【R18】真紅の薔薇城―不死者の支配する世界で聖女と呼ばれ―

雪月華

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鍵となる言葉

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 ベックは私がアロイスと結婚したのに、変わりなく接してくれて、それが心地いい。

「ちょっといいかな?」
 
 薬草小屋から薬草園ハーブ・ガーデンの中央の樹の下に連れ出された。
 彼を見上げれば、木漏れ陽が翡翠色ジェードグリーンの髪に反射して、キラキラと輝いた。


「ヨハンに、エタン村までの旅の支度をさせてやりたいんだけど……」

「あ! そうよね。気が利かなくてごめんなさい。お金は用意するから、ヨハンに一通りちゃんとしたものをそろえてもらえる?」

「今回はニ、三日の旅だから、丈夫なマントと靴に鞄、短刀と弓、後は三日分の保存食があればいいんだ。金貨一枚もあれば足りると思う」

「分かったわ。少し待ってて。その間に、薬草小屋にある薬で必要なものは、何でも選んでちょうだい。アンヌに言っておくから」


 私は本館一階の女官長の部屋へ急いだ。
 手持ちのお金がなかったから、女官長に話して用意してもらおう。
 今後、何かで必要になった時のために、ある程度は自由にできるお金が欲しい。
 アロイスに話してみよう。

 本館一階は主に人間の使用人が働く、厨房、洗濯室、リネン室、倉庫、使用人宿舎などがあった。二階から上は、アロイスの執務室、大広間、客室などがあり、貴族や客人が使用していることからの階と呼ばれることもある。

 女官長の部屋の扉をノックして中に入ると、そこには女官長とルイーズ、その付き添いの女中が居た。
 私を見て驚いた顔をしている。

「まあ、ソフィさま。供も連れずにどうなさいました?」

「ええ、女官長に用があって……」

 ちらりとルイーズを見ると、彼女は長椅子から立ち上がってお辞儀をした。

「では、わたくしはこれで失礼しますわ。こちらには、城をお暇するご挨拶に伺いましたの。
 ソフィ、わたくしたちはこれまで行き違いがあって、親しくなれないままお別れすることが残念ですわ」

 まるで別人かと思うような、穏やかな笑みを浮かべているルイーズに戸惑う。
 あんなにアロイスに執着していたのに、随分あっさりと城を出て行く決意をしたのだと驚いた。

「わたくしは実家に帰って、父の商会の手伝いをすることにしました。また次にご縁がありましたら、その時はアロイスさまに一刻でもご一緒に仕えた者同士、よしなにお付き合いくださいませ」

「え、ええ。その、ルイーズもお元気で」

 ルイーズはくすっと邪気なく笑った。

「またすぐにお会いできるかもしれませんね。そうそう、マルクをルニエ商会で預かっているんですよ」

「なんですって?」

「女騎士リゼットさまから、父に頼まれて。そろそろマルクは二度目の生に目覚める頃合いじゃないかしら……」

 心臓がトクトクと鳴り始める。

 血の中毒者ブラッド・ジャンキー、『貴族の血』の違法売買、ルニエ商会……。

 三つの鍵となる言葉キーワードが、ルニエ商会でマルクを預かっているというルイーズの言葉によって合わさり、カチッと音がしたような気がした――。

 
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