BELIEVE~夢の先へ~

藤原葉月

文字の大きさ
13 / 13

最終話

しおりを挟む
僕にとって最後の公演の日が来た。
多分これが、人生最期の日になると思う。
その、最期の公演の日。
車椅子に乗る僕を押してくれているのは、西田君だ。

「東條。いや、宏人。俺はお前に出会えて、本当に良かった。お前に会わなかったらきっと、閉じこもったままだった。人と笑って話すことも、前にむくことも出来なかった」
「・・・・そうだね。間に合ってよかった」
「青い空を見ることが出来たのは・・・、全部お前のおかげだよ。ありがとう」
「西田君、なんか詩人になったね」
「これもお前の影響だよ、きっと」
「まさか、西田君のお父さんが担当だなんて・・・・」
「俺も、父さんの患者だとは思っていなかった。父さんも、宏人も途中まで気が付かなかったんだよな?」
「(笑)うん、そうなんだよ。今となっては、いい笑い話だよ。お父さんによろしく伝えてよね!お世話になりましたって」
「・・・・・・・」


西田君から、笑顔が消える。
「ねぇ?なんで黙るの?そこ、笑うとこだよ?」
「宏人・・・お前まさか・・・・」

「さぁ、行くよ?時間ないんだから」

体も痺れてきて、手足がゆうことをきかなくなっていた。
薬の効果もすぐに切れてしまうだろう。

だから、いまのうちに伝えられることは伝えなきゃ。
「ねぇ?西田君、なっちゃんのこともよろしくね?」
「「えっ?な、何言ってんだよ。彼女はお前の・・・・」
「信じてる。西田君ならきっと・・・・。ううん・・・、絶対なっちゃんを幸せにしてくれるって。なっちゃんを任せられる人だって。なっちゃんを幸せに出来るのは、もう、西田君しかいないんだよ?」
「・・・・・・」

「約束だよ?」
と、小指を出した。

最初は戸惑っていた西田君だけど・・・・同じく小指を出してくれて・・・・
「わかったよ」
と、言ってくれたんだ。

これで、安心して逝けるよ。

「西田君に会えて良かった。西田君が、変わってくれてよかった」

と、西田君の方を見て言うと・・・・  
「宏人・・・・」
と、照れくさそうに呟く。
「もう、何時でも天国にいける。だって、僕の願いはもう、叶ったから」
「お前の願いって、俺に会うことだけだったのか?」

「うん、そうだよ?大学の受験の日が運命の始まりだったな。」
「何かの恋物語かよ」
「あれ?これってまだ話したこと無かったっけ?」
「初耳ですが」
「その時の西田君の顔、よく覚えてるよ?
僕が、病院で命の短さを知った時よりも死にそうな顔してた。よっぽどショックが大きかったんだろうって」
「・・・・・・」

「でも今は違うね。ちゃんと前を見てるから。」


「宏人」
「ねぇ?僕の最期の演技、見てくれる?」
「でも、これ以上・・・・」
「いいんだ・・・・。もうダメだって自分でわかるんだ。だけど、僕のちゃんとした演技、みんなに見てほしい。」

その時間は、思ったより早くやってきた。

「・・・・これが最後だよ?みんな、よく見ていてね」
「東條さん」
みんなは泣きながら、僕の方をじっと見つめている。
みんなに伝える最期の言葉。

「さよならは、言わないでおくね?寂しくなっちゃうから」
車椅子から降りると、僕はニッコリと笑い、最後の最後まで体を使って踊り続け、演じ続けた。

音楽が止まり、演じきったと安心したら、全身の力は抜けて僕の目の前は真っ暗になった。


もう、僕はこの世には戻れない。

でもね、僕は今までの僕にさようならと、これからの僕にこんにちわを言うように演じたんだ。

きっといつかまた彼らに会えるって信じてるから。


そして、数年後のある日・・・・


東條によく似た男の子が元気よく走っている。
その後ろを歩いているのは、なっちゃんと、西田君だ。

「なぁ?理子。宏人は、あの宏人ににてるよな?」
「・・・・そうね、とてもよく似てる。特に目が似てるわ。同じ名前をつけたからかしら」
と、二人は幸せそうに笑っている。

「きって、俺たちの子供だから・・・。いや、あいつの生まれ変わりだから・・・だろうな」


「(笑)そうね、そうかもしれないわ」
二人は手をつなぎながら歩いていて幸せはそうだ。
あの桜並木を、3人並んで歩いていた。


そうだよ!僕は2人に逢いに来たんだよ!
これからもよろしくね!

「あれ?なんか言ったか?」
「えー?なにも言ってないわよ?」

「パパ!ママ!早く早く!」

宏人は、2人を急かしている。
これから会う仲間がいるんだ。

幸せにね!2人とも!!
ぼくはいつまでも見守っているからね!!


                                                                                終わり
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...