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12.【小話】セージの想い
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アルダールから、寝所に送り込まれた大公妃について調べろと命じられ、調べ始めたら・・・
出てくる、出てくる。幸せのかけらも感じられない生い立ちと、悲惨な結婚エピソードの大公妃に、一体どんな女なのか興味を持った。
セージは国が滅んで底辺に沈んだ王侯貴族の女を、掃いて捨てるほど見てきた。アルダールが征服した国の王族や貴族の女たちをモノのように扱っても、それが当たり前だと思っていた。
アルダールが情けを一切かけずにモノのように扱うのは、国が滅びるまでは贅沢三昧に暮らし、貴族の特権を振りかざして平民を踏みつにした女たちだ。因果応報だろう。
ユディンにも、そんな驕慢な女たちがたくさん捕らえられ、自害防止用の魔道具を着けられて、王宮内の使用人居住区の宿舎に押し込められている。若くて見栄えのよい女たちはもうすぐ騎士たちに配られ、余った女は下女や奴隷として売られる。売られる前にはもちろん、平民出身の兵たちをその体で満足させなければならない。
そんな女たちに同情しないのは、彼女たちがアルダールやその母ナラを虫けら同然に扱ったオルドネージュ先代国王の王妃や側室達と同類だからだ。
だが、大公妃は違った。王女としての過去や人となりを調べて行くと、国を思い、民を慈しみ、王族としての役目を必死に果たそうとしてきたことが分かった。
神殿に通って国と民のために祈りを捧げ、身寄りのない子供達には安心して過ごせる場所を作り、貧しくて医者にかかれない民たちには無料の治療院を開放した。調べれば調べるほど、興味がわいてくる。
そして、執務室につれてこられた大公妃を初めて見たとき、その凜とした佇まいに息を呑んだ。
夫を失い、子を流産し、国は滅んで不幸を体現したような元王女は、それでもしっかりと頭を上げて、アルダールを見ていた。
食事をろくに取っていなかったせいか、パサパサで艶のない栗色の髪に茶色い目。痩せこけた頬の大公妃は、顔だけを見たら美人とはいえない。なのに今、目の前でアルダールと対峙している大公妃の姿、その佇まいは、信じられないほどに美しかった。
彼女をアルダールの寝所に送り込んだエレズは、城壁に吊された。勝手に城の女を貢ぎ物にした罰だ。すっと胸がすく思いだった。
「セージ、どうした。」ふと気付くと、アルダールがセージの顔を覗き込んでいた。
「珍しいな、お前が俺の前で堂々と考え事をするとは。」幸い、アルダールは怒っていないようだ。
「これから少し汗を流す。お前は下がっていいぞ。」
「剣の稽古相手なら、わたくしが」と練習相手を買ってでようとしたら、
「剣ではない、こっちだ。」とアルダールがレアナの腰に腕を回した。
「な、何を?!」大公妃が狼狽しながら、アルダールの手から逃げようとした。
そんな彼女の顔を目の端にとめ、あんな顔もするんだと思いながら、室内にいた護衛騎士たちと一緒に退室した。
執務室の扉を閉めると、中から二人が争っているような物音と気配がし、それから静かになった。
アルダールが侵略した国の女たちに手をつけるのは、別に珍しいことではない。21歳になったばかりの若い王だ。まだまだ盛んな年頃だろう。
今まではアルダールが誰を抱こうが、特に何も感じなかった。それが今、あの大公妃の凜とした美しい姿を見たあとでは、アルダールが彼女を抱くのかと思うと、少しだけ心がモヤっとした。
このまま、この扉の前に立っていたら、そのうち大公妃のあえぎ声が漏れ聞こえてくるのだろう。アルダールの寝所を守る護衛騎士たちも、屋根裏に潜んで密かに警護したり賊の侵入を阻止するセージたち諜報員も、女の零すあえぎ声や吐息は聞き慣れている。
