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秘密
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別々に行くのも変だし一緒に行けばいいのだけど、会社から二人で並んで歩いていたら誤解を招きそうなので最寄り駅だけ訊いて後で合流することにした。
「俺と一緒におるとこ見せた方が妬くかもしれませんよ」と小山内くんは意味深に笑ったけど、今は微妙な時期なので彼の提案に乗る気にはなれなかった。
碧川さんは焼きもちなんて焼いてくれないだろうし、二人でいるところを見られたら小山内くんと付き合ったのかと勘違いして、別れを切り出されてしまうかもしれない。
その方が健全なのに、私の心は不健全な方を選ぶ。この気持ちが愛なのか執着なのか、だんだんと分からなくなってくる。どうか愛であってほしい。
小山内くんが住んでいるのは、奥さんから借りている部屋があるのと同じ駅だった。ここなら顔見知りのご近所さんもいないと思ったのに、よりにもよって小山内くんが住んでいるなんて。
私もよく行くスーパーに寄って飲み物を買い込むと、並んで歩き出した。ただ一緒に歩くだけで、妙な罪悪感を覚えるのはなぜだろう。お互い独身なんだし、何も悪いことはないのに。寧ろ、碧川さんは喜ぶのかもしれないと思うと、切なさに押し潰されそうになる。
どこかで違う道に進むんだろうと思いながら到着したのは、まさに私が借りているマンションだった。嫌な予感がする。
「ちょっと待って。今日は小山内くんの家に行くんじゃないの?」
自分でも驚くほど強い力で小山内くんのごつい腕を掴んでいた。
さすがにこんな偶然はあり得ない。きっと小山内くんが私に意地悪するためにこのマンションに来たんだと思った。彼は私と碧川さんのことを写真に撮ったりしていたし、色々と嗅ぎ回っているのかも。
「え? ああ、もっと汚い文化住宅かなんかやと思ってました? 俺らが借りた部屋ね、前の住人が夜逃げして荷物とかそのままやったんすよ。それでもいいなら家賃安くするって言うから」
「……じゃあ本当にここに住んでるの?」
「あ。宝生さんってお化けとか見えちゃう人? このマンションなんかおります?」
彼の反応から察するに、どうやら本当にこのマンションに住んでいるらしかった。
「や、やだ、見えるわけないでしょ。私、怖いの苦手だから変なこと言わないでよ。まさか、事故物件じゃないよね?」
動揺を隠そうと自ら怖いことを訊いてしまった。
「夜逃げした後どうなったんか知らんのでね。まあ、場合によっては事故物件かもなぁ」
「ええ……入るの止めようかな」
「大丈夫やって。お化けぐらい俺が倒したるやん」
真顔で拳を見せられたけど、幽霊とケンカでもするつもりだろうか。ゾンビなら倒しちゃいそうな風貌ではあるけれど。
普段は幽霊が苦手で怖がりな私が、今は小山内くんの部屋が借りている部屋の隣だったらと想像することの方が怖い。
吐きそうなくらいびくびくしたけれど、小山内くんの部屋は四階ではなく一階だったので声が出そうなほどホッとした。
「わぁ! イチハ、いらっしゃいませよぉ~。入って、入って」
扉が開いた瞬間、絵本みたいにパオちゃんの笑顔が飛び出してきた。白いひらひらのエプロンが似合い過ぎていて今日も可愛い。パオちゃんを見ていると、嬉しい時は顔にも声にも感情を出した方が伝わるんだなって勉強になる。私は待ち人であっても、はちきれんばかりの笑顔で迎えたことはない。
二人の部屋は奥さんの部屋と同じマンションとは思えない、生活感が漂っていた。お互いの趣味が交ざり合う不思議な空間。ところどころ置いてあるアメコミのヒーローっぽいフィギュアは小山内くんのものかな。ふわふわのクッションとかきらきらの暖簾とか大きな犬のぬいぐるみはパオちゃんのかな。若い子の部屋って感じがする。
「イチハ、ここ座って。邪魔だな、もう」
言いながら、パオちゃんは座椅子に座っていた犬のぬいぐるみを雑にどかした。
「おい! 俺のポチ子に何すんねん」
