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第62話「シンプルな殴り合い・宗治vs力虎」
しおりを挟む烈矢に何も考えずに俺の攻撃に対処し続けろと言われたら達樹。
露骨に何も考えるなと言われるとつい反射的に何かしら考えてしまう。
(何も考えるななんて言われてもこのまま思考停止で受け止め続けるのも無理があんぞ……!)
どんな意図があるのか。その言葉の真意を無意識に思考する。
考えない方が賢明なのだとしても勝手に脳が動き読み取ろうとしてしまう。そして遂に烈矢の奇行の意味を読み解く。
(かなり進んでねぇか?……まさか攻撃による衝撃を利用して移動してんのか?)
達樹がその思考に行き着いた途端。木陰からおばちゃんアンドロイドが出現。瞬く間に達樹と烈矢の足元へ飛び付く。
「莉乃たそかわ!……ぐっ!!?」
力強く握られそのまま投げ飛ばされ両者大幅に進んできた道のりを後退させられる。
烈矢は極限までに集中し移動という思考を除去しきっていた。即ち感知されたのは達樹の思考であると推測する。
「感づいちまったか……まぁいい。この際だから説明するがあのおばはん達は移動の為に使われた想力に反応して襲ってくる。移動しようと思考したらアウトってこった」
「それで戦ってる時には無反応だったのか」
「進もうと思わずに無意識下で進む事がこのマラソンの攻略法だ。これを念頭に置いてもう一度同じ事をする。お前も気づいちまった以上は気を紛らす方法を見つけろ。すぐさま移動の思考が頭に過ぎって捕まっちまうぞ」
烈矢の推しへの愛を叫び続けるといった無理やり自然と浮かんでくる思考を捩じ伏せるような強烈な何かが無いと気を紛らす事など出来はしない。
達樹は必死に思考する。脳内を一色で染め上げれるような凄まじい願望を。
ぎゅるるるる
静寂の中鳴り響いたのは腹の音。鮮烈な激闘の末疲弊した達樹は空腹を今この瞬間全身で身に染みて感じ取った。
「美味いもんがたらふく食べてぇ!」
宿泊施設に着けば選り取りみどりの食欲をそそる豪華な料理の数々が並んでいるに違いない。そう思うと達樹の脳内は一気に空腹を満たしたいという願望で染め上げられる。
「一先ず行けそうだな。だが理屈を理解した上でも頭一色染め上げるのは今の俺たちには無理だ。ミスは前提の元ゴールするまでやり続けるぞ」
「おう!!」
達樹と烈矢はそれぞれ推しへの愛と食べたい料理名を叫び続けながら互いの想力をぶつけ合い再び走り出す。
――――――――――
同日 想武島 マラソンコース 80km地点 22時15分
「気に食わないな」
「へ?なにが?」
「何か隠し玉があるんだろう?早く出しなよ。泥試合をだらだら続ける気はないんだ」
10分前から戦闘に入った十一番隊の新鋭抗者。八雲宗治と一番隊奏者歴1年半の奏者。三宅力虎はこの10分間近接戦での両拳、両脚に想力を帯びせた物理攻撃しか使用していない。
隊長を除くと奏者で最も強いとされている三宅力虎の全てを出し尽くさせた上で踏破したいと考える宗治は力虎を挑発する。
「別に出し惜しみしてるもんは特にねぇよ。形成を逆転出来るような一発逆転の切札的なもんは俺にはない」
「へぇ……じゃあシンプルに腕っぷしが強い方が勝ち残るわけだ」
宗治の釵による打撃が再び力虎へ向けられる。
力虎の内に宿るアイドル常盤愛菜は温厚で天然なところもあるほんわかとした女の子。
彼女は元の世界では大剣使いであり且つ彼女のスイーツ作りという趣味から力虎はケーキを思い浮かる。
そこからスポンジをイメージし己の想力と掛け合わせた異能。緩衝菓綿を編み出した。
緩衝菓綿の効果を載せた想力を各肘と膝に闘気を纏った炎として宿らせ宗治の強打を受け止める。
