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第74話「異常事態発生!地下アイドルの襲来」
しおりを挟む2023年 8月2日 想武島 中央区域 9:35分
第二プログラム人狼将棋において王様。即ち将棋で言う玉にあたる立ち位置な為一旦身を潜める事にしたものの輝世達樹は思いの外退屈していた。
(だ、誰もこねぇぞ!?やる気は満々なのに!この感覚はあれだ!FPSで思ったより敵と会わなくて何もしたいで終盤まで残っちまう例のあれだ!)
味方すら一向に現れない状況の中持て余すやる気。何より消化不良でモヤモヤしている中で約30分が経過し達樹はそわそわしていた。
(もう限界だ。俺は動くぞ。何よりこんな負けた時の事考えながら動いてたら勝てるもんも勝てねぇ)
達樹は身を隠す事をやめ茂みの中姿を表す。衣服に着いた細かい落ち葉や枯れ葉を振り落とし周囲を経過しながら味方との合流を念頭に入れながら動き出そうとした矢先聞き覚えのある声に呼び止められる。
「達樹殿~~!!」
「卓夫!」
駆け寄る声の主は同じ学舎を共にする親友。寺田卓夫であった。
その身なりは多少汚れており誰かしらと一線交えた事が伺える負傷具合だった。
「怪我してんじゃん。治してやるよ」
達樹はヒーリングウィンドでこのくらいの軽傷なら治してやると提案するが卓夫は少しの葛藤と沈黙の後ハッキリと断りを入れる。
「は?なんでだよ。断る理由あるか?」
「拙者が敵の人狼に討ち取られ敵陣営になってしまってるからです」
「なっ!?」
突然の不意を突かれた告白に衝撃を受ける。
このゲームは人狼要素を含んでいる。人狼に狩られた者は敵陣営の駒となり敵か味方かも区別できないまま奇襲ができるというメリットがある。
そのメリットがある中での卓夫の大胆な告白に真意が読み取れず達樹は困惑する。
「本来ならそれを悟られない内に奇襲。不意打ちというのが定石でありそうすべきなのでしょう。敵陣愛になった際こういった時の寝返りに非協力的だとペナルティを与えられますしね」
人狼に狩られた後の元々の陣営への奇襲の拒否或いは不正が無いようにそれぞれに対しペナルティが与えられている。卓夫の場合は1年間のアイドル現場へ赴く事を禁ずると言う物。アイドルオタクである卓夫にとってはこれ以上ない苦行となっているが。
「達樹殿とは正々堂々ぶつかりたい。エレン隊長の特訓が終わってからずっと……今の強くなった拙者の力を見て欲しかった。だから手加減無しで戦ってください。多少は手負ですが……それでも負ける気はありません!」
そう力強く言い放つ親友を目の当たりにして達樹の身体は身震いしつい頬がニヤける。
ほんの数ヶ月前までは他者に拳を振るう事すら強い抵抗を持っていた心優しい臆病者だったアイドルオタクの卓夫はもういない。
護りたい物の為ならここまで人は自分を鼓舞し磨き上げる事ができるのかと心が高揚する。目の前に立ちはだかっているのは親友でありまごう事なき一人の戦士であると達樹は全身で理解した。
「本当に強くなったんだな卓夫。心底嬉しいぜ……ダチのここまでの心意気。受け止めてやんのが筋ってもんだよな!」
お互い両拳、両脚へ想力を集中させ臨戦体制に入る。真っ直ぐに敵を見据え深呼吸。精神を研ぎ澄ます。
「では、いざ尋常に……」
「「勝負!!!」」
――――――――――
達樹と卓夫が交戦を開始する一方Delight東京本部だけでなく想武島にも侵入者が複数人現れていた。位置に設置されている監視カメラを通じてモニター室にて見護る隊長達は異常事態を知る。
「一応聞くが仕込みじゃあねぇよな社長」
「あぁ。お察しの通り異常事態だよ。しかも彼らの特徴を見るに……あれは純粋な憎愚じゃないね」
「各所に写ってる侵入者……あいつらは全員地下アイドルだ」
十番隊隊長。鳴瀬博也が自身の脳内データと照らし合わせ記憶を辿る。その結果それぞれが芸能事務所に所属する地下アイドルである事を断定させる。
