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オーガを創ってみよう

059.ハイキング

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 電車を降りたらバスに乗って、バスを降りたら、いよいよ歩きだ。
 ここからが本番になる。
 山奥まで入って、捕獲対象を捜索するのだ。

「ぷぎーっ♪ 気持ちいいね、パパ♪」

 山の中に入ってからというもの、ぼたんがご機嫌だ。
 ぴょんぴょんと飛び跳ねるように、軽い足取りで進んでいく。
 アウトドア派のぼたんからすると、電車やバスの移動は退屈だったのかも知れない。

「うむ。森林の中というのは、空気が澄んでいて気持ちがよいな。急いで進んではもったいないので、ゆっくりと行こうではないか」
「はーい♪」

 吾輩の言葉に、ぼたんが歩くペースを緩める。
 実のところ、吾輩はなんとかついていけるのだが、他のメンバーが遅れ気味なのだ。

「ふぅ……ぼたんは元気ね」

 我が助手は吾輩のすぐ後ろを歩いている。
 少し息が上がっているようだ。
 吾輩より若いのだが、少し運動不足なのではないだろうか。

 もっとも、吾輩の荷物を入れたキャリーバックは、実は半自動的に進む。
 タイヤの部分がキャタピラーになっていて、モーターも搭載しているのだ。
 吾輩は手を添えて方向を指定するだけでよく、キャタピラーだから山道もすいすいだ。
 だから、荷物は大きいが、吾輩は手ぶらと変わらない。
 そのハンデの影響が出ているのだろう。

「はぁはぁはぁはぁ……」
「えっちゃん、大丈夫?」

 そして、逆方向にハンデの影響が出ているのがエルだ。
 大きい荷物を持っているエルは、予想通り一番遅れている。
 その隣を道子が歩いているが、こちらはエルに合わせているからだ。

「えっちゃん、やっぱり少し持つよ」
「だ、大丈夫だよ」

 道子の申し出をエルが断る。
 しかし、どう見ても大丈夫ではない。
 明らかに無理をしている。
 少し前に吾輩や我が助手が同様の申し出をしたのだが、同じように断られている。
 エルは思ったよりも頑固なようだ。
 このメンバーの中で、吾輩以外で唯一の男だというプライドがあるのかも知れないな。
 だが、このまま無理をすれば、エルが倒れてしまうのは目に見えている。
 どうしたものか――

「遅いから、私が持つよ!」

 ――と思っていたら、ぼたんがエルの荷物を無理やり奪った。
 本人に確認せずに、問答無用だ。

「返せ、メスブタ! ボクが持つんだ!」
「ぷぎーっ♪ 返して欲しかったら、追いついてみたらー?」

 ぼたんがエルから奪った荷物を持ちながら、それでもひょいひょいと駆けて行く。
 一方のエルは、身軽になったものの、それまでの疲労があるせいで追いつけない。

「あ! えっちゃん、まってよ!」

 道子も慌ててエルを追いかける。
 ぼたんには、ゆっくり行こうと言ったはずなのだが、ずいぶんと先行している。
 かなり、はしゃいでいるようだな。

「エルちゃんの荷物を持ってあげるなんて、ぼたんも思いやりが身に着いたみたいですね」

 吾輩の横に並びながら、我が助手が話しかけてくる。
 しかし、あれは思いやりというのだろうか。

「どう見ても、からかっているようにしか見えないが」

 ぼたんを追いかけていったエルは、ついに力尽きて地面にへたり込んでしまった。
 それなりに進んだことだし、一休みするか。

「休憩にしよう」

 エルがいるところまで追いつくと、吾輩はそう宣言した。

 *****

 吾輩たちが休憩を取っていると、先行していたぼたんが戻ってきた。
 吾輩たちがついてきていないことに気付いたのだろう。

「ぷぎーっ! みんなだけ休憩して、ずるいよーっ!」
「声をかけようとしたのだが、ずいぶんと前に行ってしまっていたのでな」

 姿が見えないほど前に進んでいたので心配したのだが、迷わずに戻って来れたらしい。
 ぼたんは、少し拗ねたような様子を見せたが、吾輩の隣に座ると何やら手渡してきた。

「はい、パパ。これあげる」

 手渡してきたのは、果物だった。
 柑橘系のようだが、吾輩は果物には詳しくないので、具体的な名前は分からない。
 店で見かけるものとは少し違うようだし、もしかしたら原種なのかも知れないな。

「みんなの分もあるよ」

 ぼたんか手荷物の袋の中から、色々な果物を取り出す。
 出発のときは持っていなかったはずだから、山に入ってから採ってきたのだろう。
 なるほど。
 山にいたときは、こうやって食糧を確保していたのか。

 我が助手と道子も、ぼたんが提供した果物を手に取る。
 エルは一瞬迷ったようだが、他のメンバーが手に取るのを見て、自分も手に取る。
 その様子を眺めながら、吾輩は果物にかじりつく。

「ふむ。酸味はあるが疲れているときは、ちょうどよいな」
「ぷぎーっ♪」

 吾輩が感想を言うと、ぼたんも機嫌よく果物にかじりつく。
 そんな感じで、ハイキングのような雰囲気で、旅の前半は進んだ。
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