大きめ声で言うと、小山内くんは犬を抱き上げた。
「うそ。それ小山内くんのなの?」
「可愛いでしょ、うちのポチ子」
「気持ち悪いだろ? 大和、寝る時もポチコ~言う。名前もセンスないね。どうせ昔のGirlfriendにもらったやで」
「ちゃうわ。妹がくれたんじゃ」
妹さんからもらった犬のぬいぐるみを大切にしているなんて、これまた意外過ぎた。
「これは可憐《かれん》くれたのやつ? ワタクシ初めて聞いた」
「別に今まで訊かれんかったし」
「それは大事にするです」
「俺は大事にしとんがな。お前も大事にせえよ」
「可憐くれたのDogだったら可愛いね。昔のGirlfriendくれたのやつだったら可愛くない。気持ちが悪い」
「なんじゃそら」
もし、今でも元カノがくれたぬいぐるみを大事に持っているんだとしたら、未練たらしいって言いたかったのかな。別れたらすぐにプレゼントや関連グッズを捨てちゃう人と捨てられずに持っている人がいるからね。どちらが良い悪いは言えないけれど、口ぶりからしてパオちゃんはすぐに捨てる派のようだ。私もすぐに捨てる派だけど。
肉まんだけだと思ったら、テーブルには所狭しと台湾料理っぽいものが並んでいた。金銭事情を聞いたばかりなのに、気を遣わせてしまったようで申し訳ない。
「すごいご馳走だね。ごめんね、こんなたくさん作らせちゃって」
「ダメダメ。日本人どうしてすぐごめんなさい言う? ありがとう言うたらいい」
「あ。そうだね。ありがとう」
「どういたしまして~。いっぱい食べてね」
ビンタされたような、強い衝撃を受けた。無意識ではあったけれど、言われてみれば『ありがとう』よりも『ごめんなさい』の方が多い気がする。確かに、悪いこともしていないのに謝るのは変なのかもしれない。
思いがけない異文化交流は、新たな発見や勉強になることがたくさんあって面白い。
そして何より、台湾人がつくる本場の台湾料理はとても美味しかった。皮から手作りしたという肉まんは、パオというあだ名に恥じない(?)お味。中の具材も種類がたくさんあるので何個でも食べたいけれど、肉まんって結構どっしりくる。
「もっと食べたいけど、お腹いっぱいになってきちゃった」
「もうダメかー? まだデザートあるのにぃ」
「デザートも食べたいけど、ちょっと休憩」
「お前、さすがに女の人にこの量はエグいで」
「そうか? 残ったら大和が食べるだから大丈夫や」
「もうええて。ね? パオって呼びたなる気持ち分かるでしょ?」
たまになら美味しいし嬉しいけど、しょっちゅうだと胃袋が大変なことになりそう。
食べて笑って、いくらか前向きな気持ちになれた。戸惑いながらも、思い切って来てよかったと思えた。パオちゃんはいつも元気をくれる。
そろそろお暇しようかと思った頃、パオちゃんのスマホが鳴った。
「店長さんだ。ちょっと出るね」
スマホ片手にパオちゃんはキッチンへ。
「この時間やったら明日のシフト変更かな」
小山内くんの言葉に納得しかけると、キッチンから聞こえる声がトーンダウンした。
「ちょっと待って! それは今手続きしてるだから……」
何やら雲行きが怪しい……? 明るいパオちゃんの表情がみるみる険しくなっていく。
「難しいの日本語はワカラナイよ……」
声が沈んでいくパオちゃんを見かねてか、小山内くんが立ち上がった。
「大丈夫か? 言葉分からんねんやったら俺が聞いたろか?」
小山内くんの言葉にパオちゃんは首を振った。
そんなやり取りをしていると、今度はチャイムが鳴った。小山内くんはインターホンの応答ボタンを押した。
「夜分遅くにすみません。わたくし日本語学校で事務局長をしております原と申しますが、陳さんはいらっしゃいますか?」
「あ、はい。ちょっと待ってください。おい、パオ。日本語学校の人来てるけど」
訪問者を聞いた途端、パオちゃんはがっくりと肩を落とした。
家庭訪問か何かだと軽く考えていた私は、日本語学校から来た原さんの話に激しく動揺することになる――。
「陳さん、探したよ。今は学校行ってないよね? あなたは学生ビザで来てるから、学校辞めた時点でビザの変更しないと不法就労になるよ。もうすぐビザの期限も切れるよね? このままだと不法残留になるから。一緒に入管(※)行こう」(※入国管理局)
