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30話 先生。
しおりを挟む朝。頭に強い衝撃が走り目が覚めた。にゃん子がミライの頭を蹴ったみたいだ。にゃん子は寝相が悪い、凄い格好をしている。
「うー、いったぁ」
「あら、ようやくお目覚め?」
ベッドの横に椅子を置いて、窓際で新聞を読んでいるエリカと目が合った。
「はよー。早いね?エリカちゃん、もう起きてたんだ?」
「そう?早いかしら?私はいつも、これくらいに起きてるわよ?」
壁に掛けられた時計を見る。今は5時半を少し回った所だ。
「私は後少ししたら、走りに行くけど、ミライはどうする?」
「んー、とりあえずシャワー浴びて。それからにゃん子、起こすわ」
「ふふ。二人とも昨日でだいぶ打ち解けたわね?敬語とれて良かったわ」
(打ち解けたって言うか、にゃん子に敬語とか、なんか、無い……、だってコレだしね、ふふ)
イビキをかいて寝る、にゃん子の鼻を摘むとブビーブビーと言う音に変わった。ミライとエリカはクスクス笑った。
「そういえば、昨日志穂がミライに会うの楽しみにしてるって言ってたわよ?きっと、二人は気が合うと私は思うわ」
エリカが部屋を出る時にそう言う。
「えーと桜さんと私が?なんでそう思うの?」
(特に接点は無さそうだけど?)
桜志穂の設定を思い出すが、やっぱりよく分からない。
「ふふ、会えば絶対にわかるわよ、志穂は何時も朝早くから来てるから、登校したらすぐ会えるんじゃないかしら」
「ふーん。わかった、会ったら挨拶しとくよ」
「ふふ、それじゃあ。またね」
エリカは部屋を出て行った。
ふむ、とミライは考えた。【桜 志穂】今日、アニメ通りに進むのなら、彼女とは関わる事になる。とりあえずツバサには暫く様子を見てもらって自分は少し接触してみようか?と思う。
午後までには【ミシェルイベント】が起きる筈である。初日はラッキースケベは無いから、ツバサも大丈夫だろうとミライは思った。
(でも、明日からは、ちゃんと揉んで貰わないとな、うんうん。とりあえず、シャワー浴びよ……、ねむ………。)
◇◇◇◇◇◇
シャワーを浴びおえると、ベットの上でにゃん子がボーッとしていた。
「にゃん子。シャワー浴びてきたら?」
「んー。ミライちゃん、んー。わかったぁ」
ノロノロとシャワーを浴びに行くにゃん子を見送る。にゃん子は朝が弱いみたいだ。
にゃん子がシャワーを終えたら、朝ご飯だ。昨日スーパーで買っておいた固くなったサンドイッチを二人で、頬張る。
「あんまり美味しくなーい」
「ただ飯なんだから、文句言わない。」
昨日一日で舌の肥えた、にゃん子がブツブツうるさい。これも奢りなのに贅沢なやつだ。そうこうしている内に登校する時間になってしまったので、にゃん子と家を出る。
「にゃん子、着替えに戻らなくて良いの?シャツとか昨日と同じだよね?良いの?」
「んー、ちゃんとパンツは替えてるし大丈夫やもーん」
そう言う問題だろうか?ライアンさんに言いつけてやろうかとミライは思った。
◇◇◇◇◇◇
「うち、ちょおっと用事あるから。ここで一旦別れるわ」
「わかった、また後で」
手を軽く振るとミライは教室へ入って行った。それを見送って、にゃん子は職員室前に張り出されてる、任務の予定表の確認に行くことにした。
何か自分が行けそうな任務が無いか探そうと思ってだ。
(流石にそろそろ、任務行っとか無いと、やばいしー)
トコトコ廊下を歩く。しばらくすると早足で、顔を顰めた担任のジョーンズ先生がこっちに向かって来た。黄緑がかったミディアムヘアで、体にも顔にも縫った後があちこちにある。絶対に堅気じゃないなとにゃん子は思っている。
(げ、なんなん?めっちゃ怒ってる?うち、なんかしたっけ?)
普段もあまり良いとは言えない人相が、今日はより凶悪でにゃん子は思わず後退った。
「真島か………、お前臭いぞ」
「はあ?ちゃあんと、シャワー浴びてきたしー!!」
ジョーンズのあんまりなご挨拶に言い返すと、そのままジョーンズはにゃん子の鞄をひったくった。
「あ!それ!!」
ジョーンズは、勝手にゴソゴソ鞄を漁って薔薇の造花を取り出すと、思いっきり舌打ちした。
「ちッ、色気づきやがって………。学校に必要無いものは没収だ。」
そう言って鞄を投げてにゃん子に返す。
「あー!!それ、ミライちゃんから貰ったやつー‼︎返してや~‼︎泥棒‼︎」
「あー?ミライ?」
ジョーンズは、少し考える素振りをしてからヨレヨレの白衣のポケットから、お食事券を5枚取り出した。
「交換だ、これなら文句は無いだろ?」
「よろこんでっ!!」
にゃん子はちょろかった。
◇◇◇◇◇◇
ホクホク顔のにゃん子を見送ってから、ジョーンズはまた舌打ちした。廊下に誰も居ないのを確認してから、造花を手の中に握りしめる。ぶわりと黒い炎が吹き出したかと思うと、塵も残さず造花は消えていた。
「ミライ、………編入生。………、ふん」
ボリボリと後ろ頭を掻きながら、ジョーンズは教室へと足を向けるのだった。
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