「!?っ」
宗治は打ち込んだ攻撃に対して思いもよらぬ反発を受け吹き飛ばされる。地面に着く直前態勢を立て直し再び構える。
「流石にただ殴る蹴るしてるだけではねぇよ」
緩衝菓綿の能力はスポンジの弾力を活かし敵の必殺技、大技を受け止めそのままカウンターとして反射という物。
中距離、遠距離は鍛え上げた身体能力を利用して即座に距離を詰め自分の最も戦いやすい間合いを即座に作り出す。
緩衝菓綿の本領は大技頼みの敵に対してより強く発揮される。勝負を急ぎ大技で畳み掛けようとする相手に対してはまず負ける事はない。
故に力虎を打ち負かすには大技に頼らない地道にダメージを重ねていく堅実さが必要となる。
だが宗治の戦闘スタイルは大技頼みでも遠距離タイプでもなくただひたすらに釵による打撃で圧倒する戦法。奇しくも両者の戦い方は非常に似通っていた。
「戦いは……こうでなくちゃあね」
不敵な笑みを浮かべながら宗治は呟く。これまでの蓄積ダメージと今受けた反射によりかなりのダメージを負うも一向に片膝すら付ける素振りを見せない。
(こうしてる間にもしれっとちらほら抜かされてんだよな……駆は来る気配ないし俺もさっさと進まねぇとやべぇか)
力虎の拳に凄まじいまでの想力が込められる。その闘志はまさに鬼神の如く宗治へ向けられる。
だがこの気迫にも一切動じる事なく宗治ら真っ直ぐ堂々と力虎へ見据えて立つ。
「だらだら続けるの嫌いっつってたよな。次の一撃で終いにしようぜ」
「君に言われなくてもそうするつもりだったさ」
両者想力を漲らせ夜風が頬を遮ったと同時に瞬時に加速して距離を詰める。
ドガァァッ!!
互いの一撃が交差し合い、内一方の強烈な一撃が腹部へ突き刺さる。
――――――――――
同日 想武島 ゴール地点 22時30分
時刻も終盤に差し掛かり遂に妨害乱闘ありきの地獄のマラソンを踏破する者も現始める。
一着でゴールしたのは一番隊セレナ・リデュアンヌと力虎達を出し抜きセレナとほぼ同着となった七番隊所属の力虎とほぼ同期の奏者歴1年越えの眼鏡の似合う知的な風貌の男長谷川友哉。柴崎彩人の実の妹である茶髪お団子ロングを他靡かせる柴崎彩乃の3人。
続けて少し遅れて二着で四番隊三竹未萌奈、灰羽久澄の2名が走り切る。
未萌奈と久澄は中間地点にて後続を待ち伏せしており出来るだけ多くの参加者が未萌奈の術中範囲内に収まったタイミングで未萌奈はぷち闇夜失闇を施す。
無数に鴉の群れが奏者達へ飛びかかり鴉と目線があった者はその術中にハマってしまう。
大勢の奏者、抗者達の視界を奪う事に成功し集中力は削がれおばちゃんアンドロイドには捕縛され走りでそうにも視界が定まらない故に進めないといった錯乱状態に落とし込み大幅にライバルを蹴落とすことに成功していた。
「作戦成功ですね久澄さん。これで私達のふかふかベッドは確約されましたよ」
「そ、そうだね」
(かなり印象悪くなっちゃった気がするけど……)
数多の妨害、苦行に打ちのめされそうになりながらも徐々にゴールへ辿り着く者が現れていき残りは30分を切る。
残された隊は一番隊、二番隊、三番隊、五番隊、八番隊、十一番隊。
第一プログラムはいよいよ終盤に差し掛かる。
―――――――― to be continued ――――――――
緩衝菓綿。例えるならセルフインパクトダイヤルという事ですね。(ワンピース参照)
無闇に大技を打ち込んだらインパクト!されちゃうって事です。
力虎的には細々した事は嫌いだしだるいのでわかりやすく真っ向から殴り合おうぜ!(強制)みたいなノリで使っています。
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