灰色の冒険者

水室二人

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第7章 迷宮探査 

異世界人との戦い

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 果て無き迷宮を、目的を目指して進みます。
 大まかな構造は、探索球を使って把握しています。
 上層は、魔物がいて、初心者の鍛える場所となっています。これは、アトランティスと言う、実体験できるゲームの趣旨にあっているので、違和感を感じていませんでしたが、これを作ったのは、機神の陣営です。
 グランドマスターと、管理者の話を聞くと、この迷宮は当初の予定に無い施設です。
 作ったのは、無名と名乗った存在。一度接触した時に、色々とはなしをするべきでした。
 現在、迷宮の確認できる場所に、彼はいません。隠し部屋や、転送でしか行けない場所にいる可能性があります。
 隠し部屋の存在は、最低でも500以上確認されています。
 探査球だと、操作できない仕掛けが多くて、調べられないという欠点がありました。
 あれは、浮いて情報を収集するだけの存在なので、仕方ありません。
 それでも、三姉妹の分析の結果、怪しい場所を絞り込む事ができました。
 比較的行きやすく、調べるのに適した場所が、聖王国の支配権の側なので、注意が必要です。
 迷宮から得られる資源は、色々とあり、今の国の運営には必要となっています。
 もっとも、グランドマスターの話ですと、元々のアトランティスのエネルギーを、果て無き迷宮が奪っているので、それを取り戻す必要があるそうです。
 ギルドの方針で、果て無き迷宮の探索を進めていたのは、そう言う方面もあったそうです。
「申し訳ありませんが、現在ここは通行止めです。引き返してもらえませんか?」
 通路を進み、目的地の少し前で、道を塞ぐ存在が現れました。
「ここより先は、聖王国の領土です。無関係な人の通行は、お断りです」
 そこにいたのは、二人の騎士です。いかにも騎士と言う、鎧を着ています。フルフェイスなので、顔は見えませんが、声からして二人とも男でしょう。
 巨大な剣と、巨大な槌をそれぞれ装備しています。
「迷宮の中は、領土関係ないのでは?」
「基本的には、そうですけどね。現在この先で、私達の雇い主が仕事中なのです」
「終るまで、通すなと言うことなので、お引取り願えませんか?」
 そう言いながら、こちらを威圧してきます。戦闘になっても、負ける事は無いと思いたいですが、何が起こるかわかりません。
 それに、こちらを見て普通の対応をする二人に興味が出てきました。
 今の私は、怪しい機械の鎧姿です。B-S3と言う人型のロボットと、妖しい猫の仮面をつけた男。
 それを見ても、普通の対応をしてきます。
「人形?」
 その可能性を感じたので、試しにレミントンの引鉄を引きます。

 ぐしゃ!

