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第3話
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「秋奈!お待たせ」
僕は秋菜の元へ急いだ。だけど・・・もうその時が来てしまっていた・・・。
「・・・・・」
「秋奈!!」
「・・・・大地・・・・?」
苦しそうに言う秋奈・・・。
「秋奈?苦しいのか?すぐ病院に連れて行くから」
「・・・・・・・」
僕はもうこれ以上人が苦しむ姿を見たくない・・・・。
東さんにその時は何があったのだろう・・・・。
ガチャリ
《優子さん・・・》
榊さんを尋ねたのは、優子さん。
「《ごめんなさい。こんな遅くに・・・》」
もう、夜の10時を回っていた。
看護師の優子さんならありえない時刻でもないのだが・・・・
彼女はその日早番でとっくに家に帰っているはずの時間だった。
《どうぞ?》
榊さんは、迷わず彼女を招き入れた。
コトリ
《ホットミルクです。温まりますよ?》
「《・・・・あなたはどうしてこんな時まで優しいの?》」
「《どうしてでしょうか・・・・》」
あなたをほっとけないだけです・・・
「《明美が貴女を思っていないかもしれないのに・・・》」
「・・・・・・」
榊さんは、何故か黙り込んでしまった優子さんを気にして・・・
《優子さん?》
「《用もないのに押しかけてごめんなさい・・・ホットミルクご馳走様・・・》」
《待ってください。バイオリン・・・》
優子さんが置いていこうとしたバイオリンを持って追いかけ・・・
「《用がないなんて嘘なの》」
《えっ?》
「《今私、明美とケンカ中で・・・》」
《・・・・・》
「《美月ちゃんの面倒をちっとも見てやらない彼女に腹が立って・・・》」
《・・・・・・》
「《なぁんて、本当は私も人のこと言えなくてさ・・・》」
《どうしてですか?》
「《私には娘がいたの。でも、娘が病気だって気づかずにいて・・・看護師失格・・・》」
《娘さんは?》
「《バイオリン遺して死んだの・・。わたし、母親も失格よ。夫とも別居中で・・・》」
《・・・・・・》
「《ついさっきなんて夫が他の女といたからって・・・こうして榊さんところにきちゃって・・・》」
優子さんは、涙を流して榊さんを見つめ・・・
「《わたし、最低な女でしょ?だって、お互い同じことしているもの》」
《優子さんは、最低か女なんかじゃないですよ》
「《榊さん・・・・》」
《あなたはみつきちゃんの面倒を文句も言わずに見ているし、ちゃんと看護師として命をまもってますし・・・。こんな僕の話し相手にだってなってくれてます》
「《榊さん・・・・》」
《だから、ありがとうございます》
そう言って彼女を、慰めた榊さん。
そして外は雨が降っている。
バス停まで優子さんを送った榊さんは、帰りに雨が降っていると気づき、直ぐに傘を取りに行き・・・
《・・・・・》
「《榊さん・・・》」
優子さんにおいついた。
《よかったら、傘を持っていってください》
「《えっ?わざわざ取りに行ったの?しかも、1本だけ?》」
《また、返してくれれば良いので》
「《まって、あなたが濡れちゃう》」
《構いません。僕は男ですから・・・。ではまた・・・》
「・・・・・」
優子さんは、榊さんの優しさに少し癒されたみたいだ。
「雅代さん、話ってなんですか?」
「前にも言ったわよね?和葉さんはやめときなさいよ」
「どういうことですか?付き合えって言ったのそっちですよね?」
「・・・・・事情がかわったのよ」
「とにかく、和葉は病気なんです」
「今すぐ別れて!」
「なんで今更・・・。理由を教えてください」
「あなたと和葉さんは、兄妹なの!」
「・・・・えっ?」
衝撃なことを聞いた。
「愛し合っちゃダメなの!」
「えっ?・・・いや、まさか・・」
嘘でしょう?
