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第1章
召喚されて殺されるまでの1年間(表) その7
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一年が過ぎてしまった。
結局、何も出来なかった。
結局俺は、異世界に召喚されて、殺されてしまう脇役の一人だったのかもしれない。
できる事があるなら、少しでも抵抗したい。
一年後の今日、元の世界にもとるならこの日しかないらしい。
10人の内、行方不明が8人。結局、この国の人は真っ黒だったのだろう。
俺と、斉藤一樹の二人だけしかここにいない。
二人とも、この異世界に残ることにした。
国に残るとなると、この施設から出て行くことになるようだ、
明日になれば、迎えの馬車が来て、城下町に用意された家に連れて行ってくれるらしい。
身分証を貰い、冒険者として生活していくことになる。
果て無き迷宮を調査して、報酬を受け取りながら、生活をする。
もっとも、これは表向き。一刻も早くこの国から出て、違う国を目指す。
研究所の機能を駆使して、この国に復讐をする。既に、重火器の製作は成功している。
準備さえ整えば、この城は一瞬で火の海にすることが出来る。
最後の仕掛けを施しながら、明日が来るのを心待ちにした。
「お世話になりました」
「気をつけてください」
最後まで打ち解けることの無かった、メイドのアイさんとの会話。
簡単な別れの挨拶をして、馬車に乗り込む。
高級そうな馬車は、ゆっくりと館から走り出す。
異世界人の館は、小高い山の上にある。果て無き迷宮は、転送魔方陣で入り口まで移動していたので、他の場所に行くことは無かった。
改めて。俺たちは異常な環境にいたのだと思い知った。
今まで色々とおかしかった事に、ここに来て気づく。
気づいた以上は、これから慎重に行動しないといけない。
このまま、城下町まで行けるのかと、不安になる。
景色を見ながら、そんなことを考えていると、ちょうど大きな谷の上の橋に差し掛かった。
「フラグだったのか・・・」
橋の真ん中を通過した瞬間、足元が消えた。
馬車は、真っ逆さまに落ちていく。ある程度、予想できたので、落ち着いて脱出するための行動に出る。
「えっ!」
馬車の扉は開かない。
壊そうとして、力を込めても、壊せない。腕力を増強する籠手をはめている。それでも、破壊できない。
「呪ってやる!!!」
最後の悪あがきで、そう叫ぶ。間抜けな俺を、どこかで見ている人がいる。
結局、何も出来ないまま、深い谷の底に落ちていくのだった。
「さて、これからが本番だな」
落ちていく馬車を見ながら、俺はつぶやく。
色々と準備をしておいて正解だった。
果て無き迷宮の魔物を生け捕り、解析する。その情報を元に、偽の自分を作り上げる。
それこそ、膨大な魔力を必要とした。色々と試行錯誤して、魔力を集めることに成功したのは一月前。
何とか間に合った最後の仕掛けだった。
遠隔操作が必要だったので、昨日の夜に抜け出して、山の中に潜んでいた。
「まずは、生活基盤を整えるか・・・」
この国を、一瞬で火の海にすることは可能だ。だけど、無関係の人を巻き込むのは主義ではない。
異世界召喚にかかわった人物を探し出し、責任を取らせたい。たとえそれが、神だとしても、やり遂げてみせる。
「え?」
そう決意したのだが、次の瞬間、ありえないことが起きていた。俺の左胸から腕が生えていた。
正確には、何者かに背後から手刀で体を貫かれた。
「ぐふっ!!」
体中に衝撃が走る。気づけば、口から血を吐き散らしているみたいだった。体が動かない。
「な、なんで?」
振り向けば、アイさんがそこにいた。体を貫いた手は、彼女の物だった。
「ご苦労様でした」
そして、その横にいる男の声。
「さ。斉藤?」
「そうだよ、色々と、教えてあげてもいいけど、君にはもう時間が無い」
「・・・」
「アイ、簡単に説明してあげてくれ」
「了解しました。賢王様」
「けん・・・王?」
「そうです。こちらのお方は賢王様。この国の王にして至高の存在。あなたたち異世界人を利用する計画を立てたお方です」
