それぞれの空~another story~

藤原葉月

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第5話

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あれから、1週間後・・・・
東さんがやっと帰ってくると聞いたみんなは、空港に向かうタクシーの中にいて・・・・・
「東さん、あのときは明後日には帰国するって言ってたのに・・・」
「ダンスコンクールに合格したから、急に帰れなくなったみたいですね。斎藤さんは、たしか写真コンクールの結果を聞きに行ってる」
「《そうだ、榊さんもなんかイベントやるんだって?》」
《はい、子供たちの発表会をしようかと》
「《それから、なんかお手伝いしたくて・・・じゃん!》」


と、正也さんはチケットを榊さんに見せて・・・
「《勝手なことしてごめんなさい。チケット作らせてもらったよ。》」
《どうもありがとうございます》
「《それくらいしかお手伝い出来ないし・・・。あっでも、みんなで聞きに行くから!なっ!!》」
《はい、ありがとうございます》
「《このあと、和葉のお見舞いに行くから一緒に行けなくてごめんなさい。》」
「気にしないでよ、正也さん。僕と榊さんで東さんに会ってくるからさ!また、その後で来てくれたら。」
「そうだな。じゃあ、おれはここで。一樹も行けなくてごめんって言ってたしな」
「そういえば、コンクールの発表の日でしたっけ?」
「《はい、だから報告よろしくって》」
「(笑)なんの報告だよ」
「《東さんがみんなの顔を見た反応が見たいって・・・。いえ、聞きたいって》」
「(笑)アイツらしいな。じゃあ、俺も見舞いの後すぐ追いかけるよ。じゃあ」
そう言って降りていった正也さんだった。
斎藤さんはと言うと・・・・
「えっ?」
斎藤さんは、怜香さんから結果を言われ・・・


「初当選おめでとう」
「えっ?本当に?」
「本当よ」
「あぁ、よかったぁー・・・頑張った甲斐があったぁー」
「くすっ、よかったわね」
と、笑う怜香さん。
「あ、あの・・・莉佐知りませんか?」
「この時間なら屋上じゃないかしら・・・。彼女は、空に近い場所で撮影するの好きみたいだから・・・・」
「屋上ですか?」
「莉佐ちゃんに何か用があるの?」
「なんだかんだ、あいつのおかげでもあるんで・・・・」

「そう・・・。ちゃんと言わなきゃダメよ?」
「わ、わかってます」
と、僕は迷わず屋上に向かう。
(素直に・・・素直に・・・)


「残念・・・空に近いのになぁー」

観覧車に乗る前にあいつ、そんなこと言ってたっけ?
僕は気づいていなかった。
なぜか、ニヤついていることに・・・。
そして、莉佐のことを考えていることに・・・。
早くあいつに報告したくて・・・・
「莉・・・」

莉佐と、勢い良く行こうとしたら..・
そしたらあいつ・・・誰か知らない人といて・・・

「えっ?男?」
そういえばこの前の人と似てる?
やっぱりあの時の人は莉佐だったのか?

莉佐は、その男と親しげに話していて・・・
しかも笑っているではないか!!

「莉佐!!」
思わず叫んだ。
「えっ?一樹?」
僕は、一緒にいる男をチラ見しつつ無視して・・・・
「お、お前に報告だ」
「なによ、わたしに報告することなんてあるの?」
「・・・お前のアドバイスのおかげで初当選したから・・・・・」
「えっ?本当に?おめでとう!」
「・・・・・あの?莉佐さん」
「ところで、隣にいるやつは誰なの?」
「どーも・・・。悟って言います」
「へぇー・・・」
「あ、あの・・・話すと長くなるんだけど・・・・」
と莉佐は言うと・・・
「簡単に言うとお見合い相手です」
「さ、悟さん・・・」
「えっ?お前がー?お見合い・・・ふーん・・・」
と、ジロジロとみてみる。
莉佐にしてはイケメンなやつと・・・・・

「僕はOKなんだけどな・・・。莉佐さんと交際するの」
「えっ?交際・・・・」
なぜかズキンとした。
いや、莉佐がお見合いしようと何しようと自由だけど・・・・
「莉佐さんはどうやら迷ってるみたいで・・・・」
となぜか僕を見て・・・
(あなたがいるから)
と、彼が思っていることなど僕は知らずにいて・・・・
「ねぇ?用はそれだけ?」
「そうだよ。他に何があるんだよ・・・。それじゃあ、お邪魔しました!」
と、そそくさと出てきた。
そしてその後ろ姿を黙って見送る莉佐さん。
「一樹・・・・」
「・・・・これでわかりました。莉佐さんの好きな人って・・・あの人ですよね?」
「・・・・ごめんなさい、悟さん。私は・・・・」
「いいですよ?ぼくは、莉佐さんの気持ちが少しでも傾くなら・・・それまでいくらでも待ちますから。いつでも受け入れますよ」
「・・・・・・・」