「うそ・・・ですよね?俺の事からかってます?」
「嘘じゃないわよ!」
まさか雅代さんからそんな真実を聞くなんて・・・・。
正也さんはその日仕事が手につかなかったとか・・・・。
そして、それから数日がたったある日・・・・
ピー
ある留守番電話・・・
「あ、西田さん?僕です・・・東大地。」
その声はなぜか掠れていて・・・・
「みんなの顔を見たいから3日後に日本に帰るよ・・・」
そう言い残してきれた留守番電話。
「なんだか声に元気ないみたい」
その留守番電話を聞いた西田さんとなっちゃんは
「確か、助けたい人がいるとか・・・」
「(そうか・・・・東さんはもしかして・・・)」
「・・もしかして彼女・・・」
「多分ね」
僕らが帰ってきたあときっと彼女は・・・。
帰らぬ人になったのだろう。
そうそれを知ってるのは西田さんとなっちゃんだけだ。
「ねぇ?今の留守番電話の人泣いてなかった?」
宏人は生まれたばかりだったから・・・。
「そっか・・・宏人にも聞かれちゃったか・・・」
「受話器浮いたままだったのかな?ずっと泣いていたよ?」
「順・・・」
「なっちゃん・・・。彼が帰国してきても何も聞かないでおこう。何があったかを聞かない方がいいんだ、きっと」
「パパとママの知り合い?」
「そうだよ?大事な人のひとりだよ?もうすぐ帰国するんだって」
「そうなんだ・・・」
「さぁ、夕飯にしましょう」
「わぁーい!」
それぞれが、それぞれの思いで過ごす日々・・・。
「・・・・・・」
《優子さん?》
いつのまにか榊さんに抱きついている優子さん。
《あなたはきっとまだ旦那さんを忘れてないんです》
「・・・・・」
「《このバイオリンは僕からよりきっと親友のあなたから渡すのが1番です。》」
「《榊さんはいいの?このまま明美と・・・》」
《僕の思いはきっと届かないから・・・・。なにせ、声も出ないし、音も聞けません。》
「《そんなの悲しすぎる。こんなに明美のことを思っているのに・・・》」
優子さんは、泣いている。
「《優子さん、涙を拭いてください。きっと、きっと旦那さんがいたという女の人のことは誤解ですよ》」
「《車いすの女の子だった・・・》」
《車いす・・・》
「《ただの道案内かしら・・・》」
《ほら、落ち着いて考えたら誤解解けそうだ》
「《ほんとだ・・・》
不思議・・・。榊さんといると言葉はなくても楽しいの。
どうして明美は、彼のことを嫌うのかしら・・・。
昔何かあったの?
それをまだ聞けないでいる優子さんだった。
《優子さん、この間倒れた女性ですが・・・》
「《和葉さん・・・でしたか?》」
《実は僕の友人の正也さんの彼女でして・・・》
「《ええ。その彼が病院にきたの》」
《そうでしたか》
「《実はとても深刻な状況で・・・・》」
《えっ?》
そしてその頃正也さんは雅代さんと話をしていて・・・・
「僕が和葉と兄妹?いったいどこからそんな情報が・・・」
そんなの信じられない。
「だから、私を好きでいなさいよ」
「待ってください。そんなの急に信じろと言われても・・・」
「いいから!」
「本当なんですか?僕は調べますよ?今の僕は昔の僕じゃない。ちゃんと人と話せますから」
「それでもいいからあの子を愛さないで・・・」
なんだか彼女の様子がおかしい。
「雅代さん、聞いてください。和葉は病気なんです。彼女には、骨髄が必要なんだ。・・・・もしも、俺が本当に兄なら・・・・させれや、俺は助ける」
「・・・・・・・」
黙ってしまった雅代さん。
「雅代さん、一体どうしちゃったんですか?
