないのです。特に意識レベルが同じ魂がそろうと、何十人、何百人、もっと高まれば数億人で一つの意識体を構成します。
全体で一つなのです。
すべての体験、すべての感情を共有します。
かといって、個性が埋没することはありません。客観的な全体の一つでありながら、主観的な意識を同時に持っているのです。これが心の世界の通常の状態なのです。
神が、人間の霊を一つにつくったから。
これこそが、人類が一つである証拠です。いかなる人種であっても、あるいは住む星が違っても、人間は神によって結ばれているのです。
愛が、みんなを一つにするのです。
あなたが苦しい時、わたしも泣いています。
あなたが痛い時、わたしも苦しんでいます。
あなたが嬉しい時、わたしも笑っています。
あなたが愛する時、わたしも愛します。
すべての人間が、愛され、愛することができる。すべての体験を集約して、さらに上昇する。霊として完成されていく。
この愛が、この驚くべき愛がわかるでしょうか。
神が、どれだけ人間を愛しているか。
神が、どれだけ愛することを願っているか。
そして、神が与えた最高の愛がもう一つありました。
完全なる融合。
両者の霊が、完全なる融合を果たすのです。これは霊にとって最高の喜びの一つです。誰もが味わえるものではありません。
しかし、あなたとリンカには、その可能性があります。
あなたの愛によって生まれたリンカ。
リンカによって導かれたあなた。
二人は、同じ愛をもとにして生まれていました。あなたはリンカであり、リンカはあなたといえるほどに。
ですが、何度も愛しあっているのに、彼女は最後の瞬間だけは認めてくれません。一番気持ちが盛り上がってきているのに、それはつらいことです。
なぜだろう。どうしてだろう。
あなたは、ずっとそのことを不思議に思っています。
不満に思っています。
強引にやろうかと思ったこともありましたが、それでは意味がありません。お互いの気持ちが一つになって初めて、この絶頂が存在します。
ハートから生まれる愛がすべてを包んだとき、融合と至上の快楽があるのです。それは、二人の共同作業によって生まれます。
愛は、一方通行では完成しないものです。
地上では、一方通行の愛が多く見られます。愛を押しつけるから苦しくなる。愛を求めるからつらくなる。どれも不幸なことです。
愛は、与えた時にだけ光り輝きます。そこには叡智が必要なのです。それに、自分が味わいたいこともありますが、なによりリンカに味わってほしいのです。
味わってほしいからつながりたいのに…
それを制限されることは不満です。あなたは、軽い苛立ちのようなものを覚えていました。ただ、それをリンカにぶつけるようなことはしたくありません。今は、彼女が望むままにあろうと思います。
「ごめんなさい。わたし…、その…」
「ご主人様がしたいこと、よくわかるんですけど…」
いいんだよ、リンカ。
わかっているから。
あなたは、優しくうなづきます。
それ以外にも愛し方はたくさんあります。つながることだけがすべてではないのです。
「ああ、愛しています」
二人は、お互いの大切な心を寄せあい、すりつけ、馴染ませます。融合ではないものの、触れあいます。
彼女のかたちは、自分のかたちとぴったり合います。まるで吸いつくかのように、心と心がぴったり当てはまるのです。それだけでも、神が与えた快感は相当なものでした。
愛すれば、満たされる。
愛を与えれば、気持ちよくなる。
神の叡智が、ここにありました。
あなたは、軽い苛立ちを隠すようにその行為に没頭します。そして、気持ちよくなってもらえるように、愛を意識します。
ハートの中にある神様を意識して、光を出そうとします。
ああ、愛している。
彼女が存在しているだけで満足だ。
たとえ最後までできなくとも、この愛に変わりはない。
ここまでできるだけでも幸せだ。
ハートから愛が生まれていきます。それは自然と感謝になり、深い愛情となっていきます。
お互いが密着している部分から、愛が伝わっていきます。
「ああ、わたし…もう!」
お互いの気持ちが高ぶり、絶頂に至ります。
心がとけあって、許しあって、世界が一つになっていきます。何度も何度も絡みあい、融合していきます。
お互いの心が糸になって、少しずつ絡まっていくように。
一本、また一本と二人の心があわさって。
そこからまた光がはじけ、愛がしみ込んでいきます。それはリンカに自分を覚えさせている行為でもあります。
自分の匂い、味、感情、経験、記憶。
魂の情報を伝えているのです。
ああ、彼女を支配している。