 散弾を全身に浴びて、鎧の騎士は吹き飛びます。
「・・・」
 鎧は無残に飛び散りましたが、中は空でした。
「敵を確認しました。これより、迎撃を開始します!」
 通路の向こうから、無数の鎧騎士がやってきます。
「ずざ、お願いします」
「了以しました。マグナム撃ちます」
 B-S3のメイン武器は、光線銃です。便宜上、マグナムと呼んでいますが、エネルギー弾を打ち出す武器です。
「3連射、行きます!」
 DAN、DAN、DANと、マグナムを連射します。
 着弾した場所から、爆発がおき、鎧騎士は次々と吹き飛んで生きます。
「大石君、お願いします」
「解りました」
 色々あって、素直になった大石君は、戦闘方法を変えています。
 猫マスクとなった彼は、格闘家としての道を進んでいます。
 肉格闘術を、極めるといっていました。その為には精霊猫になる必要があるのですが、人のみで目指す事に価値を見出したそうです。
 マグナムである程度数が減りましたが、こちらに接近してくる存在もいます。
「貫く!」
 彼もまた、1人のオタクでした。
 戦闘強化服に、色々とリクエストした武装を付けています。
 肉球は無いけど、爪を付けるといっていたのに、彼の右腕にはパイルバンカーが装着されています。
 ぶん殴った瞬間、杭が打ち出され、鎧を貫きます。
「これも、喰らいやがれ!」
 次に、足の仕掛けたギミックを発動させます。小さく魔法を爆発させて、勢いをつけた蹴りを放つのです。こちらには、爪があり、鎧を切り裂きます。
 そのまま勢い良く回転します。
「回転、猫けり地獄!!」
 ネーミングセンスは酷いけど、威力はあります。くるくると回りながら、次々と、鎧騎士を切り裂いていきます。
 時々、パイルバンカーを使いながら、凄い勢いで敵を駆逐していきます。
 彼は、迷宮で活躍していたので、戦闘のセンスは良いのかもしれません。経験で言えば、私よりもあります。
 じっくりと、ここの装備の練習をしたいのですが、難しいものです。
「だからこそ。これは助かります」
 私は、接近する存在に、レミントンの引鉄をひます。ジェノ用にカスタマイズした、大型のショットガンです。レミントン改とすべきでしょう。
 ガシャリと、ボルトアクションを作動して、薬莢を排除します。
 本当は、これ必要ないのですが、これが無いと物足りないので、この使用は残してあります。
 弾の補給は、自動で行われるので、理論上は、無限の弾丸があります。実際は、製作した弾丸は残り200ぐらいでしょう。メトロ・ギアで随時製作しているので、余り心配する必要はありません。
 ショットガンの良い所は、範囲が広いので、素早い相手にもある程度名給する事でしょう。
 この鎧騎士、意外と素早いです。銃だと急所に当てるとか、鎧の隙間を狙うという芸当は私には出来ません。
 物量で押しつぶす。
 私の戦闘は、それがメインとなっています。
「しかし、これは限が無いですね・・・」
 鎧の騎士は、次から次へと現れます。相手は、私達と同じ召喚者でしょう」
「仕方ありません。奥の手です」
 数が多い相手なので、切り札を使います。出来れば、こんな段階で使いたくはありませんが、出し惜しみをして、時間を無駄にするのは止めます。
「ずざ、お願いします」
「任されました」
 そう言って、B-S3のコックピットから彼女は飛び出します。
 飛び出す前に、マグナムを放ち、敵の真ん中の空白地帯を作ります。
「探査球との、情報を共有します。マルチロック、開始・・・」
 その中心に降り立ち、彼女は敵を狙います。
「全弾発射っ!皆さん、お星様になれっですの!」
 彼女がそう叫んだ瞬間、体中のハッチが開き、そこから小型のミサイルが飛び出します。
 ミサイルを積み込んで、突撃するモ〇ルスーツの名前は、伊達ではありません。 もっとも、ミサイル娘さんを参考にしているので、スタイルは其方です。
 ずざから発射された小型ミサイルは、全段的に命中して、鎧の騎士は、壊滅しました。
「で、貴方が操っていたのですか?」
 ミサイルが爆発する寸前、全ての騎士が一箇所に集まり、何かを守りました。爆発がおわまったと、その中心に、1人の男が立っていました。
「これだから、イレギュラーは・・・」
 姿は、サラリーマンのスーツ姿です。年齢は40代ぐらい。髭が目立つ男です。
「これは、貴方の能力ですか?」
「退職金代わりだよ」
 そう言って、ひげの男は、懐から、何かを取り出します。
「次に動いたら、命はありませんよ?」
 それを操作する前に、私が銃口を向けます。
「安心しろ、敵対はしない。こいつらの、設定を変えたい」
「設定?」
「俺を守れと、設定しておいた。自動的に近づく相手を攻撃する、ただの人形だ」
「まだ、動くのですか?」
「ある程度は、動くはずだ」
「貴方は?」
「ここの開発スタッフだった人間だ。いっても、解らないと思うけどな」
「なるほど、グランドマスターの元同僚ですか」
 元の世界の人間なら、私にとっての異世界人ですね。
「知り合いなのか?」
「今は、手を組んでいます」
「この星の事は?」
「大体のことを知りました。今は、不足分を補うために、ここにいます」
「目的は、同じか・・・」
「貴方も、そこに用事ですか」
「あぁ、同僚の1人の遺体が、この先の場所にあるみたいなんだ」
「遺体ですか?」
「そうだ。生命反応はない。この世界で、遊ぶと決め手、一緒にいたんだけどな・・・」
「解りました。貴方も協力してください」
「良いだろう。俺の事は、ルドガーと呼んでくれ」
「ルドガーですか?」
「そうだ。こいつらは、ナノマシンの集合体だ。イベントアイテムで、レア扱いの、鎧の騎士団だ」
「開発者が、チート武器を使うのは反則では?」
「反則なのは、承知の上だ。あいつらを、皆殺しにするために、必要だからな」
 そう呟く彼の目には、深い憎悪の炎が、宿っていました。
 今までの話から、この星の人を虐殺したのは、機神の陣営です。この世界の、事情を知っている彼には、許せる存在ではないはずです。
 そんな彼と、一緒に行動をするのは、危険かもしれません。
 私は、まだ機神の陣営の事を詳しく知りません。グランドマスターを含め、この世界に騙されている可能性もまだ、捨てていないのです。
 それでも、結局一緒に行くことにしました。この辺りにいた、聖王国の兵士は、ルドガーによって、撤退させられていました。
 誰も殺すことなく、物量で追い払ったそうです。反撃に来る可能性もありますが、無駄な時間を省いてくれた功績があります。
 無事に、謎の空間の前まで到着しました。
 扉らしいものはありますが、ロックされています。
「こう言う時、魔法とは便利ですね」
 伊藤さんの魔法事典には、短距離転移魔法がありました。この魔法、転移した先に異物がった場合失敗する魔法だそうです。
 なので、先に探査球を転移させて、安全を確認してから、移転します。
「これは、墓地ですか?」
 転移した先に広がる光景、これは、カプセルに入れられた、無数の人だったのです。







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