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第五話 遊泳場の決戦。グラドルレンジャー変身不可能?
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「往生際悪く逃げ回りやがって。どれだけ逃げ回ったところで、俺の剣の錆になることに変わりはないのだ」
五人は遮蔽物の多いフードコート周辺で散開して、非武装ながらもギャルゲ大佐の剣から逃れていた。
ギャルゲ大佐は調理場のコンロ前に息を切らしている新城を見つけると、上司からターゲットを切り換えた。憤然とした足取りで接近する。
「俺の手を煩わせるな」
ギャルゲ大佐が近づくのを見て、新城は目の前のフックに掛けてあったフライパンの柄を両手で握った。
フライパンを打ち下ろす勢いで投擲する。
不意に顔面へ飛んできたフライパンを、ギャルゲ大佐は咄嗟に左腕で弾いた。
ギャルゲ大佐の視界が奪われているうちに、新城はコンロ前からパラソルで日陰になっている飲食テーブルへ走った。
その時である、頭上から聞き覚えのある少女の声が、風のように何の前触れもなく聞こえたのだ。
グラドルレンジャー五人が、耳をそばだてた。
「皆さん!」
五人は信じられない思いで声のする方向へ顔を上げた。
数刻前にギャルゲ大佐が五人を見下ろしていた場所、そこに制服の水色カッターシャツ姿の光那が、手にポリ袋を掲げて立っていた。
「なんでこんなところに、光那ちゃんがいるの?」
予想だにしない人物の登場に、新城が驚きを隠せずに訊く。
「皆さんにネックレスを返しに来ました」
光那は泰然とした口調で答えた。
その言葉を聞き、ギャルゲ大佐が愕然として足を止め、振り仰いで彼女を見据える。ギャルゲ大佐の立つ所からは、光那の姿は逆光により明瞭でない。
「ネックレスだと。俺の部下が所持しているはずだが?」
「取り返させてもらいました。もうあなたの好きにはさせません」
臆せずにでも少し大仰に、ギャルゲ大佐にグラドルレンジャー五人の変身具を奪還したことを告げた。
「そちらに投げるので拾ってください」
ギャルゲ大佐から五人に目を移して、光那は呼びかける。
散らばった場所にいる五人は逆光の影響が少なく、光那が手にしている袋の中身が、ネックレスとは全然違うものであることに気付いている。
光那はダミーの袋を持つ腕を引き、正面の新城へ向かって放り投げた。
「渡さんぞ」
逆光で袋の中身が違うことを認識していないギャルゲ大佐が跳躍して、放物線を中途で遮って袋を奪取した。
ギャルゲ大佐が着地し、顔が地面に向いている数瞬の間に、光那は反対の手に持っていた変身具の入った袋を、新城のもとで集まりかけている五人へ投げた。
本物の袋が頭上を通り過ぎるのを露とも知らず、ギャルゲ大佐は手に持つ袋に視線を落とした。
欺かれた、と一目で知覚できた。
狼狽えて五人を振り向くと、すでにネックレスは五人全員の手に渡っていた。
ダミーの袋を叩きつけるように放り捨てて剣を握り直すと、ギャルゲ大佐は憤怒の形相で、地面を蹴立て正面から五人へ肉迫する。
五人はそれぞれ手にしたネックレスを、自分の首に通した。彼女達の胸の上で各色の水晶が弾む。
五人との距離が数歩とまで接近すると、ギャルゲ大佐は剣を後ろに引いて上半身を捻る。
五人のネックレス先の水晶が俄然力を得たように、光度の強い輝きを放った。
「うぉぉぉぉぉぉ」
ギャルゲ大佐は鋭く白い発光に身を包まれる寸前、刀身が五人へ充分に届く範囲に踏み込むと、上半身の捻りを利用して、裂帛の気合が乗った刀身を、横薙ぎに一閃した。
手応えの有無を感じる隙もないまま、ギャルゲ大佐の視界を白い光が満たす。
思わずギャルゲ大佐は目を瞑り、剣を振り抜いた体勢のまましばらく佇んだ。
目蓋の隙間から射し込む光がなくなったとわかると、目を開ける。
そして目前の場景を見て、臓腑から悔恨が突き上げてきた。
上下半身に断ち切られたグラドルレンジャー五人の死体は、ない。
自分は切り損ねたのだと、目に見るように痛感した。
「形成逆転ね」
斜め上から降り注いだ敵の声をギャルゲ大佐は見上げた。