彼女は自分のものだ。
そしてまた、自分は彼女のものだ。
愛の交流にあなたは恍惚とします。
しかし、心の中にあるかすかな揺らぎは残ったままです。
この状態でもこれだけ気持ちいい。
ならば、最後までしたときの快楽はどれほどのものだろう。
いけないと知りつつも、気になって仕方ありません。
人は快楽に素直なもの。悪いことではないのです。ただ、あなたは溺れる怖さも知っていました。
この愛は、けっして彼女を独占するものではない。
すべての生命に対して向けられる神様の愛なのだ。
それを自分のためだけに使ってはいけない。
この月日において、あなたはそれを悟ったのです。自己の欲求だけで使おうとすると、愛はうまく働きません。愛を出すためには、必然的に自己を捨てねばなりませんでした。
自己犠牲こそ、神のもっとも愛するもの。
意識せずに自分を捨てる行為に、人々は感動します。自分のためではなく、相手のために。大切な人だけではなく、弱きすべての人々のために。
飢えた人には、自分のパンを与え。
乾いた人には、自分のワインを与え。
求める人には、自分の身を与え。
怯える人には、自分の知識を与え。
苦しい人には、自分の勇気を与え。
泣いた人には、自分の愛を与え。
その瞬間、あなたという名前の神は愛を放ちます。世界を満たします。愛で、その大きな翼で、地球をすっぽりと包んで癒してしまいます。
自分を忘れてリンカを想うときに、愛は加速します。
自分の快楽ではなく、彼女の快楽を想うときに愛は生まれます。
だから、その心は秘めていました。
愛は変わらない。
愛はどんな形であれ素晴らしいものだ。
これで我慢するのが正しいことだ。
あなたはずっとその想いを抱えながらも、満足しようとしていました。
こんな幸せは、自分にとって過剰だ。
今だけでも、神に感謝しなければいけない。
それでも。
それでもあなたは、どこか不安を感じていたのです。
ここでは時間を意識しないのでわかりませんが、地上の感覚で一年くらいは経ったかもしれません。
あなたは、変わらずの幸せな日々を送っています。太陽は常に輝き、大地は美しい花々を咲かせています。誰もに笑顔があり、苦しみは存在しません。
あなたにとっては天国のような場所で、そのすべてに満足していました。
あなたは今日もリンカと一緒にいます。愛しあう二人が分かれることはありません。
リンカ、愛しあおうか、そう言います。
「はい、あなたとならば喜んで」
彼女もこくりとうなづきます。
愛を発し、与えあう日々は最高です。その快楽に限界はなく、ひたすら燃え上がるようです。
いつまでもこうしていたい。
ずっと愛しあっていたい。
二人は愛に夢中でした。
ただ、一つだけ不満があります。
それは…
二人は愛しあいます。
お互いの大切な部分に、心に、ハートに触れます。愛をたっぷりそそぎます。
「ああ、大好きぃ。ご主人様、大好き」
「感じてください。わたしの愛をここから感じてください」
リンカは、本当に愛しそうにあなたに触れます。
あなたに愛が届きますように。
あなたが気持ちよくなりますように。
そうした願いが痛いほど伝わってきて、あなたの心に愛が溶けていきます。
その愛は、かなり大胆です。
最初はおそるおそる触れていたものが、強く。
最初はおそるおそる触れていたものが、激しく。
度重なる愛の触れあいに恥ずかしさが薄れたのか、愛は日に日に強くなっていきました。どうすればあなたが喜んでくれるのか、彼女も努力しています。その努力の成果をいかんなく披露します。
しっかりと愛をこすりつけるように。
あなたのハートに自分を刻みつけるように。
言葉が光になって、流星になって降りそそぎ。
触れる感触は、朝露のように繊細で香り高く。
そして、愛の炎は海となって、あなたを包んで。
その刺激に、あなたも恍惚とします。
彼女の全身を通して、愛が伝わってきます。
心が温かく火照り、熱におかされていきます。
ああ、リンカ、なんて可愛い子なんだ。
自分がリンカを育てているのだ。
自分の愛が、リンカを進化させている。
あなたが愛をそそぐたびに、彼女は成長しているようでした。愛の光も強くなり、感受性も人間以上に高まっていきます。最初は不安定な面も多くありましたが、今ではあなたとまったく同じ存在です。
あなたの愛が、彼女に分けられたから。
あなたが愛したから、彼女は人間に近づいています。
心が満たされます。
愛したことに。
愛されたことに。
こんなに一生懸命に愛をそそいでくれる。
何度も愛しあっているのに、衰えることはない。
それどころか、愛するたびに愛が増えていく。