あなたはそんな人じゃないはずだ。僕がいちばんそれをよく知ってます。なにか理由があるんですよね?ちゃんと聞きますから・・・」
僕は迷わず彼女の目を離さずに言った。
「・・・・わたしの・・・・私のせいなの・・・・」
すると雅代さんは涙声で膝から崩れ落ちそう言い始めた。
「えっ?」
そして、彼女はゆっくりと話し始めた。
彼女を座らせる。そして、話を聞くことにした。
「あの子・・・。和葉さんには生き別れの双子の姉がいるの」
「えっ?それ、本当ですか?」
「両親が離婚した時に父親と母親でそれぞれ引き取られたらしくて・・・」
初耳すぎる真実。
「ある日、彼女の姉が私の家の前にいて・・・【助けてください】って。」
「・・・・・あの?それと、僕が彼女と兄妹って・・・どう関係するんですか?」
「正也さん、あなたの父親の再婚相手が和葉さんの本当の母親なのよ?」
「だったら、その双子のお姉さんの骨髄を・・・・」
「それがね・・・あの子のお姉さんは・・・同じ病気でもう亡くなってるの」
「・・・・・えっ・・・・」
「和葉さんのためにしてあげれることが何もないの・・・」
「・・・・・それで和葉が来た時にものすごく驚いていたんですね・・・」
「まさか妹が生きているなんて・・。しかも、同じ病気に掛かっているなんて・・・。だから・・・」
「だからって和葉を見捨てろって言うんですか?僕は・・・・。僕はもし義理の兄妹だとしても・・・和葉を守っていくと決めたんです。・・・・母親を探します・・・」
と、僕は部屋を出ていこうとした。
「正也さん。私を恨んでる?」
「なんで恨むんですか?」
「また、見捨てようとしたからよ」
「見捨てて何回ないじゃないですか」
「正也さん・・・」
「あなたは、彼女をちゃんと従業員として雇ってくれた。今まで通りこれからも仲良くやりましょう」
「・・・・・」
正也さんのこんな事情も・・・・、
東さんの切ない思いも・・・、
榊さんの変わらぬ想いも・・・・、
斎藤さんの密かな想いも・・・、
きっときっと・・・・
いつか報われる日が来る・・・・。
「おかしいなぁー・・・この間はこの辺で見たんだけど・・・・」
車椅子で誰かを探す女子がいた。
バサッ
彼女は、何かを落としてしまった。
「あっ」
それを拾おうとして・・・
「はい」
拾ってくれた女性がいた。
「ありがとうございます」
車椅子の女性は、拾ってくれた人にお礼を言った。
拾って集めてくれたのは・・・・
「すてきなデザイン画ですね」
莉佐さんだった。
「・・・・まだまだ半人前なんですけど・・・・」
「でも、服ってその人をおもって作ったりするんですよね?」
「えっ?」
「あっ、ごめんなさい。ドラマの見すぎですかね(笑)そんな気がして・・・・」
「・・・・・・・」
その女性は、莉佐さんの悲しそうな顔を見てしまった。
「好きな人が振り向く方法って、ないのかな・・・・」
そう呟いていた。
「・・・・好きな人が振り向く方法ですか?」
「・・・あっ、ごめんなさい。初対面の人にこんなこと愚痴るなんて迷惑ですよね?」
「いえ、何となくわかりますけど・・・・」
「一層そいつが・・・記憶でも失ってくれたら・・・・、もしくは私が記憶失ったら・・・・」
「・・・」
「彼は優しくしてくれるのかな・・・・」
「・・・・・」
彼女は黙って聞いてくれている。そして、
「あなたは、ずっと思っている人がいるんですね」
と、言われ・・・
「えっ?」
「私もあなたと一緒かもしれません」
「・・・・・」
「ここに来たらいつかきっと彼とまた会う気がしたんですが・・・。
他の人のアプローチを断ってまで探しに来ちゃったんですけど・・・・」
「へぇー、そうだったんですか。あっ、ごめんなさいね。余談に付き合わせて・・・・・・
「いえ、わたしこそありがとうございます」
それじゃあ私はこれで・・」
と、車椅子の彼女は去っていった。
「・・・・・・・」
莉佐は彼女を見送りながら・・・
(不思議・・・。彼女とはまたどこかで会う気がする。それに初めて会ったのにそんな気がしないなんて・・・)
だから、あんなことを話してしまったのだろうか?
