遺伝子操作でファンタジーの住人を創るならエルフよりオークの方がよいと思うのでやってみた。

かみゅG

文字の大きさ
32 / 64
ドワーフを創ってみよう

032.○○県は魔界と繋がっている?

しおりを挟む
 テレビを消したところで、我が助手が話しかけてくる。

「ところで教授、ぼたんやエルちゃんがテレビに映りまくっていますけど、大丈夫ですか?」
「む?」

 たしかに最近、ぼたんやエルは毎日のようにテレビで中継されている。
 二人とも人間とは異なる姿をしているためか、ゲリライベント扱いしているテレビ局もあるようだ。
 噂では二人のファンクラブもあり、グッズ販売なども行っているらしい。

「コスプレと思われているようだな。まあ、オークやエルフが人間社会に馴染む取っ掛かりとしては悪くないのではないか? グッズの売り上げが研究室に入らないのが納得いかんが」
「そうじゃなくて! 警察や自衛隊とかが出てきたら、厄介なことになるんじゃないですか? 二人とも戸籍も無いし、身体検査を受けたら人間じゃないことがバレちゃいますし」

 我が助手は、ぼたんやエルの種族がバレることを心配しているようだ。
 しかし、吾輩はその辺りも含めて答えたつもりだ。

「それを踏まえて悪くないと言ったのだ。もし、国の研究機関が密にオークやエルフを捕まえたら、実験動物にするのは目に見えている。しかし、ファンクラブができるほど一般に知られてしまえば、そう簡単に横暴なことはできまい」
「そうですか? 場合によっては、一般に知られていても、そういうことをされるんじゃないですか?」
「それは、エイリアンが侵略してきた場合などだろう。二人は山の中で姉弟喧嘩をしているだけだぞ」
「姉弟喧嘩にしては他人を巻き込んで迷惑をかけていますけど……」
「ぼたんが捕まえた人間をエルが解放しているから、バランスが取れているのではないか? エルは感謝されているようだぞ。ぼたんの方も、自ら捕まりに行く人間がいるようだから、全ての一般人から嫌われているわけではないようだしな」
「ああ、なんか、変な性癖の人が、自分からぼたんに捕まりに行っているみたいですね。ぼたんのことを女王様とか言って崇めているとか……」

 我が助手が頭の痛そうな顔をしている。
 一応は納得したようだが、まだ釈然としないようだ。
 我が助手が安心するように、もう少し説明することにする。

「ちなみに、我が助手よ。世界樹が根を張ったのは、どのような地域か知っているか?」
「えっと、ぎふ県の山中ですよね」
「うむ。その通りだ」

 世界樹が根を張った場所のGPS座標はわかっている。
 我が助手は、市町村までは知らなかったようだが、おおよその地域は知っていたようだ。
 吾輩の説明を聞くには、そのくらいわかっていれば充分だ。

「あの地域は昔から魔王を信奉しているのだ。実際、魔王があの地域を治めていた時代もあったらしい。おそらく、どこかに魔界と繋がっている穴でもあるのだろう。あの地域の住人は、いまさらオークやエルフが現れても驚いたりはしない」
「なんですか、それ。どこから来た話ですか。ぎふ県の人に怒られますよ」

 やれやれ。
 我が助手は勉強が足りないようだ。
 吾輩に対して、頭の可哀そうな人間でも見るような目を向けてくるが、それが自分の無知を証明していることに気付いていないのだろう。
 吾輩は逆に、憐れな者を見る目を向けながら、説明を続ける。

「どこから来た話もなにも、駅前に行ったら一目瞭然だぞ。なにしろ、黄金の魔王像が祀ってあるのだからな」
「はあ? そんなおかしな地域があるわけないじゃないですか」
「嘘だと思うなら、ググってみるといい。キーワードは『ぎふ県』『駅前』『黄金の像』だ」

 我が助手が嫌そうな顔をしながらも、言われた通りにする。
 そして、訝しげな顔をして手を止める。
 検索で見つかった情報を読んでいるのだろう。

「……ねえ、教授。その魔王って、第六天魔王のことですか?」
「うむ」
「……ひょっとして、戦国武将だったりしますか?」
「うむ」
「……もしかして、織田さんですか?」
「うむ」
「…………」
「…………」