「は? 学校辞めた? なんかの間違いちゃいます? なあ、パオ。お前、転校の手続きしたって言うてたよな? な?」
肩を揺する小山内くんに、パオちゃんは俯いたまま何も答えなかった。
「陳さんは大阪の日本語学校を今年の三月で辞めてるんです。転校の手続きもしてないし、急に行方不明になったから心配してたんですよ。今朝、勤めてるお店からうちに問い合わせがあって、それで今日伺ったんです」
「マジか……。ほんで、パオは……陳はどうなるんですか?」
「これから入管行って、最悪の場合は強制送還になるかもしれません」
テレビでしか聞いたことがないような単語に、私は慄いていた。
「強制送還……? 嘘や。なんでやねん! お前、なんでこんな大事なこと黙っててん!」
「ワタクシ、先生に言ったよ。東京の学校変わりたい言うた。でも、ダメ言われた。学校がOKじゃないと、新しいの学校行けないだから。辞めた」
二人が言い合いになっているのを察し、原さんは玄関の外で待ってますと言って出て行った。盗み聞きしているみたいで私だって頗る気まずいけれど、パオちゃんがどうなるのか気になってしまう。
「俺には転校したって言うてたくせになんで辞めてん。学生ビザで来てんねんから、学校辞めたらあかんやろ」
「辞めないと東京行けないだから! 大和東京行ったらワタクシまたひとりぼっちなるよ。大和と一緒に東京行きたいだったから」
くりっとした大きな目に涙を浮かべ、パオちゃんは言った。その姿に関係のない私がもらい泣きしてしまった。
「ほんなら転校できんこと俺に相談してくれたらよかったやろ。俺ら友達ちゃうんか!」
迫力のある大きめの声で小山内くんが言った。私までびくっとして、部屋は静まり返った。
「……大和は友達じゃない」
「あ? なんやねんそれ」
かなりショックだったのだろう。小山内くんは怒りを滲ませて鼻で笑った。
「……ワタクシ、ずっと大和好きだった。知らなかったでしょ。ずっと好きだったよ。大和、東京行くの準備で忙しいだった。邪魔なりたくない。だから、言えなかった」
私には衝撃の告白だった。仲が良いとは思っていたけれど、私に小山内くんと付き合えみたいなこと言ってたし、まさかパオちゃんが特別な感情を抱いているなんて思いもしなかった。
小山内くんへの恋を胸に秘め、東京に就職が決まった彼と一緒に上京したくて違反すると分かっていながら学校を辞めたのか……。
してはいけないことだと重々承知しているけれど、それでもパオちゃんのひたむきな愛に心を打たれた。
「イチハ。今日は来てくれてありがとう。ワタクシと友達なってあげて嬉しかったよ。ワタクシ、イチハみたいな可愛いの女の子なりたかった」
「パオちゃん……」
色んなものが込み上げて涙が止まらない。切なくて悲しくて、胸が引き裂かれそうに痛い。自分の好きな人の恋愛対象じゃないなんて、辛すぎるよ。
「泣かないで。イチハ、Smile」
にっこりととびきりの笑顔を浮かべると、パオちゃんは私を抱きしめた。生物学上の性別なんて関係ない。柔らかい感触や匂いは確かに女の子だった。
「大和、今までありがとう。日本来て辛いことたくさんたくさんあったけど、大和といる時いつも楽しいだったよ。謝了《シエラ》。(ありがとう)我走了《ウォーゾウラ》(じゃあ行くね)」
そう言って、パオちゃんは背伸びすると小山内くんの唇にキスをした。
「ワタクシのFirst kissや」
「え……ガチで?」
「ガチや」
「俺は……初めてちゃうけど。まあ、ある意味では初めてかもしれん」
「ああ。オカマとKissは初めてか?」
「せやな。多分、最初で最後やと思うわ」
最初で最後という言葉にパオちゃんはご満悦の様子だった。
いつものやり取りさえこんなにも寂しく感じる。もう見られないかもしれないなんて。
「じゃあ、拜拜《バイバイ》」
「おい待てや。俺も一緒に入管行くって」
「大丈夫よ。原さんいるだから」
「けど、転校のこととか大事なこと色々あるやんけ。俺も一緒に行って話し聞く」