莉佐さんは、そう思った。
僕は秋菜の元へ急いだ。だけど・・・もうその時が来てしまっていた・・・。
「・・・・・」
「秋奈!!」
「・・・・大地・・・・?」
苦しそうに言う秋奈・・・。
「秋奈?苦しいのか?すぐ病院に連れて行くから」
「・・・・・・・」
僕はもうこれ以上人が苦しむ姿を見たくない・・・・。
東さんにその時は何があったのだろう・・・・。
ガチャリ
《優子さん・・・》
榊さんを尋ねたのは、優子さん。
「《ごめんなさい。こんな遅くに・・・》」
もう、夜の10時を回っていた。
看護師の優子さんならありえない時刻でもないのだが・・・・
彼女はその日早番でとっくに家に帰っているはずの時間だった。
《どうぞ?》
榊さんは、迷わず彼女を招き入れた。
コトリ
《ホットミルクです。温まりますよ?》
「《・・・・あなたはどうしてこんな時まで優しいの?》」
「《どうしてでしょうか・・・・》」
あなたをほっとけないだけです・・・
「《明美が貴女を思っていないかもしれないのに・・・》」
「・・・・・・」
榊さんは、何故か黙り込んでしまった優子さんを気にして・・・
《優子さん?》
「《用もないのに押しかけてごめんなさい・・・ホットミルクご馳走様・・・》」
《待ってください。バイオリン・・・》
優子さんが置いていこうとしたバイオリンを持って追いかけ・・・
「《用がないなんて嘘なの》」
《えっ?》
「《今私、明美とケンカ中で・・・》」
《・・・・・》
「《美月ちゃんの面倒をちっとも見てやらない彼女に腹が立って・・・》」
《・・・・・・》
「《なぁんて、本当は私も人のこと言えなくてさ・・・》」
《どうしてですか?》
「《私には娘がいたの。でも、娘が病気だって気づかずにいて・・・看護師失格・・・》」
《娘さんは?》
「《バイオリン遺して死んだの・・。わたし、母親も失格よ。夫とも別居中で・・・》」
《・・・・・・》
「《ついさっきなんて夫が他の女といたからって・・・こうして榊さんところにきちゃって・・・》」
優子さんは、涙を流して榊さんを見つめ・・・
「《わたし、最低な女でしょ?だって、お互い同じことしているもの》」
《優子さんは、最低か女なんかじゃないですよ》
「《榊さん・・・・》」
《あなたはみつきちゃんの面倒を文句も言わずに見ているし、ちゃんと看護師として命をまもってますし・・・。こんな僕の話し相手にだってなってくれてます》
「《榊さん・・・・》」
《だから、ありがとうございます》
そう言って彼女を、慰めた榊さん。
そして外は雨が降っている。
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《・・・・・》
「《榊さん・・・》」
優子さんにおいついた。
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「《えっ?わざわざ取りに行ったの?しかも、1本だけ?》」
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「《まって、あなたが濡れちゃう》」
《構いません。僕は男ですから・・・。ではまた・・・》
「・・・・・」
優子さんは、榊さんの優しさに少し癒されたみたいだ。
「雅代さん、話ってなんですか?」
「前にも言ったわよね?和葉さんはやめときなさいよ」
「どういうことですか?付き合えって言ったのそっちですよね?」
「・・・・・事情がかわったのよ」
「とにかく、和葉は病気なんです」
「今すぐ別れて!」
「なんで今更・・・。理由を教えてください」
「あなたと和葉さんは、兄妹なの!」
「・・・・えっ?」
衝撃なことを聞いた。
「愛し合っちゃダメなの!」
「えっ?・・・いや、まさか・・」
嘘でしょう?