 質問は以上だろうか。
 ならば、吾輩の言うことを納得したということだろうか。
 確かめるために声をかけようとしたところで、一瞬早く我が助手が口を開く。
 そして、吾輩の襟元を掴んで揺さぶってくる。

「それなら、そう言ってくださいよ! おかしな地域とか言っちゃったじゃないですか! 私がぎふ県の人に怒られちゃいますよ!」
「そんなことを言われても知らん。我が助手が勝手に言ったのだろう。というか、揺さぶらないでくれ」
「教授だって魔界と繋がっているとか言ったんですから同罪ですよ! 一緒にぎふ県の人に怒られてください」
「吾輩は事実を言っただけだ。なにも非難される謂れはない。ところで、気持ち悪くなってきたので揺さぶらないでくれ」
「ズルいですよ、教授!」
「あの地域の住民は心が広いから心配はいらん。それより、そろそろ吐きそうなので揺さぶらないでくれ」

 何度も言って、ようやく我が助手は揺さぶるのを止めてくれる。
 まったく、人を道連れにしようとするとは、ズルいのはどちらだと言いたい。
 だが、我が助手が動揺するのもわかる。
 あの地域は観光名所も多く、よいところではあるのだが、魔王を信奉しているだけあって油断できないところでもあるのだ。
 我が助手にも教えておいてやるか。

「我が助手よ。それほど心配なら、ひとつよいことを教えてやろう」
「なんですか?」
「『ケイちゃん』というものを知っているか?」
「『ケイちゃん』? 人の名前ですか?」
「うむ。おそらく、そうだろう」

 実は吾輩も詳しくは知らない。
 しかし、あの地域を調べているときに、偶然にも情報を手に入れたのだ。

「ただし、個体名ではなく、特定の存在を表す隠語だと思う。あの地域は『ケイちゃん』と呼ばれるものを食べる習慣があるらしい」
「え? 『ケイちゃん』をですか?」
「うむ。これは推測なのだが、魔王への生贄を『ケイちゃん』と呼んでいるのではないだろうか。『食べる』というのも、おそらく『生贄にする』という意味の隠語だろう」
「そんな残酷な習慣が! ……って、あるわけないじゃないですか。教授、本気で怒られますよ」

 我が助手が馬鹿にしたように、こちらを見てくる。
 やれやれ。
 先ほどのことを、もう忘れたのだろうか。
 無知は身を滅ぼすことさえあるというのに。

「嘘だと思うなら、それでもよい。しかし、ひとつ忠告しておこう。あの地域に行って『ケイちゃん』について聞かれたら、『あれって美味しいですよね』と答えた方がよいぞ。もし、違う答えを口にすれば、何をされるかわからんからな」
「……まさか、本当のことなんですか?」
「無論だ。なんなら、ググってみるとよい。キーワードは『ぎふ県』『郷土料理』『ケイちゃん』だ」

 我が助手が不安そうな顔で検索をする。
 最近の検索エンジンは優秀だ。
 結果はすぐに出る。

「ッ! ホントに出てきた! まさか、そんなッ!」

 我が助手の驚愕した声が響き渡る。

「だから、言っただろう」

 世間には、地域によって常識では計り知れない文化があるものなのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

魔法使いじゃなくて魔弓使いです

カタナヅキ
ファンタジー
※派手な攻撃魔法で敵を倒すより、矢に魔力を付与して戦う方が燃費が良いです 魔物に両親を殺された少年は森に暮らすエルフに拾われ、彼女に弟子入りして弓の技術を教わった。それから時が経過して少年は付与魔法と呼ばれる古代魔術を覚えると、弓の技術と組み合わせて「魔弓術」という戦術を編み出す。それを知ったエルフは少年に出て行くように伝える。 「お前はもう一人で生きていける。森から出て旅に出ろ」 「ええっ!?」 いきなり森から追い出された少年は当てもない旅に出ることになり、彼は師から教わった弓の技術と自分で覚えた魔法の力を頼りに生きていく。そして彼は外の世界に出て普通の人間の魔法使いの殆どは攻撃魔法で敵を殲滅するのが主流だと知る。 「攻撃魔法は派手で格好いいとは思うけど……無駄に魔力を使いすぎてる気がするな」 攻撃魔法は凄まじい威力を誇る反面に術者に大きな負担を与えるため、それを知ったレノは攻撃魔法よりも矢に魔力を付与して攻撃を行う方が燃費も良くて効率的に倒せる気がした――

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写と他もすべて架空です。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...