「何かよからぬ事がおきてる気がするねこれは。巳早達との連絡もつかない」
昇斗は第二プログラムの中断を決行。全12人の隊長達を分断し中央区域へ侵入者の撃退及び捕縛へ向かわせる班と本州へ戻る班に分かれる。
中央区域突入組
五番隊隊長 最愛恋、二番隊隊長 滝沢一海、八番隊隊長 巽健吾、十番隊隊長 鳴瀬博也。計4名。
残る面々は昇斗の護衛の為居座る一番隊隊長 相田立心を除き本州へ急いで帰還する。
最愛恋達も中央区域へ突入しようとするも中央区域の辺り一体が透明且つ屈強な防壁により囲われていた。恋達は攻撃を加えるがヒビすら入ら無い事から生半可な硬度では無い事が見て取れる。
「めんどくせぇな。いきなり手荒に行かなきゃダメか」
「いや待て。これはただの安易な結界なんかじゃ無い。それにこの形質には見覚えがある」
中央区域を取り囲む様に張られている結界。
それは以前博也達が対憎愚との戦闘用に開発し偶像空間の発想を用いて造られた『アンチメタフィールド』と呼ばれる物。
憎愚との戦闘の際周辺への被害を軽減する為に本来開発された物であり外部からの接触情報を一切遮断する。
「まだ未完成で粗が目立つ代物だから外部からの強制的な衝撃はセキュリティエラーを起こす可能性が高い。それに何か小細工も施されてる。少し時間をくれ」
博也はアンチメタフィールドの解析に取り掛かる。恋達はそれぞれ別れてフィールドの脆い部分を探すべくフィールド全体を探り始める。
――――――――――
想武島 中央区域 9:45分
和斗と未萌奈は激闘の末両者ダウン。結果として人狼である未萌奈が勝利し和斗は達樹チームから駆チームへと移行される。
気を失う二人を物陰に隠し駆は意識が少しでも早く戻る事を祈りながら敵襲が無いか細心の注意を払って辺りを警戒する。
(だ、誰も来てないよね?今攻め込まれたらマジで終わる!そもそも俺なんか参加者の中で絶対最弱だから!二人相手とかまず無理よ!?何ならこのままなにもせずやり過ごしたい!)
そんな弱腰な考えを巡らせながらキョロキョロと周りを見渡す駆は辺りが一斉に騒がしくなったことに気がつく。
(もうバチバチにやり合っちゃってるよ!?しかもそんなに遠くない!?マジでこっちには来ないでくれお願いだからぁぁぁ!!)
心内での叫びであるにもかかわらず身体に動きとして大きく現れてしまっているほど駆は動揺していた。
故に上空から迫る襲撃者の接近に琴音の声かけで気がつく。
『駆さん上っ!!』
「上?……っていや誰っ!?」
目線を上に向けるとそこにいたのは靴から黄土色の煙を噴出させながらこちらを見下す強硬な体格に褐色の肌をしたコワモテハゲの男。
「オレンジ髪の男……間違いねぇ。日輪の系譜の男だ……ったく俺って奴はツイてるぜ。いきなり見つけちまうとは」
男は上空からゆっくりと降下し駆の元へ歩み寄る。
「そこに寝っ転がってる男をこちらへ渡せ。大人しく渡せば見逃してやらんこともない」
「だ、誰ですかあなた……」
明らかにこの合宿用に用意されたギミックでは無い。救護班にも全く無えない風貌と冷徹な眼差しから駆は警戒を強める。
「俺はドッキュンモンキーズってグループで地下アイドルをやらしてもらってる崖尻怒猿ってもんだ。なぁに怪しいもんじゃねぇ。ちょっくらそいつに用があってな」
「何の用ですか?彼は今重傷なんです。手荒な事はしないでください……」
「さっきからごちゃごちゃうざってぇなお前。これ以上口ごたえするなら容赦はせんぞ」
怒猿の全身から憎力が解放される。憎力により顕現された棍棒に憎力を激らせ戦闘態勢に入る。
「こ、これってぞ、憎力!?こいつ何者なの!?」
『わからないけどやる気みたい。駆さんは下がって!』
駆の周囲を眩い煌めきが身を包み駆の内に宿る綺羅琴音が完全顕現する。
「完全顕現か……なぁに安心しろ。容赦なく嬲り殺しにしてやる」
―――― to be continued ――――
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