「うそ・・・ですよね?俺の事からかってます?」
「嘘じゃないわよ!」
まさか雅代さんからそんな真実を聞くなんて・・・・。
正也さんはその日仕事が手につかなかったとか・・・・。
そして、それから数日がたったある日・・・・
ピー
ある留守番電話・・・
「あ、西田さん?僕です・・・東大地。」
その声はなぜか掠れていて・・・・
「みんなの顔を見たいから3日後に日本に帰るよ・・・」
そう言い残してきれた留守番電話。
「なんだか声に元気ないみたい」
その留守番電話を聞いた西田さんとなっちゃんは
「確か、助けたい人がいるとか・・・」
「(そうか・・・・東さんはもしかして・・・)」
「・・もしかして彼女・・・」
「多分ね」
僕らが帰ってきたあときっと彼女は・・・。
帰らぬ人になったのだろう。
そうそれを知ってるのは西田さんとなっちゃんだけだ。
「ねぇ?今の留守番電話の人泣いてなかった?」
宏人は生まれたばかりだったから・・・。
「そっか・・・宏人にも聞かれちゃったか・・・」
「受話器浮いたままだったのかな?ずっと泣いていたよ?」
「順・・・」
「なっちゃん・・・。彼が帰国してきても何も聞かないでおこう。何があったかを聞かない方がいいんだ、きっと」
「パパとママの知り合い?」
「そうだよ?大事な人のひとりだよ?もうすぐ帰国するんだって」
「そうなんだ・・・」
「さぁ、夕飯にしましょう」
「わぁーい!」
それぞれが、それぞれの思いで過ごす日々・・・。
「・・・・・・」
《優子さん?》
いつのまにか榊さんに抱きついている優子さん。
《あなたはきっとまだ旦那さんを忘れてないんです》
「・・・・・」
「《このバイオリンは僕からよりきっと親友のあなたから渡すのが1番です。》」
「《榊さんはいいの?このまま明美と・・・》」
《僕の思いはきっと届かないから・・・・。なにせ、声も出ないし、音も聞けません。》
「《そんなの悲しすぎる。こんなに明美のことを思っているのに・・・》」
優子さんは、泣いている。
「《優子さん、涙を拭いてください。きっと、きっと旦那さんがいたという女の人のことは誤解ですよ》」
「《車いすの女の子だった・・・》」
《車いす・・・》
「《ただの道案内かしら・・・》」
《ほら、落ち着いて考えたら誤解解けそうだ》
「《ほんとだ・・・》
不思議・・・。榊さんといると言葉はなくても楽しいの。
どうして明美は、彼のことを嫌うのかしら・・・。
昔何かあったの?
それをまだ聞けないでいる優子さんだった。
《優子さん、この間倒れた女性ですが・・・》
「《和葉さん・・・でしたか?》」
《実は僕の友人の正也さんの彼女でして・・・》
「《ええ。その彼が病院にきたの》」
《そうでしたか》
「《実はとても深刻な状況で・・・・》」
《えっ?》
そしてその頃正也さんは雅代さんと話をしていて・・・・
「僕が和葉と兄妹?いったいどこからそんな情報が・・・」
そんなの信じられない。
「だから、私を好きでいなさいよ」
「待ってください。そんなの急に信じろと言われても・・・」
「いいから!」
「本当なんですか?僕は調べますよ?今の僕は昔の僕じゃない。ちゃんと人と話せますから」
「それでもいいからあの子を愛さないで・・・」
なんだか彼女の様子がおかしい。
「雅代さん、聞いてください。和葉は病気なんです。彼女には、骨髄が必要なんだ。・・・・もしも、俺が本当に兄なら・・・・させれや、俺は助ける」
「・・・・・・・」
黙ってしまった雅代さん。
「雅代さん、一体どうしちゃったんですか?
