グラドル戦隊グラドルレンジャーズ

青キング

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第五話 遊泳場の決戦。グラドルレンジャー変身不可能?

緊急事態

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 グラドルレンジャーの五人がギャルゲ大佐と戦闘状態に入る数十分前、ディスプレイや謎の周辺機器で埋め尽くされたオペレーター室で、安物のアンパンを齧っていた木田のディスプレイの隣にある警告用ランプが、禍々しい赤色に点灯しサイレンが鳴り出した。

 怪人出現の場合はランプは黄色に光り、赤色はそれ以上の警告を示している、と木田は瞬時に頭の中でマニュアルを捲った。

 ただごとではない、と木田はアンパンを口に咥えて手を空かすと、ディスプレイを操作しモニターを起動した。

 モニターは木田の目上に表示され、森尾文化広場近辺の地図を映し、プール施設から発信源であるネックレスが黒い点となって位置情報を伝えている。

 木田は自席の右隣に取り付けてある通信マイクで、ネックレスの所持者であるグラドルレンジャー五人との交信を図った。

 十秒ほど返信を待ったが回線は繋がらず、代わりに人間味のない機会音声が現在所有者の手元にないこと反芻する。

 木田は気を揉んで、再度頭の中で思い出せる限りのマニュアルをせわしく捲った。

 そうして類似するケースとして当てはまる文章がちらりと過ぎった。赤色点灯とサイレンの場合は、変身具の盗難――――。

 事態の深刻さに気が付き、木田は先程の回線とは違う別回線で総隊長を呼び出そうと、席の左にあるマイクの電源を入れようとした、その時だった。

 オペレーター室の障子が開き、錦鯉の描かれた浴衣を着た男性が入ってくる。



「木田君、サイレンは聞いたよ」

「ふぉぉ、えーほの」



 アンパンを咥えたまま、木田はミスターKに振り向いた。

 ミスターKは張り詰めた表情から一変して、鋭利なナイフを孕んだような温容な微笑みを浮かべる。



「木田君。物を食べながら人と話すのはやめようか」

「ふぉっ。ももも、申し訳ありません」



 慌ててアンパンを口から抜いて、木田は失礼を詫びた。



「わかればいいんだよ」



 ミスターKは再び張り詰めた表情にもどると、モニターに目を遣った。



「場所は特定できてるかい?」

「はい。森尾文化広場のプール施設の中のようです」

「盗難者は分かる?」

「いえ、まだ判明しておりません。しかしシキヨクマーであることはほぼ間違いありません」

「ネックレスがない状態のあの子たちでは、シキヨクマーの怪人には勝てない。今すぐに奪還するよ。敵戦力の逆探知をお願い」

「了解」



 木田はディスプレイのキーボードを器用に叩いて、ネックレスに逆探知の指示を伝送する。

 ネックレスはレーダーを用いて、施設内の間取りと敵の配置を断面図でモニターの地図の上に表示した。二階の預り物管理室に三人、一階のプール周辺に三人と、五人で固まった熱源。



「裏口から突入できるとしても部屋の中だけで敵は三人か。僕と木田君だけでは制圧だけで手一杯だね。そうなると制圧している間に、五人がやられてしまう」

「五人へ変身具を渡すのが最優先だとすると、どうすればいいのですか?」



 木田は様々な手段を考えながら呻った。

 そうだね、と確信ありげな顔でミスターKは答える。



「もう一人いれば、もっと早く五人へ変身具を届けられる」

「しかし自分とK殿以外には人手など……」

「いるじゃないか。僕と木田君以外にグラドルレンジャー五人と面識のある人物が」

「誰ですか?」

「水森光那さんだよ」



 その名前を聞いた木田は、一瞬で合点がいった。先日の怪人撃破後に五人の申し出により記憶削除を行わなかった少女。

 しかし水森光那は不戦闘員で、一般人の彼女を無理矢理巻き込んでいいものか、と木田は首を悩む。



「あの子が運搬役をしてくれますかね?」

「説得するしかない」

「もし買って出てくれるなら、あの時記憶を消さないことを選んだのは、K殿の好判断になりますな」



 と木田はミスターKを称えた。

 部下の称賛には表情も変えず、ミスターKは入ってきた障子の方へ身を翻す。



「時間が惜しい、今すぐ出発しよう」

「了解」
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