「いい。大丈夫。ワタクシいないの間はイチハと二人なれるだから……」
「アホか! こんな時に何言うてんねん。俺のことそんなこすい奴と思ってんか」
こんな時まで自分のことより小山内くんのことを考えているパオちゃんと、困っている友達を見放さない小山内くんに胸が熱くなった。
「コスイは何? Perfume? 大和のPerfume少し臭い。ワタクシ好きくない」(※こすい【狡い】……関西圏ではずるい、せこいなどの意味です。)
普段の倍は険しい顔で小山内くんはかっかきている感じなのに、パオちゃんは非常事態でもマイペースというかなんというか。いつもの笑顔は封印され顔は真剣そのものなのに、場を和ませてしまう不思議な力がある。
「香水のことちゃうわ。っちゅうか、なんで今香水のクレーム言うねん。まあええから、行くぞ。すいません、ちょっと行ってきますんで」
「うんうん、絶対その方がいいよ」
「ほな。あ。俺臭いっすか? ええ匂いやけどな……」
腕の辺りをくんくん嗅ぎながら小山内くんが訊いた。思わず、気にしてんのかーいって言ってしまいそうになった。可愛いとこあるじゃないか。
「ふふ。大丈夫だよ」
慌てて鍵だけ受取り、背中を押すように見送ると、ひとまずテーブルの上を片付けて残った料理にラップをかけて冷蔵庫へ。
許可をもらったとは言え、勝手に引き出しを開けたり、冷蔵庫を開けたりするのは気を遣う。家主がいない他所のお家って落ち着かない。今日はパオちゃんのことが気になっているから余計に心がざわざわしている。
洗い物を終えてひと段落すると、早く帰らなければいけないと思いつつ、スマホで『強制送還』について調べてみた。
出入国在留管理庁のホームページによると、強制送還ではなく退去強制と表記されている。退去強制や出国命令を受けて出国した人は入管法の規定に基づいて一定期間日本に上陸することができなくなるらしい。
長ければ十年、短くても一年は来日することができなくなってしまう。
日本に留まれるようにする手続きもあるみたいだけど審査がかなり厳しく、日本に配偶者や子どもがいる場合でも必ずしも在留が許可されるとは限らないそうだ。
パオちゃんの詳しい状況が分からないけれど、調べれば調べるほどこのまま日本に留まって今まで通りに仕事をするのは難しいんじゃないかと不安が増すばかり。
日本の条件が厳しいと分かっていて来るのだろうし、法を犯すことに賛成はしないけど、パオちゃんみたいに人畜無害な子でも強制的に出国させなければいけないのだろうか。
例外をつくって在留を許可してばかりいたら、法の網をかいくぐって悪いことをする人が増えてしまうのかもしれないし、治安の悪化を懸念する声があるのも分かるのだけど。
他人様の家で私がスマホとにらめっこして難しいことを調べていたってどうなるもんでもない。
簡単に片づけた後、部屋を出た。施錠してドアの郵便受けから鍵を落とす。外廊下を歩き、エレベーターのそばまで来ると、ふと四階へ寄ろうかという思考になって首を振った。
パオちゃんが大変な時に何を考えているんだ、私は。別に碧川さんがいるわけじゃないし、邪な気持ちはないけれど、それにしたって今日は自粛するべきだ。
こんなに窮屈な思いをするぐらいなら、いっそ小山内くんとと考えたこともあるけれど、パオちゃんの気持ちを知ってしまった今、小山内くんと付き合おうとは思えない。
『大和はダメか?』と私に訊いていた時、どんな気持ちだったんだろう。
私にはできない。碧川さんに自分以外の女性をお勧めするなんて。それで碧川さんが今より幸せになると分かっていても。
すごいな、パオちゃんは……。
結局、私は自分が一番可愛くて、自分が幸せになることしか考えていない女なんだ。だから不倫だってできるんだ。
自己犠牲的に誰かを愛するなんて、私にはできそうにない。
マンションの外に出て四階を見上げた。
あれ以来、自分から連絡はできないし、碧川さんからも音沙汰はない。
砂に書いた文字が波に消されるように、私たちはこのまま静かに終わっていくのだろうか。