あなたはそんな人じゃないはずだ。僕がいちばんそれをよく知ってます。なにか理由があるんですよね?ちゃんと聞きますから・・・」
僕は迷わず彼女の目を離さずに言った。
「・・・・わたしの・・・・私のせいなの・・・・」
すると雅代さんは涙声で膝から崩れ落ちそう言い始めた。
「えっ?」
そして、彼女はゆっくりと話し始めた。
彼女を座らせる。そして、話を聞くことにした。
「あの子・・・。和葉さんには生き別れの双子の姉がいるの」
「えっ?それ、本当ですか?」
「両親が離婚した時に父親と母親でそれぞれ引き取られたらしくて・・・」
初耳すぎる真実。
「ある日、彼女の姉が私の家の前にいて・・・【助けてください】って。」
「・・・・・あの?それと、僕が彼女と兄妹って・・・どう関係するんですか?」
「正也さん、あなたの父親の再婚相手が和葉さんの本当の母親なのよ?」
「だったら、その双子のお姉さんの骨髄を・・・・」
「それがね・・・あの子のお姉さんは・・・同じ病気でもう亡くなってるの」
「・・・・・えっ・・・・」
「和葉さんのためにしてあげれることが何もないの・・・」
「・・・・・それで和葉が来た時にものすごく驚いていたんですね・・・」
「まさか妹が生きているなんて・・。しかも、同じ病気に掛かっているなんて・・・。だから・・・」
「だからって和葉を見捨てろって言うんですか?僕は・・・・。僕はもし義理の兄妹だとしても・・・和葉を守っていくと決めたんです。・・・・母親を探します・・・」
と、僕は部屋を出ていこうとした。
「正也さん。私を恨んでる?」
「なんで恨むんですか?」
「また、見捨てようとしたからよ」
「見捨てて何回ないじゃないですか」
「正也さん・・・」
「あなたは、彼女をちゃんと従業員として雇ってくれた。今まで通りこれからも仲良くやりましょう」
「・・・・・」
正也さんのこんな事情も・・・・、
東さんの切ない思いも・・・、
榊さんの変わらぬ想いも・・・・、
斎藤さんの密かな想いも・・・、
きっときっと・・・・
いつか報われる日が来る・・・・。
「おかしいなぁー・・・この間はこの辺で見たんだけど・・・・」
車椅子で誰かを探す女子がいた。
バサッ
彼女は、何かを落としてしまった。
「あっ」
それを拾おうとして・・・
「はい」
拾ってくれた女性がいた。
「ありがとうございます」
車椅子の女性は、拾ってくれた人にお礼を言った。
拾って集めてくれたのは・・・・
「すてきなデザイン画ですね」
莉佐さんだった。
「・・・・まだまだ半人前なんですけど・・・・」
「でも、服ってその人をおもって作ったりするんですよね?」
「えっ?」
「あっ、ごめんなさい。ドラマの見すぎですかね(笑)そんな気がして・・・・」
「・・・・・・・」
その女性は、莉佐さんの悲しそうな顔を見てしまった。
「好きな人が振り向く方法って、ないのかな・・・・」
そう呟いていた。
「・・・・好きな人が振り向く方法ですか?」
「・・・あっ、ごめんなさい。初対面の人にこんなこと愚痴るなんて迷惑ですよね?」
「いえ、何となくわかりますけど・・・・」
「一層そいつが・・・記憶でも失ってくれたら・・・・、もしくは私が記憶失ったら・・・・」
「・・・」
「彼は優しくしてくれるのかな・・・・」
「・・・・・」
彼女は黙って聞いてくれている。そして、
「あなたは、ずっと思っている人がいるんですね」
と、言われ・・・
「えっ?」
「私もあなたと一緒かもしれません」
「・・・・・」
「ここに来たらいつかきっと彼とまた会う気がしたんですが・・・。
他の人のアプローチを断ってまで探しに来ちゃったんですけど・・・・」
「へぇー、そうだったんですか。あっ、ごめんなさいね。余談に付き合わせて・・・・・・
「いえ、わたしこそありがとうございます」
それじゃあ私はこれで・・」
と、車椅子の彼女は去っていった。
「・・・・・・・」
莉佐は彼女を見送りながら・・・
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