だが、今は聞きたくない。足早にセージは執務室の扉前から立ち去った。
出てくる、出てくる。幸せのかけらも感じられない生い立ちと、悲惨な結婚エピソードの大公妃に、一体どんな女なのか興味を持った。
セージは国が滅んで底辺に沈んだ王侯貴族の女を、掃いて捨てるほど見てきた。アルダールが征服した国の王族や貴族の女たちをモノのように扱っても、それが当たり前だと思っていた。
アルダールが情けを一切かけずにモノのように扱うのは、国が滅びるまでは贅沢三昧に暮らし、貴族の特権を振りかざして平民を踏みつにした女たちだ。因果応報だろう。
ユディンにも、そんな驕慢な女たちがたくさん捕らえられ、自害防止用の魔道具を着けられて、王宮内の使用人居住区の宿舎に押し込められている。若くて見栄えのよい女たちはもうすぐ騎士たちに配られ、余った女は下女や奴隷として売られる。売られる前にはもちろん、平民出身の兵たちをその体で満足させなければならない。
そんな女たちに同情しないのは、彼女たちがアルダールやその母ナラを虫けら同然に扱ったオルドネージュ先代国王の王妃や側室達と同類だからだ。
だが、大公妃は違った。王女としての過去や人となりを調べて行くと、国を思い、民を慈しみ、王族としての役目を必死に果たそうとしてきたことが分かった。
神殿に通って国と民のために祈りを捧げ、身寄りのない子供達には安心して過ごせる場所を作り、貧しくて医者にかかれない民たちには無料の治療院を開放した。調べれば調べるほど、興味がわいてくる。
そして、執務室につれてこられた大公妃を初めて見たとき、その凜とした佇まいに息を呑んだ。
夫を失い、子を流産し、国は滅んで不幸を体現したような元王女は、それでもしっかりと頭を上げて、アルダールを見ていた。
食事をろくに取っていなかったせいか、パサパサで艶のない栗色の髪に茶色い目。痩せこけた頬の大公妃は、顔だけを見たら美人とはいえない。なのに今、目の前でアルダールと対峙している大公妃の姿、その佇まいは、信じられないほどに美しかった。
彼女をアルダールの寝所に送り込んだエレズは、城壁に吊された。勝手に城の女を貢ぎ物にした罰だ。すっと胸がすく思いだった。
「セージ、どうした。」ふと気付くと、アルダールがセージの顔を覗き込んでいた。
「珍しいな、お前が俺の前で堂々と考え事をするとは。」幸い、アルダールは怒っていないようだ。
「これから少し汗を流す。お前は下がっていいぞ。」
「剣の稽古相手なら、わたくしが」と練習相手を買ってでようとしたら、
「剣ではない、こっちだ。」とアルダールがレアナの腰に腕を回した。
「な、何を?!」大公妃が狼狽しながら、アルダールの手から逃げようとした。
そんな彼女の顔を目の端にとめ、あんな顔もするんだと思いながら、室内にいた護衛騎士たちと一緒に退室した。
執務室の扉を閉めると、中から二人が争っているような物音と気配がし、それから静かになった。
アルダールが侵略した国の女たちに手をつけるのは、別に珍しいことではない。21歳になったばかりの若い王だ。まだまだ盛んな年頃だろう。
今まではアルダールが誰を抱こうが、特に何も感じなかった。それが今、あの大公妃の凜とした美しい姿を見たあとでは、アルダールが彼女を抱くのかと思うと、少しだけ心がモヤっとした。
このまま、この扉の前に立っていたら、そのうち大公妃のあえぎ声が漏れ聞こえてくるのだろう。アルダールの寝所を守る護衛騎士たちも、屋根裏に潜んで密かに警護したり賊の侵入を阻止するセージたち諜報員も、女の零すあえぎ声や吐息は聞き慣れている。
だが、今は聞きたくない。足早にセージは執務室の扉前から立ち去った。
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