遺伝子操作でファンタジーの住人を創るならエルフよりオークの方がよいと思うのでやってみた。

かみゅG

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エルフを創ってみよう

015.新たな種族は?

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 ぼたんが姿を消してから、数日が経過した。

「ぼたん、どうしてますかね」

 我が助手がテレビのニュースを見ながら呟いている。
 今日のニュースに、ぼたんの映像は流れていない。
 しかし、たまに豚が脱走したというニュースの続報が流れる。
 我が助手は、そのニュースを見て、ぼたんの現状を知ろうとしているようだ。

「元気でやっているのではないか?」

 ぼたんが捕まったというニュースは流れていない。
 だから、吾輩はそう判断している。
 オークという種族が、人間社会に馴染むのか、豚社会に馴染むのか、それはまだ分からない。
 吾輩としては、どちらになったとしてもかまわない。
 どちらになったとしても、世界を救う助けになるだろう。
 ただし、オークという種族だけでは、世界を救うには不十分だ。
 他の種族も増やさなければならない。
 というわけで、新たな種族のお披露目だ。

「それより、我が助手よ。紹介したい者がいる」
「紹介したい人?」
「うむ。エル、入ってくるがよい」

 吾輩が扉に向かって声をかけると、その扉が開いて中学生くらいの子供が入ってくる。
 中性的な顔立ちで、美形といってよい容姿だ。

「誰です、その子……って、教授が創った子ですね」
「その通りだ」

 今回は事前に教えておいたから、拳が飛んでくることは無かった。
 しかし、せっかくのお披露目なのだから、もう少しリアクションが欲しかったところだ。
 仕方ない。
 この種族の説明を聞いたときのリアクションに期待することにしよう。

「今度はちゃんと名前を付けたんですね」
「二回目だからな。抜かりはない」
「エルフですか?」
「正解だ」

 子供の身体的特徴を見て、我が助手が種族を言い当てる。
 身体的特徴といっても、ぼたんのときと違って、見た目の特徴は一箇所だけだ。
 耳が尖っている。
 それだけだ。
 しかし、種族を言い当てるのに必要な情報は、それだけで充分だ。
 そのくらい、有名な特徴でもある。

「はじめまして。エルフのエルといいます」
「はじめまして、エルちゃん。よろしくね」

 エルが礼儀正しく挨拶すると、我が助手もそれに応える。
 第一印象は良好なようだ。

「エルは植物と親和性が高い種族として創ったのだ。エル、我が助手に見せてやるがよい」
「はい、父様」

 エルは返事をすると、窓際に置いてあった鉢植えを持ってくる。
 そして、それを目の前に置くと、姿勢を正して口を開く。

「♪~~♪~~~~」

 研究室に歌声が響く。
 その歌声はエルの口から発せられている。

「綺麗な歌声」

 うっとりしたように、我が助手が呟く。
 確かに、美しい歌声だ。
 しかし、歌声を聴かせたかった訳ではない。
 見せたいものは別にある。

「え? なんですか、これ?」

 その見せたかったものに、我が助手が気付く。
 歌を歌うエル。
 その前には鉢植えが置かれている。
 そして、鉢植えには花の苗が植わっている。
 ただし、蕾の状態だ。
 いや、蕾の状態だった。
 それが、少しずつ花開いている。

「これがエルの力だ」
「え? ホントに? 普通に凄いんですけど」

 歌声を邪魔しないように小声だが、驚いているのは顔を見ればわかる。
 少々地味だが、驚いたリアクションは見れたから、満足しておこう。
 吾輩は種明かしをするために、説明を始める。

「植物を育てるときに音楽を聴かせると、元気に育ったり早く育ったりするという話を聞いたことはないか?」
「そういった話を聞いたことはありますけど……」
「エルはその力を強力にした種族だ」
「桁が違い過ぎるでしょう」

 本当はファンタジーに出てくるエルフのように、魔法を使えるようにしたかった。
 だが、そもそも魔法が科学で証明されていないので、再現することができなかったのだ。
 その代わりに、植物との高い親和性を能力として与えた。
 エルフは森の中で生活しているイメージがあるし、自然環境を回復させる種族を創りたかったので、ちょうどよかったというものある。

「父様、こんな感じでよかったですか?」
「うむ。充分だ」
「エルちゃん、凄かったよ!」

 花が開ききったところで、エルが歌うのをやめる。
 我が助手が拍手をし、それを受けたエルが照れている。
 デモンストレーションは、まずまずといったところだろうか。
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