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03ー初めてだからー
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「だってやった事なかったんだもの!」
「それにしたって火の扱いには気をつけろと言っただろ。朝食が焼却されちゃったじゃないか」
確かに言われたわよ…ほんの数分前に。けど、まさかあんなに恐ろしいものだとは思わなかったわ。世の奥様方は毎日あんなのと戦っているだなんて凄すぎるわよ。
「許可したのは俺だが、今度からはバケツに水を汲み置いてから料理してくれ頼むから」
「分かったわよ。けれど、魔法が使えないのと同じ事ではないかしら?」
「それを言われちゃ困るよ。魔法は使えようが使えまいが日常生活に支障出ないからな。料理とは違う」
なによ偉そうに…。何にも出来ないくせして妙に上から目線なんだもの。いちいちうるさいし、嫌になっちゃうわ。それはそうと…、
「ララは何をしてるのかしら」
あちこちを駆け回って沢山の本を運んでいるのだが、正直あんな大量に本を持っていって何をするのかは見当がつかない。彼女なりに何かできることを探しているのだろうか。
「主人があんな様子ではこの先が思いやられるものね」
ため息混じりに小さく苦笑する。ララはきっと、誰かの役に立てるようにと頑張っているのね…。
思えば、生まれてこの方全くと言っていいほど役に立とう、頑張ろうなんて考えたことなどなかった。生きることに必死だったから。
親の顔なんて覚えていない。物心つく前に売り飛ばされた。
でも、ララは違う。彼女は六歳までは家族と共に過ごして、その後戦争に負けて属国となった母国で攫われた。彼女の方が辛い思いをしたとは思う。けれど、彼女は尽くし尽くされる関係を知っている。〈知っているから味わう不幸〉と同じくらい、私は親の愛情を〈知らない〉という不幸を背負っているのよ。それは理解すら許されない。したくてもできそうにない。疎外感…。
「ウジウジしてても仕方ないわよね!きちんとやる事やらないとっ」
そこからは忙しすぎて、あまり覚えていない。三食しっかり食べられるなんてことは今までなかったから、お昼ご飯を作ってくれと文句を言われだこと覚えてる。びっくりしちゃったんだもの。
ただ、意外にも家事をしていれば一日が過ぎるのなんてほんの一瞬のことで、気づけば日は沈んでいた。というか、お風呂に入れるなんて最高すぎる。ララの柔らかな肌と温かいお湯が私の体を優しく包み込んでくる。
「しあわせぇ~」
「ララもぉ~」
危うく寝ちゃうとこだった。そうしてさっぱりした後、ララと寝支度を済ませる。ふっかふかの布団には感動した。石畳の冷たくて硬い床とは大違いだ。考え事をしようにも、気持ち良すぎてぼーっと意識が遠のいていく。
「リリサ?」
「ああ、ごめんねララ。何でもないわよ」
「そっか…」
「今日はもう寝ましょう」
「うん」
「おやすみなさい」
初めて、幸せって思えたな。
「それにしたって火の扱いには気をつけろと言っただろ。朝食が焼却されちゃったじゃないか」
確かに言われたわよ…ほんの数分前に。けど、まさかあんなに恐ろしいものだとは思わなかったわ。世の奥様方は毎日あんなのと戦っているだなんて凄すぎるわよ。
「許可したのは俺だが、今度からはバケツに水を汲み置いてから料理してくれ頼むから」
「分かったわよ。けれど、魔法が使えないのと同じ事ではないかしら?」
「それを言われちゃ困るよ。魔法は使えようが使えまいが日常生活に支障出ないからな。料理とは違う」
なによ偉そうに…。何にも出来ないくせして妙に上から目線なんだもの。いちいちうるさいし、嫌になっちゃうわ。それはそうと…、
「ララは何をしてるのかしら」
あちこちを駆け回って沢山の本を運んでいるのだが、正直あんな大量に本を持っていって何をするのかは見当がつかない。彼女なりに何かできることを探しているのだろうか。
「主人があんな様子ではこの先が思いやられるものね」
ため息混じりに小さく苦笑する。ララはきっと、誰かの役に立てるようにと頑張っているのね…。
思えば、生まれてこの方全くと言っていいほど役に立とう、頑張ろうなんて考えたことなどなかった。生きることに必死だったから。
親の顔なんて覚えていない。物心つく前に売り飛ばされた。
でも、ララは違う。彼女は六歳までは家族と共に過ごして、その後戦争に負けて属国となった母国で攫われた。彼女の方が辛い思いをしたとは思う。けれど、彼女は尽くし尽くされる関係を知っている。〈知っているから味わう不幸〉と同じくらい、私は親の愛情を〈知らない〉という不幸を背負っているのよ。それは理解すら許されない。したくてもできそうにない。疎外感…。
「ウジウジしてても仕方ないわよね!きちんとやる事やらないとっ」
そこからは忙しすぎて、あまり覚えていない。三食しっかり食べられるなんてことは今までなかったから、お昼ご飯を作ってくれと文句を言われだこと覚えてる。びっくりしちゃったんだもの。
ただ、意外にも家事をしていれば一日が過ぎるのなんてほんの一瞬のことで、気づけば日は沈んでいた。というか、お風呂に入れるなんて最高すぎる。ララの柔らかな肌と温かいお湯が私の体を優しく包み込んでくる。
「しあわせぇ~」
「ララもぉ~」
危うく寝ちゃうとこだった。そうしてさっぱりした後、ララと寝支度を済ませる。ふっかふかの布団には感動した。石畳の冷たくて硬い床とは大違いだ。考え事をしようにも、気持ち良すぎてぼーっと意識が遠のいていく。
「リリサ?」
「ああ、ごめんねララ。何でもないわよ」
「そっか…」
「今日はもう寝ましょう」
「うん」
「おやすみなさい」
初めて、幸せって思えたな。
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