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第五十六話 Duel on the death!

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 輝く粒子の尾を引く光弾同士がぶつかり合い相殺し、風の刃の衝突で眼下の雲が逆巻き、氷塊と獄炎が互いを消滅させ、宙舞う神器同士が激しく斬り結ぶ。

 俺も、僭称者ヤツも互いに譲らない。サタンとオフィエルは障壁を五十枚ほど付けて離れさせている。

「ふははッ……愉しいぞ、小僧!」

 愉悦を表しながら、何やら強大な魔法を発動しようと、両手を胸の前で向かい合わせ巨大な光球を創り出す。それを見て、俺は背後に・・・分厚い障壁を展開する。

 すんでの所で、背後で障壁が砕ける音がした。

「見え見えの引っ掛けだな。予備動作ほぼなしで魔法を使える貴様がこれ見よがしに光球なんぞ練りだしたら、バックアタックをしますと言ってるようなものだ」

 腕組みして鼻で嘲笑わらうと、僭称者ヤツは愉快そうに口の端を歪める。

 再び魔法の乱戦に突入するが、互いに勝機がつかめないでいる。

「ルシくん、大丈夫!?」

 真横からサタンの声が聞こえ、ハッとする。互角に戦っていたつもりだが、いつの間にかここまで押されていたのか。嫌な汗が滲む。

「お前とオフィエルこそ大丈夫か?」

 魔法の応酬をしながら二人に声をかける。二人に流れ弾が行くと危険だが、攻撃が激しくなかなか距離を取ることができない。

「サタンお姉ちゃんが魔法で温めてくれたから、だいぶ良くなったよお兄ちゃん。ジジイ絶許!」

「悪態がつけるなら大丈夫そうだな。妙案がある。ちょっと脳に直接語りかけるぞ」

 絶許とか何処で覚えてきたんだ。パパからジジイ呼ばわりに転落とは自業自得よな。そして一度やってみたかった、「脳に直接話しかける」シチュエーション。

 余裕があるんだかないんだか判らんが、耳打ちなどして向こうのウォッチャーにばれると宜しくない。

 上手くこの策が決まると良いのだが。
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