「俺と一緒におるとこ見せた方が妬くかもしれませんよ」と小山内くんは意味深に笑ったけど、今は微妙な時期なので彼の提案に乗る気にはなれなかった。
碧川さんは焼きもちなんて焼いてくれないだろうし、二人でいるところを見られたら小山内くんと付き合ったのかと勘違いして、別れを切り出されてしまうかもしれない。
その方が健全なのに、私の心は不健全な方を選ぶ。この気持ちが愛なのか執着なのか、だんだんと分からなくなってくる。どうか愛であってほしい。
小山内くんが住んでいるのは、奥さんから借りている部屋があるのと同じ駅だった。ここなら顔見知りのご近所さんもいないと思ったのに、よりにもよって小山内くんが住んでいるなんて。
私もよく行くスーパーに寄って飲み物を買い込むと、並んで歩き出した。ただ一緒に歩くだけで、妙な罪悪感を覚えるのはなぜだろう。お互い独身なんだし、何も悪いことはないのに。寧ろ、碧川さんは喜ぶのかもしれないと思うと、切なさに押し潰されそうになる。
どこかで違う道に進むんだろうと思いながら到着したのは、まさに私が借りているマンションだった。嫌な予感がする。
「ちょっと待って。今日は小山内くんの家に行くんじゃないの?」
自分でも驚くほど強い力で小山内くんのごつい腕を掴んでいた。
さすがにこんな偶然はあり得ない。きっと小山内くんが私に意地悪するためにこのマンションに来たんだと思った。彼は私と碧川さんのことを写真に撮ったりしていたし、色々と嗅ぎ回っているのかも。
「え? ああ、もっと汚い文化住宅かなんかやと思ってました? 俺らが借りた部屋ね、前の住人が夜逃げして荷物とかそのままやったんすよ。それでもいいなら家賃安くするって言うから」
「……じゃあ本当にここに住んでるの?」
「あ。宝生さんってお化けとか見えちゃう人? このマンションなんかおります?」
彼の反応から察するに、どうやら本当にこのマンションに住んでいるらしかった。
「や、やだ、見えるわけないでしょ。私、怖いの苦手だから変なこと言わないでよ。まさか、事故物件じゃないよね?」
動揺を隠そうと自ら怖いことを訊いてしまった。
「夜逃げした後どうなったんか知らんのでね。まあ、場合によっては事故物件かもなぁ」
「ええ……入るの止めようかな」
「大丈夫やって。お化けぐらい俺が倒したるやん」
真顔で拳を見せられたけど、幽霊とケンカでもするつもりだろうか。ゾンビなら倒しちゃいそうな風貌ではあるけれど。
普段は幽霊が苦手で怖がりな私が、今は小山内くんの部屋が借りている部屋の隣だったらと想像することの方が怖い。
吐きそうなくらいびくびくしたけれど、小山内くんの部屋は四階ではなく一階だったので声が出そうなほどホッとした。
「わぁ! イチハ、いらっしゃいませよぉ~。入って、入って」
扉が開いた瞬間、絵本みたいにパオちゃんの笑顔が飛び出してきた。白いひらひらのエプロンが似合い過ぎていて今日も可愛い。パオちゃんを見ていると、嬉しい時は顔にも声にも感情を出した方が伝わるんだなって勉強になる。私は待ち人であっても、はちきれんばかりの笑顔で迎えたことはない。
二人の部屋は奥さんの部屋と同じマンションとは思えない、生活感が漂っていた。お互いの趣味が交ざり合う不思議な空間。ところどころ置いてあるアメコミのヒーローっぽいフィギュアは小山内くんのものかな。ふわふわのクッションとかきらきらの暖簾とか大きな犬のぬいぐるみはパオちゃんのかな。若い子の部屋って感じがする。
「イチハ、ここ座って。邪魔だな、もう」
言いながら、パオちゃんは座椅子に座っていた犬のぬいぐるみを雑にどかした。
「おい! 俺のポチ子に何すんねん」
大きめ声で言うと、小山内くんは犬を抱き上げた。
「うそ。それ小山内くんのなの?」
「可愛いでしょ、うちのポチ子」
「気持ち悪いだろ? 大和、寝る時もポチコ~言う。名前もセンスないね。どうせ昔のGirlfriendにもらったやで」
「ちゃうわ。妹がくれたんじゃ」
妹さんからもらった犬のぬいぐるみを大切にしているなんて、これまた意外過ぎた。
「これは可憐《かれん》くれたのやつ? ワタクシ初めて聞いた」
