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獣人を創ってみよう
040.動物の耳と尻尾を付けた人間
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吾輩のグッドアイデアに対して、我が助手は拳で返答してきたわけだが、吾輩とて理由も無しに納得できるわけがない。
当然、説明を求める。
「何が不満だというのだ、我が助手よ?」
「18歳未満が買えないグッズじゃないですか!」
我が助手が理由を口にする。
しかし、それは吾輩を納得させる理由ではなかった。
なぜなら、間違っているからだ。
「違うぞ、我が助手よ。せいぜい、R15だ。それも念のためで、本来ならそれすら要らないくらいだ」
グッズを制作するにあたって、そのあたりは考慮している。
大事な部分がギリギリ写っていない瞬間の映像を使っているのだ。
映像の中からベストタイミングを探すのには苦労した。
それに最近の作品は、局部が映っておらず性行為をともなっていなければ、Rが付いていないことが多い。
たとえ、全裸より扇情的な姿で、本番より性的興奮をもたらすシチュエーションだったとしても、条件を満たさなければRは付かないのだ。
綱渡りをしながら網の目をかいくぐるような描写をしている作品は、芸術的とさえ言える。
戦略的に、期待感を煽るために、あえてRを付けている作品もあるが、それを超えるのではないだろうか。
そのような作品を参考に、グッズ制作もRが付かないギリギリを狙ったのだ。
もっとも、今回は研究費を稼ぐのが目的なので、できるだけ幅広い年齢層に販売したかったという理由もある。
「そうだとしても、本人の許可なく、こんなグッズを作ったらダメでしょう」
我が助手が反論してくるが、吾輩に抜かりはない。
そのあたりも対策済みだ。
「許可なら取ったぞ」
「どうやってですか? エルちゃんはともかく、ぼたんは全然帰ってきていないじゃないですか」
我が助手が疑わし気な目を向けてくる。
吾輩が口から出任せを言っているとでも思っているようだ。
だが、もちろん嘘ではない。
「ぼたんには、ラインで確認したのだ」
「ライン!? ぼたん、ラインやっているんですか!?」
「うむ。下僕に教えてもらったと言っていたな」
「下僕!? あの子、なにやってるの!?」
我が助手は驚いているが、さほど不思議なことではない。
現代では幼稚園児でもスマホを持っているのだ。
ファンタジーの住人がスマホを使いこなしても、なにもおかしくはない。
よくファンタジーでは現実世界より文化レベルが低く描かれているが、それはあくまで文化レベルの話だ。
そこの住人の知能が、現実世界の人間より低いということではない。
もしファンタジーの世界にスマホがあれば、そこの住人は普通にスマホを使いこなすだろう。
「ぼたんは、グッズを作ってよいかと聞いたら、『パパ、私の抱き枕が欲しいの? いいよ~♪』と返信してきたぞ。エルは、ぼたんが許可したと聞いたら、『メスブタには売り上げでも負けません!』と言って許可してくれた」
「ツッコミ所が満載なんですけど……」
我が助手が頭痛を堪えるような呆れたような表情をしているが、本人達に筋は通しているのだから責められるいわれはない。
むしろ、エルの希望は売り上げの向上なのだから、販売に力を入れるべきだ。
そして、それについても準備を進めている。
「ぼたんとエルちゃんが許可しているなら、仕方ないから認めますよ。なんだか、子供がアイドルになりたいと言い出した母親の気分です」
我が助手が、諦めたようにグッズの販売を認める。
反対したいが、子供の希望を尊重するといったところか。
我が助手は良い母親になると思う。
「それで、あそこにいる人達はどういう関係があるんですか?」
グッズの販売を認めたことで、次は別のことが気になったようだ。
我が助手が獣人のように見える集団を指しながら尋ねてくる。
「うむ。彼女達は今回の戦力だ」
「戦力っていうのは聞きましたけど、敵と戦うわけじゃないんでしょう? なんで獣人が必要なんですか?」
我が助手は何か勘違いをしているようだ。
そもそも根本から違う。
まずは、それを正すことにしよう。
「我が助手よ。敵と戦うわけではないという認識は正しい」
「それはそうでしょう。自衛隊や警察が出てきたら間違いなくこちらが悪いんですから、素直に謝るしかないです」
「……そういうことではない」