戦闘用アーマーであるワンピース水着に変身した五人が、施設の内周に沿った二階通路に立っている。
「これで片付けてあげる」
真ん中に立つレッドが最終宣告のように重々しく告げる。
右手を銃の形にしてギャルゲ大佐の方向に突き出した。
「ぶっ殺してやる」
「観念してください」
「覚悟しなさい」
「容赦しないわ」
ブルー、イエロー、グリーン、パープルも言葉とともに右手を突き出し、ギャルゲ大佐に向けた。
五人の銃口を真似た指先から、水着と同じ色の光弾が放たれる。
グラドルレンジャーの必殺技を前にしても、ギャルゲ大佐は状況を信じたくない思いが強かった。
故に、剣を逆手に持ちかえる。
「勝ったと思うな!」
憤慨を唾棄するように咆哮すると、光の弾丸が迫る中で左足を踏み出して軸足にし、剣先に五人を捉えて槍投げの要領で放擲。
直後ギャルゲ大佐は五色の光弾を浴びて、四肢から胴体まで泡沫のように爆砕した。
五人が敵が爆砕したのを見た次の瞬間だった。レッドは僅か数十センチの距離まで飛んできている鋭利な剣先を視認した。
咄嗟に首ごと身体を横へ倒した。
飛来した剣は勢いを落とさずに、レッドの肩口と左頬を切り裂いて、背後の壁に突き刺さった。
「楠手さん!」
向かいの二階通路から、光那がレッドを案じて叫んだ。
「いっだぁ」
レッドは肩の血が噴き出す切傷を押さえて、痛みに喘いだ。
数瞬の間に起きた光景に、他の四人は剣の軌跡を目で追うことしか出来ず、壁に刺さったポスター剣を見て茫然とする。
紙一重の差次第では、レッドの顔を剣が刺し貫いていたわけで、敵の死に際の一撃にレッドだけでなく他の四人も震え上がった。
ギャルゲ大佐とグラドルレンジャー五人との戦闘が決して、指揮官であるギャルゲ大佐を失った、四人のグリーンタイツと一人のピンクタイツは、シキヨクマー万歳、と高らかに唱和すると、後を追うように舌を噛み切って自決し、言葉通りの泡沫と化していった。
シキヨクマーの散布した睡眠ガスの効果が薄らいできた客達が目覚めるよりも先に、ミスターKと木田に促されて、グラドルレンジャー五人と光那はプール施設さらには森尾文化広場から早急に辞去した。
だが五人の足取りは重く、とても敵を撃破し、敵とも戦いに勝利した者達には見えなかった。
五人は遮蔽物の多いフードコート周辺で散開して、非武装ながらもギャルゲ大佐の剣から逃れていた。
ギャルゲ大佐は調理場のコンロ前に息を切らしている新城を見つけると、上司からターゲットを切り換えた。憤然とした足取りで接近する。
「俺の手を煩わせるな」
ギャルゲ大佐が近づくのを見て、新城は目の前のフックに掛けてあったフライパンの柄を両手で握った。
フライパンを打ち下ろす勢いで投擲する。
不意に顔面へ飛んできたフライパンを、ギャルゲ大佐は咄嗟に左腕で弾いた。
ギャルゲ大佐の視界が奪われているうちに、新城はコンロ前からパラソルで日陰になっている飲食テーブルへ走った。
その時である、頭上から聞き覚えのある少女の声が、風のように何の前触れもなく聞こえたのだ。
グラドルレンジャー五人が、耳をそばだてた。
「皆さん!」
五人は信じられない思いで声のする方向へ顔を上げた。
数刻前にギャルゲ大佐が五人を見下ろしていた場所、そこに制服の水色カッターシャツ姿の光那が、手にポリ袋を掲げて立っていた。
「なんでこんなところに、光那ちゃんがいるの?」
予想だにしない人物の登場に、新城が驚きを隠せずに訊く。
「皆さんにネックレスを返しに来ました」
光那は泰然とした口調で答えた。
その言葉を聞き、ギャルゲ大佐が愕然として足を止め、振り仰いで彼女を見据える。ギャルゲ大佐の立つ所からは、光那の姿は逆光により明瞭でない。
「ネックレスだと。俺の部下が所持しているはずだが?」
「取り返させてもらいました。もうあなたの好きにはさせません」
臆せずにでも少し大仰に、ギャルゲ大佐にグラドルレンジャー五人の変身具を奪還したことを告げた。
「そちらに投げるので拾ってください」
ギャルゲ大佐から五人に目を移して、光那は呼びかける。
散らばった場所にいる五人は逆光の影響が少なく、光那が手にしている袋の中身が、ネックレスとは全然違うものであることに気付いている。