「別に今まで訊かれんかったし」
「それは大事にするです」
「俺は大事にしとんがな。お前も大事にせえよ」
「可憐くれたのDogだったら可愛いね。昔のGirlfriendくれたのやつだったら可愛くない。気持ちが悪い」
「なんじゃそら」
もし、今でも元カノがくれたぬいぐるみを大事に持っているんだとしたら、未練たらしいって言いたかったのかな。別れたらすぐにプレゼントや関連グッズを捨てちゃう人と捨てられずに持っている人がいるからね。どちらが良い悪いは言えないけれど、口ぶりからしてパオちゃんはすぐに捨てる派のようだ。私もすぐに捨てる派だけど。
肉まんだけだと思ったら、テーブルには所狭しと台湾料理っぽいものが並んでいた。金銭事情を聞いたばかりなのに、気を遣わせてしまったようで申し訳ない。
「すごいご馳走だね。ごめんね、こんなたくさん作らせちゃって」
「ダメダメ。日本人どうしてすぐごめんなさい言う? ありがとう言うたらいい」
「あ。そうだね。ありがとう」
「どういたしまして~。いっぱい食べてね」
ビンタされたような、強い衝撃を受けた。無意識ではあったけれど、言われてみれば『ありがとう』よりも『ごめんなさい』の方が多い気がする。確かに、悪いこともしていないのに謝るのは変なのかもしれない。
思いがけない異文化交流は、新たな発見や勉強になることがたくさんあって面白い。
そして何より、台湾人がつくる本場の台湾料理はとても美味しかった。皮から手作りしたという肉まんは、パオというあだ名に恥じない(?)お味。中の具材も種類がたくさんあるので何個でも食べたいけれど、肉まんって結構どっしりくる。
「もっと食べたいけど、お腹いっぱいになってきちゃった」
「もうダメかー? まだデザートあるのにぃ」
「デザートも食べたいけど、ちょっと休憩」
「お前、さすがに女の人にこの量はエグいで」
「そうか? 残ったら大和が食べるだから大丈夫や」
「もうええて。ね? パオって呼びたなる気持ち分かるでしょ?」
たまになら美味しいし嬉しいけど、しょっちゅうだと胃袋が大変なことになりそう。
食べて笑って、いくらか前向きな気持ちになれた。戸惑いながらも、思い切って来てよかったと思えた。パオちゃんはいつも元気をくれる。
そろそろお暇しようかと思った頃、パオちゃんのスマホが鳴った。
「店長さんだ。ちょっと出るね」
スマホ片手にパオちゃんはキッチンへ。
「この時間やったら明日のシフト変更かな」
小山内くんの言葉に納得しかけると、キッチンから聞こえる声がトーンダウンした。
「ちょっと待って! それは今手続きしてるだから……」
何やら雲行きが怪しい……? 明るいパオちゃんの表情がみるみる険しくなっていく。
「難しいの日本語はワカラナイよ……」
声が沈んでいくパオちゃんを見かねてか、小山内くんが立ち上がった。
「大丈夫か? 言葉分からんねんやったら俺が聞いたろか?」
小山内くんの言葉にパオちゃんは首を振った。
そんなやり取りをしていると、今度はチャイムが鳴った。小山内くんはインターホンの応答ボタンを押した。
「夜分遅くにすみません。わたくし日本語学校で事務局長をしております原と申しますが、陳さんはいらっしゃいますか?」
「あ、はい。ちょっと待ってください。おい、パオ。日本語学校の人来てるけど」
訪問者を聞いた途端、パオちゃんはがっくりと肩を落とした。
家庭訪問か何かだと軽く考えていた私は、日本語学校から来た原さんの話に激しく動揺することになる――。
「陳さん、探したよ。今は学校行ってないよね? あなたは学生ビザで来てるから、学校辞めた時点でビザの変更しないと不法就労になるよ。もうすぐビザの期限も切れるよね? このままだと不法残留になるから。一緒に入管(※)行こう」(※入国管理局)
「は? 学校辞めた? なんかの間違いちゃいます? なあ、パオ。お前、転校の手続きしたって言うてたよな? な?」
肩を揺する小山内くんに、パオちゃんは俯いたまま何も答えなかった。
「陳さんは大阪の日本語学校を今年の三月で辞めてるんです。転校の手続きもしてないし、急に行方不明になったから心配してたんですよ。今朝、勤めてるお店からうちに問い合わせがあって、それで今日伺ったんです」