我が助手が不当な言いがかりをしてくるが、それに反論すると長くなりそうなので、やめておく。
「そういうことではなくてだな。我が助手は認識が間違っているぞ」
「何がですか? 勝手に遺伝子操作をした生物や植物を創って世間に迷惑をかけているんですから、こちらが悪いでしょう」
「そ、そうではなく――」
もう、ずばり勘違いを指摘することにする。
「――彼女達は獣人ではないぞ」
「……はあ?」
我が助手が素っ頓狂な声を上げる。
やはり、勘違いしていたらしい。
「彼女達は動物の耳と尻尾を付けた人間だ。ナゴヤで開かれるイベントでグッズを売ってもらうために、学生達をアルバイトで雇ったのだ。ネコミミを付けた売り子がいると、売り上げが向上するという情報を入手したのでな」
吾輩の言葉に、我が助手が集団を注意深く観察する。
そして、納得したように吾輩に話しかけてくる。
「そういうことですか。教授にしては、まともな案ですね。また私が面倒をみなくちゃいけないのかと思っていたんですけど、安心しました」
「うむ。本当は獣人を創りたかったのだが、時間も研究費も足りなかったのでな」
残念ながら今回は、獣人を創るのは断念したのだ。
信念を曲げることになったが、全ては世界を救う研究のためだ。
後悔はしていない。
重要なのは、最終的に目的を達成することだ。
「あらためて見ると、可愛い耳と尻尾ですね。予備はありますか? 私も売り子に協力しますよ」
自分が面倒を見なくてよいとわかり安心したのか、我が助手が自ら協力を申し出てくる。
ならば、断る理由はない。
幸い予備はあるので、吾輩は我が助手に耳と尻尾を渡す。
「これ、ほんのり温かくて、動いていて、リアルですね。どこかが脳波を読み取って動くネコミミを作ったって聞いたことがありますけど、それですか?」
「いや、吾輩が創った」
「……教授が?」
「うむ」
問われたので答えたのだが、吾輩が創ったと聞くと、耳を頭に着けようとしていた我が助手の手が止まる。
あまりの出来の良さに感激したのだろうか。
せっかくなので、もう少し説明してやろう。
「むろん、本物の耳と尻尾だ。脳波を読み取るなどという、ちゃちな仕掛けではなく、神経を繋げて動くようにしてある。接触した部分から細胞レベルで徐々に融合していくようにするのに苦労したが、寄生生物の遺伝子を使うことで――」
「なんてものを創るんですか!?」
吾輩の説明を聞いて、我が助手が叫びながら耳を床に叩きつけた。
なぜだ。
当然、説明を求める。
「何が不満だというのだ、我が助手よ?」
「18歳未満が買えないグッズじゃないですか!」
我が助手が理由を口にする。
しかし、それは吾輩を納得させる理由ではなかった。
なぜなら、間違っているからだ。
「違うぞ、我が助手よ。せいぜい、R15だ。それも念のためで、本来ならそれすら要らないくらいだ」
グッズを制作するにあたって、そのあたりは考慮している。
大事な部分がギリギリ写っていない瞬間の映像を使っているのだ。
映像の中からベストタイミングを探すのには苦労した。
それに最近の作品は、局部が映っておらず性行為をともなっていなければ、Rが付いていないことが多い。
たとえ、全裸より扇情的な姿で、本番より性的興奮をもたらすシチュエーションだったとしても、条件を満たさなければRは付かないのだ。
綱渡りをしながら網の目をかいくぐるような描写をしている作品は、芸術的とさえ言える。
戦略的に、期待感を煽るために、あえてRを付けている作品もあるが、それを超えるのではないだろうか。
そのような作品を参考に、グッズ制作もRが付かないギリギリを狙ったのだ。
もっとも、今回は研究費を稼ぐのが目的なので、できるだけ幅広い年齢層に販売したかったという理由もある。
「そうだとしても、本人の許可なく、こんなグッズを作ったらダメでしょう」
我が助手が反論してくるが、吾輩に抜かりはない。
そのあたりも対策済みだ。
「許可なら取ったぞ」
「どうやってですか? エルちゃんはともかく、ぼたんは全然帰ってきていないじゃないですか」
我が助手が疑わし気な目を向けてくる。
吾輩が口から出任せを言っているとでも思っているようだ。
だが、もちろん嘘ではない。
「ぼたんには、ラインで確認したのだ」
「ライン!? ぼたん、ラインやっているんですか!?」
「うむ。下僕に教えてもらったと言っていたな」
「下僕!? あの子、なにやってるの!?」
我が助手は驚いているが、さほど不思議なことではない。
現代では幼稚園児でもスマホを持っているのだ。
ファンタジーの住人がスマホを使いこなしても、なにもおかしくはない。