そして僕は、なぜかイライラしていた。
「あー💢報告するんじゃなかった!」
と、ひとりブツブツと言っていて・・・
「どうしたの?斎藤くん。何イラついてるの?」
「べつに、イラついてませんから!外回り行ってきます!」

と、僕は会社から出た。
「・・・・・・・・」
なぜだかさっきのことが頭から離れなくなってる。
どうしちゃったんだ?

その頃・・・正也さんは和葉さんの病室にいて・・・


「和葉、具合はどう?」
「だいぶいいみたい・・・」
「そっか・・・」
「あのね、雅代さんが来てくれて・・・、全部話してくれたの」
「・・・・・そっか」
「ごめんなさいって」
「・・・・・そっか、それはよかった」
「よくないよ。ねぇ?正也さん・・私の母は、私を捨てたのよ?だから探さなくていいよ」
「えっ?」
「だって、私の事で正也さんを苦しめたくない」
「和葉・・・・・」
「その上、雅代さんまで苦しめて・・・。私なんか生きてる資格ない・・・。だって、正也さんと兄妹・・・」
「和葉!!」
正也さんは和葉さんを抱きしめた。
これ以上、和葉さんが自分を責める言葉を聞きたくなかったから・・・・。
「俺の気持ちは今でも変わらない。お前を助けるためなら命だってかける!!
頼むよ、約束してくれ」
「・・・・」
「お願いだ。死んでもいいだなんて口にしないでくれ!!」
「正也さん・・・・」
「俺はお前を愛している。愛しているから・・・・」

「正也さん」

2人はそれから静かに抱き合っていた。

その頃斎藤さんは・・・・

「あー!かっこ悪い!!これじゃあ、僕がまるでまるで・・・・莉佐に嫉妬してるみたいじゃないか!!」

僕の頭の中はなぜだかあれでいっぱいだ!
「莉佐が悪いんだ!あんなキス、するから・・・」

「いい?レンズを覗き込んだらそこから動かないで」
「あんなキスするから・《2回目》」

と、頭を抱えていたら
「かーずき」
「わっΣ(゚д゚;)ま、衛・・・・」
「なんだよ。声掛けちゃまずかったか?」
「いや、別に(莉佐のこと考えていただなんて言えない・・・)」
「お前にさぁ、いつ報告しようかと思っていたんだけどさー・・・・」
僕は、衛からある報告を受けた。
「えっ?結婚?ってかお前、付き合っている人いたんだ~」
「こら、声でかいよ」
「えっ?っていうか、莉佐は?」
「あのさ、まだわからない?お前はどこまでも鈍感だな」
「えっ?なんでだよ」
「そのうち招待状届くから腰抜かすなよ?あとそれと、莉佐ちゃんは相手が誰だかしってるから」
「それ、どういうこと?」
「つまりだ。知らないのはたぶん、お前だけ。まぁ?新人だから仕方ないけどさー、一応3ヶ月ぐらいは経つわけだし・・・もっと周りみてくれよなぁー」
「・・・・。全然相手が誰だか・・・」
「っていうか、知っても莉佐ちゃんを絶対責めたりするなよ?彼女が黙っていようって言ったんだからな」
「じゃあ、そこまで言うなら教えろよ」
「えっ?良いのかよ」
「お前の結婚相手・・・誰なんだよ!」

「・・・・怜香さん」
「えっ?Σ(゚д゚;)」

僕は固まった。
「俺たち、お前が会社入る前から付き合ってんの。お前が怜香さんに夢中だけら隠すの大変だったわ。・・・それで・・・
「・・・・・・」
僕はふらっと向かっていった。
「一樹?待てよ・・・」
そして、僕が向かっていったのは・・・・
「莉佐・・・・ちょっと来いよ」
「えっ?」
グイッと、莉佐の腕をを引っ張ると・・・・
「おまえさ、知っていたんだって?」
「な、なんのこと?」
「衛と怜香さんのことだよ」
「そんなの当たり前じゃない。あの二人のずっとそばに居るのよ?むしろ知らないの一樹だけだから・・・」