いつかは慣れていくのだと思っていました。この快楽も当たり前になるのかもしれないと。しかし、愛が増えるので、そこに限界はありませんでした。
愛するたびに新鮮。
彼女のすべてが自分を包み込む。
愛はなんと素敵なのだろう。
ならば、自分ももっと愛そう。
あなたもリンカを抱きしめます。自分のすべてを与えようと、女性的なものに男性的な力を与えます。
びくん。
リンカがはねる音。
「ああ! 熱い…! 強くて…大きい!」
リンカが感じているのは、男性的な力。
自分にはない、強くて大きい力です。
神の父たる特性である力は、宇宙を創造した力。あらゆるものを生みだし、あるいは壊し、無限に活力を与えていく大いなる力。
男性的な力は、地上では誤って使われることが多いものです。創造と破壊の力は、場合によっては暴力となり、支配的に作用してきました。
しかし、本当の男性的な力とは、雄大で大きく、空を駆け抜けるほどに力強いのです。頼りがいがあり、たくましく、一途な力です。
リンカも最初は恥ずかしがっていましたが、今は男性的な力が大好きになっていました。
あなたに包まれて。
絶対的な安心感を与えられて。
すべての不安が打ち消されるほど、強く。
すべての存在が認められるほど、優しく。
正しいものを貫くものは、正義として。
過ったものを救うものは、寛容として。
父のように、夫のように、その愛は勇ましくリンカを包みます。もう犬であったことなんて気にならないほど、二人は人間として完成されつつありました。
愛情が増していきます。
お互いにしか知りえない部分を共有する快感。
二人の関係が特別だと知る瞬間。
宇宙で二人だけしかいない瞬間。
言葉も必要なく、お互いを欲し、愛しあいます。
愛に夢中になります。
「もっともっと気持ちよくなってください。もっと…もっと!」
「ご主人様が気持ちいいだけで、わたしも気持ちいいです!」
「もっと、もっと…、愛を…!」
愛されている快感に震えながら、一生懸命に愛を与えようとします。
愛する喜び。
愛される喜び。
どれもが愛しい時間です。
そして、お互いの気持ちが盛り上がってきて、ついにそのときが来ます。
「あっ、ダメ!」
最後の瞬間。
二人の魂が融合する瞬間。
彼女はためらいと拒絶を見せました。
心の世界に境界線はありません。地上と違って肉体で分かれているわけではないので、魂と魂は融合する性質をもっています。
まるで同じ原子同士がくっつくように。
神が生み出した親和力の法則は、極限にまで高まると融合を果たします。どちらがどちらか、わからないほどに。両者は一体となって。
あなたがわたしに、わたしがあなたになって。
心の世界に、その境目は存在しないのです。特に意識レベルが同じ魂がそろうと、何十人、何百人、もっと高まれば数億人で一つの意識体を構成します。
全体で一つなのです。
すべての体験、すべての感情を共有します。
かといって、個性が埋没することはありません。客観的な全体の一つでありながら、主観的な意識を同時に持っているのです。これが心の世界の通常の状態なのです。
神が、人間の霊を一つにつくったから。
これこそが、人類が一つである証拠です。いかなる人種であっても、あるいは住む星が違っても、人間は神によって結ばれているのです。
愛が、みんなを一つにするのです。
あなたが苦しい時、わたしも泣いています。
あなたが痛い時、わたしも苦しんでいます。
あなたが嬉しい時、わたしも笑っています。
あなたが愛する時、わたしも愛します。
すべての人間が、愛され、愛することができる。すべての体験を集約して、さらに上昇する。霊として完成されていく。
この愛が、この驚くべき愛がわかるでしょうか。
神が、どれだけ人間を愛しているか。
神が、どれだけ愛することを願っているか。
そして、神が与えた最高の愛がもう一つありました。
完全なる融合。
両者の霊が、完全なる融合を果たすのです。これは霊にとって最高の喜びの一つです。誰もが味わえるものではありません。
しかし、あなたとリンカには、その可能性があります。
あなたの愛によって生まれたリンカ。
リンカによって導かれたあなた。
二人は、同じ愛をもとにして生まれていました。あなたはリンカであり、リンカはあなたといえるほどに。
ですが、何度も愛しあっているのに、彼女は最後の瞬間だけは認めてくれません。一番気持ちが盛り上がってきているのに、それはつらいことです。
なぜだろう。どうしてだろう。
あなたは、ずっとそのことを不思議に思っています。
不満に思っています。