「最初から、そのつもりだったのか?」
「そうです。あなたたちの行動はこちらに筒抜けです。位置も、魔道具で把握していました」
「・・・」
「あなたが作った道具は、こちらで利用させてもらいます」
「ぐぁああぁぁ」
貫かれた手を、アイさんは引き抜く。
「最大の功績は、これですね」
「見事な物だな」
それは多分俺の心臓。なぜか銀色に光っている。
「うぁぁ・・」
もう、言葉はまともに出ない。
「徳を集めると、神核になる。異世界人はその性質が高い」
斉藤はアイさんからそれを受け取る。
「手違いで最初に有望な子を亡くしたから、苦労したよ。だが、これで俺は神に近づける」
もう、相手が何を言っているのかわからない。
「君には、素敵な褒美を上げたんだけどね。気づいてくれたかな?」
こいつらから、何か貰った記憶は無い。
「メイドが話す、冥土の土産だよ。アイに説明させたでしょ?」
「・・・」
「さて、これから忙しくなるぞ」
大量の徳を得た心臓。そこから産まれる神核。
賢者の国は、世代交代して日が浅い。
最近は世界情勢が不安定で、色々と物騒だ。力をつけるには、残酷な手段も必要だ。
足元に転がる死体を見ながら、これからのことを考える。
「では、行くぞ!」
「了解しました、賢王様」
この日から、賢王の覇道が始まる。
その奇跡は世界を巻き込み、この世界に繁栄をもたらす物語が、今動き出した。
とか思っているのでしょうね。
私は、その様子を遠くから見ている。
「どうする?」
「皆さんで、もう一度相談しましょうか」
「了解しました」
「しかし、あまり言い気分ではありませんね」
「何が?」
「自分の死体を、こうやって見ることですよ」
「自分で決めたのに?」
「そうでしたね」
その場所よりも遠い所、研究所の中。なぜか幼女と猫に囲まれている私。
それを決めるに至った出来事を、思いだすために、記憶を遡るのだった。
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1章はここまでです。
次の話から、過去戻ります。
小説家になろうでも投稿しています。
結局、何も出来なかった。
結局俺は、異世界に召喚されて、殺されてしまう脇役の一人だったのかもしれない。
できる事があるなら、少しでも抵抗したい。
一年後の今日、元の世界にもとるならこの日しかないらしい。
10人の内、行方不明が8人。結局、この国の人は真っ黒だったのだろう。
俺と、斉藤一樹の二人だけしかここにいない。
二人とも、この異世界に残ることにした。
国に残るとなると、この施設から出て行くことになるようだ、
明日になれば、迎えの馬車が来て、城下町に用意された家に連れて行ってくれるらしい。
身分証を貰い、冒険者として生活していくことになる。
果て無き迷宮を調査して、報酬を受け取りながら、生活をする。
もっとも、これは表向き。一刻も早くこの国から出て、違う国を目指す。
研究所の機能を駆使して、この国に復讐をする。既に、重火器の製作は成功している。
準備さえ整えば、この城は一瞬で火の海にすることが出来る。
最後の仕掛けを施しながら、明日が来るのを心待ちにした。
「お世話になりました」
「気をつけてください」
最後まで打ち解けることの無かった、メイドのアイさんとの会話。
簡単な別れの挨拶をして、馬車に乗り込む。
高級そうな馬車は、ゆっくりと館から走り出す。
異世界人の館は、小高い山の上にある。果て無き迷宮は、転送魔方陣で入り口まで移動していたので、他の場所に行くことは無かった。
改めて。俺たちは異常な環境にいたのだと思い知った。
今まで色々とおかしかった事に、ここに来て気づく。
気づいた以上は、これから慎重に行動しないといけない。
このまま、城下町まで行けるのかと、不安になる。
景色を見ながら、そんなことを考えていると、ちょうど大きな谷の上の橋に差し掛かった。
「フラグだったのか・・・」
橋の真ん中を通過した瞬間、足元が消えた。
馬車は、真っ逆さまに落ちていく。ある程度、予想できたので、落ち着いて脱出するための行動に出る。
