使えない魔法使いに拾われました。

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01ーそれはもはや一般人ー

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 パパっ!ママっ!助けて、助けてよ!何で…?

 私はリリサ…。ララっていうの?いい名前ね。

 こんな酷いところ早く出て、自由になりたいね…。

 あれ、何で今更そんな事…思い出してるんだろう…。あれから何年経ったっけ……。
 鼻をつく錆びた金物のような血の匂いがする。少しずつ冷たくなっていく手の感触がいつまでも、手のひらにスーっと触れる。
「ララ…」
 死んじゃいや。置いてかないで…ひとりにしないで。必死に手を伸ばすけれど、全く動いてくれない私の手。そうだ、私も死ねば…
「やめろ」
 若い男の声がして、何やら唱えじめると緑色に視界少しが明るくなった。傷がどんどん癒えてきて意識もハッキリとしていく。ララの目にも光が戻った。
「リリサ…?」
 ララは状況が掴めず、混乱しているようだ。私もララも一様に男の顔を見る。ローブをしていてよく見えない。すると、彼は隣の商人に対して驚く事を口にした。
「おい商人、二人でいくらだ?」
「七千五百リラです」
「買った」
「はぁ…。では、あちらで会計をお願いします」
 嘘でしょ…、ずっと奴隷として捕まっていたけれど、これくらい私でも知ってるわ。一般人の十五年分の給料よ?それをあの男…一括なんていくらなんでも普通じゃないわ。私たち、これからどうなってしまうの…?
「リリサ…やっとここから出れるんだよ?どうしたの?」
「んーん、これからどんな生活になるのか少し不安なだけよ」
「そっか。私も」

「君たち」
 男がこちらへ来る。ローブは純藍色の上質な生地で装飾が施されている。赤ワインの赤黒い部分だけを凝縮したような色の革靴を履いていて、見るからに裕福そうだ。
「君たちはこれから俺の家に来てもらう。いいね」
「……」
「お前ら返事はどうした!」
 商人に怒鳴られて身を縮めた。まずい、何されるの?痛いのは嫌…助けて……
「おい、これは俺が買った。既に俺のものだ、口出しするな。」
…っ、?この人、私たちを庇って…。いや、そんなわけ無い。この人は今、"これ"って言った。私たちは人として見られてないんだわ…。
「すまなかったな。君たちに危害を加えるつもりはないよ。怖がらせてしまって悪かった」
「えっ…?奴隷に頭を下げるなんて、やめてください。そんな、主がそんなことしたら、ご自身が咎められますよ!?」
「いや、君たちは奴隷ではなくなった。俺が買った以上、君たちはこれから俺の家族だ」
 きっと嘘だわ。そう言って信用を煽っているに違いないわよ。だって、今までもそうやって…。思い出しただけで死にたくなる。
 私もララもしょげたままで、あの男の家に連れて行かれた。けれど、家に着いてからはもっと驚かされた。
「ここが俺の家だ。君らは俺の身なりで裕福な貴族邸を思い浮かべたかもしれないが、この格好は餞別の品として家を勘当された時に貰ったものだ」
 家を勘当…?私たち本当にどうなってしまうの?
「収入は心配するな。年収千二百リラで平均の約二倍強はある」
「リリサ、この人多分ヤバい人だよ。絶対詐欺師だって。それか、闇金…」
「人聞き悪いな。ちゃんと綺麗なお金だよ」
「私も少し疑ってますけど…。生活が安定するのなら、もう何でも構わないです」
「そうか」
 彼はそう言うと、少し待ってろと言って奥へ引っ込んでしまった。疲れた…。意識が遠のいていく。上から黒いのが降りてきて視界が少しずつ塞がれる。

 あれ…。ここは…?
「ベッド…?」
「ベッドで寝るのは久しぶりか?」
「ひぅぁっ!?」
「安心しろ、大丈夫だ。もう少し休んでいろ」
 なぜだか彼の声はとても落ち着く。もう一度寝れそうだわ。ただ、少し気になることもあったので聞いてみる事にした。
「あの、あなたはどんなお仕事をされてるの?」
「雑貨屋だ」
「魔法使いなのに?」
 彼はハハっと元気がなさそうに笑って、魔法使いじゃないよと答えた。
「魔法は使えないんだ。君らを治したのは魔宝具の力だよ。呪文を唱えれば君らでも扱える」
 それではいったいどこからあんな大金が出てきたのだろうか。
「俺の家系は魔法使いで公爵位なんだ。なのに、俺は唯一魔法が使えないんだよ」
 という事は、貴族の家を勘当されて、特に何の才能もない。年収が高い…だけ。それってもはや一般人なのでは?
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