光那はダミーの袋を持つ腕を引き、正面の新城へ向かって放り投げた。
「渡さんぞ」
逆光で袋の中身が違うことを認識していないギャルゲ大佐が跳躍して、放物線を中途で遮って袋を奪取した。
ギャルゲ大佐が着地し、顔が地面に向いている数瞬の間に、光那は反対の手に持っていた変身具の入った袋を、新城のもとで集まりかけている五人へ投げた。
本物の袋が頭上を通り過ぎるのを露とも知らず、ギャルゲ大佐は手に持つ袋に視線を落とした。
欺かれた、と一目で知覚できた。
狼狽えて五人を振り向くと、すでにネックレスは五人全員の手に渡っていた。
ダミーの袋を叩きつけるように放り捨てて剣を握り直すと、ギャルゲ大佐は憤怒の形相で、地面を蹴立て正面から五人へ肉迫する。
五人はそれぞれ手にしたネックレスを、自分の首に通した。彼女達の胸の上で各色の水晶が弾む。
五人との距離が数歩とまで接近すると、ギャルゲ大佐は剣を後ろに引いて上半身を捻る。
五人のネックレス先の水晶が俄然力を得たように、光度の強い輝きを放った。
「うぉぉぉぉぉぉ」
ギャルゲ大佐は鋭く白い発光に身を包まれる寸前、刀身が五人へ充分に届く範囲に踏み込むと、上半身の捻りを利用して、裂帛の気合が乗った刀身を、横薙ぎに一閃した。
手応えの有無を感じる隙もないまま、ギャルゲ大佐の視界を白い光が満たす。
思わずギャルゲ大佐は目を瞑り、剣を振り抜いた体勢のまましばらく佇んだ。
目蓋の隙間から射し込む光がなくなったとわかると、目を開ける。
そして目前の場景を見て、臓腑から悔恨が突き上げてきた。
上下半身に断ち切られたグラドルレンジャー五人の死体は、ない。
自分は切り損ねたのだと、目に見るように痛感した。
「形成逆転ね」
斜め上から降り注いだ敵の声をギャルゲ大佐は見上げた。
戦闘用アーマーであるワンピース水着に変身した五人が、施設の内周に沿った二階通路に立っている。
「これで片付けてあげる」
真ん中に立つレッドが最終宣告のように重々しく告げる。
右手を銃の形にしてギャルゲ大佐の方向に突き出した。
「ぶっ殺してやる」
「観念してください」
「覚悟しなさい」
「容赦しないわ」
ブルー、イエロー、グリーン、パープルも言葉とともに右手を突き出し、ギャルゲ大佐に向けた。
五人の銃口を真似た指先から、水着と同じ色の光弾が放たれる。
グラドルレンジャーの必殺技を前にしても、ギャルゲ大佐は状況を信じたくない思いが強かった。
故に、剣を逆手に持ちかえる。
「勝ったと思うな!」
憤慨を唾棄するように咆哮すると、光の弾丸が迫る中で左足を踏み出して軸足にし、剣先に五人を捉えて槍投げの要領で放擲。
直後ギャルゲ大佐は五色の光弾を浴びて、四肢から胴体まで泡沫のように爆砕した。
五人が敵が爆砕したのを見た次の瞬間だった。レッドは僅か数十センチの距離まで飛んできている鋭利な剣先を視認した。
咄嗟に首ごと身体を横へ倒した。
飛来した剣は勢いを落とさずに、レッドの肩口と左頬を切り裂いて、背後の壁に突き刺さった。
「楠手さん!」
向かいの二階通路から、光那がレッドを案じて叫んだ。
「いっだぁ」
レッドは肩の血が噴き出す切傷を押さえて、痛みに喘いだ。
数瞬の間に起きた光景に、他の四人は剣の軌跡を目で追うことしか出来ず、壁に刺さったポスター剣を見て茫然とする。
紙一重の差次第では、レッドの顔を剣が刺し貫いていたわけで、敵の死に際の一撃にレッドだけでなく他の四人も震え上がった。
ギャルゲ大佐とグラドルレンジャー五人との戦闘が決して、指揮官であるギャルゲ大佐を失った、四人のグリーンタイツと一人のピンクタイツは、シキヨクマー万歳、と高らかに唱和すると、後を追うように舌を噛み切って自決し、言葉通りの泡沫と化していった。
シキヨクマーの散布した睡眠ガスの効果が薄らいできた客達が目覚めるよりも先に、ミスターKと木田に促されて、グラドルレンジャー五人と光那はプール施設さらには森尾文化広場から早急に辞去した。
だが五人の足取りは重く、とても敵を撃破し、敵とも戦いに勝利した者達には見えなかった。
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