「えっ!」
馬車の扉は開かない。
壊そうとして、力を込めても、壊せない。腕力を増強する籠手をはめている。それでも、破壊できない。
「呪ってやる!!!」
最後の悪あがきで、そう叫ぶ。間抜けな俺を、どこかで見ている人がいる。
結局、何も出来ないまま、深い谷の底に落ちていくのだった。
「さて、これからが本番だな」
落ちていく馬車を見ながら、俺はつぶやく。
色々と準備をしておいて正解だった。
果て無き迷宮の魔物を生け捕り、解析する。その情報を元に、偽の自分を作り上げる。
それこそ、膨大な魔力を必要とした。色々と試行錯誤して、魔力を集めることに成功したのは一月前。
何とか間に合った最後の仕掛けだった。
遠隔操作が必要だったので、昨日の夜に抜け出して、山の中に潜んでいた。
「まずは、生活基盤を整えるか・・・」
この国を、一瞬で火の海にすることは可能だ。だけど、無関係の人を巻き込むのは主義ではない。
異世界召喚にかかわった人物を探し出し、責任を取らせたい。たとえそれが、神だとしても、やり遂げてみせる。
「え?」
そう決意したのだが、次の瞬間、ありえないことが起きていた。俺の左胸から腕が生えていた。
正確には、何者かに背後から手刀で体を貫かれた。
「ぐふっ!!」
体中に衝撃が走る。気づけば、口から血を吐き散らしているみたいだった。体が動かない。
「な、なんで?」
振り向けば、アイさんがそこにいた。体を貫いた手は、彼女の物だった。
「ご苦労様でした」
そして、その横にいる男の声。
「さ。斉藤?」
「そうだよ、色々と、教えてあげてもいいけど、君にはもう時間が無い」
「・・・」
「アイ、簡単に説明してあげてくれ」
「了解しました。賢王様」
「けん・・・王?」
「そうです。こちらのお方は賢王様。この国の王にして至高の存在。あなたたち異世界人を利用する計画を立てたお方です」
「最初から、そのつもりだったのか?」
「そうです。あなたたちの行動はこちらに筒抜けです。位置も、魔道具で把握していました」
「・・・」
「あなたが作った道具は、こちらで利用させてもらいます」
「ぐぁああぁぁ」
貫かれた手を、アイさんは引き抜く。
「最大の功績は、これですね」
「見事な物だな」
それは多分俺の心臓。なぜか銀色に光っている。
「うぁぁ・・」
もう、言葉はまともに出ない。
「徳を集めると、神核になる。異世界人はその性質が高い」
斉藤はアイさんからそれを受け取る。
「手違いで最初に有望な子を亡くしたから、苦労したよ。だが、これで俺は神に近づける」
もう、相手が何を言っているのかわからない。
「君には、素敵な褒美を上げたんだけどね。気づいてくれたかな?」
こいつらから、何か貰った記憶は無い。
「メイドが話す、冥土の土産だよ。アイに説明させたでしょ?」
「・・・」
「さて、これから忙しくなるぞ」
大量の徳を得た心臓。そこから産まれる神核。
賢者の国は、世代交代して日が浅い。
最近は世界情勢が不安定で、色々と物騒だ。力をつけるには、残酷な手段も必要だ。
足元に転がる死体を見ながら、これからのことを考える。
「では、行くぞ!」
「了解しました、賢王様」
この日から、賢王の覇道が始まる。
その奇跡は世界を巻き込み、この世界に繁栄をもたらす物語が、今動き出した。
とか思っているのでしょうね。
私は、その様子を遠くから見ている。
「どうする?」
「皆さんで、もう一度相談しましょうか」
「了解しました」
「しかし、あまり言い気分ではありませんね」
「何が?」
「自分の死体を、こうやって見ることですよ」
「自分で決めたのに?」
「そうでしたね」
その場所よりも遠い所、研究所の中。なぜか幼女と猫に囲まれている私。
それを決めるに至った出来事を、思いだすために、記憶を遡るのだった。
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1章はここまでです。
次の話から、過去戻ります。
小説家になろうでも投稿しています。
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