それぞれの空

藤原葉月

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突きつけられた真実

第12話

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「東條、ごめん、ごめんな。お前の気持ちに気付かなくて・・・・」
東條の、本当の気持ちを知ってしまった。

「君は、一人じゃないよ?僕たちがいるじゃん」

そう言う東條の笑顔が今の俺には、痛い。
東條の心の痛みをわかってやれなくて・・・・。
俺は、みんながいる店に来て、ボーッとしたまま、窓の外を見ていた。
空には満点の星が輝いている。

「西田さん、どうしたのでしょうか」
榊さんは、俺がなぜ、ボーッとしているのかわからないようだ。
「きっと、好きな人ができたんですよ」
東さんは、そう言った。

目が見えなくても、気持ちは見えてしまうものなんだろうか。

「好きな人って・・・・」
榊さんは、俺に紙を渡してきた。
「《西田さん、好きな人出来ましたか?》」
「好きな人?いや、いないけど・・・」
「《もしかして、なっちゃん?》」
ストレートに言われて・・・・

「な、なんで・・・💦💦」
ちょっと焦ってしまった。
「《やっぱり?最近、一緒にいるし、なんとなく目がが違うなぁーって。》」
「それは・・・・彼女らの相談に乗ってたから」
「《西田さんは、なっちゃんを名前で呼んでいるでしょう?》」
「・・・・・」
「《すいません。それは、いっちゃダメでしたか?」
榊さんは、なぜかしょげてしまった。
でも、俺は、話してしまおうと思った。そうすれば、きっとスッキリするって思った。

「《そうだよ、榊さんの言う通り・・・》」
俺は、覚えたての手話で正直に告白しようと思った。
「《えっ?》」
「《俺は、理子さんが、好きだよ。でも、彼女は東條一筋だし。それに、東條の彼女だから奪うつもりなんてないよ。そんなことしたら、彼を裏切るし、俺のかつて親友と同じことをすることになるからね。ふたりの間には入れないんだ。」
「《でも、好きなんですよね?》」
「《榊さん、みんなも・・・俺のこの気持ちは、東條には、内緒にしておいてほしい。》」
「西田さん」
「彼を裏切りたくないんだ」
「でも、気持ちを伝えないんですか?閉じ込めたまま、後悔しないですか?」
「しないさ。」
俺は、里子以外愛せない・・・。
いや、愛さない・・・・。
そう、誓ったから。


いつのまにか合流した東條と、理子さんとみんなで笑い合っていた。

さっき聞いたことは忘れよう。
そう心に誓いながら・・・・。

「今日は、特別な日よ」
「えっ?なんで?」
「なんと、宏人が、二十歳になりました~!」
「やっとかよ」
「やっとみんなと対等になれまーす!
お酒も飲める歳になっちゃいました!
成人式には出れるかどうかわからないけど、みんなともうしばらく頑張りたいと思いまーす!」
「・・東條・・・」
「そんな暗い顔しないでよ。そんな簡単に死んだりはしないからさ!心配しないで?」
「心配しないやつなんていないだろ?お前に支えてもらったから、今度は俺たちが支える番だ!だから、遠慮するなよ。」
「なにそれー!お祝いの言葉に思えない~」
「東條・・・おめでとう」

「ありがとう」
「突然だったから、なにもプレゼント用意してないや・・・ごめん。」 
「いいの。僕にとってのプレゼントは、みんなといることなんだから!
なによりの誕生日プレゼントだよ」
そう言って、変わらない笑顔で笑った。

それから数週間は、変わらない毎日を送っていた。

プルルル、プルルル
「もしもし。正也さん?」
「西田さん?いまどこですか?本番始まりますよ?」
「今行くよ。ちょうど足りないものの買い出しに行ってたんだ。ごめんな。」
「気を付けてくださいね」
「あと、10分で着くから」
と、言ってるそばで・・・・
「東條さん、大丈夫ですか?」
「もしもし?正也さん?東條が、どうかしたのか?」
「また、熱が下がらなくて・・・、
でも、本番には出たいって・・・
これが最後かもしれないって・・・」
「あのバカ・・・。正也さん、すぐ行くから待ってて!」

嫌な予感がするんだ・・・・

そうなったら、もう二度と東條と話せない気がして・・・・



そして、公開稽古本番・・・・
いつものように、東さんのダンスから始まる。

榊さんのギターも鳴り始め、二人のシンガーが歌う。

ここまでは、順調だった。

東條は、いつものように舞台に立った。
けれど、様子がおかしい・・・・・。
「東條?どうした?」

東條の体は崩れてそのまま倒れてしまった・・・・

「宏人!しっかりしろ!!救急車!」
「はい!お願いします」
携帯で救急車を呼ぶ理子さん。
「西田君・・・・ハァハァ。初めて下の名前、呼んでくれた・・・・」


弱々しく答える東條。
「宏人!約束しただろ?辛かったら言うって・・・ここ最近、調子よくなかったんだろ?」
「西田君・・・、僕の代わりに最後まで演じてよ・・・・」
「宏人・・・・」
「できるよ。君なら」
「俺にはまだ、無理だ。これは、お前が作ってきた舞台だろ?俺は見ていることしか・・・」
「西田君に、演じてほしいんだ。ゴホっ・・・
・・・僕は、知ってるよ?みんなが帰ったあと、ひとりで・・・こっそり練習してるの・・・・」
「でも、それは、決してお前がこうなることを、わかっていてやってたわけじゃ・・・」
「・・・そんなの、わかってるよ・・・・大丈夫。今の君なら演じきれる。僕は、そう信じてる・・・・」
「東條さん・・・」
「でも・・・」
「大丈夫・・・他のみんなもフォローしてくれるはずだから・・・・ね?」
「もちろんです。ここは、従いましょう。せっかくのチャンスですから」
「宏人・・・・」
「頑張って!西田君。君はもう、一人じゃないよ?・・・みんなのこと、信じられるでしょう?」
そう言ったあと、彼は、担架で運ばれていった・・・。
「俺たち、5人でやるしかないですね」
「うん。西田さん。僕たちを、信じてくれますか?」
東さんは、今の状況は、見えていないはずなに、この試練は、託されたと、思い込んでいるみたいだ。
「でも、もし、失敗したら・・・・・」
「大丈夫です。僕たちが、フォローします。宏人さんは、信じてますよ?あなたが演じきると。彼の意思を大切にしましょうよ。」
「今の僕らにできること・・・」
正也さんは、俺の肩に手を置き、
みんなは、頷きあっている。
そして、真ん中に手をおいた。

「成功するって信じましょう。もし、ここで棄権したら、東條さん、きっと悲しむから・・・・」

正也さんの手の上に榊さんは、手をおいた。
「・・・わかった。みんなを、信じるよ」
そして、俺も、その上に手をおいた。
「信じます。」

そういうと、東さんも自然に手をおいた。
何て温かい手なんだ。
みんなの気持ちがひとつになって、俺の心に染み込んできた。
    
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