衛もそう言ってた。
なんだか悔しい。
「なんで言わないんだよ」
「・・・・・そんなの・・・・。そんなの言えるわけないじゃない!バカじゃないの?」
「バカって・・・・」
「一樹が・・・。一樹が怜香さんのこと本気みたいだったから、言えなかったの!それのどこが悪いのよ!」
莉佐はなぜだか泣き出していた。
「っていうかさぁーなんでお前が泣いてんの?泣きたいのこっちなんだけど?」
「一樹はこの涙の意味、わからないんだ」
「えっ?」
「わたしは、一樹に会えて嬉しかったの。わたし、一樹以外の人を好きになることなんてなかったよ?」
「えっ?な、何言ってるの?」
「でも・・・・・」

「?」
「この先一樹が、もし私を好きにならないなら・・・・そばに居るの辛いから・・・決めたことがある」
「えっ?決めたってなんのこと?意味わからないんだけど・・・・」
「異動の話・・・ずっと断っていたんだけど・・・」
「異動?」
「私、報道部に異動する!」
莉佐は、ずっと僕を応援してくれていた。
じつは、誕生日に一眼レフをプレゼントしてくれていたり。(初心者用だけど)


僕が眠ってしまって・・・・彼女はそれを置いていった。
誰からかわからないと思っていたけれど、なにかの拍子に聞いたんだ。

「あっ、そうだ。異動する前に一つだけいいこと教えてあげるよ」
「えっ?いいこと?」
「一樹が気になってたあの写真集に写っていた場所・・・・」
「あの写真・・・の写っていた場所?」
「その場所は、かずが行ったことある場所よ」
「えっ?うそ!僕が?」
だから、懐かしい気がしたのか?


その頃、空港には

「わぁー日本だぁー!
ラッキー、日本に帰ってきたよ!」

「ワンワン」
懐かしい!
《東さん、おかえりなさい》
「《あー!榊さん!ただいま!会いたかった!》」
榊さんが静かに迎えてくれた。
「ワンワン」

《ラッキー!僕を覚えてますか?》
「ワンワン」

「《他のみんなは?》」
《もちろんいますよ》
「おかえり、東さん。」
と、西田さんと・・・

「おかえり!東さん」
「あっ!春日部さん!」
「あはは!正解。そっか、西田さんは向こうで会ってたっけ?」
「うん・・・」
「で?どうなの?僕達の顔を見た感想は・・・・」
「なんか、すごく新鮮です。」
「(笑)敬語とかやめようよ。そりゃそうだよな!改めて初めましてだな!」
「うん!・・・・会えて嬉しい・・・あとは・・・あれ?斎藤さんは?」
「それがね、幼なじみの女の子と、今日から最後の取材に行くらしいよ」
「最後の取材?」
「そう。莉佐さんが、ずっと面倒見ていてくれた子がいてね・・・。」
「莉佐さんって言うんだ」
「それがさ、あの二人いい感じなのにすぐ喧嘩しちゃうみたいでさ。大丈夫かなって(笑)」
「やっぱりな・・・」

「莉佐さんが、今度部署を異動するらしくってさ」
「なんだそれ、すごい展開」
「そっか。みんないい恋してるね」
と、東さんがぽつりと呟いた。
「東さん、ごめん」
「なんで謝るの?仲間の恋バナ聞くなんてうれしいことじゃん。あっ、でも恋バナするのは女の子か(笑)」

「・・・・・・」
「僕はねー、ダメになっちゃったから・・・・」
「・・・・・・」
「出会った彼女はね、治らない病気だった。
目が見えなくなるって・・・最初聞いた時はびっくりした。なのに、彼女は僕を描き続けたんだ。そのことをずっと隠していたんだ。」
「・・・・・・」
みんなは黙って聞いていた。
「あー、どうしよう・・・・涙止まらないや・・・」

まさか自分から話してくれるとは思わなかった。
「心配していたんです、電話越しで泣いているとうちの宏人が留守電聞いていたから・・」

「僕はもう二度と恋をしない。」
「東さん・・・、そんな悲しいこと言わないで」
《そうですよ》
「でも、彼女は僕と会わなければ・・死ぬことは無かったかもしれない・・・」


「えっ?し・・んだ?」
 「・・・・・」
みんなは、絶句している。

「彼女は、僕が初恋の人だと言ってくれました。まだ、彼女とのことが癒えるまでは恋が出来ないと思います」 
「東さん、元気だしてよ」
「はい」

だけど、そんな東さんの恋は、終わってなんかいなかった。

そして、みんなが談笑する中、ある女の子の気持ちにが近づいていた。

この前の車椅子の子だ。

彼女の目線の先には・・・・

ある彼がいた・・・・。
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