遺伝子操作でファンタジーの住人を創るならエルフよりオークの方がよいと思うのでやってみた。

かみゅG

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オークを創ってみよう

010.四捨五入と切り捨て

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「あのね、ぼたん。私はこんなマッドサイエンティストのことなんか、なんとも思っていないわよ?」

 我が助手が吾輩を指さしながら、言い聞かせるように、ぼたんに話しかける。
 マッドサイエンティストとは失礼な。
 ひどい言われようだ。
 だが、反論はしない。
 なぜなら、こめかみからビキッ!と音がしていて怖いからだ。
 しかし、ぼたんはそんな我が助手の様子には気づいていないようだ。
 哀れみの視線を我が助手に向けて、言葉を続ける。

「心配しなくても、ママから妻の座を奪ったりしないの。わたしは愛人ポジションでいいの」
「どこでそんな言葉を覚えてくるの!」
「おばあちゃんが観ているドラマに出てくるの」
「おばあちゃあああぁぁぁん!!!」

 そういえば、我が助手の祖母は、どろどろドラマが好きだと言っていたな。
 趣味嗜好は人それぞれだと思うが、若干、子供の教育によくない気がする。
 我が助手も同じことを思ったのだろう。
 ここにいない祖母に向かって、なにかを訴えるように叫び声を上げている。
 一方のぼたんは、そんな訴えを気にした様子もなく、言葉を続ける。

「若くないママには家事洗濯を任せるの。若いわたしはパパの子供を産むの。役割分担なの」

 我が助手のこめかみあたりから、ブチッ!と音が聴こえた気がする。
 気がするというのは、我が助手の表情を見ていないからだ。
 怖くて見れない。
 だが、黒いオーラのようなものを、びりびりと感じる。
 吾輩にそんなものを感じる力はないはずなのだが、本能が恐怖を訴えかけてくる。
 興味深い現象ではあるが、できれば実体験としては体験したくなかった。

「……ねえ、ぼたん。私、まだ二十五歳なんだけど」

 我が助手はなかなか優秀で、大学を卒業すると同時に、吾輩の助手になった。
 だから、助手という役割のわりに、年齢は若い。
 もっとも、子供にはそんな大人の事情は関係ない。

「わたし、知ってるの。四捨五入したら三十歳なの。アラサーってやつなの」

 四捨五入ができることを自慢したかったのか、アラサーという言葉を知っていることを自慢したかったのか、そのどちらかだと思う。
 褒めて欲しいという子供の些細な自慢話だ。
 しかし、タイミングが悪い。
 ブチブチッ!と聴こえた。
 我が助手は、つかつかと歩いて行くと、ぼたんの服に手をかける。

「なに、ママ? いつもパンツを脱いじゃダメって言うのに、今日は脱いでいいの?」
「…………」

 我が助手は無言のまま、ぼたんのスカートをめくり、パンツを下ろし、そして――

 パァンッ!

 ――という音を響かせた。
 音が鳴ったのは、ぼたんのお尻からだ。

「ぷぎっ! な、なにするの、ママ!」

 パァンッ!

「ぷぎっ! ママ、痛いの! 暴力反対なの!」

 パァンッ!

「ぷぎっ! パパ、助けて! ママが情緒不安定なの! 更年期障害なの!」

 パアアアァァァンッ!!!

「ぷぎゃっ!!!」

 無自覚なのだと思うが、ぼたんは絶妙に我が助手の心を抉るな。
 どろどろドラマの影響か。
 ぼたんの自業自得ではあるのだが、助けを求められたので、一応フォローしておく。

「あー、我が助手よ。ほどほどに……」

 ギロッ!

「あー、うん。躾って大切だよな」
「パパッ!?」

 吾輩は体罰には否定的なのだが、悪いことをしたら痛い目に遭う、ということを子供に教えるのは大切なことだとも思う。
 子供の頃に教わっておかないと、大人になってから取り返しのつかないことをしてしまうからだ。
 我が助手もそれが判っているのだろう。
 痛みはあるが、傷が残らない、尻叩きという方法を選択したのが、その証拠だ。

「ぼたんが、ふしだらな娘に育ったらいけませんから」

 パァンッ!

「ぷぎっ! パパの裏切り者ー!」

 パァンッ!

「あと、二十五歳は切り捨てれば二十歳です!」

 パァンッ!

「ぷぎっ! それは無理があるのー!」

 もっともな意見だと思うが、今それを言うのは悪手だと思う。
 科学は正確さが重要だが、人間関係は曖昧さが重要だ。

 パアアアァァァンッ!!!

「ぷぎゃっ!!!」

 心なしか、尻叩きの音が大きくなったような気がした。
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