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えっちなお菓子パーティーに招待されたオウジサマ
02 王子はツラいよ?
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あれから、1週間が経った。楓からの連絡は、一切ない。
「おはよう、みつ」
「はよ」
大学の学科棟で顔を合わせても、マジで今まで通りだ。
考えてみれば当たり前か。元々よくつるむ間柄ではないし、一緒に取り組んだグループ課題も終わったから、接点は挨拶とか、最低限の雑談くらい。まるで、あの夜の出来事が最初からなかったかのように、楓は平然としていた。
対して俺は、この一週間生きた心地がしなかったというのに。保留にしていた後輩の告白を断ったり(泣きつかれてしまって、すごく困った)楓からどんなアプローチをされるのかとビクビクしたり。ものすごく落ち着かない日々を過ごしたおかげで、唯一の癒しだった恋愛ゲームにも身が入らない。
でも、逆に考えよう。これでよかったのではないか、と。このまま何もなければ、なあなあになって、俺ら普通に元通りの関係に戻れるんじゃね? ……なんだ。真剣に悩んで、損した。
「……」
そう結論づけて、ほっとしていいはずなのに。なぜか、無性にムカつく。
だってこれ、楓が気まぐれに俺を「つまみ食い」したってことだよな? え、怖っ。あんな天使みたいな顔して!
(まぁ、最後までシてないし? 傷物にされたわけじゃないけどさ!?)
でも、じゃあ。あの時の、あの真剣な告白は何だったんだよ。
視線の先には、同じ学科の女子たちと楽しそうにお菓子を食べながら談笑する楓の姿があった。コミュ力おばけのあいつが女子と仲良くするのは、いつもの光景のはずなのに。なぜか、胸の奥が黒く塗りつぶされるように、モヤモヤする……。
一人で眉間にしわを寄せ、悶々としていると、見かねた友人が声をかけてきた。
「王子、なに百面相してんの?」
「……別に。人間って怖いなって考えてただけ」
「おー、王子様が急に哲学者だね」
「ほっとけ」
会話を終わらせようと視線を逸らすと、ふとテーブルに誰かの影が落ちた。顔を上げると、同じ学科の女子だった。
「王子くんたち! よかったらチョコ食べない?」
彼女は手に持っていた平たい箱を、すっと差し出してきた。中を覗いてみると、宝石のように艶々と輝くチョコレートが整然と並んでいる。あ、これ有名店のやつだ。めちゃくちゃ美味しそう。
「親が送ってきてくれたんだけど1人じゃ食べきれなくて持ってきたんだ。よかったらどう?」
「お、ありが……」
やった。小腹も空いていたし、ありがたく手を伸ばしかけたその時、隣の友人が、申し訳なさそうに声を上げた。
「あ、悪い俺、パス。甘いのダメでさ」
「そっかー。そうだよね、男の人って甘いの苦手な人多いもんね」
女子が納得したように頷き、くるりと俺の方を向く。
「王子くんは?」
「あ……」
喉まで出かかった言葉を、慌てて飲み込む。なんとなく俺に対するイメージが崩れる気がして。だから、咄嗟に本心とは裏腹な言葉を口にしてしまった。
「……俺も、ごめん」
「そっか、いいよいいよ! 突然ごめんね」
パタン、と甘い香りを残して箱が閉じられる。宝石のようなチョコレートは、俺の手元に来ることなく去ってしまった。
(……食べたかったのに)
俺のばか! 今時、甘党の男なんて珍しくもないし、変に思われることもないのに。変なプライドが邪魔をして、素直になれなかった。
楓からは連絡がないし、チョコは食べ損ねるし。なんだかもう、うまくいかないことばかりだ。
「おはよう、みつ」
「はよ」
大学の学科棟で顔を合わせても、マジで今まで通りだ。
考えてみれば当たり前か。元々よくつるむ間柄ではないし、一緒に取り組んだグループ課題も終わったから、接点は挨拶とか、最低限の雑談くらい。まるで、あの夜の出来事が最初からなかったかのように、楓は平然としていた。
対して俺は、この一週間生きた心地がしなかったというのに。保留にしていた後輩の告白を断ったり(泣きつかれてしまって、すごく困った)楓からどんなアプローチをされるのかとビクビクしたり。ものすごく落ち着かない日々を過ごしたおかげで、唯一の癒しだった恋愛ゲームにも身が入らない。
でも、逆に考えよう。これでよかったのではないか、と。このまま何もなければ、なあなあになって、俺ら普通に元通りの関係に戻れるんじゃね? ……なんだ。真剣に悩んで、損した。
「……」
そう結論づけて、ほっとしていいはずなのに。なぜか、無性にムカつく。
だってこれ、楓が気まぐれに俺を「つまみ食い」したってことだよな? え、怖っ。あんな天使みたいな顔して!
(まぁ、最後までシてないし? 傷物にされたわけじゃないけどさ!?)
でも、じゃあ。あの時の、あの真剣な告白は何だったんだよ。
視線の先には、同じ学科の女子たちと楽しそうにお菓子を食べながら談笑する楓の姿があった。コミュ力おばけのあいつが女子と仲良くするのは、いつもの光景のはずなのに。なぜか、胸の奥が黒く塗りつぶされるように、モヤモヤする……。
一人で眉間にしわを寄せ、悶々としていると、見かねた友人が声をかけてきた。
「王子、なに百面相してんの?」
「……別に。人間って怖いなって考えてただけ」
「おー、王子様が急に哲学者だね」
「ほっとけ」
会話を終わらせようと視線を逸らすと、ふとテーブルに誰かの影が落ちた。顔を上げると、同じ学科の女子だった。
「王子くんたち! よかったらチョコ食べない?」
彼女は手に持っていた平たい箱を、すっと差し出してきた。中を覗いてみると、宝石のように艶々と輝くチョコレートが整然と並んでいる。あ、これ有名店のやつだ。めちゃくちゃ美味しそう。
「親が送ってきてくれたんだけど1人じゃ食べきれなくて持ってきたんだ。よかったらどう?」
「お、ありが……」
やった。小腹も空いていたし、ありがたく手を伸ばしかけたその時、隣の友人が、申し訳なさそうに声を上げた。
「あ、悪い俺、パス。甘いのダメでさ」
「そっかー。そうだよね、男の人って甘いの苦手な人多いもんね」
女子が納得したように頷き、くるりと俺の方を向く。
「王子くんは?」
「あ……」
喉まで出かかった言葉を、慌てて飲み込む。なんとなく俺に対するイメージが崩れる気がして。だから、咄嗟に本心とは裏腹な言葉を口にしてしまった。
「……俺も、ごめん」
「そっか、いいよいいよ! 突然ごめんね」
パタン、と甘い香りを残して箱が閉じられる。宝石のようなチョコレートは、俺の手元に来ることなく去ってしまった。
(……食べたかったのに)
俺のばか! 今時、甘党の男なんて珍しくもないし、変に思われることもないのに。変なプライドが邪魔をして、素直になれなかった。
楓からは連絡がないし、チョコは食べ損ねるし。なんだかもう、うまくいかないことばかりだ。
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