「マジか……。ほんで、パオは……陳はどうなるんですか?」
「これから入管行って、最悪の場合は強制送還になるかもしれません」
テレビでしか聞いたことがないような単語に、私は慄いていた。
「強制送還……? 嘘や。なんでやねん! お前、なんでこんな大事なこと黙っててん!」
「ワタクシ、先生に言ったよ。東京の学校変わりたい言うた。でも、ダメ言われた。学校がOKじゃないと、新しいの学校行けないだから。辞めた」
二人が言い合いになっているのを察し、原さんは玄関の外で待ってますと言って出て行った。盗み聞きしているみたいで私だって頗る気まずいけれど、パオちゃんがどうなるのか気になってしまう。
「俺には転校したって言うてたくせになんで辞めてん。学生ビザで来てんねんから、学校辞めたらあかんやろ」
「辞めないと東京行けないだから! 大和東京行ったらワタクシまたひとりぼっちなるよ。大和と一緒に東京行きたいだったから」
くりっとした大きな目に涙を浮かべ、パオちゃんは言った。その姿に関係のない私がもらい泣きしてしまった。
「ほんなら転校できんこと俺に相談してくれたらよかったやろ。俺ら友達ちゃうんか!」
迫力のある大きめの声で小山内くんが言った。私までびくっとして、部屋は静まり返った。
「……大和は友達じゃない」
「あ? なんやねんそれ」
かなりショックだったのだろう。小山内くんは怒りを滲ませて鼻で笑った。
「……ワタクシ、ずっと大和好きだった。知らなかったでしょ。ずっと好きだったよ。大和、東京行くの準備で忙しいだった。邪魔なりたくない。だから、言えなかった」
私には衝撃の告白だった。仲が良いとは思っていたけれど、私に小山内くんと付き合えみたいなこと言ってたし、まさかパオちゃんが特別な感情を抱いているなんて思いもしなかった。
小山内くんへの恋を胸に秘め、東京に就職が決まった彼と一緒に上京したくて違反すると分かっていながら学校を辞めたのか……。
してはいけないことだと重々承知しているけれど、それでもパオちゃんのひたむきな愛に心を打たれた。
「イチハ。今日は来てくれてありがとう。ワタクシと友達なってあげて嬉しかったよ。ワタクシ、イチハみたいな可愛いの女の子なりたかった」
「パオちゃん……」
色んなものが込み上げて涙が止まらない。切なくて悲しくて、胸が引き裂かれそうに痛い。自分の好きな人の恋愛対象じゃないなんて、辛すぎるよ。
「泣かないで。イチハ、Smile」
にっこりととびきりの笑顔を浮かべると、パオちゃんは私を抱きしめた。生物学上の性別なんて関係ない。柔らかい感触や匂いは確かに女の子だった。
「大和、今までありがとう。日本来て辛いことたくさんたくさんあったけど、大和といる時いつも楽しいだったよ。謝了《シエラ》。(ありがとう)我走了《ウォーゾウラ》(じゃあ行くね)」
そう言って、パオちゃんは背伸びすると小山内くんの唇にキスをした。
「ワタクシのFirst kissや」
「え……ガチで?」
「ガチや」
「俺は……初めてちゃうけど。まあ、ある意味では初めてかもしれん」
「ああ。オカマとKissは初めてか?」
「せやな。多分、最初で最後やと思うわ」
最初で最後という言葉にパオちゃんはご満悦の様子だった。
いつものやり取りさえこんなにも寂しく感じる。もう見られないかもしれないなんて。
「じゃあ、拜拜《バイバイ》」
「おい待てや。俺も一緒に入管行くって」
「大丈夫よ。原さんいるだから」
「けど、転校のこととか大事なこと色々あるやんけ。俺も一緒に行って話し聞く」
「いい。大丈夫。ワタクシいないの間はイチハと二人なれるだから……」
「アホか! こんな時に何言うてんねん。俺のことそんなこすい奴と思ってんか」
こんな時まで自分のことより小山内くんのことを考えているパオちゃんと、困っている友達を見放さない小山内くんに胸が熱くなった。
「コスイは何? Perfume? 大和のPerfume少し臭い。ワタクシ好きくない」(※こすい【狡い】……関西圏ではずるい、せこいなどの意味です。)