強引にやろうかと思ったこともありましたが、それでは意味がありません。お互いの気持ちが一つになって初めて、この絶頂が存在します。
ハートから生まれる愛がすべてを包んだとき、融合と至上の快楽があるのです。それは、二人の共同作業によって生まれます。
愛は、一方通行では完成しないものです。
地上では、一方通行の愛が多く見られます。愛を押しつけるから苦しくなる。愛を求めるからつらくなる。どれも不幸なことです。
愛は、与えた時にだけ光り輝きます。そこには叡智が必要なのです。それに、自分が味わいたいこともありますが、なによりリンカに味わってほしいのです。
味わってほしいからつながりたいのに…
それを制限されることは不満です。あなたは、軽い苛立ちのようなものを覚えていました。ただ、それをリンカにぶつけるようなことはしたくありません。今は、彼女が望むままにあろうと思います。
「ごめんなさい。わたし…、その…」
「ご主人様がしたいこと、よくわかるんですけど…」
いいんだよ、リンカ。
わかっているから。
あなたは、優しくうなづきます。
それ以外にも愛し方はたくさんあります。つながることだけがすべてではないのです。
「ああ、愛しています」
二人は、お互いの大切な心を寄せあい、すりつけ、馴染ませます。融合ではないものの、触れあいます。
彼女のかたちは、自分のかたちとぴったり合います。まるで吸いつくかのように、心と心がぴったり当てはまるのです。それだけでも、神が与えた快感は相当なものでした。
愛すれば、満たされる。
愛を与えれば、気持ちよくなる。
神の叡智が、ここにありました。
あなたは、軽い苛立ちを隠すようにその行為に没頭します。そして、気持ちよくなってもらえるように、愛を意識します。
ハートの中にある神様を意識して、光を出そうとします。
ああ、愛している。
彼女が存在しているだけで満足だ。
たとえ最後までできなくとも、この愛に変わりはない。
ここまでできるだけでも幸せだ。
ハートから愛が生まれていきます。それは自然と感謝になり、深い愛情となっていきます。
お互いが密着している部分から、愛が伝わっていきます。
「ああ、わたし…もう!」
お互いの気持ちが高ぶり、絶頂に至ります。
心がとけあって、許しあって、世界が一つになっていきます。何度も何度も絡みあい、融合していきます。
お互いの心が糸になって、少しずつ絡まっていくように。
一本、また一本と二人の心があわさって。
そこからまた光がはじけ、愛がしみ込んでいきます。それはリンカに自分を覚えさせている行為でもあります。
自分の匂い、味、感情、経験、記憶。
魂の情報を伝えているのです。
ああ、彼女を支配している。
彼女は自分のものだ。
そしてまた、自分は彼女のものだ。
愛の交流にあなたは恍惚とします。
しかし、心の中にあるかすかな揺らぎは残ったままです。
この状態でもこれだけ気持ちいい。
ならば、最後までしたときの快楽はどれほどのものだろう。
いけないと知りつつも、気になって仕方ありません。
人は快楽に素直なもの。悪いことではないのです。ただ、あなたは溺れる怖さも知っていました。
この愛は、けっして彼女を独占するものではない。
すべての生命に対して向けられる神様の愛なのだ。
それを自分のためだけに使ってはいけない。
この月日において、あなたはそれを悟ったのです。自己の欲求だけで使おうとすると、愛はうまく働きません。愛を出すためには、必然的に自己を捨てねばなりませんでした。
自己犠牲こそ、神のもっとも愛するもの。
意識せずに自分を捨てる行為に、人々は感動します。自分のためではなく、相手のために。大切な人だけではなく、弱きすべての人々のために。
飢えた人には、自分のパンを与え。
乾いた人には、自分のワインを与え。
求める人には、自分の身を与え。
怯える人には、自分の知識を与え。
苦しい人には、自分の勇気を与え。
泣いた人には、自分の愛を与え。
その瞬間、あなたという名前の神は愛を放ちます。世界を満たします。愛で、その大きな翼で、地球をすっぽりと包んで癒してしまいます。
自分を忘れてリンカを想うときに、愛は加速します。
自分の快楽ではなく、彼女の快楽を想うときに愛は生まれます。
だから、その心は秘めていました。
愛は変わらない。
愛はどんな形であれ素晴らしいものだ。
これで我慢するのが正しいことだ。
あなたはずっとその想いを抱えながらも、満足しようとしていました。
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