よくファンタジーでは現実世界より文化レベルが低く描かれているが、それはあくまで文化レベルの話だ。
そこの住人の知能が、現実世界の人間より低いということではない。
もしファンタジーの世界にスマホがあれば、そこの住人は普通にスマホを使いこなすだろう。
「ぼたんは、グッズを作ってよいかと聞いたら、『パパ、私の抱き枕が欲しいの? いいよ~♪』と返信してきたぞ。エルは、ぼたんが許可したと聞いたら、『メスブタには売り上げでも負けません!』と言って許可してくれた」
「ツッコミ所が満載なんですけど……」
我が助手が頭痛を堪えるような呆れたような表情をしているが、本人達に筋は通しているのだから責められるいわれはない。
むしろ、エルの希望は売り上げの向上なのだから、販売に力を入れるべきだ。
そして、それについても準備を進めている。
「ぼたんとエルちゃんが許可しているなら、仕方ないから認めますよ。なんだか、子供がアイドルになりたいと言い出した母親の気分です」
我が助手が、諦めたようにグッズの販売を認める。
反対したいが、子供の希望を尊重するといったところか。
我が助手は良い母親になると思う。
「それで、あそこにいる人達はどういう関係があるんですか?」
グッズの販売を認めたことで、次は別のことが気になったようだ。
我が助手が獣人のように見える集団を指しながら尋ねてくる。
「うむ。彼女達は今回の戦力だ」
「戦力っていうのは聞きましたけど、敵と戦うわけじゃないんでしょう? なんで獣人が必要なんですか?」
我が助手は何か勘違いをしているようだ。
そもそも根本から違う。
まずは、それを正すことにしよう。
「我が助手よ。敵と戦うわけではないという認識は正しい」
「それはそうでしょう。自衛隊や警察が出てきたら間違いなくこちらが悪いんですから、素直に謝るしかないです」
「……そういうことではない」
我が助手が不当な言いがかりをしてくるが、それに反論すると長くなりそうなので、やめておく。
「そういうことではなくてだな。我が助手は認識が間違っているぞ」
「何がですか? 勝手に遺伝子操作をした生物や植物を創って世間に迷惑をかけているんですから、こちらが悪いでしょう」
「そ、そうではなく――」
もう、ずばり勘違いを指摘することにする。
「――彼女達は獣人ではないぞ」
「……はあ?」
我が助手が素っ頓狂な声を上げる。
やはり、勘違いしていたらしい。
「彼女達は動物の耳と尻尾を付けた人間だ。ナゴヤで開かれるイベントでグッズを売ってもらうために、学生達をアルバイトで雇ったのだ。ネコミミを付けた売り子がいると、売り上げが向上するという情報を入手したのでな」
吾輩の言葉に、我が助手が集団を注意深く観察する。
そして、納得したように吾輩に話しかけてくる。
「そういうことですか。教授にしては、まともな案ですね。また私が面倒をみなくちゃいけないのかと思っていたんですけど、安心しました」
「うむ。本当は獣人を創りたかったのだが、時間も研究費も足りなかったのでな」
残念ながら今回は、獣人を創るのは断念したのだ。
信念を曲げることになったが、全ては世界を救う研究のためだ。
後悔はしていない。
重要なのは、最終的に目的を達成することだ。
「あらためて見ると、可愛い耳と尻尾ですね。予備はありますか? 私も売り子に協力しますよ」
自分が面倒を見なくてよいとわかり安心したのか、我が助手が自ら協力を申し出てくる。
ならば、断る理由はない。
幸い予備はあるので、吾輩は我が助手に耳と尻尾を渡す。
「これ、ほんのり温かくて、動いていて、リアルですね。どこかが脳波を読み取って動くネコミミを作ったって聞いたことがありますけど、それですか?」
「いや、吾輩が創った」
「……教授が?」
「うむ」
問われたので答えたのだが、吾輩が創ったと聞くと、耳を頭に着けようとしていた我が助手の手が止まる。
あまりの出来の良さに感激したのだろうか。
せっかくなので、もう少し説明してやろう。
「むろん、本物の耳と尻尾だ。脳波を読み取るなどという、ちゃちな仕掛けではなく、神経を繋げて動くようにしてある。接触した部分から細胞レベルで徐々に融合していくようにするのに苦労したが、寄生生物の遺伝子を使うことで――」
「なんてものを創るんですか!?」
吾輩の説明を聞いて、我が助手が叫びながら耳を床に叩きつけた。
なぜだ。
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