普段の倍は険しい顔で小山内くんはかっかきている感じなのに、パオちゃんは非常事態でもマイペースというかなんというか。いつもの笑顔は封印され顔は真剣そのものなのに、場を和ませてしまう不思議な力がある。
「香水のことちゃうわ。っちゅうか、なんで今香水のクレーム言うねん。まあええから、行くぞ。すいません、ちょっと行ってきますんで」
「うんうん、絶対その方がいいよ」
「ほな。あ。俺臭いっすか? ええ匂いやけどな……」
腕の辺りをくんくん嗅ぎながら小山内くんが訊いた。思わず、気にしてんのかーいって言ってしまいそうになった。可愛いとこあるじゃないか。
「ふふ。大丈夫だよ」
慌てて鍵だけ受取り、背中を押すように見送ると、ひとまずテーブルの上を片付けて残った料理にラップをかけて冷蔵庫へ。
許可をもらったとは言え、勝手に引き出しを開けたり、冷蔵庫を開けたりするのは気を遣う。家主がいない他所のお家って落ち着かない。今日はパオちゃんのことが気になっているから余計に心がざわざわしている。
洗い物を終えてひと段落すると、早く帰らなければいけないと思いつつ、スマホで『強制送還』について調べてみた。
出入国在留管理庁のホームページによると、強制送還ではなく退去強制と表記されている。退去強制や出国命令を受けて出国した人は入管法の規定に基づいて一定期間日本に上陸することができなくなるらしい。
長ければ十年、短くても一年は来日することができなくなってしまう。
日本に留まれるようにする手続きもあるみたいだけど審査がかなり厳しく、日本に配偶者や子どもがいる場合でも必ずしも在留が許可されるとは限らないそうだ。
パオちゃんの詳しい状況が分からないけれど、調べれば調べるほどこのまま日本に留まって今まで通りに仕事をするのは難しいんじゃないかと不安が増すばかり。
日本の条件が厳しいと分かっていて来るのだろうし、法を犯すことに賛成はしないけど、パオちゃんみたいに人畜無害な子でも強制的に出国させなければいけないのだろうか。
例外をつくって在留を許可してばかりいたら、法の網をかいくぐって悪いことをする人が増えてしまうのかもしれないし、治安の悪化を懸念する声があるのも分かるのだけど。
他人様の家で私がスマホとにらめっこして難しいことを調べていたってどうなるもんでもない。
簡単に片づけた後、部屋を出た。施錠してドアの郵便受けから鍵を落とす。外廊下を歩き、エレベーターのそばまで来ると、ふと四階へ寄ろうかという思考になって首を振った。
パオちゃんが大変な時に何を考えているんだ、私は。別に碧川さんがいるわけじゃないし、邪な気持ちはないけれど、それにしたって今日は自粛するべきだ。
こんなに窮屈な思いをするぐらいなら、いっそ小山内くんとと考えたこともあるけれど、パオちゃんの気持ちを知ってしまった今、小山内くんと付き合おうとは思えない。
『大和はダメか?』と私に訊いていた時、どんな気持ちだったんだろう。
私にはできない。碧川さんに自分以外の女性をお勧めするなんて。それで碧川さんが今より幸せになると分かっていても。
すごいな、パオちゃんは……。
結局、私は自分が一番可愛くて、自分が幸せになることしか考えていない女なんだ。だから不倫だってできるんだ。
自己犠牲的に誰かを愛するなんて、私にはできそうにない。
マンションの外に出て四階を見上げた。
あれ以来、自分から連絡はできないし、碧川さんからも音沙汰はない。
砂に書いた文字が波に消されるように、私たちはこのまま静かに終わっていくのだろうか。
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誰……?
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その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
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