癒し系○○○

みなはらつかさ

文字の大きさ
1 / 1

癒し系○○○

しおりを挟む
 不意に、目が覚めると、見知らぬ女がいた。

 確か、突然薬をかがされて……。

 だめだ、力が入らない。

「はーい、いい子、いい子。怖くないからねー。辛かったねえ。あなたみたいな素敵な人を、何度もしつこく怒鳴りつけるなんて」

 昨日の、課長のパワハラを思い出し、怒りがこみ上げてくる。

「かわいそう。あなたは有能で、何も悪くないのに」

 赤子を撫でるように、優しく頭を撫でる彼女。不意に、涙が出てきた。

「今日はね、私がママになってあげる。お口開けられる?」

 なぜかもう、この女に逆らう気力がなくなっていた。ゆっくりと口を開ける。

「はーい、美味しいプリンですよ~。あーん……うん、上手上手! 上手に食べられて、偉いねえ!」

 ママが、ぱちぱちと拍手する。

「とんとんしてあげるね。お歌、何か歌ってほしいのある?」

「あめ……ふり……」

 外では雨が降っていた。

「いいよー。あめ、あめ、ふれ、ふれ、かあさんがー……」

 とん、とん、とん、とん。穏やかな歌声に、眠気を催してくる。

「おねむだねー。じゃあね、いい夢見てね」

 そして、眠りの世界に落ちた。


 ◆ ◆ ◆


「ガイシャは日改承ひがい・うける、28歳。詳しくは鑑識の結果待ちですが、やつの仕業で間違いないですね」

 部下の背広男が、上司に伝える。二人は、刑事だ。

 ベッドの死体のそばには、食べかけのプリンが置かれていた。

 鑑識官たちが、激しくフラッシュを焚いて写真を取り、警官が周囲の聞き取りを行っている。

 死体が、それは幸せそうな笑顔を浮かべて亡くなっていた。

「癒し系殺人鬼か」

 忌々しそうに、顔を歪める上司。

 神出鬼没の殺人鬼で、関東一円を騒がせている存在だ。

 この殺人鬼の特徴は、いずれも被害者の死に顔が幸せそうであることと、毒殺を用いていることにある。

 とにもかくにも、この幸せそうな死に顔から、皮肉を込めて「癒し系殺人鬼」と称されるようになった。

 警察と世間を翻弄する、癒し系殺人鬼。その足取りは、ようとして知れない。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

【短編集】こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

ナースコール

wawabubu
大衆娯楽
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

誰の金で生活してんの?

広川朔二
ライト文芸
誰よりも家族のために尽くしてきた男がいた。朝早くから働き、家事を担い、家庭を支えてきた。しかし、帰ってきたのは妻の裏切りと娘の冷たい視線。不倫、嘲笑——すべてを悟った男は、静かに「計画」を始める。仕組まれた別れと制裁、そして自由な人生の再出発。これは、捨てられた“だけの男”が、すべてをひっくり返す「静かなる復讐劇」。

処理中です...